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本編
72話 初雪 その39
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その頃学園となる、ユーリが研究所での実験とケイスの魔法練習、バーレントらとの打ち合わせを終えると、ケイスとエルマを連れて学園長室を訪れ、これはこれはと学園長は満面の笑みで三人を迎えた、午後も半ばを過ぎた時間である、しかし学園は未だ雑として騒々しかった、それも致し方ない、ユーリは直接関与していないが、学園は戦争に向けた医療体制の構築で忙しくしていた、事務長と医学科の講師達が中心となり、講堂はその中心施設として改築が進んでいる、そちらでは建設科の講師達がその腕を存分に揮っており、学園長室のその部屋にも講堂から響く男達の声と槌の音が響いてくる、さらに軍人の出入りも頻繁になっていた、既にモニケンダムには第六軍団とヘルデル軍、さらに明日には第二軍団も到着予定で、現在は主にその第六軍団とヘルデル軍の医療部隊が集まっていた、かつて光柱が屹立した広い修練場には中規模の天幕が立ち並び、その主をすっかりと変えてしまっている、
「お忙しい所申し訳ありません」
ユーリがさてと居住まいを正し、ケイスはいいのかなと不安そうで、エルマは急に来ても会ってもらえるものなんだと不思議そうであった、
「いやいや、構わん構わん、どれ茶でも用意しようか」
ニコニコと微笑む学園長に、夕食も近いですからとユーリは遠慮し、ケイスとエルマも小さく頷く、
「そうか、それもそうかな、では、茶も出さずで申し訳ないが、いや、儂もな、実務はすっかり事務長に任せてしまっているからのう、こうして暇をしておった、あっ、これはあれじゃ事務長には内緒だぞ、まさか学園の仕事もせずに著作に勤しんでいた等と知られては、温厚な事務長でもブチ切れてしまうからのう」
ガッハッハと笑う学園長に、まったくと微笑むユーリ、ケイスもそうなんだーと苦笑いである、
「しかし、ケイスさんはあれか、準備には呼び出されなかったのかな?」
しかし一転しハテと首を傾げる学園長、
「あっ・・・その、すいません、今日はその・・・」
ケイスは俯いてしどろもどろに答える、はっきりとは言えなかったが、今日ケイスは思いっきりさぼっていた、講師達から講堂での準備作業に医学科の生徒も参加するようにと通達があったのであるが、タロウの実験とエルマの治療の準備という事もあり、独断で寮に戻っている、無論、後に咎められる事もあるであろうが、その恐れは非常に少なかった、何せケイスはその存在を消していた間も誰にも気にされる事は無く、講師陣もいるんだかいないんだかとはっきりしない上に、どうやら授業には出ているらしいとの事で放置されていたほどに影が薄い、いや、もしかしたら同窓の生徒達からもまるで認知されていないのかもしれない、それは大変に寂しく問題であると考えられるが、ケイスは何気にそれが気楽で良かった、なにせ同窓の生徒達の多くが貴族か富裕層出身者で、さらに殆どが男性である、女性も数人いるにはいるが、全員が貴族なものだから、田舎の平民出身のケイスとしては大変に近寄り難く、また向こうもケイスの事を歯牙にもかけていない、故にケイスはその孤独である事に何の疑問も持たずに半年前までは静かに勉学に励んでいた、ソフィアが寮母として赴任するまではである、勿論ちょっとした事故で姿が見えない間も学問にはしっかりと打ち込んでいる、それしかする事が無かったと言えばそれまでであったりするが、それでも慣れてしまえば普段とさして変わりなく、逆に居心地が良いかもなと後ろ向きに考えてしまっていたりもした、いやそれは真の意味で前向きであったのかもしれないが、
「あっ・・・まぁ、学園長、まずですね」
とユーリがここはと口を挟む、オウとすぐにユーリに向き直る学園長であった、ケイスはホッと一息入れてしまう、
「エルマさんについては先日お話しした通り、で、そちらも少しばかり相談が、それは後程かな・・・先に私から、少しばかり興味深い実験と、ケイスさんの魔法、こちらが実用的な段階に来てますので、報告をと思いまして」
