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本編
75話 茶店にて その18
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「はーるよこい、はーやくこい」
「元気でおしゃまなミナちゃんとー」
「明るい笑顔のノールちゃんー」
「いたずら大好きノーラもねー」
「静かでかしこいサスキアもー」
「しっかりさーんのフロールとー」
「カミトリ大好きブロースがー」
「かわいいサンダル胸に抱きー」
「お外に出たいと待っているー」
「出てるけどー」
「寒いけどー」
「あっニャンコだー」
だだっと走り出すミナ、ノールとノーラもネコだーと叫び、つられて走り出すサスキア、負けるかとブロースも追いかけ、フロールもウーと悩んで結局走り出した、ソフィアとエルマは元気だわねーと柔らかく微笑み、レインはまったくと呆れ顔である、午前の中頃、9人は連れ立って街に繰り出した、商会の新店舗に招かれた為である、今日は関係者へのお披露目との事で、寮に集まった子供達も勉強どころでは無かった、フロールとブロースがお母さんを手伝ったとか、おっきいお兄さんがいるだとか、料理が美味しかっただとかと自慢話を始めてしまい、いいなーと囃し立てるミナにノールにノーラ、サスキアもまるで集中出来ていない様子で、これは駄目だなとエルマは早々に諦め、取り合えず昨晩タロウが披露した新しい折り紙で時間を潰し、ソフィアの掃除が終わった頃合いで揃って街に出てきた次第となる、しかして子供達は外出だ、新しいお店だとはしゃぎまくり、ミナが機嫌よく歌い出したところ大合唱となって、街行く人が何事だと振り返る有様で、ソフィアは止めるべきかと考えるも、まぁ、子供達が騒がしいのは当然の事で、振り返った人々は優しい笑顔を浮かべているように見えた、迷惑でなければいいかなと好きにさせる事にした、折角の外出でもある、すると、
「あっ、皆さんおはようございます」
一行が向かう先から見慣れた顔が近づいてくる、ミーンであった、
「あっ、ミーンだー」
「ミーンだー」
「にゃんこはー?」
「どっかいったー」
「あっいたー」
「待てー」
とミーンのすぐ隣りをはやてのごとく駆け抜ける子供達、この寒さの中でも元気だなーとミーンは振り返ってしまう、しかし子供達はすぐに足を止めて路地の方を伺っている、恐らくそちらへ猫が逃げ込んだのだろう、ニャンコーとか、ひげをきれーとか、おりといでーとかどっかで聞いた言葉を叫ぶ子供達、
「もう・・・まったく、無駄に元気なんだから」
ソフィアとエルマとレインがミーンのすぐ側で足を止めた、おはようございますと挨拶を交わす4人、
「どうしたのミーンさん、お店じゃないの?」
ソフィアが当然の疑問を口にする、昨日もそうであるが今日も忙しい筈で、見ればミーンも今日は朝から新たにあつらえたメイド服姿であった、
「はい、私はほら事務所のお留守番なんです」
ニコリと微笑むミーン、
「お留守番?」
「はい、奥様達は子供さんを連れてきますので難しくて、マフダさんとかカチャーさんとかの代わりで」
「あー、そういう事かー、そりゃそうよねー」
とソフィアは大袈裟に感心してしまう、寮でも留守番を研究所に頼んでいた、サビナが快く引き受け食堂に下りてきている、
「ですねー、ほら、事務所を空にする訳には行かなくて」
「確かにね」
エルマも優しく微笑む、
「そういう事です」
ミーンがニコリと微笑み小さく会釈をして足早に事務所に向かった、ミーンとしては事務所の留守番とは言っても正直勝手が分からなかったが、頻繁に事務所に出入りする業者の多くがもうすでに店舗に顔を出しており、テラ曰く大した事はないだろうけど一応ねとの事で、であれば少しのんびりできるかなと怠ける気満々のミーンであったりする、もしかしたら噂になっている新作の衣装も見れるかもしれず、それも楽しみにしていたりもした、
「ミーンさんも大変だわねー」
ソフィアがその背を見送り、
「ですねー、あっ、研究所の人達はいいんですか?」
