セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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70話 公爵様を迎えて その16

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「まずな、隣りにいるような男共が相手ではそこらの平民はまず足を運ばないぞ」

とタロウは隣室との扉を睨む、

「・・・あー・・・そういう事か」

ルーツがすぐにその真意を理解したらしい、

「だろ?いいか、まずもってこの賭け事の最重要時は、上品な空間で客を楽しませてその有り金をしっかりと頂く事にある」

急に物騒な物言いになるタロウであった、フィロメナはそこまではっきり言わなくてもと顔を顰めるが、グレドランは満面の笑みを浮かべている、

「で、客を楽しませるのはどうするかって視点が必要でね、そうなると、胴元として客に対するのはイイ女か優男もしくは官僚風の真面目な感じの男がいいな」

「あれか、勝てそうだと思わせるんだな」

「その通り、で、イイ女を置くのにはもう一つ理由があってな、特にこの手本引きの方なんだが、胸元を少しはだけたり、艶めかしい表情や言葉使いで客の判断力を鈍らせるって事も出来る、フィロメナさんそういうの得意だろ?」

「そりゃ・・・得意と言えば得意ですけど・・・」

フィロメナはさらに顔を歪めた、タロウが何やらあらゆる事物に精通しているのは理解したが、遊女の商売の肝となる手管までをもハッキリと言われてしまうと甚だ不愉快であった、

「ふふん、まぁ、一旦話しを戻すと、実は賭け事ってやつはね、勝ち負けで楽しむ側面は勿論なんだけど、それ以上に重要なのは金を気持ち良く使わせて、遊んだなと思わせる、楽しませる事がより重要だと俺は思う・・・どうかな?」

タロウが賛同を求めると、ニヤニヤと微笑むのはグレドランのみで、他の面々は同意しかねるのか何とも渋い顔であった、

「ありゃ、違うか?」

「分かる気はするんだが・・・」

「勝たなきゃつまらんだろ・・・」

リズモンドとルーツがどうしたもんかなと顔を見合わせた、

「あー・・・まぁ、俺の経験から言わせてもらうとだ、人ってやつは金を使うのが実は好きなんだって思う、買い物そのものが趣味って人もいてね、何を買う訳でも無いが・・・うん、無駄なものを買うのが楽しかったりするんだな、無駄と分かりつつ、買ってしまう、でもこれはね実はお金を使う事を楽しんでいるんじゃないかと思うんだ」

「いや、そんな奴・・・いるのか?」

「分らんか?」

「平民には無理だぞ」

「確かに」

思わずブラスが呟いた、アッと身を縮こませるが、誰も気にしていないようでホッと安堵する、

「・・・そうかもな・・・でも、ほれ、平民でもさ、エレインさんの所の店とかも盛況だけど、あれは正直無駄だろ、確かに旨いドーナッツだし、腹も膨れるしな、でも腹を満たすならもっと安いものもあるし、旨いものもある、何よりサッサと家に帰って適当に済ませてしまえば無駄な金は使わない」

「それは少し違うだろ」

「そうか?俺にしたら同じだよ、実際にあの店を知っていてもあの店で買い物をした事が無い奴は確実に存在するもんで、そういう人は生涯あそこでは金を使わない、それどころか必要なものしか買わない人かもしれない、金を使う楽しみが分らんのだな、しかし、金を使うという行為を楽しめる人であればあの程度の無駄を楽しめる、無駄って言ったら怒られるかもだけどさ、それにそれほどの散財では無いって言われたらそれまでだが・・・」

「その・・・おっしゃっている事はなんとなくわかります」

フィロメナがオズオズと口を開いた、確かにタロウが言う通りに買い物は楽しい、姉妹達と空いた時間に市場を巡ったり、買う物を定めずに店をひやかしたりする時間はかけがえのないものであったりする、そしてまた金を使うのもまた楽しい、無論しっかりと節制した上での話しであるが、フィロメナとしてはタロウの物言いに反発したい所ではあるが、納得できる内容ではあった、

「でしょ、でね、賭け事については特に、勝ち負けも楽しさの重要な点なんだけど、有り金を使っているという行為そのものもまた楽しいんだな、正に無駄な事に散財している、無駄な買い物をして楽しんでいるのと一緒で、この場合は無駄な遊びに時間と金を費やしているという快感に繋がっている・・・でもその快感も遊びそのものが楽しくて、負けたとしても充実感を感じられないと駄目なんだよ」