大変に事務的な口調のユーリである、ケイスはホヘーと感心してしまい、エルマもちゃんとすればちゃんとなるんだと大変に失礼な感想を持ってしまった、何せ二人の前ではなんともべらんめぇなユーリである、そう思われるのもまた致し方ない事であろう、
「実験?」
学園長が目を丸くして身を乗り出す、
「はい、こちらがそれをまとめたもの、明日か明後日には結果が分かるとの事で、標本でいいのかな、このバイチなるものは研究所で温めています」
「温める?」
学園長は不思議そうに首を傾げ差し出された木簡を手にした、それはカトカとサビナがまとめたものである、学園長はこれはカトカさんの字じゃな相変わらず綺麗な字だと薄く微笑み、そして、読み込むにつれ眉間に力が込められる、
「これは真か!!」
唐突にギンと顔を上げユーリを睨んだ、
「はい、タロウさんはそのように・・・」
エッと驚くケイスとエルマ、ユーリがタロウにさん付けとはと若干ズレた驚きであった、
「タロウ殿か・・・であれば、確証があっての事なのであろうな・・・いや、しかし、見えない生物・・・そのようなものが存在するのか・・・」
「そのようです、それを見えるようにする実験との事ですが・・・こちらには記しておりませんが、タロウさん曰く、酒を造っているのも酢を作るのにも、チーズを作るのにもこの見えない生物が関与しているとの事で・・・」
「なんと・・・」
学園長が再びユーリを睨みつける、
「ただし、あくまでその結果は明日か、明後日か、単純に誑かされただけかもしれませんが」
「いや、あの男の事だそれはあるまい・・・いや、確かにな、例の醸造酒、ウィスキーの折にもな似たような事は言っていたが・・・うむ、確かに興味深い、いや、しかし・・・」
学園長はフムと腕を組んで黙り込む、暖炉で薪が崩れる音が響き、講堂から響く男の声も槌の音も止んだようである、恐らく今日の作業は終了したのであろう、
「なので・・・その結果も勿論お持ちしますが、先にお話だけでもと」
「・・・そうか、ありがたい、うむ、楽しみじゃな・・・このバイチとやらは作れるのか?」
「勿論、昨日寮の生徒達と作りました、難しくは無いですね」
「そうか、で、このカンテン?が問題とな」
「はい、タロウさんはクロノス殿下にはもう伝えたとの事、向こうで量産するようにとも助言したようですが、学園長からも確認頂ければと思います」
「むー、それは難しいかな・・・いや、うん、リンド殿かアフラさんか見かけたら声を掛けておこう、いや、リンド殿はすっかり離れた筈じゃな」
「エッ、そうなんですか?」
「うむ、ほれ、タロウ殿が各地を転送陣で結んだであろう、あれの管理者として王城に常駐していると殿下自ら笑っておったからな・・・うむ、まぁそれは良い」
「そう・・・ですね、はい、では、次なんですが」
とユーリが別の木簡を取り出して学園長に差し出す、
「こちら、二つの魔法が記してあります、一つはマスイと呼ばれる技術、もう一つが治療の魔法になります」
「マスイ?」
学園長がクワッとばかりに目を見開き木簡を読み込みはじめ、ケイスは若干不安そうに肩を竦めた、
「これは・・・何とも・・・」
学園長が顔を上げ、今度はジックリとユーリを見つめると、
「・・・いつぞや聞いたな、この治療魔法は・・・」
「そう・・・でしたか?」
「うむ、その時ユーリ先生は確か・・・そうじゃ、軍に協力するのが面倒だと・・・確かそのような事を言っておったな、違ったかな?」
「あー・・・違わないですねー、確かにー」
ユーリがそういう事も言ったかなと苦笑いとなり、エッとユーリを見つめてしまうケイスとエルマである、
「まぁ・・・話しを聞く限りその気持ちはわかるからのう、儂も・・・まぁ、軍のやり方は今一つ承服しかねる点もある、故にこうして表には出ないようにしておるのだが・・・しかし、そうなると、いよいよこれを公表するのかな?」
「そうなりますね、エルマさんの治療の件はお話しした通りです、万事順調に行けば・・・いえ、そうなるように私もソフィアもタロウさんも動いておりますので、公算は高いと私は考えております」
「なるほど、その三人であれば確かに期待は出来るな、うん、エルマさんを前にしてこう言うのはいかんかもしれんが、安心して見ていられる」