エルマが聞いていなかったなと確認しながら歩き出す、
「大丈夫よ、ユーリが戻ったら行くって言ってたし、正午迄には私も戻るしね」
「もう・・・それではゆっくりできないでしょう、ソフィアさんが」
「私はいいの、ゆっくりするなら慣れた場所の方が気楽で良いからねー」
カラカラと笑うソフィア、すぐに、
「ほら、そっちじゃないわよ」
と子供達に声をかけると、ハーイと素直に戻ってくる子供達、猫を追って路地に入ろうとしている所で、その先頭になっているのがミナである、腰に縄でも括っておこうかしらと思うソフィア、そうしてワイワイと騒ぎながら件の店舗に到着すると、
「来たー」
ダダットミナとブロースが駆け込み、
「いらっしゃい」
出迎えたのはティルである、
「ティルだー、さっきミーンにあったー」
ミナがピョンと飛び跳ね、
「カーチャンいたー」
ブロースが厨房に駆け寄る、
「いたわよー」
ニコリと微笑むティルと、おっ来たなと振り返るマンネル、
「おっきーお兄さんもいたー、何やってるのー?」
「なにって、見ての通りお仕事だ」
微笑み返すマンネルに、なにーなにーと聞き返すブロース、さらにノールとノーラ、フロールも駆けつけ、
「ホントだー、おっきいおっちゃんだー」
「ねー、おっきいでしょー」
「うん、タロウさんよりおっきー」
とはしゃぎだす女児達に、恥ずかしそうに微笑むマンネル、こらお兄さんよと嗜めるフェナ、ミナも駆け寄り、
「誰ー、おっちゃん誰ー」
と大騒ぎである、そこへ、
「こら、邪魔しちゃ駄目よ」
ソフィアがミナの頭を押さえつけ、エルマも一際うるさそうなブロースの肩を押さえた、ムッと見上げる二人、
「お世話になってます」
フェナが二人に頭を下げ、マンネルはハテ?と首を傾げる、すぐにフェナが子供達の先生とタロウさんの奥様である事を告げると、
「あっ、これは失礼を、大変お世話になっております、マンネルです」
丁寧にお辞儀をするマンネル、ソフィアとエルマがはい、聞いてますよと笑顔で返した、
「フフッ、そうだ、昨日の油料理もお二人が調理されたのでしょ?」
早速とソフィアが話題を提供する、エルマもあれは美味しかったですと続けたようで、そんなそんなと恐縮しつつも料理談義にしゃれこむ4人、子供達はむーとそんな大人達を見上げ急速に興味を失ったようで、スッと振り返り、アッと叫んで輪から抜け出した、そして、
「ニコ先生、なにやってるのー」
と新たな標的を見つけたようである、
「ミナちゃんいらっしゃい」
一階の暖炉の脇、小物が並ぶ商品棚の向かって反対側にニコリーネがちょこんと椅子に座っており、その傍らのテーブルには画材が並んでいる、そしてその壁には数枚の肖像画が飾られ、値札も表示されていた、
「えへへー、みんなで来たのー、寒かったー」
「そっかー、寒かったかー」
「そうなのー、あっ、ニャンコがいたのー、白黒ニャンコー、すぐ逃げたー」
「ありゃ、ミナちゃんが追いかけるからでしょ」
「そうなのー、速かったー、かわいかったー、睨んでたー」
キャッキャッと笑い合う二人、レインがスッとミナの隣りに立ち、
「ほう、ここでもやるのか・・・」
と値札を見つめる、
「そうなのよー、外は寒いからねー、エレインさんとテラさんがもし良ければって言ってくれてー」
ニコニコと微笑むニコリーネ、どうやらこの一角がニコリーネの肖像画描きの出店になるらしい、その言葉の通り、エレインとテラに誘われたためで、二人は暖炉と階段に挟まれた商品棚を置くには物足りず、しかしテーブルを奥にも微妙に邪魔くさいその小さな空間をどうしようかと思案し、アッと思いだしたのがニコリーネであった、肖像画を描くには丁度良いであろうと思い立ち、早速とニコリーネに相談してみればそれは嬉しいですとニコリーネは素直に受けている、ニコリーネ自身も作業部屋での創作に煮詰まっていた所で、さらにこの店の近くにはこの街でも希少な画材を取り扱う店もあり、ニコリーネとしてはそちらを覗くのにもうってつけであったのだ、
「ふむ・・・悪くないだろうな・・・」
レインはチラリと店内を見渡す、一階では従業員の奥様とその子供達がワイワイと楽しそうで、商品棚を眺めたり手にした蒸しパンを嬉しそうに頬張っている、そこへ、
