セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

61話 計略と唄う妖鳥 その16

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「ん・・・まっ、いいわ、ジャネットさん、祭りと言えば何?」

ソフィアはパッと顔を上げると白墨でビシリとジャネットを差した、ジャネットは突然の事ではあるがその反応とノリの良さで、

「はい、屋台です」

大声で答える、

「はい、屋台、次、ケイスさん」

ソフィアは黒板に書きつけながらケイスを指名する、

「はい、えっと、えっと、行列?」

ケイスもジャネットの勢いのまま思いついた事を口にした、

「はい、行列、次、オリビアさん」

どうやらソフィアは一人一人に発言させるつもりらしい、その意図に気付いた面々はなにがあるだろうと頭を働かせ始めた、

「・・・神様でしょうか?お祭りとは基本的には神様に感謝を捧げる催しものだと思います」

真面目なオリビアの言葉にオーと静かな歓声が上がる、

「神様ね、次、エレインさん」

とソフィアは次々に指名し、出てきた答えを黒板に書きつける、しかし、それも重複するものが多くなる、祭りと言われて連想できる事はそれほど多くない、新しい事を答えようと知恵を絞る面々であったがその答えはより細かい事物へ移り変わっていく、

「うーん、串焼きって屋台よね・・・」

ニコリーネがうんうん悩みながら出した答えにソフィアももうこんなもんかしらと手を止めた、黒板には屋台から始まった祭りに関する単語が箇条書きとなっている、

「そのようですね、でも、確かに祭りと言われると・・・」

「まずは神様が中心なのが当たり前で、その神様に関する事で楽しむ?って感じなんでしょうか?」

エレインとテラが黒板を眺めて口を開く、

「そうなるのよね、テラさんの意見が一番分かりやすいかしら?神様があって、それに関してとか、御馳走とかの類もあれよね、豊穣を祝ってとか、豊穣を願ってとかになるわよね・・・季節的にはちょっときついのか・・・」

ソフィアがなるほど10月に祭りが無いのはそういう事かと理解した、10月は初冬である、秋の収穫を終えて年を越し春を迎える迄の準備期間と言える時期であった、故にバカ騒ぎよりも冬ごもりに忙しい時期なのである、

「田舎でもこの時期は家の仕事で忙しいですよ、秋の収穫もそうですし、麦の植え付けが終わって・・・薪の準備とか・・・炭作りとかかな?」

サレバが呟く、コミンもうんうんと頷いており、他の面々も確かになと納得している様子であった、

「そうよね、それは私もそうだったわ、都会ではお金があればどうとでもなるみたいだし、それが商売としてなりたっているからね、それほど忙しく無い印象だけど・・・ま、それは置いておいて・・・屋台、それと催し物ね、そっか、催しものを作ればいいのかな?」

ソフィアは黒板の神様に大きく丸をつけ、催しものと書きつける、

「そっか、その祭りの中心となる催事があればいいんですよね、それを見に来る人がいて、で、その人出を狙って屋台が集まる・・・」

「そうね、そうなると、ユーリ、催事を作りなさい」

ソフィアはビシリとユーリを睨む、

「簡単に言わないでよ、何すりゃいいのよ」

「じゃ、それを考えるわ、なにする?」

ソフィアはあっさりとその厳しい視線を生徒に向けた、普段の飄々としたソフィアの雰囲気ではない、どうやら半分遊んでいるらしい、ジャネットやエレインはそれに感づくが、付き合いの浅い者達は妙に気合が入っているなと訝しく見つめてしまう、

「えっと、光柱はどうでしょう?」

ルルが小さく手を上げる、

「光柱ねー、確かにあれなら人を呼べるわね」

「模擬戦見せるとか」

ジャネットも続く、

「模擬戦?」

「はい、戦闘訓練で模擬戦やるんです、勇壮でカッコいいですよ、本職には敵いませんけど」

「へー、それ、面白そう・・・」

「あっ、あれです、美容服飾研究会の講義とか?」

恐る恐るとレスタが口を開く、エッとサビナが驚くと、

「あの・・・普通の人にも教えられることって何か無いかなって思いまして、学園は学ぶ場ですし・・・で、爪の手入れとか、やわらかクリームとか、興味深いと思うんですが・・・」

消え入りそうな声で付け加えるレスタである、

「へー、真っ当な意見だわ、確かに学園は学ぶ場所だからね、それに、あれなら奥様方にも受けるでしょうしね」

ユーリが片眉を上げ感心する、

「なるほど、つまりあれね、一般受けしそうな授業ってことね」

ソフィアがカッカと黒板を鳴らす、レスタはホッと安堵の吐息を吐いた、

「あっ、魔法のお披露目とかどうですか?」

「生活科の授業も興味ありますね」

「だったら、工学科の授業も何やってるか興味あるかなー」

「錬金術科こそ何やってるか分からないでしょ」

「そう?楽しいよ?」

「今はだって、まだ座学じゃない」

「えー、カトカさん、どうなんですか?」

「どうなんですかって・・・一言では言えないかなー」

「じゃ、二言で」

「二言かー・・・無理」

ワイワイと騒がしくなってくる、ソフィアは黒板に向かって、その会話の端々を書きつけており、ユーリはこうゆう雑多な意見が大事よねーとのほほんと眺めていた、タロウは口を挟まず肩肘を着いて顎を乗せ面白そうに眺めている、