ニコリとエルマに微笑む学園長、エルマも小さな会釈で応えた、
「ありがとうございます、しかし、ここで問題なのが・・・この治療の事は確実に知れ渡ると考えられます、王族は勿論なんですが、そうなるとあっという間に軍は勿論、貴族社会にも・・・と思うのですね」
「それは確かにそうじゃろうな・・・そうなると・・・うむ、各所への影響が大きいな・・・いや、なるほど、それの相談か・・・」
「はい、そうなります」
ユーリが深く頷き、学園長がフムと椅子に背を預けた、先日タロウの助言で確かにこの二つの魔法を隠匿し続ける事は難しいだろうなとユーリは結論付けた、無論、エルマに黙っていろと言う事は出来るが、そのエルマは誰でもないマルルース王妃からの紹介でここに来ている、まさかその治療の内容をマルルースに黙っていること等エルマには出来る筈も無く、マルルースに知られればそのままボニファースにも筒抜けとなり、となればそれはすぐに軍と言わず貴族社会に広く知られる事となるであろう、つまり最初から秘匿する事など不可能な案件だったのである、
「・・・ふむ・・・それで儂か・・・」
ニヤリと微笑む学園長に、ユーリはニヤリと答え、
「はい、実はなんですが、治療魔法はクロノス殿下も周知の事なのですが、こちらのマスイ魔法、こちらはまだクロノス殿下も未知の魔法となっています」
そうなんだと目を丸くするケイスとエルマ、
「ほう・・・それはまたどうして・・・」
「はい、実は私もつい先日知ったばかりでして、どうやらソフィアとタロウさんが作り上げた術式らしく、呪文を織ったのもつい先日」
「待て・・・先日?」
「はい」
「いや、呪文も無かったのか?」
「そのようです」
「・・・これはまた・・・ソフィアさんか・・・」
「ですね」
「お主もそうじゃが、またけったいな事じゃな・・・」
「その通りなんですよ、困ったものです」
「いやいや、困る事は無いが・・・しかし、そのマスイとは・・・」
と学園長が木簡を手にして再確認し、ムーと唸って首を傾げ、
「これは事実なのか?」
と顔を上げる、
「事実ですね、で、すでにケイスさんがこちらの二つの魔法を習得しております」
「なんと」
と目を丸くしてケイスを見つめてしまう学園長、ケイスは恥ずかしそうに俯いてしまい、エルマはもうと微笑んでしまった、
「実際に今日もタロウさんの腕で数度繰り返し実践して、より理解を深めています、私から見てもタロウさんから見ても実用に足るとの評価になります」
「それは凄いのう・・・いや、事情は以前聞いているが、それほどに達者な者であったか・・・」
「はい、空間魔法を得手としているのは報告しておりましたが、以降、魔力の底上げにも熱心に取り組んでおりました、この学園でも右に出る者は少ないほど・・・かと思います・・・少々褒め過ぎですかね・・・」
「そんなにか?」
学園長が驚き、それ以上に驚いてエッと顔を上げてしまうケイスである、ここ最近はユーリから魔力に関して特段指摘される事は無かった、時折強い視線を感じる事はあっても、それは談笑している時であったり、皆でギャーギャー騒いでいる時で、うるさくて怒られるのかなと子供のような心配をする事はあっても、特に気にする事はなかったのであった、無論魔力の修練は地道に続けていた、ジャネットやアニタ、パウラの協力の下それはすっかり日常の事となっており、最近ではそこにルルも加わり、その四人もまた魔法の腕を着実に上げていたりする、
「はい、なので、明後日からのエルマさんの治療はケイスさんを中心にと考えておりました、無論、私もタロウさんも付き添いますし、ソフィアも同様に、エルマさんもその点同意いただいております」
「そう・・・か、いや、素晴らしい・・・その治療、儂も立ち会わせてもらう事は可能か?」
「勿論です、逆にそれをお願いに来た次第」
「ありがたい、大変に光栄な事じゃ、ケイスさん、エルマさん、協力頂き感謝する」
学園長の満面の笑み、ケイスは私は別にと俯いてしまい、エルマもまた、あくまで私は患者でしかないと小首を傾げただけで応えとした、
「そこでなんですが・・・」
とユーリはやっと今日の本題を切り出した、
「学園長は勿論なのですが、医学科の講師を一人か二人、立ち会って欲しいと思うのです」
