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本編
76話 王家と公爵家 その37
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そこへ、
「お疲れー」
とタロウがフラリと階段から下りて来た、途端、
「タロー、ワンコ、ワンコの赤ちゃん、ワンコー、ニャンコじゃないのー、かしこいのー」
ミナがダダッとタロウに駆け寄り、ヘッ?とミナを抱き留めるタロウ、見ればソフィアとレインがニコニコと視線を落としており、その視線の先では、ペチョペチョと子犬がミルクを舐めている、
「ありゃ・・・どうしたの?」
「どうしたじゃないのー、ワンコー、かわいいのー、かしこいのー」
ミナがタロウの腕を強引に引っ張る、ハイハイとそれに従うタロウ、ソフィアが顔を上げ、
「今日は遅くなるんじゃないの?」
と柔らかい笑みである、
「ん、あぁ、勿論遅くなる、ちょっとエレインさんの事務所にね」
タロウは子犬を見つめたまま呟くように答え、
「・・・ワンコだね」
と続けた、
「そうなのー、ワンコなの、ワンコの赤ちゃん、えっとね、えっとね、ソフィアが行けって言って、三階に行ったらいたの、カトカが見せてくれたの、でねでね、ソフィアがね、お母さんがいないって言ってー、レインがね、マテっていったら、涎を垂らしてね、でねでね」
あった事をそのまま報告しようと喚き散らすミナ、タロウはわかったわかったとその頭を撫で付け、
「どしたの?」
とソフィアを見つめる、ソフィアがエルマが御礼代わりに連れて来たと適当に報告すると、
「御礼って・・・」
ストンとミナが座っていた場所に座り込むタロウ、ミナはその背におっかぶさり、
「見てー、かわいいのー、えっとね、ヨシって言ったら舐め始めたの、レインがねー、ミナよりも賢くなるぞって言ってたー」
「ありゃま、そりゃ賢いな」
ニコリと微笑むタロウ、レインがフンと鼻で笑ったようだがどこか得意そうである、
「そうなの、かしこいのー」
やっと通じたと満足そうに鼻息を荒くするミナ、どうやら言いたい事は言い尽くしたらしい、
「そっかー・・・へー・・・」
タロウがじっくりと子犬を見つめると、子犬はペロペロと皿を舐めあげ、もっと欲しいとばかりに顔を上げる、ミナはウフフーと微笑み、
「もっと、もっと飲む?」
優しく問いかけるも子犬はチョコンと座り直してキューンと一声鳴いたようで、
「かわいいー、ワンコかわいいー、ワンコなのにー、ワンコのくせにー」
ミナはタロウを乗り越えズドンと子犬の前に座り込む、キャンと逃げ出す子犬、おーよしよしと子犬を抱き上げるレイン、
「わっ、いいないいな」
「んー、なにがじゃー」
子犬を胸に抱いてその顔に頬を摺り寄せるレイン、くすぐったそうに身を捩じりレインの顔を舐める子犬、
「えー、ミナもー、ミナもー抱っこしたい」
「んー、どうじゃろうな、こやつ次第じゃなー」
「えー、ミナの方がいい、良いに決まってるー」
「なんだそれはー、どういう意味じゃー」
レインがまったくと微笑み、ソフィアとタロウもつられて微笑んでしまう、
「ムー、ミナもー、いいでしょー」
「仕方ないのう、ほれ、腕に尻を乗せるのじゃ、嫌がったらすぐに下ろすのだぞ」
レインがそっとミナに預ける、途端、子犬はクーンと鼻を鳴らしてミナの頬に鼻先を押し付けペロリと舐めた、
「わっ、舐めたー、また舐めたー、さっきも舐められたー」
「そうなのか?」
ニコニコと微笑むタロウ、
「うん、ちっさい舌ー、冷たいのー、ちっちゃいのー」
ミナが振り向きすぐに子犬へ視線を落とす、子犬はよっとばかりに前足をミナの胸元に踏ん張ってミナの顔を覗き込みペロペロと舐め始める、
「わっ、くすぐったい、つめたいー、濡れるー」
悲鳴を上げつつ楽しそうに笑うミナ、その間も腕はレインに教えられた通りに優しく子犬を抱き留めている、しかし徐々に姿勢を崩しコテンと床に寝ころんだ、丁度その頭がタロウの膝に乗っかり、子犬が今度はタロウの足へとピョンと飛び乗った、オワッと驚くタロウ、アーと残念そうなミナ、