「その通りだな」

グレドランが嬉しそうに微笑む、賭場に来る客はこの場に遊びに来ているのであって、勝ち負けは二の次になっているのではないかと常々感じていた、来場時には儲けてやろうと目をギラギラと光らせていた男でも、帰る頃には落ち着きを取り戻し、しかし、同時に遊び疲れと散財の快楽を感じているのか満足そうなのである、例えすっからかんに負けてしまってもである、いや、逆に半端に負けるくらいなら大負けした方がいっそ清々しいのかもしれない、有り金を使い果たし二度とやらねーと大声で喚く客がその言葉通りに二度と来ない事は絶対に無い、翌月には再びぎらついた目で賭場に足を運ぶものなのだ、客観的に見れば度し難い事であり、胴元としては格好の餌食と言える、

「良かった、御理解頂けて嬉しいです、なので・・・うん、金を気持ち良く使える空間、快適で楽しめる空間、また来てしまう空間、そういうのが賭場には大事なのですな、ほれリズモンドさんの店も同じだろ、快適に気持ちよくイイ女を侍らせて酒を楽しむ、賭場の場合は賭け事が主となるけど、共通してそこに必要なのはイイ女と快適な空間なんだな」

「その為に女か?」

「そうなる、男を気持ち良くさせるのは女だよ、それも賭場であれば・・・うん、とてもじゃないが相手をしてくれなさそうな美女がいいね、正に遊女さん達が打って付けだ、街中で見かけた事も無い美女が卓に座れば艶めかしく遊び相手をしてくれるんだぜ、見栄を張って金は出すだろうし、それ以上に楽しめる、それがお前厳つい男相手じゃな、興が削がれるってもんだ」

「確かにな」

「一理ある」

リズモンドとグレドランが破顔した、フィロメナはまぁ確かに、それが私の仕事だけどもさと不満顔で、ルーツはこいつはやはり根っこは悪人か詐欺師だなと鼻で笑ってしまった、

「それでね、今回の晩餐会だけを考えれば、女性も来るんだよ、だから貴族とか富裕層の奥様方でも楽しめるように、参加しやすいようにっていう配慮もあるんだな、ほら賭け事は男の遊びって風潮があるだろ、でもさ、女性でも充分に楽しめるものだからね、賭け事・・・ではあるんだが、それをね仕切り役に上品な女性を置いて、周りにいるのも紳士淑女となれば、賭け事ではあっても手軽で簡単で奥が深くそれでいて高貴な遊び、そういう風に持ち上げる事が出来る・・・と思う」

「女を立たせただけでか?」

「上品な女性って事が大事だ、その女性にはちゃんとお洒落をしてもらうし、あくまで競技として楽しめるような言葉使いも必要だね、つまり礼儀作法ってやつだ、さっき言った客を惑わす手法はここで営業するかリズモンドさんの店になるかは分からないけど、賭け事として遊ばせつつ客を手のひらの上で転がすときに必要な事であって、つまり使い分けが肝要って事だね」

「待て、競技?」

グレドランが聞き捨てならないと口を挟む、

「はい、競技ですね、総帥ならお判りでしょうけど、賭け事なんてのはどんなもんでも成立するもんです、ここで・・・そうですね、向こうの手下達が喧嘩を始めるか否かとか、猫がニャーと鳴くかニャッと鳴くか、鳴かないで逃げ出すか・・・それこそサイコロを転がす程度で賭け事になるんだ、なんでも賭けようと思えば賭けられる、それが面白いかどうかは二の次だがさ」

「そりゃそうだがよ・・・」

「そうなんだよ、で、実際やってもらって分かると思いますが、先の二つはしっかりとした遊びになっていたと思われます、という事はそこから賭け事の要素を薄くすれば競技となる、但しそうなると胴元と客との対決では無く、客同士の競い合いに形が変わる、これが大事なんですよ、賭け事であれば胴元との対決、競技となれば胴元を審判とした客同士の対決・・・やってる事は同じでも楽しみ方、遊び方、受け取り方が変わってくる」