「あら、いらっしゃい」
テラがスッと階段から下りて来た、
「テラだー」
ミナが大声を上げ、ソフィアがすぐに気付いてコラッと遠くから叱りつけるも聞き入れるミナではない、テラだテラだとなにが嬉しいんだか飛び跳ねる始末、これは少し落ち着かせなければとソフィアが近寄る、
「フフッ、ようこそソフィアさん、エルマさんも」
ミナを適当にあしらいつつ笑顔を見せるテラ、
「ごめんねー、もう、この子は、はしゃいじゃってー」
ソフィアがミナの頭を押さえつけ、グニューと呻くミナ、グニューってと微笑むニコリーネと何だそれはと睨むレイン、
「いつもの事じゃないですか、ミナちゃんらしくていいですよ、あっ、じゃ、そうですね、先に三階を見てみます?エルマ先生にもソフィアさんにも見て欲しかったんです、あと子供達にも」
「あっ、言ってたわね、勉強部屋?」
「そのつもりです、黒板とかも新しいのが入ってますから、是非どうぞ」
テラが微笑みつつ階段を上り、エルマが、
「ほら皆さん、三階に行きますよ」
と子供達に声をかけた、ノール達はそれぞれに店の中を見て回っていたようで、ただサスキアだけは不安そうにエルマの裾を掴んで離さなかった、この店に入ってからも一言も発しておらず、街中では他の子同様に歌を歌って駆け回っていた為、サスキアらしい人見知りが発動してしまっているのであろう、
「はーい」
子供達が続々と集まりそのまま階段を上がる、二階の喫茶室には出入り業者と従業員の奥様達が歓談中のようで、ソフィアを見かけた数人がアッと顔を上げ、
「ソフィアさんだ、お疲れ様です」
ブノワトとコッキーがヒョイと腰を上げ、アンベルが小さく会釈をする、ブラスやバーレント、リノルトも振り返り笑顔を浮かべた、さらに見ればエレインが接客中のようで、そのテーブルにはいかにも有力者然とした男達と事務員らしき女性が楽しそうに笑っている、
「あら、早速来たのねー」
ニコリと微笑み返すソフィア、
「そうなんですよー、このお店いいですねー」
とブノワトとコッキーがソフィアに駆け寄り、テラが足を止めた、
「そうなの?」
「はい、テラさんに聞きました、またタロウさんの発案だって」
「あー・・・そうだけどほら、お店を作ったのはエレインさんとかテラさんなんだし・・・あっ、ゴメンね先に上を見てから、お話しはゆっくりとね」
テラの手前やんわりと二人を拒絶するソフィア、あっそうですねと素直に引き下がる二人である、そしてテラと共に三階に入ると、
「わっ、良い感じねー」
ソフィアは思わず呟き、
「ですねー、本格的な教室になってます・・・」
エルマも目を丸くしてしまった、
「そうですね、黒板を置いて机を並べ変えただけなんですが、教室はやっぱりこうでないとって会長が妙に拘ってしまって」
テラがニコリと振り返る、
「ワッ、広ーい」
ミナがテラの脇をサッと潜り抜け駆け出してしまい、勿論それに続くブロース、フロールがコラッと叱るも止まる事は無く、
「すげー、飛ばしていい?飛ばしたい」
と懐に手を入れるブロースである、紙飛行機の事であろう、さらにコラーとフロールが叫ぶ、ブーと膨れるブロース、実際にその部屋は広かった、そうは言っても階下の構造を考えれば二階の喫茶室とほぼ同じ大きさでしかない、人が居らず整然と並んだテーブルと椅子だけのその部屋は広く感じるのであろう、さらに良い点として階下の暖気が三階に上がってきており、この部屋の暖炉に火は入ってなかったが、心地良い暖かさに保たれている様子であった、惜しむらくはその部屋の暗さであろうか、ガラス窓で明るい二階から上がって来るとその差がより顕著に感じられ、なんとも陰鬱に感じるほどに暗い、しかし王国民にとっては室内とはそういうものである、木窓を開ければそれで良いし、しかし木窓を開けると暖炉に火が欲しいかなとエルマはキョロキョロと室内を見渡す、
「へー・・・そっかー、流石エレインさんねー」
「ですねー・・・あの本当にいいんですか?」
エルマが心配そうにテラに問いかけてしまう、