「ん、こんなもんか・・・」

ソフィアがうーんと首を捻りながら黒板を眺め、

「しかし、あれね、人を呼ぶとすると少し弱いかなー」

「そうですね、光柱なら見物人は来るでしょうけど、他のは・・・ここにいるのが女性ばかりだからかな、男性受けしそうには無い・・・あっ、模擬戦とか男性向けか」

「授業関係もあれじゃない?少し敷居が高いような・・・」

「そうよねー、でも、学園なんだし、その敷居の高さも必要だと思うわよ」

「バカ騒ぎするだけのお祭りではないって事ですかね」

「そうね・・・でも、それだとあれか、人が来ないのか・・・」

「生徒達で楽しむのであれば、これでいいんじゃないですか?」

「だから、街の人に来てもらわなきゃ・・・なのよ・・・」

「あっ、そっか・・・」

フムと一同は静かになって黒板を睨む、ユーリが言う通りに光柱であれば人は呼べるであろうし、サビナの指摘の通りに授業は若干敷居が高いように感じる、グルジアのバカ騒ぎをするだけの祭りではないという点も注目するべきであろう、

「で、タロウさんね、どう思う?」

ソフィアはこんなもんかと振り返る、

「何が?」

タロウがん?と目を見開く、

「どうせ、あんたの事だから、何か考えているんでしょ」

ユーリが斜めにタロウを睨んだ、

「なんだよ、それ」

「なんだよって、あんたが一番最初にそれいいねって言ったんじゃない、学園長はそれでやる気になったんだからね、あんたにも責任の一端はあるのよ」

「・・・それはこじつけと言わないか?」

「こじつけでもなんでもいいわよ、責任の一端は確実にあるんだからね」

「それは・・・そうかもだけどさ・・・」

タロウは呆れてユーリを睨み返す、当然であるが居並ぶ女性陣の視線はタロウに向いている、その瞳は単にタロウの意見に興味がある者や、何を言い出すのかと不審そうにしている者、これにも関わっているのかと呆れた者と、それぞれに異なった視線であった、

「あー、そういう事なら・・・カトカ、ゾーイさんね、どうにも口が重いみたいだから、お願いできる?」

ユーリがニヤリと微笑む、カトカとゾーイはエッと驚き、しかし、そういう事かとその意図を察し、仕方ないなと腰を上げかけた所で、

「わかった、待て、俺の意見が欲しいのか?それでいいんだな?」

タロウは慌てて両手を突き出した、

「そうよー、素直なのが一番いいと思うわねー」

ソフィアまでもがユーリの意図を理解して微笑んだ、

「わかった、わかったから、二人は座ってくれ」

タロウの悲鳴にカトカとゾーイは怪しい笑みを浮かべて腰を落ち着けた、

「まったく・・・じゃ、どうかな・・・俺の経験を言わせてもらうとだ・・・まず、テーマが欲しいかな?」

「テーマ?」

「うん、題目とか、主題とか、そこにもある中心となる催し物?に共通する何かって感じ・・・学園長にも話したんだが、文化祭っていう題目はどうかなって思うけど」

「文化祭・・・文化のお祭りですか?」

「学園長が好きそうな名前ですね」

「うん、でも、分かりやすいかな?」

「確かに」

生徒達はその名を呟いてかみ締める、

「で、文化に関する事を中心にして学園での成果とか日常的な何かを発表するって形が良いと思うよ、例えば、黒板にあるように光柱?は話しでは聞いたけど、大したものなんだろう?実際に、ほれ、その壺のそれとか十分に興味を引くと思うぞ」

タロウの指さした壺を基点とした光柱に一同は確かにと頷く、

「で、あれだろ?研究所って幾つかあるんだろ?」

「そうね、あることはあるわね」

「じゃ、そこで研究している事を発表するのもいいと思う、発表・・・は時間がかかるかな、だからそうだな、掲示する感じかな?で、それを眺めて質問があれば答えるような、展示する形の発表だな」

「なるほど・・・あれですか、発表会として講義の形はとらないのですか?」

「うん、発表会っていうと俺の想像だと、人を集めて講壇に登ってって感じなんだけど、それだと逆に時間がかかると思う、だから、こう、壁に貼ってあって、それを歩きながら眺める感じ?」

「掲示板みたいな感じですね」

「そうだね、それであれば、興味があれば足を止めてじっくり見れるし、興味が無ければさっさと次に行けるしね、時間を拘束しないから楽だと思うよ」

「それ、いいかもですね」

「うん、それと・・・逆にイベント事があると盛り上がるよね」

「イベント?」

「何語です?それ?」

「あー、どういえばいいのかな・・・正に催事って意味になるんだけど、こっちはその掲示とは違って人を集めてワイワイ楽しむ感じ、例えば・・・ミスコンとか?」

「ミスコン?」

「だから、変な言葉ばかり使わないでよ」

「そう言われてもさ・・・あー、簡単に言えば、学園で一番の美女を決める品評会的なやつ?」

エッと全員が絶句した、

「盛り上がるぞ、うん、同時に学園で一番の色男を決めるってのもあるな」

「色男?」

「おう、美女と美男を決める遊びだな、それと、男に女の恰好をさせて一番の美女を決めるってのもある」

ナッとさらに絶句する一同である、

「だから、引くなよ、そういう遊びなの、形としては自薦と他薦を組み合わせた感じで参加者を募集して、皆で投票する感じ?舞台でやってもいいし、事前に投票しておいて祭りの催事として発表してもいいしね」

「えっと・・・それ楽しいんですか?」

「楽しいぞ、女も男もキャーキャー盛り上がるな、駄目か?」

「ちょっと・・・」

「うん、想像できないかな・・・」

「そっか・・・じゃ、他には・・・具体的に言った方がいいかな・・・」

とタロウは続ける、その一つ一つはなるほどと納得できるものから、それはちょっとと首を捻るものと多種多様であった、さらにそれであればと生徒達を含め研究所組も案を出し合い活発な議論が巻き起こる、ソフィアはそれらを適当に要約しながら黒板に書きつけていった、そしてなんとか学園祭の叩き台と呼べる案が黒板を埋める事になったのであった。
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