「ふふっ、なんだー、ミナは猫派だと思ってたんだけどなー」
タロウがそっと手を伸ばすとその指先を嗅ぎつつ大きく尻尾を振る子犬、そのパタパタと動く尻尾がミナの額を叩き、
「ワッ、やめろー、パタパタするなー、気持ちいいー」
キャーと喚くミナ、どっちだよとタロウは微笑み、ソフィアもレインもフフッと見つめてしまう、
「んー・・・で、どうするんだ?」
タロウは指先で子犬をあやしつつ顔を上げた、
「ねー、どうしようかなーって、ほら、エルマさんもね、子犬でも怖がる人もいるから難しかったら引き上げますって事だったのよ、まぁ番犬代わりにはなるかもって感じかしらね」
ムッとソフィアを睨むレイン、ミナはもっとーと楽しそうにバタバタ蠢いてる、見ればわざわざ顔を上げてシッポに叩かれている様子で、
「そっかー、じゃ、生徒達に確認してからって事?」
「そうなるかしら」
「ん、了解、じゃ、任せるよ寮母さんに」
「そりゃそうでしょ」
「だねー」
さてとタロウは子犬を両手で抱き上げるとその顔を正面からマジマジと見つめ、ゆっくりと視線を落とすと、
「あー・・・女の子か」
残念そうに呟いた、
「そうみたいよー、エルマさんがね、女子寮だからって」
「そうなのー?女の子ー?」
ピョンと起き上がるミナ、
「そうだぞー、まーた、女の子が増えたねー」
「なによその言い草は」
「だってさー・・・まぁいいけど・・・ほれ、ミナ」
タロウがそのままズイッと子犬を押し付けるとミナはワタワタと子犬を受け取り、ンーとその頭に頬ずりする、
「ん、じゃ、そういう事で、あっ、でね、帰りは遅くなる、エレインさんとオリビアさんもかな?」
「あら、そうなの?」
「うん、領主様の食事会にね、エレインさんがお呼ばれしちゃってね、となるとほら、御付きの者もいないとだからってオリビアさんが巻き込まれるかなー」
「あー、そうなんだー、エレインさんも大変ねー」
「まずね、さて・・・あっ、ついでだ」
タロウは懐をまさぐってズロリと巨大な草に包まれた塊を取り出す、
「あらっ、お肉?」
「うん、ちょっとね、仕入れて来た、豚の肉だからちゃんと火を通してな」
「へー、嬉しいけど・・・今日はもう準備しちゃってるからなー・・・まっいいか、適当に焼いて放り込みましょう」
ソフィアが腰を上げ、
「ん、好きにすればいいよ」
タロウも腰を上げてソフィアに肉塊を渡す、
「あっ、なに?もしかして食事会とやらの準備?」
「そだねー、これとあと、モヤシとパスタ?」
「あー、それで事務所?」
「そういう事、エレインさんの代わりに取りに来たのさ、エレインさんも忙しいからね」
「そりゃアンタよりはね」
「まったくだ、じゃ、そういう事で」
タロウがさてと振り返り、しかしピタリと足を止め、
「・・・ミナ、その子どうするんだ?」
フト湧いた疑問を口にしつつ振り返る、
「えっとー、えっとー」
ミナは子犬の前足を手にしその顔を覗き込んでおり、パッと顔を上げると、
「お母さんを探すの、それと兄弟もー」
エッとミナを見つめるタロウ、アチャーと苦笑し俯くソフィア、おいおいと顔を顰めるレインであった。
その頃領主邸、応接室となる部屋にアンネリーンとユスティーナ、マルヘリートがゆっくりと腰を落ち着けていた、
「すっかり歩かされたわね」
アンネリーンがフーと大きく溜息を吐く、しかしその言葉とは裏腹に表情は柔らかく温かい、
「そうですね」
ニコリと微笑み返すユスティーナ、マルヘリートも無言であったが過度に緊張はしていないようであった、なにしろマルヘリートも少しばかり歩き疲れてしまっていた、それ以上にアンネリーンを迎える為に緊張し、無駄に体力を消耗している、身体のあちこちが今更になって妙に凝り固まっているように思う、つまりそれだけ精神的にも肉体的にも緊張していたという事なのだろう、
「で、食事会はそんなに良いものになるの?」
ニコリと微笑むアンネリーン、ユスティーナはそれはもうと微笑み、
