セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

文字の大きさ
1,185 / 1,445
本編

76話 王家と公爵家 その51

しおりを挟む
それから暫くして、

「ソフィー、ソフィーはどれー」

黒板の前の椅子に背を抱くように座ってミナが振り返る、

「どれも可愛いじゃない、どれでもいいわよー」

ソフィアが食堂内を箒で掃きながら適当に答え、レインはムスリと不満顔であった、レインもまたどれでも良かろうと興味が無いらしく、久しぶりにゆっくり書でも読もうかと思っていたところにソフィアが掃除を始めたものだから若干御立腹のようであった、そして子犬は昼寝中である、暖炉の前の最も温かい場所に寝ころんで幸せそうにクークー寝息を立てている、

「えー、でもー」

「でも、なーにー?」

「ミナが決めていいってなったからー」

「そうみたいねー」

「悩んでるー」

「そっかー」

パタパタと箒を動かしつつ適当に相槌を打つソフィア、何気に食堂の掃除は久しぶりであったりする、人が集まる為最も汚れる部屋なのであるが、昨日迄はもうこの時間には子供達が集まっており、子供達が帰ったと思えば生徒達が集まってくる時間帯で、さらには食事の用意もあった、掃除したいなーと思いつつ出来なかったのである、今日は商会はお休みで、給料日となっており、もしかしたら子供達も遊びに来るかもしれないが、まぁ、そんなに早くは来ないであろう、その為今日は食堂の掃除から出来るわねと、生徒達を送り出し、エレインらも仕事に出掛けると、ユーリを三階に追いやって楽しそうに掃除に取り掛かるソフィアであった、

「うー、レインはー、レインはどれー」

「どれでもいいわ」

パシリと言い切るレイン、

「えー、ブーブー」

「好きにして良いのだろう?」

「そう言ってたー」

「じゃ、好きにしろ」

「えー・・・だってーー」

ムーと黒板を睨むミナ、そこにはサレバの手による子犬の名前が乱雑に記されており、そこから選べとなったのであるが、ミナとしてはどれもこれも魅力的で目移りしてしまっていた、ミニョンもかわいいし、ロサはカッコイイ、トマトも好きだけど、ハナコもいいなと移り気で、ソフィアはそりゃそうなるかと微笑ましく眺めている、

「ブー、決まんないー」

バッと椅子に立ち上がるミナ、

「なら、ほれ、ワンコに決めさせれば良い」

レインがやれやれとやっと顔を上げた、

「えー、どうやってー」

「簡単じゃ、何かに名前を書いてな、床に置いて選ばせるのじゃ」

「何かー」

「おう、なんでもいいぞ、ほれ、オリガミのそれに名前を書けばいいじゃろ」

レインが壁のテーブルに並べられた様々な折り紙を顎で示す、

「そうなの?」

ミナは今一つ理解が及ばず素直に首を傾げてしまう、ソフィアが手を止めてそれがいいかもねーと微笑んだ、

「そうなのー?」

「そうよー、ワンコに選ばせれば角も立たないでしょ」

「カドー?」

「そうよー、私の選ばれなかったーって泣く人がいないって事ー」

ソフィアがニコリと微笑む、まぁ、犬の名前程度でギャーギャー騒ぐ者もいないと思われる、ソフィアとしても少なくとも黒板に書かれている名前であればどれでも良かったりした、

「そっかー、泣く人かー」

ミナはトンと椅子から下りて折り紙に向かう、主に生徒作の折り紙が並べられており、子供達が作ったそれは大事に持ち帰られ、それぞれの家に飾られている事であろう、

「じゃー・・・やってみるー」

ミナが折り紙に手を伸ばす、

「うむ」

とレインも書を閉じて腰を上げた、手伝うつもりであるらしい、ソフィアは任せてしまっていいかしらと玄関口の掃除へ向かう、そこもまた暫く掃除をしていない、すっかり汚れているなと改めて見渡す、足を拭う桶の水や手拭いは毎日交換しており、また生徒達も汚れているなと気付けば率先して交換してくれていた、しかししっかりと掃除する機会が少なく、積雪のためかすっかり泥汚れが目立ってしまっている、また、来客用のスリッパも薄汚れてきていた、これは洗うよりも新しいのが欲しいかしらと整頓しながら考えるソフィア、まぁ、明日と明後日は忙しいだろうし、新年になったら生徒達をけしかけて一気にやろうか等と考えつつ掃除を始める、そして、一通りの掃き掃除を終え足桶の水を交換し、こんなもんかと満足して食堂に戻ると、