「ムッ・・・確かにそうじゃな・・・うん、そうじゃ、これは医学の大きな進歩になろう、タロウ殿も関与しているとなれば・・・うん、軍も黙ってはおるまい」
「そうですね、ですが、明後日は取り合えず学園内で、治療は数日を予定しております、少しずつ進めていく予定でした、なので、まずは学園関係者から・・・と考えております」
「なるほど、そういう事か、となると・・・」
ウーンと学園長は首を捻る、医学科の講師達の顔を思い浮かべ、どうしたものかと顎先をかいた、医学科の講師達は貴族出身者が多く、それ故に派閥に属している者が多い、すると当然のようにそれらの派閥を毛嫌いしている学園長とは距離があり、学園長と気の合う講師が少ないのである、そしてユーリの言う通り寮の規模を考えれば一人か二人を検証として立ち会う程度にしておかないと治療どころでは無い事も予想出来た、単純に狭いだろうとの懸念である、また、ケイスの扱いにも気を付ける必要が生じるであろう、その実力を目にすれば取り込もうとする者や、最悪の場合にはその功績を奪おうとする者も現れる、そうなるとある程度こちらの事情を理解して上手く立ち回り、ケイスの後見人として睨みを利かせる者が欲しくなる、自分やユーリであれば何とでもなるのであるが、一生徒であるケイスがその中心となるとなれば、その保全が第一だなと問題点を看破する学園長であった、
「・・・うん、では・・・」
と学園長が数名の名を出し、ケイスにどの講師が良いかなと問いかける、エッとケイスは顔を上げた、その顔にはありありと自分が選ぶのかとの疑問が見てとれる、
「難しいかな?」
「・・・はい、すいません、その、皆さん立派な先生達なので・・・」
「それもそうじゃな、では、人選は一任して欲しい、明後日じゃな?」
「はい、午後からを予定しております」
「わかった、そのようにこちらも動く」
「お願いします」
ユーリがゆっくりと頷くと、
「では、次なんですが、エルマさんの幼児教育の・・・相談ですね、エルマさん」
ハイとエルマは若干掠れた声を上げ、実はと静かに切り出した。
「お忙しい所申し訳ありません」
ユーリがさてと居住まいを正し、ケイスはいいのかなと不安そうで、エルマは急に来ても会ってもらえるものなんだと不思議そうであった、
「いやいや、構わん構わん、どれ茶でも用意しようか」
ニコニコと微笑む学園長に、夕食も近いですからとユーリは遠慮し、ケイスとエルマも小さく頷く、
「そうか、それもそうかな、では、茶も出さずで申し訳ないが、いや、儂もな、実務はすっかり事務長に任せてしまっているからのう、こうして暇をしておった、あっ、これはあれじゃ事務長には内緒だぞ、まさか学園の仕事もせずに著作に勤しんでいた等と知られては、温厚な事務長でもブチ切れてしまうからのう」
ガッハッハと笑う学園長に、まったくと微笑むユーリ、ケイスもそうなんだーと苦笑いである、
「しかし、ケイスさんはあれか、準備には呼び出されなかったのかな?」
しかし一転しハテと首を傾げる学園長、
「あっ・・・その、すいません、今日はその・・・」
ケイスは俯いてしどろもどろに答える、はっきりとは言えなかったが、今日ケイスは思いっきりさぼっていた、講師達から講堂での準備作業に医学科の生徒も参加するようにと通達があったのであるが、タロウの実験とエルマの治療の準備という事もあり、独断で寮に戻っている、無論、後に咎められる事もあるであろうが、その恐れは非常に少なかった、何せケイスはその存在を消していた間も誰にも気にされる事は無く、講師陣もいるんだかいないんだかとはっきりしない上に、どうやら授業には出ているらしいとの事で放置されていたほどに影が薄い、いや、もしかしたら同窓の生徒達からもまるで認知されていないのかもしれない、それは大変に寂しく問題であると考えられるが、ケイスは何気にそれが気楽で良かった、なにせ同窓の生徒達の多くが貴族か富裕層出身者で、さらに殆どが男性である、女性も数人いるにはいるが、全員が貴族なものだから、田舎の平民出身のケイスとしては大変に近寄り難く、また向こうもケイスの事を歯牙にもかけていない、故にケイスはその孤独である事に何の疑問も持たずに半年前までは静かに勉学に励んでいた、ソフィアが寮母として赴任するまではである、勿論ちょっとした事故で姿が見えない間も学問にはしっかりと打ち込んでいる、それしかする事が無かったと言えばそれまでであったりするが、それでも慣れてしまえば普段とさして変わりなく、逆に居心地が良いかもなと後ろ向きに考えてしまっていたりもした、いやそれは真の意味で前向きであったのかもしれないが、