「タロウさんとエレインさんが何やらコソコソとやっておりましたから、きっと素晴らしい食事になると思いますよ」
「そう・・・」
アンネリーンがフウと木窓から覗く曇天を見つめる、室内は暖炉で薪が焚かれ温かく、あくまで換気の為と薄く開かれており、蝋燭を灯すにはまだ早いと感じる頃合いで薄暗かった、しかし、それが当然である、今日はすっかり振り回されてしまったとボウっと考え、アッとユスティーナを見つめると、
「あの男は一体何者なのかしら・・・」
当然の疑問を口にした、学園で医療基地なるものを視察し、ヘルデル軍、モニケンダム軍双方の上級医官であろう男達が慌てる中、タロウが先に立って医官達に説明し、そういう事であればと一行を歓迎する事になったらしい、どちらの軍としても突然の事であり、また貴族の、それも組織の最高責任者である公爵と伯爵の夫人と子供達がわざわざ足を運んだとなれば、これは大事と改めて色めき立ってしまい、逆に王国軍の医官達はどういう事だと白けていたのであるが、こちらはこちらでタロウがなにやら話したようで、なるほどそういう事もあるであろうとそっちはそっちでヘルデル軍とモニケンダム軍に協力し始めたようである、同行した従者は本当に突然の事であったのかと鼻白むもタロウと学園長は現場そのものを見なければ視察にはならないし、事前に連絡したところで見るべきものは変わらないと実に現実的な事を口にする、そうかもしれないと納得するアンネリーンとユスティーナである、而して医官の案内によって講堂であったというその巨大な建物内に並べられた寝台やら治療器具、果てはやっと使えるようになりましたと学園長が嬉しそうに説明する水道管と湯沸し器等を視察し、アンネリーンとユスティーナは医官達の労力を労うと、医官達は皆一様に頭を下げて感謝の言葉を返している、突然の事であり少しばかりの混乱もあったが、よく考えなくてもこの視察は大変に名誉な事であった、特に軍の花形はどうしても前線に立つ兵士達であり、医官や事務官は裏方となってしまう、無論クンラートやカラミッドらからは需要な役目であるとその価値を認められてはいるが、こうしてその御夫人達から直接褒められる事は初めての事かもしれなかった、
「そう・・・ですね・・・」
ユスティーナがこれは困ったとマルヘリートを伺い、マルヘリートもウーンと大きく首を傾げる、二人にしてもソフィアの夫でありミナの父親で、やたらと知識の広い便利な男程度の認識である、その便利の度合いが破格であるし、特に美容やら服飾やら、料理に関しても、あの男の右に出る者はいないように思う、単にその方面での付き合いが深く、また強く印象に残っている為であった、
「・・・まぁ、カラミッド様も・・・私もなのですが、信頼に足る者であるとは・・・言えるかと思います」
若干不安そうに答えるユスティーナ、マルヘリートもコクコクと頷くしかないようで、
「そう・・・」
「はい、先程もリシャルトと何やら打合せをしておりましたし、あのリシャルトが認めたとなれば・・・大丈夫かと・・・」
「そのようだったわね・・・」
んーと斜めを見上げるアンネリーン、アンネリーンもリシャルトその人の事は良く知っている、大戦中もカラミッドに代わりヘルデルとの連絡役となっており、内政を預かっていたアンネリーンも数度直接会っている、その事務処理能力も高く評価しているが、何より伯爵家のみならず公爵家への忠誠が厚い人物で、ヘルデルの窮乏にも出来る限り協力してもらっていた、当時は避難民の問題もありヘルデル域内も食糧事情が厳しくその面での下支えはモニケンダムはもとより配下の貴族達に頼り切ってしまったものである、
「はい、まぁ、カラミッド様と公爵様の指示であると先程リシャルトも申しておりました、であれば、取り合えず・・・と思いますが・・・それにしても・・・」
フーと呆れて微笑むユスティーナ、マルヘリートも苦笑してしまう、
「そうね、まぁいいわ」