「むー、ワンコめー」

「こりゃ、寝せておけ」

「折角作ったのにー」

「寝るのも仕事じゃ」

「それは聞いたー」

「なら、邪魔するでない」

「してないでしょー」

「それでは落ち着いて寝れんじゃろ」

「そうなのー?」

「そうじゃ」

見ればミナが暖炉の前で子犬に顔を引っ付けるように寝ころんでおり、その傍らには折り紙が数個バラバラと並んでいる、

「ありゃ、まだやってた?」

ソフィアがヤレヤレと微笑んでしまう、

「だってー、ワンコが起きないのー」

ミナがパッと上半身を起こし振り返る、子犬がビクリと反応したようであるが起きる事は無かったようだ、

「そっかー、まぁ、そういうものよ」

「そうなのー」

「そうなの、じゃ次はー」

とソフィアが掃除用具を手にして階段へ向かう、そこへ、

「おはようございます」

ゆっくりと階段から下りて来た者があった、

「あらっ、早いのね」

「わっ、どうしたのー」

ミナとソフィアが明るく出迎える、エルマであった、

「フフッ、おはようございます」

優雅に微笑むエルマ、その表情はより柔らかくなっているように見える、どうやら治療痕もより馴染んでいる様子で、実家に戻っている安心感もあって心に余裕もあるのであろう、ソフィアは良い顔をしているなーと微笑みつつ、

「おはようございます、さっ座って、お茶淹れるわね」

「そんな、お構いなく、忙しくしてる頃だろうなーって思ってましたから、あっ、これ、お茶です」

エルマが手にした布袋を差し出す、しかし、アッと呟き、

「えっと・・・お茶を催促してるわけじゃないですよ」

と照れ笑いを浮かべてしまう、

「そんなの分かってるわよ、来る度何か持ってきたら大変でしょうに」

ソフィアもクスクスと笑ってしまう、

「いえいえ、これはほら、マルルース様からです、タロウさんの労をねぎらう為とか何とか言ってました」

「あら・・・あの人なんかやったの?・・・っていうか昨日の事かしら・・・」

「そう見たいですよ、だから、今日もマルルース様もエフェリーン様も忙しいらしくて、今日の予定はすべて先送りになったそうです」

「あらま、大丈夫なのそれ?」

ソフィアは取り合えずとその布袋を受け取る、

「たぶん・・・ですね、今日はマルルース様と孤児院の視察に一緒に行く予定だったんですけど、今日はあなた一人で行きなさいって」

「あらま・・・あっ、そっか、あれ?フィロメナさんとかの関係?」

「そうなります、なので」

とエルマが子犬に視線を移す、ミナが難しい話しをしてるのかなーと二人を見上げており、子犬はグデーっと遠慮なく爆睡中のようで、

「・・・フフッ、どうです、ミナちゃん、お世話できます?」

エルマがニコリと微笑む、

「お世話?」

「そうですよ、あっ、どうでした?飼えます?」

エルマが心配そうにソフィアを見つめる、

「勿論よ、皆、犬は嫌いじゃないらしいわよ、挙句にこんなに可愛いとね、大はしゃぎだったわよ、ミナが独り占めしてたけど」

「それは良かったです、じゃ、そういう事でいいですか?」

「いいと思うけど・・・あっ、ミナー、エルマ先生が連れて来たのよ、その子」

ソフィアが優しく微笑むと、エッとミナがペタンと座り直した、

「そうですね、どう?可愛い?」

「うんうん、すんごいかわいい、ワンコなのにかわいいの、ニャンコじゃないのに、あと、吠えないの、あと、レインがミナよりもかしこいって言ってた、あとね、あとね、マテって言ったら食べないの、ヨシって言ったら食べるの、あと、ムーって悲しそうな顔してウンチするのー」