「良いも何も会長としても私としても、何より従業員の事を考えれば大変に有効な事業と考えていますから、エルマ先生にはこれからもっと頑張っていただかないとって思ってますよ」
フフンと微笑むテラ、エルマは随分と期待されているのだなとその意気を再確認する、テラとは毎晩のように話し込んでいたりするが、正直どこまでやれるかどこまで本気なのか掴みかねてもいたのだ、それがこうしてしっかりとした場所を提供されるとなればいよいよエルマも真面目に取り組まなければならないと心持ちを新たにしてしまう、
「そうねー、ずーっと言ってたからねー」
ソフィアがソッと足を進め近場の長テーブルに手を置いた、
「ですね、会長の悲願・・・って程ではないですけどね、あっ、ここの家具はほら、前のお店のをそのまま使ってますので、少しばかり年季が気になりますけどね」
「何言ってるの、子供達には上等過ぎるわよ」
「ですね・・・あの少し見て回っても良いですか?」
「勿論です、じゃ、あれですね、こっち側の部屋なんですが・・・」
とテラがソフィアとエルマを案内し始める、ノール達も教室内に雪崩れ込んだ、大人達についていくのはエルマの裾を掴んで離さないサスキアと、まぁ悪くは無いのだろうなと厳しい目つきのレインである、遠慮無くドタバタと駆け回る子供達、ソフィアは振り返り、これは下のお客様に迷惑になるかもなと片眉を上げるのであった。
「元気でおしゃまなミナちゃんとー」
「明るい笑顔のノールちゃんー」
「いたずら大好きノーラもねー」
「静かでかしこいサスキアもー」
「しっかりさーんのフロールとー」
「カミトリ大好きブロースがー」
「かわいいサンダル胸に抱きー」
「お外に出たいと待っているー」
「出てるけどー」
「寒いけどー」
「あっニャンコだー」
だだっと走り出すミナ、ノールとノーラもネコだーと叫び、つられて走り出すサスキア、負けるかとブロースも追いかけ、フロールもウーと悩んで結局走り出した、ソフィアとエルマは元気だわねーと柔らかく微笑み、レインはまったくと呆れ顔である、午前の中頃、9人は連れ立って街に繰り出した、商会の新店舗に招かれた為である、今日は関係者へのお披露目との事で、寮に集まった子供達も勉強どころでは無かった、フロールとブロースがお母さんを手伝ったとか、おっきいお兄さんがいるだとか、料理が美味しかっただとかと自慢話を始めてしまい、いいなーと囃し立てるミナにノールにノーラ、サスキアもまるで集中出来ていない様子で、これは駄目だなとエルマは早々に諦め、取り合えず昨晩タロウが披露した新しい折り紙で時間を潰し、ソフィアの掃除が終わった頃合いで揃って街に出てきた次第となる、しかして子供達は外出だ、新しいお店だとはしゃぎまくり、ミナが機嫌よく歌い出したところ大合唱となって、街行く人が何事だと振り返る有様で、ソフィアは止めるべきかと考えるも、まぁ、子供達が騒がしいのは当然の事で、振り返った人々は優しい笑顔を浮かべているように見えた、迷惑でなければいいかなと好きにさせる事にした、折角の外出でもある、すると、
「あっ、皆さんおはようございます」
一行が向かう先から見慣れた顔が近づいてくる、ミーンであった、
「あっ、ミーンだー」
「ミーンだー」
「にゃんこはー?」
「どっかいったー」
「あっいたー」
「待てー」
とミーンのすぐ隣りをはやてのごとく駆け抜ける子供達、この寒さの中でも元気だなーとミーンは振り返ってしまう、しかし子供達はすぐに足を止めて路地の方を伺っている、恐らくそちらへ猫が逃げ込んだのだろう、ニャンコーとか、ひげをきれーとか、おりといでーとかどっかで聞いた言葉を叫ぶ子供達、
「もう・・・まったく、無駄に元気なんだから」
ソフィアとエルマとレインがミーンのすぐ側で足を止めた、おはようございますと挨拶を交わす4人、
「どうしたのミーンさん、お店じゃないの?」
ソフィアが当然の疑問を口にする、昨日もそうであるが今日も忙しい筈で、見ればミーンも今日は朝から新たにあつらえたメイド服姿であった、
「はい、私はほら事務所のお留守番なんです」
ニコリと微笑むミーン、
「お留守番?」