アンネリーンがさてどうしたものかと視線を戻す、食事会まで暫しお待ちをとこの部屋に通され、疲れもあってこうして落ち着いてはいるが、今日は朝から驚く事ばかりであった、呼び出されてのこのこと顔を出してみれば、ガラス鏡に転送陣、はてはエレインにキッサ店、そして演劇の脚本に学園である、すっかり騙されたと感じた焦燥感もイラつきも霧散してしまい、心の底から充実感に満たされている、ここ数年まず無かった事であった、
「・・・そうだ、あのエレインさんの手記、あれの複写があるという事だったけど・・・」
「はい、レアンが持って来るとの事です」
「そう、申し訳ないわね」
「構いません、レアンはあれをもう数回読み込んだらしくて、逆にそんなものを差し上げるのは申し訳ないと感じます」
「こちらこそ申し訳ないわよ、でも、冷静に考えればたかが実家への報告書なのよね、それをまとめただけなのに、あれほど興味深いとは思わなかったわ」
「ですね、私もそう思います、オリビアさんの文才かと思います」
「オリビア?」
「はい、エレインさんの従者ですね」
ニコリと微笑むユスティーナ、そのエレインはアンネリーンの従者を半分連れてガラス鏡店に戻っている、即日納品できる商品の受け渡しの為で、それもあったわねとすっかり忘れていた事に微笑んでしまうアンネリーンとユスティーナであった、そしてユスティーナはついでだからとエレインを食事会に誘い、アンネリーンもそれは嬉しいと笑顔であった、エレインにしてみればとても断れる状況では無いし、伯爵家と公爵家の親睦の為の食事会とも昨日話しているのを聞いている、そのような場に自分が紛れるのはどうだろうかと考えるも、レアンもマルヘリートもそれはいいと笑顔で、アーレントとアンシェラももっと遊ぶとエレインに抱き着く始末、となればエレインが断る事は不可能で、食事会にはまだ時間がある為、仕事を終えたら戻る事となってしまった、さらにライニールがそういう事であれば従者を連れて来るようにとコッソリと助言してくれた、そういえばそうだと目を丸くするエレインに、フフッと微笑むライニールであった、
「あー・・・言ってたわね、フフッ、不思議なものね、あれかしらエレインさんの周りには優秀な人が集まるのかしら?」
「そのようですね、エレインさん自身も素晴らしい人ですが、その周りの娘さん達も皆好人物ですよ」
「そうなの?ちゃんと会ってみたいわね」
「そう思われますか?」
「そりゃもう・・・全員まとめてヘルデルに引き連れて行きたい気分だわ」
ニコリと微笑むアンネリーンに、それは勘弁して下さいと笑顔で返すユスティーナ、マルヘリートもそうかもなーと無言で微笑んでしまうのであった。
「お疲れー」
とタロウがフラリと階段から下りて来た、途端、
「タロー、ワンコ、ワンコの赤ちゃん、ワンコー、ニャンコじゃないのー、かしこいのー」
ミナがダダッとタロウに駆け寄り、ヘッ?とミナを抱き留めるタロウ、見ればソフィアとレインがニコニコと視線を落としており、その視線の先では、ペチョペチョと子犬がミルクを舐めている、
「ありゃ・・・どうしたの?」
「どうしたじゃないのー、ワンコー、かわいいのー、かしこいのー」
ミナがタロウの腕を強引に引っ張る、ハイハイとそれに従うタロウ、ソフィアが顔を上げ、
「今日は遅くなるんじゃないの?」
と柔らかい笑みである、
「ん、あぁ、勿論遅くなる、ちょっとエレインさんの事務所にね」
タロウは子犬を見つめたまま呟くように答え、
「・・・ワンコだね」
と続けた、
「そうなのー、ワンコなの、ワンコの赤ちゃん、えっとね、えっとね、ソフィアが行けって言って、三階に行ったらいたの、カトカが見せてくれたの、でねでね、ソフィアがね、お母さんがいないって言ってー、レインがね、マテっていったら、涎を垂らしてね、でねでね」
あった事をそのまま報告しようと喚き散らすミナ、タロウはわかったわかったとその頭を撫で付け、
「どしたの?」
とソフィアを見つめる、ソフィアがエルマが御礼代わりに連れて来たと適当に報告すると、
「御礼って・・・」
ストンとミナが座っていた場所に座り込むタロウ、ミナはその背におっかぶさり、