「・・・なるほど・・・確かにそういうものかもしれないな・・・」

リズモンドが大きく頷き、グレドランも納得するしかないのか腕を組んで瞑目した、

「なので、晩餐会では競技として披露するつもりです、ちょっとした褒賞をつけてね、で、賭け事としてはこちらで実際にやってみて下さい、恐らく受けるでしょうね」

「それは確実だ」

グレドランがカッと目を見開く、

「ですよね、なので、女性にするか優男を置くかは実際の運用次第ですが、もし俺が客なら綺麗なお姉さんのいるテーブルに座るでしょう」

「お前、美人は嫌いだろうが」

ルーツがフンスと鼻息を荒くする、

「それはそれ、これはこれだ、俺だって美人は好きなんだよ」

「苦手なくせに」

「だからそれは状況次第なの」

「はいはい分かったよ」

ルーツが大きく手を振った、話しを切り上げようとの意思表示である、フィロメナはどういう事なのかなと首を傾げる、少なとくもフィロメナが見る限りタロウは女性嫌いには見えないし、ソフィアという可愛らしい奥さんも子供もいる、自分達への接し方も紳士的と言えば紳士的に感じられるもので、必要以上に丁寧だなとまで感じられた、女性が多い状況でしか会っていない為にそう感じるのかと思うが、これはまた何か別にあるのかなと女性の勘が働いた、

「あー・・・と言う訳でだ、フィロメナさんね、出来れば明日の午後迄にはこの二つの遊び方を習得して欲しい、もしくはより簡単なシックボーだけでもかな?」

「えっ、あっ、はい、分かりました・・・でも・・・大丈夫です?」

フィロメナは慌てて答えるが、よく考えればその遊び方もこれから構築していく筈である、未だ存在しないものを習得しろとはあまりにも酷と言えよう、

「まぁ、大丈夫でしょ、ここにはほら、賭け事に長けたその道の熟練者が揃っているからね、そうだな、俺も実際にやってみせるから細部は頼む形にしよう、習得するべきは・・・口上とか、サイコロの振り方とか・・・まぁ、段取りだね、慣れればそれほど難しくない筈、それより重要なのは倍率とか・・・かな、だからそれは黒板か何かに書いて掲示しておけばいいし・・・後は金の回収とか支払いの手筈とか・・・ある程度慣れが必要な部分でね、これはそれこそ場数が必要・・・まぁ、やってみるか、取り合えず」

「おう、それが速い、じゃ、やるか」

ルーツが勢いよく腰を上げた、

「・・・こんな感じですが・・・いいですか?」

タロウが重鎮二人に確認する、二人は同時に頷いて腰を上げた、二人共に考えていたのはこの賭け事をどうやって商売に繋げるかである、しかし一番の問題は二つの団体の協定にあった、グルア商会は女衒を、赤ガラスは賭博を取り仕切る事として住み分けしている、しかし先程のタロウの言からすると賭博として場所を作るにしても女が、それも遊女のような手練手管に長けた女が必要と思われ、それは赤ガラスとしては協定に抵触しかねない部分となる、グルア商会としてもこの遊びを遊女屋に置けばまた違った方向性が見えてくる、しかしそれは見事に協定に反していた、例え店の片隅に置いただけだと主張してもグレドランとしては良い顔をしないであろう、それはリズモンドとしても同じで赤ガラスが女を使っているとなれば遊女か娼婦かと騒ぎにしなければならない、互いの領域は侵さず、そういった噂すら立てないのが友好を保つ秘訣なのである、

「まぁ・・・」

「取り合えずだな」

リズモンドとグレドランが目配せする、互いに考えている事は同じであった、

「・・・では・・・」

とタロウも腰を上げ、静かにしていたブラスは安堵の吐息と共に立ち上がった、タロウの様子がいつものそれであった為、何とか平常心を保てていたが、リズモンドとグレドランというこの街の裏の二大巨頭とテーブルを囲んでいたのである、只々押し黙るしかなく、と同時にやっぱりフィロメナさんも向こう側の人なんだなと思い知ったのであった、

「道具は揃った?」

「それなりにな」

「どうだった?」

「それなりだよ」

ルーツとタロウが軽口を叩きながら退室し、他四人もさてどうなることかと続くのであった。
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