ミナが目を細め口を突き出す、恐らく排便時の子犬の真似なのであろう、ウンチするのってとソフィアはもうと微笑み、確かにそうだわねーとエルマも微笑む、

「でね、でね、あっ、お母さん、ワンコのお母さん探したい、いるんでしょ、どこー」

ミナがバッと立ち上がり、エッと不思議そうに首を傾げるエルマ、ソフィアはあー、まだそれがあったと苦笑してしまった。



その頃荒野の天幕である、毎日の会議は今日も簡単なもので、それだけ敵軍には変化は無く、しかし、天候の変化が問題として取り沙汰された、会議中も天幕の外は吹雪が荒れ狂っており軍用の重く丈夫な天幕であっても不安を感じる程である、ここは主戦場の変更も考えるべきかもしれないとの意見も出たが、そうなるとこちらから攻めるかモニケンダムまで引かなければならない、攻めるとなると軍の展開が難しく、引くとなればモニケンダムの被害が問題となり、どちらも即座に却下されてしまった、あっという間の事であり、その問題を提起したクロノスもまぁそうだよなとあっさりと引き下がっている、需要事項はその一点のみで、他に上げられたのは定期報告と明日明後日の祭りの件となる、どちらも確認程度の内容であった、そして、

「では、御案内致します、昨日の進言どおりで宜しいですか?」

会議を終えそれぞれがバタバタと動き出した所で、タロウがそっとクンラートに近寄った、

「おう・・・あー・・・昨日の件だがな・・・」

クンラートはフンと不愉快そうにタロウを睨み、

「道すがらでよかろう」

レイナウトがニヤリとクンラートを見上げる、

「ですな」

カラミッドもレイナウトに同意のようであった、

「まとまりました?」

タロウがニコリと三人を伺うと、まずなとクンラートが短く答え、それなりじゃなとレイナウトが微笑む、その様子にどうやらある程度の結論を得たらしいとタロウはホッと安堵する、昨日は言うだけ言って、お好きにどうぞと逃げ帰っている、それは過干渉を防ぐ為と彼等の面子を守る為であった、なによりいい歳をした大人達が集まっているのである、状況を整理し問題点を把握できればそれで何とかできる人達なのであった、さらにはタロウでは知りえない貴族の流儀とやらもあるであろうと思われる、昨日のあれはあの程度で丁度良かっただろうなとタロウは思う事としていた、

「では、こちらへ、一度エレインさん、じゃない、殿下のお屋敷へ・・・」

「うむ、段取り通りじゃな」

「はい、そうなります」

タロウはニコリと微笑み先導する、イフナースの屋敷を経由する事には何の障害も無かった、この三人とそれに従う従者と近衛も毎日のようにその屋敷から転送陣を通ってここまで来ている、すっかり慣れた道程となっており、少しばかりの警戒感はあるようであるが、それは致し方ない事であろう、タロウはそのまま天幕内の転送陣へ向かい、その途中ちょっとした隙に、イザークに目配せする、イザークも無言で会釈で答えたようで、さらにその隣りでクロノスと話し込んでいる様子のイフナースもチラリとタロウに視線を走らせ、クロノスも気付いてタロウを一睨みした、二人共に委細了解済みとの意思表示であろう、

「じゃ、取り合えずお茶ですかね、御婦人方が来ていればそのまま向かおうかと思います」

タロウが一段声を明るくする、

「そうじゃな、まぁ、あれらも期待はしているらしいぞ」

「そうなんですか?」

「おう、お主があそこまで言えばな、それは期待したくもなるというものよ」

「あー・・・少し言い過ぎましたかねー」

タロウがアッハッハと笑い、それではつまらんぞとレイナウトはガッハッハと笑いあげる、しかし三人に続く近衛やリシャルトは渋い顔であった、特にリシャルトはタロウの思惑がどこにあるのかと訝しく感じている、昨日浮かんだ猜疑心を無くしてはいかんなと昨晩再考していた、やはりこの男は底が知れない、昨日の一件は公爵家としても伯爵家としても、さらにはアイセル公国であった各貴族達にも大変に有用な提案であり、より良い結果となるであろうと思われるが、そこまでこの男に頼ってしまったことそのものが、伯爵家の筆頭従者であるリシャルトとしては情けない事態なのだと再認識するに至っている、

「まぁ、何でもよい、気晴らしになればな」

ムスッと呟くクンラート、

「ですねー、そうなれば私も嬉しいです」

ニコリと微笑み転送陣を潜るタロウであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?

ばふぉりん
ファンタジー
 中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!  「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」  「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」  これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。  <前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです> 注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。 (読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』

とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~ -第二部(11章~20章)追加しました- 【あらすじ】 「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」 王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。 彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。 追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった! 石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。 【主な登場人物】 ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。 ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。 アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。 リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。 ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。 【読みどころ】 「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...