「あっ・・・まぁ、学園長、まずですね」
とユーリがここはと口を挟む、オウとすぐにユーリに向き直る学園長であった、ケイスはホッと一息入れてしまう、
「エルマさんについては先日お話しした通り、で、そちらも少しばかり相談が、それは後程かな・・・先に私から、少しばかり興味深い実験と、ケイスさんの魔法、こちらが実用的な段階に来てますので、報告をと思いまして」
大変に事務的な口調のユーリである、ケイスはホヘーと感心してしまい、エルマもちゃんとすればちゃんとなるんだと大変に失礼な感想を持ってしまった、何せ二人の前ではなんともべらんめぇなユーリである、そう思われるのもまた致し方ない事であろう、
「実験?」
学園長が目を丸くして身を乗り出す、
「はい、こちらがそれをまとめたもの、明日か明後日には結果が分かるとの事で、標本でいいのかな、このバイチなるものは研究所で温めています」
「温める?」
学園長は不思議そうに首を傾げ差し出された木簡を手にした、それはカトカとサビナがまとめたものである、学園長はこれはカトカさんの字じゃな相変わらず綺麗な字だと薄く微笑み、そして、読み込むにつれ眉間に力が込められる、
「これは真か!!」
唐突にギンと顔を上げユーリを睨んだ、
「はい、タロウさんはそのように・・・」
エッと驚くケイスとエルマ、ユーリがタロウにさん付けとはと若干ズレた驚きであった、
「タロウ殿か・・・であれば、確証があっての事なのであろうな・・・いや、しかし、見えない生物・・・そのようなものが存在するのか・・・」
「そのようです、それを見えるようにする実験との事ですが・・・こちらには記しておりませんが、タロウさん曰く、酒を造っているのも酢を作るのにも、チーズを作るのにもこの見えない生物が関与しているとの事で・・・」
「なんと・・・」
学園長が再びユーリを睨みつける、
「ただし、あくまでその結果は明日か、明後日か、単純に誑かされただけかもしれませんが」
「いや、あの男の事だそれはあるまい・・・いや、確かにな、例の醸造酒、ウィスキーの折にもな似たような事は言っていたが・・・うむ、確かに興味深い、いや、しかし・・・」
学園長はフムと腕を組んで黙り込む、暖炉で薪が崩れる音が響き、講堂から響く男の声も槌の音も止んだようである、恐らく今日の作業は終了したのであろう、
「なので・・・その結果も勿論お持ちしますが、先にお話だけでもと」
「・・・そうか、ありがたい、うむ、楽しみじゃな・・・このバイチとやらは作れるのか?」
「勿論、昨日寮の生徒達と作りました、難しくは無いですね」
「そうか、で、このカンテン?が問題とな」
「はい、タロウさんはクロノス殿下にはもう伝えたとの事、向こうで量産するようにとも助言したようですが、学園長からも確認頂ければと思います」
「むー、それは難しいかな・・・いや、うん、リンド殿かアフラさんか見かけたら声を掛けておこう、いや、リンド殿はすっかり離れた筈じゃな」
「エッ、そうなんですか?」
「うむ、ほれ、タロウ殿が各地を転送陣で結んだであろう、あれの管理者として王城に常駐していると殿下自ら笑っておったからな・・・うむ、まぁそれは良い」
「そう・・・ですね、はい、では、次なんですが」
とユーリが別の木簡を取り出して学園長に差し出す、
「こちら、二つの魔法が記してあります、一つはマスイと呼ばれる技術、もう一つが治療の魔法になります」
「マスイ?」
学園長がクワッとばかりに目を見開き木簡を読み込みはじめ、ケイスは若干不安そうに肩を竦めた、
「これは・・・何とも・・・」
学園長が顔を上げ、今度はジックリとユーリを見つめると、
「・・・いつぞや聞いたな、この治療魔法は・・・」
「そう・・・でしたか?」
「うむ、その時ユーリ先生は確か・・・そうじゃ、軍に協力するのが面倒だと・・・確かそのような事を言っておったな、違ったかな?」
「あー・・・違わないですねー、確かにー」