「はい、奥様達は子供さんを連れてきますので難しくて、マフダさんとかカチャーさんとかの代わりで」
「あー、そういう事かー、そりゃそうよねー」
とソフィアは大袈裟に感心してしまう、寮でも留守番を研究所に頼んでいた、サビナが快く引き受け食堂に下りてきている、
「ですねー、ほら、事務所を空にする訳には行かなくて」
「確かにね」
エルマも優しく微笑む、
「そういう事です」
ミーンがニコリと微笑み小さく会釈をして足早に事務所に向かった、ミーンとしては事務所の留守番とは言っても正直勝手が分からなかったが、頻繁に事務所に出入りする業者の多くがもうすでに店舗に顔を出しており、テラ曰く大した事はないだろうけど一応ねとの事で、であれば少しのんびりできるかなと怠ける気満々のミーンであったりする、もしかしたら噂になっている新作の衣装も見れるかもしれず、それも楽しみにしていたりもした、
「ミーンさんも大変だわねー」
ソフィアがその背を見送り、
「ですねー、あっ、研究所の人達はいいんですか?」
エルマが聞いていなかったなと確認しながら歩き出す、
「大丈夫よ、ユーリが戻ったら行くって言ってたし、正午迄には私も戻るしね」
「もう・・・それではゆっくりできないでしょう、ソフィアさんが」
「私はいいの、ゆっくりするなら慣れた場所の方が気楽で良いからねー」
カラカラと笑うソフィア、すぐに、
「ほら、そっちじゃないわよ」
と子供達に声をかけると、ハーイと素直に戻ってくる子供達、猫を追って路地に入ろうとしている所で、その先頭になっているのがミナである、腰に縄でも括っておこうかしらと思うソフィア、そうしてワイワイと騒ぎながら件の店舗に到着すると、
「来たー」
ダダットミナとブロースが駆け込み、
「いらっしゃい」
出迎えたのはティルである、
「ティルだー、さっきミーンにあったー」
ミナがピョンと飛び跳ね、
「カーチャンいたー」
ブロースが厨房に駆け寄る、
「いたわよー」
ニコリと微笑むティルと、おっ来たなと振り返るマンネル、
「おっきーお兄さんもいたー、何やってるのー?」
「なにって、見ての通りお仕事だ」
微笑み返すマンネルに、なにーなにーと聞き返すブロース、さらにノールとノーラ、フロールも駆けつけ、
「ホントだー、おっきいおっちゃんだー」
「ねー、おっきいでしょー」
「うん、タロウさんよりおっきー」
とはしゃぎだす女児達に、恥ずかしそうに微笑むマンネル、こらお兄さんよと嗜めるフェナ、ミナも駆け寄り、
「誰ー、おっちゃん誰ー」
と大騒ぎである、そこへ、
「こら、邪魔しちゃ駄目よ」
ソフィアがミナの頭を押さえつけ、エルマも一際うるさそうなブロースの肩を押さえた、ムッと見上げる二人、
「お世話になってます」
フェナが二人に頭を下げ、マンネルはハテ?と首を傾げる、すぐにフェナが子供達の先生とタロウさんの奥様である事を告げると、
「あっ、これは失礼を、大変お世話になっております、マンネルです」
丁寧にお辞儀をするマンネル、ソフィアとエルマがはい、聞いてますよと笑顔で返した、
「フフッ、そうだ、昨日の油料理もお二人が調理されたのでしょ?」
早速とソフィアが話題を提供する、エルマもあれは美味しかったですと続けたようで、そんなそんなと恐縮しつつも料理談義にしゃれこむ4人、子供達はむーとそんな大人達を見上げ急速に興味を失ったようで、スッと振り返り、アッと叫んで輪から抜け出した、そして、
「ニコ先生、なにやってるのー」
と新たな標的を見つけたようである、
「ミナちゃんいらっしゃい」
一階の暖炉の脇、小物が並ぶ商品棚の向かって反対側にニコリーネがちょこんと椅子に座っており、その傍らのテーブルには画材が並んでいる、そしてその壁には数枚の肖像画が飾られ、値札も表示されていた、
「えへへー、みんなで来たのー、寒かったー」
「そっかー、寒かったかー」
「そうなのー、あっ、ニャンコがいたのー、白黒ニャンコー、すぐ逃げたー」
「ありゃ、ミナちゃんが追いかけるからでしょ」
「そうなのー、速かったー、かわいかったー、睨んでたー」
キャッキャッと笑い合う二人、レインがスッとミナの隣りに立ち、
