セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

72話 メダカと学校 その28

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「あー・・・じゃ、買い物頼もうかしら」

ソフィアが厨房へ向かい、

「お買い物ー」

と叫んでミナがその後を追った、

「フフッ、可愛いわよねー」

「ですねー」

マルルースとエルマがミナの小さな背中に優しく微笑み、メイド達もにこやかに見送る、そこへ、

「いや、まいったよー」

とすっかり油断したタロウが階段から下りて来た、すぐに、

「おわっ、王妃様、これは失礼を」

とマルルースの姿に目を見開き、大きく身体を仰け反らせる、

「あっ、タローだー、あのねー」

厨房に入りかけたミナがタロウに駆け寄り、あらっとソフィアも顔だけ食堂に覗かせる、

「お忙しかったのかしら、確か会議と・・・聞いてましたよ」

優雅に微笑むマルルースに、

「はっ、その・・・どうにも白熱してしまいまして・・・もう少し早めに戻るつもりであったのですが」

ミナを片手でいなしながらしどろもどろと答えるタロウである、ミナはタロウの腕を両手で捕まえると、

「あのねー、お友達できたー、勉強したー、エルマがねー、先生になるのー」

実に端的で的確な報告である、

「ん?友達?」

「うん、ノールとノーラとサスキアー、みんなちっさいの、ミナがおねーさんなのー」

「へー、良かったな、楽しかったか?」

「うん、良かったー、楽しかったー、明日も来るのー、勉強するのー」

「あら・・・それはエライ」

「エライ?エライ?」

「おう、偉いぞ、しっかり勉強しような」

「うん、するー、あとね、あとね、お手伝いもするー、おねーさんだからー」

「おう、もっとエライな」

「ウフフー」

もっと褒めろと笑顔を向けるミナである、タロウはその頭をグシグシと撫でつつ、

「あっ、エルマさんも、お待たせしたかな?申し訳ないね」

と寝台に腰掛けるエルマに小さく謝罪する、

「いえいえ、ミナちゃん達のお陰で楽しかったです」

「それは良かった、では、あっ、ソフィア悪い、少し忙しくなった」

とさてどうしたものだかと食堂に戻っていたソフィアを捕まえるタロウである、

「ん?どうかした?」

「いろいろあってね、午後は少し動かなければならなくてさ、先に、ほら、エルマさんの件いいかな?」

「私はいいけど、奥様はどうですか?」

ソフィアは自分よりもマルルースを気にかけなさいとばかりにタロウの視線を遮ってマルルースを伺う、

「ええ、私は構いませんよ、正直な所、今日はね、ゆっくりしようと思ってお邪魔してますから」

呑気な笑みを浮かべるマルルースである、メイド二人も柔らかい笑みを浮かべている、

「左様ですか、じゃ、上が良ければいいかな?あっ、ケイスさんにもいて欲しかったけど・・・」

「それはすまない、後でゆっくり教えてやってくれ、実践も君がいればなんとかなるだろ」

「そうなるわね、じゃ、準備・・・って程の事は無いか、薬草と・・・あっ、あんた、ユーリに声かけてきて」

「了解」

タロウはサッと踵を返して階段を上がり、ソフィアは結局厨房に入った、ミナが、

「お手伝いー」

と叫んでソフィアの後を追う、

「もう・・・騒がしいわね」

のほほんと微笑むマルルースと、

「せわしない事じゃな・・・」

レインが思いっきり大きな溜息を吐くのであった。



「で、こちらがレッドスライムと呼ばれるスライムですね」

タロウは居並ぶ面々にきっちりと蓋を閉めた壺を指し示した、壁の黒板を前にして講義形式にテーブルを並べ替え、マルルースとエルマを中心に、ユーリとカトカ、ゾーイが並ぶ、メイド二人はどうやら書記係のようであった、共に黒板を取り出して真剣な眼差しでタロウの講釈に集中しており、レインも肩肘を着いて耳を傾けている、ミナも静かに席を温め、ソフィアはタロウの助手のような形で黒板のすぐ隣りの席に座っている、