「見てー、かわいいのー、えっとね、ヨシって言ったら舐め始めたの、レインがねー、ミナよりも賢くなるぞって言ってたー」
「ありゃま、そりゃ賢いな」
ニコリと微笑むタロウ、レインがフンと鼻で笑ったようだがどこか得意そうである、
「そうなの、かしこいのー」
やっと通じたと満足そうに鼻息を荒くするミナ、どうやら言いたい事は言い尽くしたらしい、
「そっかー・・・へー・・・」
タロウがじっくりと子犬を見つめると、子犬はペロペロと皿を舐めあげ、もっと欲しいとばかりに顔を上げる、ミナはウフフーと微笑み、
「もっと、もっと飲む?」
優しく問いかけるも子犬はチョコンと座り直してキューンと一声鳴いたようで、
「かわいいー、ワンコかわいいー、ワンコなのにー、ワンコのくせにー」
ミナはタロウを乗り越えズドンと子犬の前に座り込む、キャンと逃げ出す子犬、おーよしよしと子犬を抱き上げるレイン、
「わっ、いいないいな」
「んー、なにがじゃー」
子犬を胸に抱いてその顔に頬を摺り寄せるレイン、くすぐったそうに身を捩じりレインの顔を舐める子犬、
「えー、ミナもー、ミナもー抱っこしたい」
「んー、どうじゃろうな、こやつ次第じゃなー」
「えー、ミナの方がいい、良いに決まってるー」
「なんだそれはー、どういう意味じゃー」
レインがまったくと微笑み、ソフィアとタロウもつられて微笑んでしまう、
「ムー、ミナもー、いいでしょー」
「仕方ないのう、ほれ、腕に尻を乗せるのじゃ、嫌がったらすぐに下ろすのだぞ」
レインがそっとミナに預ける、途端、子犬はクーンと鼻を鳴らしてミナの頬に鼻先を押し付けペロリと舐めた、
「わっ、舐めたー、また舐めたー、さっきも舐められたー」
「そうなのか?」
ニコニコと微笑むタロウ、
「うん、ちっさい舌ー、冷たいのー、ちっちゃいのー」
ミナが振り向きすぐに子犬へ視線を落とす、子犬はよっとばかりに前足をミナの胸元に踏ん張ってミナの顔を覗き込みペロペロと舐め始める、
「わっ、くすぐったい、つめたいー、濡れるー」
悲鳴を上げつつ楽しそうに笑うミナ、その間も腕はレインに教えられた通りに優しく子犬を抱き留めている、しかし徐々に姿勢を崩しコテンと床に寝ころんだ、丁度その頭がタロウの膝に乗っかり、子犬が今度はタロウの足へとピョンと飛び乗った、オワッと驚くタロウ、アーと残念そうなミナ、
「ふふっ、なんだー、ミナは猫派だと思ってたんだけどなー」
タロウがそっと手を伸ばすとその指先を嗅ぎつつ大きく尻尾を振る子犬、そのパタパタと動く尻尾がミナの額を叩き、
「ワッ、やめろー、パタパタするなー、気持ちいいー」
キャーと喚くミナ、どっちだよとタロウは微笑み、ソフィアもレインもフフッと見つめてしまう、
「んー・・・で、どうするんだ?」
タロウは指先で子犬をあやしつつ顔を上げた、
「ねー、どうしようかなーって、ほら、エルマさんもね、子犬でも怖がる人もいるから難しかったら引き上げますって事だったのよ、まぁ番犬代わりにはなるかもって感じかしらね」
ムッとソフィアを睨むレイン、ミナはもっとーと楽しそうにバタバタ蠢いてる、見ればわざわざ顔を上げてシッポに叩かれている様子で、
「そっかー、じゃ、生徒達に確認してからって事?」
「そうなるかしら」
「ん、了解、じゃ、任せるよ寮母さんに」
「そりゃそうでしょ」
「だねー」
さてとタロウは子犬を両手で抱き上げるとその顔を正面からマジマジと見つめ、ゆっくりと視線を落とすと、
「あー・・・女の子か」
残念そうに呟いた、
「そうみたいよー、エルマさんがね、女子寮だからって」
「そうなのー?女の子ー?」
ピョンと起き上がるミナ、
「そうだぞー、まーた、女の子が増えたねー」
「なによその言い草は」
「だってさー・・・まぁいいけど・・・ほれ、ミナ」
タロウがそのままズイッと子犬を押し付けるとミナはワタワタと子犬を受け取り、ンーとその頭に頬ずりする、
「ん、じゃ、そういう事で、あっ、でね、帰りは遅くなる、エレインさんとオリビアさんもかな?」
「あら、そうなの?」