「ほう、ここでもやるのか・・・」
と値札を見つめる、
「そうなのよー、外は寒いからねー、エレインさんとテラさんがもし良ければって言ってくれてー」
ニコニコと微笑むニコリーネ、どうやらこの一角がニコリーネの肖像画描きの出店になるらしい、その言葉の通り、エレインとテラに誘われたためで、二人は暖炉と階段に挟まれた商品棚を置くには物足りず、しかしテーブルを奥にも微妙に邪魔くさいその小さな空間をどうしようかと思案し、アッと思いだしたのがニコリーネであった、肖像画を描くには丁度良いであろうと思い立ち、早速とニコリーネに相談してみればそれは嬉しいですとニコリーネは素直に受けている、ニコリーネ自身も作業部屋での創作に煮詰まっていた所で、さらにこの店の近くにはこの街でも希少な画材を取り扱う店もあり、ニコリーネとしてはそちらを覗くのにもうってつけであったのだ、
「ふむ・・・悪くないだろうな・・・」
レインはチラリと店内を見渡す、一階では従業員の奥様とその子供達がワイワイと楽しそうで、商品棚を眺めたり手にした蒸しパンを嬉しそうに頬張っている、そこへ、
「あら、いらっしゃい」
テラがスッと階段から下りて来た、
「テラだー」
ミナが大声を上げ、ソフィアがすぐに気付いてコラッと遠くから叱りつけるも聞き入れるミナではない、テラだテラだとなにが嬉しいんだか飛び跳ねる始末、これは少し落ち着かせなければとソフィアが近寄る、
「フフッ、ようこそソフィアさん、エルマさんも」
ミナを適当にあしらいつつ笑顔を見せるテラ、
「ごめんねー、もう、この子は、はしゃいじゃってー」
ソフィアがミナの頭を押さえつけ、グニューと呻くミナ、グニューってと微笑むニコリーネと何だそれはと睨むレイン、
「いつもの事じゃないですか、ミナちゃんらしくていいですよ、あっ、じゃ、そうですね、先に三階を見てみます?エルマ先生にもソフィアさんにも見て欲しかったんです、あと子供達にも」
「あっ、言ってたわね、勉強部屋?」
「そのつもりです、黒板とかも新しいのが入ってますから、是非どうぞ」
テラが微笑みつつ階段を上り、エルマが、
「ほら皆さん、三階に行きますよ」
と子供達に声をかけた、ノール達はそれぞれに店の中を見て回っていたようで、ただサスキアだけは不安そうにエルマの裾を掴んで離さなかった、この店に入ってからも一言も発しておらず、街中では他の子同様に歌を歌って駆け回っていた為、サスキアらしい人見知りが発動してしまっているのであろう、
「はーい」
子供達が続々と集まりそのまま階段を上がる、二階の喫茶室には出入り業者と従業員の奥様達が歓談中のようで、ソフィアを見かけた数人がアッと顔を上げ、
「ソフィアさんだ、お疲れ様です」
ブノワトとコッキーがヒョイと腰を上げ、アンベルが小さく会釈をする、ブラスやバーレント、リノルトも振り返り笑顔を浮かべた、さらに見ればエレインが接客中のようで、そのテーブルにはいかにも有力者然とした男達と事務員らしき女性が楽しそうに笑っている、
「あら、早速来たのねー」
ニコリと微笑み返すソフィア、
「そうなんですよー、このお店いいですねー」
とブノワトとコッキーがソフィアに駆け寄り、テラが足を止めた、
「そうなの?」
「はい、テラさんに聞きました、またタロウさんの発案だって」
「あー・・・そうだけどほら、お店を作ったのはエレインさんとかテラさんなんだし・・・あっ、ゴメンね先に上を見てから、お話しはゆっくりとね」
テラの手前やんわりと二人を拒絶するソフィア、あっそうですねと素直に引き下がる二人である、そしてテラと共に三階に入ると、
「わっ、良い感じねー」
ソフィアは思わず呟き、
「ですねー、本格的な教室になってます・・・」
エルマも目を丸くしてしまった、
「そうですね、黒板を置いて机を並べ変えただけなんですが、教室はやっぱりこうでないとって会長が妙に拘ってしまって」
テラがニコリと振り返る、
「ワッ、広ーい」
ミナがテラの脇をサッと潜り抜け駆け出してしまい、勿論それに続くブロース、フロールがコラッと叱るも止まる事は無く、
「すげー、飛ばしていい?飛ばしたい」