「見ていいの?」

ユーリが当然の疑問を口にした、

「あー・・・どうかな、見てもいいけど・・・御存知のように・・・」

とレッドスライムの習性について語るタロウである、レッドスライムは寄生型生物である、その奇妙な特性がエルフ達の研究を信じれば今回の治療に役に立つ筈で、昨晩タロウは四苦八苦しながらなんとか捕獲してきた、以前のイエロースライムと違い、平原や農地を探せばそこら辺に転がっている訳では無く、森の中で数匹の野鼠や栗鼠を捕まえその腹を割いて摘出してきたのである、故に大変に血生臭い、まして生きた状態を維持する為にと生贄となってしまった動物達の腸ごと壺に入れていたりする、

「と言う訳で、見た目が大変に宜しくないのと・・・まぁ、不潔です、なので、今日は取り合えずこのままで、今後・・・そうですね、この治療法が確立して多用するとなれば・・・うん、特にこのスライムについては繁殖方法ですとか、飼育方法ですとか、そういう点も開発の必要があると思いますね」

なるほどとマルルースとエルマはその壺を見つめ、随分とまぁ真面目な事を言うもんだとユーリは顔を顰め、

「ちゃんと使えるのよね?」

と確認した、

「使えると思うよ、スライムが生きていればね、昨日ソフィアとも話したんだけどさ、ほら、美容のあれはイエロースライムを磨り潰して使っただろ?あれはイエロースライムの粘液が必要だったからでね、そうなるとイエロースライムは生きている必要は全く無いんだな、でも、今回はほら、生きていて、言い方が悪いけど、悪くなった皮膚を食べてもらうのが重要だからね」

「・・・そういう事・・・」

「そういう事、さらには、このレッドスライムも大きい個体ではなく、小さい個体でないと駄目だと思うんだな、で、その見極めってやつか、どの大きさ・・・この場合は成長段階と言い換えた方が良いかな、その成長段階のどの時期が有効なのかが今後の活用では必要になるかも、あっ、あくまで先の話しですね、エルマさんの治療に関しては、細心の注意を払いますんで、ご安心を」

一応とマルルースとエルマに配慮するタロウである、当の二人はゆっくりと頷き了承したようである、

「という事で、材料に関してはここまでですね、治療の段取りとしましては」

タロウは本題に移る、昨晩タロウがレッドスライムの捕獲に向かう前、生徒達が自室に戻った頃合いで、タロウとソフィア、そこにレインも加わって治療に関する打合せを行っている、どうやら二人がエルフの村で仕入れた知識には若干の差異があり、それを埋めつつ対応策を協議した、さらにはレインが遠慮なく口を挟み、これであればなんとかなるかもなとタロウもソフィアも納得している、レインもまた面白そうだと乗り気であった、どうやらレインにしても初めての技術となるらしい、そういう事もあるのかとタロウが聞くと、エルフは管轄外だとレインは不愉快そうに憤慨している、

「以上ですね、なので・・・この麻酔、これが重要になります、恐らく・・・いや、確実に痛いと思うのですよ、なにせ皮膚が溶かされるのですから、想像するだけで・・・嫌ですよね」