「うん、領主様の食事会にね、エレインさんがお呼ばれしちゃってね、となるとほら、御付きの者もいないとだからってオリビアさんが巻き込まれるかなー」
「あー、そうなんだー、エレインさんも大変ねー」
「まずね、さて・・・あっ、ついでだ」
タロウは懐をまさぐってズロリと巨大な草に包まれた塊を取り出す、
「あらっ、お肉?」
「うん、ちょっとね、仕入れて来た、豚の肉だからちゃんと火を通してな」
「へー、嬉しいけど・・・今日はもう準備しちゃってるからなー・・・まっいいか、適当に焼いて放り込みましょう」
ソフィアが腰を上げ、
「ん、好きにすればいいよ」
タロウも腰を上げてソフィアに肉塊を渡す、
「あっ、なに?もしかして食事会とやらの準備?」
「そだねー、これとあと、モヤシとパスタ?」
「あー、それで事務所?」
「そういう事、エレインさんの代わりに取りに来たのさ、エレインさんも忙しいからね」
「そりゃアンタよりはね」
「まったくだ、じゃ、そういう事で」
タロウがさてと振り返り、しかしピタリと足を止め、
「・・・ミナ、その子どうするんだ?」
フト湧いた疑問を口にしつつ振り返る、
「えっとー、えっとー」
ミナは子犬の前足を手にしその顔を覗き込んでおり、パッと顔を上げると、
「お母さんを探すの、それと兄弟もー」
エッとミナを見つめるタロウ、アチャーと苦笑し俯くソフィア、おいおいと顔を顰めるレインであった。
その頃領主邸、応接室となる部屋にアンネリーンとユスティーナ、マルヘリートがゆっくりと腰を落ち着けていた、
「すっかり歩かされたわね」
アンネリーンがフーと大きく溜息を吐く、しかしその言葉とは裏腹に表情は柔らかく温かい、
「そうですね」
ニコリと微笑み返すユスティーナ、マルヘリートも無言であったが過度に緊張はしていないようであった、なにしろマルヘリートも少しばかり歩き疲れてしまっていた、それ以上にアンネリーンを迎える為に緊張し、無駄に体力を消耗している、身体のあちこちが今更になって妙に凝り固まっているように思う、つまりそれだけ精神的にも肉体的にも緊張していたという事なのだろう、
「で、食事会はそんなに良いものになるの?」
ニコリと微笑むアンネリーン、ユスティーナはそれはもうと微笑み、
「タロウさんとエレインさんが何やらコソコソとやっておりましたから、きっと素晴らしい食事になると思いますよ」
「そう・・・」
アンネリーンがフウと木窓から覗く曇天を見つめる、室内は暖炉で薪が焚かれ温かく、あくまで換気の為と薄く開かれており、蝋燭を灯すにはまだ早いと感じる頃合いで薄暗かった、しかし、それが当然である、今日はすっかり振り回されてしまったとボウっと考え、アッとユスティーナを見つめると、
「あの男は一体何者なのかしら・・・」
当然の疑問を口にした、学園で医療基地なるものを視察し、ヘルデル軍、モニケンダム軍双方の上級医官であろう男達が慌てる中、タロウが先に立って医官達に説明し、そういう事であればと一行を歓迎する事になったらしい、どちらの軍としても突然の事であり、また貴族の、それも組織の最高責任者である公爵と伯爵の夫人と子供達がわざわざ足を運んだとなれば、これは大事と改めて色めき立ってしまい、逆に王国軍の医官達はどういう事だと白けていたのであるが、こちらはこちらでタロウがなにやら話したようで、なるほどそういう事もあるであろうとそっちはそっちでヘルデル軍とモニケンダム軍に協力し始めたようである、同行した従者は本当に突然の事であったのかと鼻白むもタロウと学園長は現場そのものを見なければ視察にはならないし、事前に連絡したところで見るべきものは変わらないと実に現実的な事を口にする、そうかもしれないと納得するアンネリーンとユスティーナである、而して医官の案内によって講堂であったというその巨大な建物内に並べられた寝台やら治療器具、果てはやっと使えるようになりましたと学園長が嬉しそうに説明する水道管と湯沸し器等を視察し、アンネリーンとユスティーナは医官達の労力を労うと、医官達は皆一様に頭を下げて感謝の言葉を返している、突然の事であり少しばかりの混乱もあったが、よく考えなくてもこの視察は大変に名誉な事であった、特に軍の花形はどうしても前線に立つ兵士達であり、医官や事務官は裏方となってしまう、無論クンラートやカラミッドらからは需要な役目であるとその価値を認められてはいるが、こうしてその御夫人達から直接褒められる事は初めての事かもしれなかった、