ユーリがそういう事も言ったかなと苦笑いとなり、エッとユーリを見つめてしまうケイスとエルマである、
「まぁ・・・話しを聞く限りその気持ちはわかるからのう、儂も・・・まぁ、軍のやり方は今一つ承服しかねる点もある、故にこうして表には出ないようにしておるのだが・・・しかし、そうなると、いよいよこれを公表するのかな?」
「そうなりますね、エルマさんの治療の件はお話しした通りです、万事順調に行けば・・・いえ、そうなるように私もソフィアもタロウさんも動いておりますので、公算は高いと私は考えております」
「なるほど、その三人であれば確かに期待は出来るな、うん、エルマさんを前にしてこう言うのはいかんかもしれんが、安心して見ていられる」
ニコリとエルマに微笑む学園長、エルマも小さな会釈で応えた、
「ありがとうございます、しかし、ここで問題なのが・・・この治療の事は確実に知れ渡ると考えられます、王族は勿論なんですが、そうなるとあっという間に軍は勿論、貴族社会にも・・・と思うのですね」
「それは確かにそうじゃろうな・・・そうなると・・・うむ、各所への影響が大きいな・・・いや、なるほど、それの相談か・・・」
「はい、そうなります」
ユーリが深く頷き、学園長がフムと椅子に背を預けた、先日タロウの助言で確かにこの二つの魔法を隠匿し続ける事は難しいだろうなとユーリは結論付けた、無論、エルマに黙っていろと言う事は出来るが、そのエルマは誰でもないマルルース王妃からの紹介でここに来ている、まさかその治療の内容をマルルースに黙っていること等エルマには出来る筈も無く、マルルースに知られればそのままボニファースにも筒抜けとなり、となればそれはすぐに軍と言わず貴族社会に広く知られる事となるであろう、つまり最初から秘匿する事など不可能な案件だったのである、
「・・・ふむ・・・それで儂か・・・」
ニヤリと微笑む学園長に、ユーリはニヤリと答え、
「はい、実はなんですが、治療魔法はクロノス殿下も周知の事なのですが、こちらのマスイ魔法、こちらはまだクロノス殿下も未知の魔法となっています」
そうなんだと目を丸くするケイスとエルマ、
「ほう・・・それはまたどうして・・・」
「はい、実は私もつい先日知ったばかりでして、どうやらソフィアとタロウさんが作り上げた術式らしく、呪文を織ったのもつい先日」
「待て・・・先日?」
「はい」
「いや、呪文も無かったのか?」
「そのようです」
「・・・これはまた・・・ソフィアさんか・・・」
「ですね」
「お主もそうじゃが、またけったいな事じゃな・・・」
「その通りなんですよ、困ったものです」
「いやいや、困る事は無いが・・・しかし、そのマスイとは・・・」
と学園長が木簡を手にして再確認し、ムーと唸って首を傾げ、
「これは事実なのか?」
と顔を上げる、
「事実ですね、で、すでにケイスさんがこちらの二つの魔法を習得しております」
「なんと」
と目を丸くしてケイスを見つめてしまう学園長、ケイスは恥ずかしそうに俯いてしまい、エルマはもうと微笑んでしまった、
「実際に今日もタロウさんの腕で数度繰り返し実践して、より理解を深めています、私から見てもタロウさんから見ても実用に足るとの評価になります」
「それは凄いのう・・・いや、事情は以前聞いているが、それほどに達者な者であったか・・・」
「はい、空間魔法を得手としているのは報告しておりましたが、以降、魔力の底上げにも熱心に取り組んでおりました、この学園でも右に出る者は少ないほど・・・かと思います・・・少々褒め過ぎですかね・・・」
「そんなにか?」
学園長が驚き、それ以上に驚いてエッと顔を上げてしまうケイスである、ここ最近はユーリから魔力に関して特段指摘される事は無かった、時折強い視線を感じる事はあっても、それは談笑している時であったり、皆でギャーギャー騒いでいる時で、うるさくて怒られるのかなと子供のような心配をする事はあっても、特に気にする事はなかったのであった、無論魔力の修練は地道に続けていた、ジャネットやアニタ、パウラの協力の下それはすっかり日常の事となっており、最近ではそこにルルも加わり、その四人もまた魔法の腕を着実に上げていたりする、