タロウが同意を確認する必要も無く、女性達は顔を顰めており、黒いベールで見えないが当の本人であるエルマもまた肩を震わせたようであった、

「そのマスイ?なんだけど、どういう事?」

ユーリの質問である、カトカとゾーイもうんうんと頷きつつ黒板を鳴らしている、

「んー・・・ユーリなら知っていると思うけども」

「何を?」

「ほら、魔族の霧の魔法」

「霧・・・あぁ、あれか」

「そっ、あれの応用」

「いやだって、あれはほら、結局使えねーってなって、研究もしなかったじゃない」

「少しはしただろ」

「最初だけね」

「だろ?あれで充分だよ」

「充分って・・・あんたが分析して私とソフィアで確認しただけじゃない」

「そだね」

何を言っているのやらとユーリは顔を顰めた、霧の魔法とは?とマルルース達の視線がユーリに集まる、

「あっ、えっとですね、霧の魔法ってのがありまして」

ユーリは慌てて解説する、それは大戦中に魔族が好んで使用した魔法であった、当初は目くらましとして使用しているものと考えられ、魔族と接敵した直後に使用され、その厚い煙のような霧の中を魔族は口元を覆って突っ込んでくるのが定石で、どうやらそういう戦術であったらしい、それは大戦当初は有効であったらしいのであるが、徐々に使用頻度が落ちていく、どういう事かとタロウが分析すると、その霧の魔法には鎮静化と鈍化の作用がある事が判明した、これにはタロウは目を剥いたのであるが、確かにと頷く点もあった、冒険者達には何の影響も無かったが、胸元にしがみつくミナは急に大人しくなり、さらには戦闘中にも関わらず爆睡していたのである、眠りの魔法かとやっとタロウはその目的を理解し、なるほどと納得したものである、と同時に使用されなくなったのにも得心が行った、こちら側の兵には一切その作用が効果を及ぼさなかったのであった、それも当然かもなとタロウは考える、いざ接敵し興奮状態の只中にあってたかが鎮静化と鈍化させるだけで眠りを誘発するのは困難であろう、逆に興奮状態を鎮静化し、冷静な立ち回りになった記憶がある、何だやれば出来るではないかとクロノスが上から目線で感心していた記憶もあった、魔族側としては意図しない結果を誘引しており、さらにはそれが敵に利しているとなれば廃れるのも必然であろう、もしかしたら戦闘中以外であればまだその目的に沿う事もあるであろうが、そのような状況がまず無かったのも大きいと考えられる、もしくは侵攻の始まり、家の中にいる平民を襲った時には大活躍したのかもしれないが、当時のタロウはそこまで調べる気にはならなかった、

「そう言う訳で、まぁ・・・そっか、あれか、寝ようとして寝れない時には使えるのかしら・・・戦場では使い物にならない魔法でしたね・・・」

ユーリがウーンと首を捻る、

「それ便利そうね」

マルルースが何やら考え込んでいる、

「なにかありました?」

タロウが促すと、

「えぇ、陛下がね、眠れない時がありますの」

アラッと心配そうな声が響く、

「時々ね、陛下もお酒がお好きだから、それでもね、私や姉様がやめておきなさいって止める事があるんですけど、そういう日にはね、決まって遅くまで起きてるんですのよ、眠れないとかなんとか言って、私も姉様もお酒を飲みたいだけでしょうと思うんですけど・・・お酒を飲んでも眠れない事もあるみたいで・・・」

「心労ですか・・・」

タロウがポツリと呟くと、

「そうね、そうかもしれないわね」

マルルースがフーと深く鼻息を吐き出した、タロウはそりゃそうだろうなと同情してしまう、クロノスも言っていたがやはり為政者は大変な激務である、無論その為に人を使う事もできるし、権力もある、しかし最終的な決断を求められる事が多く、想定通りの結果にならない事もまた多い、気苦労が絶える事は無い職務なのであった、

「・・・であれば・・・そうですね、その魔法をお伝えする事も出来るかと思います」

「まぁ・・・それは有難いですけど、お身体に触るものではないわよね」

「・・・その点は何とも・・・先程も申し上げました通り、こんなものかという感じで、ちゃんと研究されておりませんので・・・そうですね、今、懸念する事としては・・・癖になると問題かなと思います」

「癖ですか?」

「はい、その魔法が無いと眠れなくなる可能性がありますね・・・」

「あら、それはそれで・・・」

「はい、問題です、私の故郷にも、眠り薬というものがありまして」

「まぁ・・・それは薬なの?」

「はい、薬です、やはりこう、神経が過敏になって眠れない人に処方されるのですが、常用しますと、それが無いと眠りにくくなる、そういう風に聞いています、私は使った事は無いので何とも分からないのですが・・・なので、その魔法に関しても同じ状況になりかねないかなと思いますし、他にも影響があるかもしれません、なので・・・そうですね、使用するのはよしたほうが良いですね」

「そう・・・でも、試してみたいですけど・・・」

「お気持ちは分かります、ですが・・・うん、陛下で試すのは駄目ですね、しっかりと構造を再構築してから、他の者で治験・・・しっかりとその効果を確認した上で、安全である事を確認してから使われるのがよいかと思います」

「・・・確かに、便利であっても魔法ですもんね」

「はい、挙句魔族が戦闘で使用した魔法です」

「そうね・・・あまり気持ちの良いものではないわね・・・」

大きく頷くマルルースである、

「すいません、で、なんですが、あれを応用した形なのが麻酔になります」

と本題に戻るタロウであった。
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