「そう・・・ですね・・・」
ユスティーナがこれは困ったとマルヘリートを伺い、マルヘリートもウーンと大きく首を傾げる、二人にしてもソフィアの夫でありミナの父親で、やたらと知識の広い便利な男程度の認識である、その便利の度合いが破格であるし、特に美容やら服飾やら、料理に関しても、あの男の右に出る者はいないように思う、単にその方面での付き合いが深く、また強く印象に残っている為であった、
「・・・まぁ、カラミッド様も・・・私もなのですが、信頼に足る者であるとは・・・言えるかと思います」
若干不安そうに答えるユスティーナ、マルヘリートもコクコクと頷くしかないようで、
「そう・・・」
「はい、先程もリシャルトと何やら打合せをしておりましたし、あのリシャルトが認めたとなれば・・・大丈夫かと・・・」
「そのようだったわね・・・」
んーと斜めを見上げるアンネリーン、アンネリーンもリシャルトその人の事は良く知っている、大戦中もカラミッドに代わりヘルデルとの連絡役となっており、内政を預かっていたアンネリーンも数度直接会っている、その事務処理能力も高く評価しているが、何より伯爵家のみならず公爵家への忠誠が厚い人物で、ヘルデルの窮乏にも出来る限り協力してもらっていた、当時は避難民の問題もありヘルデル域内も食糧事情が厳しくその面での下支えはモニケンダムはもとより配下の貴族達に頼り切ってしまったものである、
「はい、まぁ、カラミッド様と公爵様の指示であると先程リシャルトも申しておりました、であれば、取り合えず・・・と思いますが・・・それにしても・・・」
フーと呆れて微笑むユスティーナ、マルヘリートも苦笑してしまう、
「そうね、まぁいいわ」
アンネリーンがさてどうしたものかと視線を戻す、食事会まで暫しお待ちをとこの部屋に通され、疲れもあってこうして落ち着いてはいるが、今日は朝から驚く事ばかりであった、呼び出されてのこのこと顔を出してみれば、ガラス鏡に転送陣、はてはエレインにキッサ店、そして演劇の脚本に学園である、すっかり騙されたと感じた焦燥感もイラつきも霧散してしまい、心の底から充実感に満たされている、ここ数年まず無かった事であった、
「・・・そうだ、あのエレインさんの手記、あれの複写があるという事だったけど・・・」
「はい、レアンが持って来るとの事です」
「そう、申し訳ないわね」
「構いません、レアンはあれをもう数回読み込んだらしくて、逆にそんなものを差し上げるのは申し訳ないと感じます」
「こちらこそ申し訳ないわよ、でも、冷静に考えればたかが実家への報告書なのよね、それをまとめただけなのに、あれほど興味深いとは思わなかったわ」
「ですね、私もそう思います、オリビアさんの文才かと思います」
「オリビア?」
「はい、エレインさんの従者ですね」
ニコリと微笑むユスティーナ、そのエレインはアンネリーンの従者を半分連れてガラス鏡店に戻っている、即日納品できる商品の受け渡しの為で、それもあったわねとすっかり忘れていた事に微笑んでしまうアンネリーンとユスティーナであった、そしてユスティーナはついでだからとエレインを食事会に誘い、アンネリーンもそれは嬉しいと笑顔であった、エレインにしてみればとても断れる状況では無いし、伯爵家と公爵家の親睦の為の食事会とも昨日話しているのを聞いている、そのような場に自分が紛れるのはどうだろうかと考えるも、レアンもマルヘリートもそれはいいと笑顔で、アーレントとアンシェラももっと遊ぶとエレインに抱き着く始末、となればエレインが断る事は不可能で、食事会にはまだ時間がある為、仕事を終えたら戻る事となってしまった、さらにライニールがそういう事であれば従者を連れて来るようにとコッソリと助言してくれた、そういえばそうだと目を丸くするエレインに、フフッと微笑むライニールであった、
「あー・・・言ってたわね、フフッ、不思議なものね、あれかしらエレインさんの周りには優秀な人が集まるのかしら?」
「そのようですね、エレインさん自身も素晴らしい人ですが、その周りの娘さん達も皆好人物ですよ」
「そうなの?ちゃんと会ってみたいわね」
「そう思われますか?」
「そりゃもう・・・全員まとめてヘルデルに引き連れて行きたい気分だわ」
ニコリと微笑むアンネリーンに、それは勘弁して下さいと笑顔で返すユスティーナ、マルヘリートもそうかもなーと無言で微笑んでしまうのであった。
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これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
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仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?
ばふぉりん
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中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!
「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」
「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」
これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。
<前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです>
注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。
(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
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「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
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アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』
とびぃ
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追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
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子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
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オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
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※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
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