「はい、なので、明後日からのエルマさんの治療はケイスさんを中心にと考えておりました、無論、私もタロウさんも付き添いますし、ソフィアも同様に、エルマさんもその点同意いただいております」
「そう・・・か、いや、素晴らしい・・・その治療、儂も立ち会わせてもらう事は可能か?」
「勿論です、逆にそれをお願いに来た次第」
「ありがたい、大変に光栄な事じゃ、ケイスさん、エルマさん、協力頂き感謝する」
学園長の満面の笑み、ケイスは私は別にと俯いてしまい、エルマもまた、あくまで私は患者でしかないと小首を傾げただけで応えとした、
「そこでなんですが・・・」
とユーリはやっと今日の本題を切り出した、
「学園長は勿論なのですが、医学科の講師を一人か二人、立ち会って欲しいと思うのです」
「ムッ・・・確かにそうじゃな・・・うん、そうじゃ、これは医学の大きな進歩になろう、タロウ殿も関与しているとなれば・・・うん、軍も黙ってはおるまい」
「そうですね、ですが、明後日は取り合えず学園内で、治療は数日を予定しております、少しずつ進めていく予定でした、なので、まずは学園関係者から・・・と考えております」
「なるほど、そういう事か、となると・・・」
ウーンと学園長は首を捻る、医学科の講師達の顔を思い浮かべ、どうしたものかと顎先をかいた、医学科の講師達は貴族出身者が多く、それ故に派閥に属している者が多い、すると当然のようにそれらの派閥を毛嫌いしている学園長とは距離があり、学園長と気の合う講師が少ないのである、そしてユーリの言う通り寮の規模を考えれば一人か二人を検証として立ち会う程度にしておかないと治療どころでは無い事も予想出来た、単純に狭いだろうとの懸念である、また、ケイスの扱いにも気を付ける必要が生じるであろう、その実力を目にすれば取り込もうとする者や、最悪の場合にはその功績を奪おうとする者も現れる、そうなるとある程度こちらの事情を理解して上手く立ち回り、ケイスの後見人として睨みを利かせる者が欲しくなる、自分やユーリであれば何とでもなるのであるが、一生徒であるケイスがその中心となるとなれば、その保全が第一だなと問題点を看破する学園長であった、
「・・・うん、では・・・」
と学園長が数名の名を出し、ケイスにどの講師が良いかなと問いかける、エッとケイスは顔を上げた、その顔にはありありと自分が選ぶのかとの疑問が見てとれる、
「難しいかな?」
「・・・はい、すいません、その、皆さん立派な先生達なので・・・」
「それもそうじゃな、では、人選は一任して欲しい、明後日じゃな?」
「はい、午後からを予定しております」
「わかった、そのようにこちらも動く」
「お願いします」
ユーリがゆっくりと頷くと、
「では、次なんですが、エルマさんの幼児教育の・・・相談ですね、エルマさん」
ハイとエルマは若干掠れた声を上げ、実はと静かに切り出した。
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アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
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⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』
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追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
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ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
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※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
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