と懐に手を入れるブロースである、紙飛行機の事であろう、さらにコラーとフロールが叫ぶ、ブーと膨れるブロース、実際にその部屋は広かった、そうは言っても階下の構造を考えれば二階の喫茶室とほぼ同じ大きさでしかない、人が居らず整然と並んだテーブルと椅子だけのその部屋は広く感じるのであろう、さらに良い点として階下の暖気が三階に上がってきており、この部屋の暖炉に火は入ってなかったが、心地良い暖かさに保たれている様子であった、惜しむらくはその部屋の暗さであろうか、ガラス窓で明るい二階から上がって来るとその差がより顕著に感じられ、なんとも陰鬱に感じるほどに暗い、しかし王国民にとっては室内とはそういうものである、木窓を開ければそれで良いし、しかし木窓を開けると暖炉に火が欲しいかなとエルマはキョロキョロと室内を見渡す、
「へー・・・そっかー、流石エレインさんねー」
「ですねー・・・あの本当にいいんですか?」
エルマが心配そうにテラに問いかけてしまう、
「良いも何も会長としても私としても、何より従業員の事を考えれば大変に有効な事業と考えていますから、エルマ先生にはこれからもっと頑張っていただかないとって思ってますよ」
フフンと微笑むテラ、エルマは随分と期待されているのだなとその意気を再確認する、テラとは毎晩のように話し込んでいたりするが、正直どこまでやれるかどこまで本気なのか掴みかねてもいたのだ、それがこうしてしっかりとした場所を提供されるとなればいよいよエルマも真面目に取り組まなければならないと心持ちを新たにしてしまう、
「そうねー、ずーっと言ってたからねー」
ソフィアがソッと足を進め近場の長テーブルに手を置いた、
「ですね、会長の悲願・・・って程ではないですけどね、あっ、ここの家具はほら、前のお店のをそのまま使ってますので、少しばかり年季が気になりますけどね」
「何言ってるの、子供達には上等過ぎるわよ」
「ですね・・・あの少し見て回っても良いですか?」
「勿論です、じゃ、あれですね、こっち側の部屋なんですが・・・」
とテラがソフィアとエルマを案内し始める、ノール達も教室内に雪崩れ込んだ、大人達についていくのはエルマの裾を掴んで離さないサスキアと、まぁ悪くは無いのだろうなと厳しい目つきのレインである、遠慮無くドタバタと駆け回る子供達、ソフィアは振り返り、これは下のお客様に迷惑になるかもなと片眉を上げるのであった。
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実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
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アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
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⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』
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追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
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【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
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※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
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