1,261 / 1,445
本編
79話 兄貴達 その25
しおりを挟む
それから結局料理人達も腕まくりをしてパンを捏ねだしてしまった、見ていたらやはりやりたくなったのであろう、エレインとテラは二階に茶の準備をしてるのにと困った顔であったが、そこまでお客様扱いされては逆に緊張してしまうとティルの父が対応し、時間があるのであれば実際に調理をしてみたいと瞳を爛々と輝かせた、タロウとしては座学の後で実習かなーと思っていたのであるが、まぁ本人達がやりたいのであれば順番が変わる程度はどうという事は無い、さらには時間もまだ予定よりもだいぶ早く、他の参加者もまだ来ていない、発酵の工程を考えれば今の内に仕込んでおくのも間違いでは無いなと講師役をマンネルに委ねてノホホンと眺めていたりする、そうして午前の遅い時間となる、先程同様にリンドが大人数を引き連れ顔を出し、それを迎えるエレインとテラ、リンドが後はお願いしますとあっさりと引き継ぐと、
「タロウ様、御無沙汰しております」
笑顔でタロウに近寄る男が一人、
「あっ、お久しぶりです、そっか、そうなりますよねー」
ニコリと微笑むタロウ、その男は伯爵家の料理長であった、何度か顔を合わせ指導もしているその人で、
「またとんでもない物を紹介して頂いたようで」
ニコニコと微笑む料理長、
「そのようですねー、すっかりお祭り騒ぎですよ」
タロウは口元を引き締め苦笑いである、で、どういう事かと詳しく聞き出そうとする料理長、ティルとミーンも料理長と面識がある為短い挨拶を交わす、他の料理人達はエレインとテラの案内で店内に並んだパンやら発酵中のそれを確認しており、タロウは、
「まぁ、詳しくはしっかりと座学を行いますので・・・あっ、でもこれで全員揃ったのかな?」
とヒョイと首を伸ばす、リンドが壁際に控え全体を見渡していたようで、タロウの視線に気づきゆっくりと頷いた、
「そっか、じゃ、エレインさん、やってしまおうか」
タロウが声をかけるとそうですねとエレインが受け、テラがこちらへと階段へ誘う、しかし、
「あっ、フェナさん、どうしたの?」
料理人の一人が大声を上げたようで、エッと全員の視線が声の主に向かう、
「あら、義兄さん、久しぶりー」
フェナの甲高い明るい声が響いた、義兄さん?と目を細める奥様達、どうやら今日は話のネタが量産される日であるらしい、ティルとティルの父も恰好の餌食であるが、フェナの兄となるとこれもまた垂涎のネタである、
「いや、久しぶりって、えっ、ここで働いてるの?」
「そうよー、色々あってねー、働きやすいのよ」
「えっ、だって、子供が小さいうちはどうのこうのって言ってなかったか?ブロースもフロールも小さいだろ、まだ」
「そうねー、それがねー・・・」
と明るく続けるフェナ、しかし皆の視線が集まっている事に気付き、アッと口元に手を当て、
「・・・ほら、仕事で来たんでしょ、詳しい話はその内ね」
と眉を顰める、アッと振り返るフェナの義兄、奥様達の爛々と輝く視線と不思議そうな若者の視線、興味無さそうに手持ち無沙汰で立ち尽くす男達、これは不味いと頬を引きつらせ、
「そっ、そだね、うん、じゃ・・・その内」
アセアセと振り返る、
「そうね、義姉さんと一緒に来なさいよ、子供達も暫く会ってないわね」
「だな、うん、顔出すよ」
とその場を一歩離れるも微動だにしない観衆である、あちゃーと顔を顰めるフェナの義兄、
「あっ、じゃ、フェナさん、まだ試食してない人の分、さっきみたいに切り分けてもらえる?」
タロウがその妙な沈黙を破る、ハイと上擦った甲高い声を上げるフェナ、テラもアッと思い出し、
「さっ、こちらへ」
と階段に足をかける、やっとぞろぞろと動き出す男達、バツが悪そうにそれに従うフェナの義兄である、
「じゃ、マンネルさんも上でいいね、フェナさん、どんどん焼いてもらって、それと・・・まぁ、座学はね、すぐに終わると思うから、で、半端な生地も調理を続けてもらって、ほら、皆さんもゆっくり食べたいでしょ?」
タロウがやっと動き出した従業員に声をかける、
「いいんですか?」
奥様の一人が目を丸くする、
「勿論だよ、ただ・・・そだねー、午後には偉い人達も来るからね、俺の一存ではどうもできないけど・・・うん、まぁその時はその時かな、取り合えず大量に焼いてしまって、余るくらい、で、余ったら持って帰っていいって事にしようか」
ヤッターと素直に歓声を上げる奥様達、フェナも嬉しそうに微笑む、
「じゃ、宜しく、他には・・・まぁ、そんなもんかな」
タロウは取り合えずこんなもんかと手を拭いながら階段へ向かう、その後を静かに追うリンド、どうやら今日は監督役らしい、マンネルにカトカら講義に出席する者達も階段を上がり、王家の料理人たちも手を洗って下ろしていた荷物を肩に掛け気合を入れ直し階段へ向かう、一階に残ったのは奥様達のみになる、となれば早速、
「なに?さっきの人オニイサン?」
「どういう関係の人?」
「実の兄ってやつ?」
早速と餌食になるフェナ、あーこうなるかーとフェナはジロリと同僚を睨みつけ、
「義兄ってやつよ、死んだ旦那の兄さん」
「あら、そうなの?」
「でも料理人さんでしょ?」
「そうよねー、で、なに?どういうの?」
「結構いい男よね」
「それ言ったら、ティルさんのお父さんでしょ」
「それよそれー」
大好物をぶら下げられて興奮を隠しきれない奥様達、あーめんどくさい事になったと思いつつ、まぁこういう事もあるよねと呆れた笑みを浮かべるフェナであった、そして一行が三階の教室に入り、なるほどこれは良い部屋だと男達が腰を下ろし黒板を準備していると、
「失礼します」
サビナがバタバタと階段を駆け上がってきた、しかしその声は届かない、ほぼほぼ完璧に遮音された部屋である、サビナはアッと呻いてテラに駆け寄り何やら話し込んでおり、タロウは黒板を前にしてショーケースからビーカーを取り出していたところで、
「すいませんタロウさん」
サビナとテラがそっとタロウに近寄る、
「どした?」
タロウが振り返る、あのですねとサビナが続けようとしたところで、タロウの視界に入ったのが階段からこちらを覗く姿勢の良い中年の女性達で、どっかで見たなとタロウは思い、アッとすぐに気付いた、
「・・・そういう事?」
ニコリとサビナを見下ろすタロウ、タロウの視線に気づいてサビナも振り返る、すぐにタロウを向くと、
「そういう事です・・・」
申し訳なさそうに微笑む、
「うん、理解した、構わないよ、エレインさんとテラさんが良ければだけど」
とテラを窺うタロウ、テラは構いませんよと笑顔で頷き、エレインもなにかあったのかと振り返るもタロウ同様階段の人物に気付いたらしい、まぁと微笑みつつそうなるかと理解したようで、
「ありがとうございます、席は・・・」
「まだありますね、後ろの方になっちゃいますが、従業員と替わりましょう」
テラが教室の後方に向かう、
「ん、じゃ、先生方が落ち着いたら講義を始めてしまうから」
ニコリと微笑むタロウ、サビナが再びありがとうございますと頭を下げて階段へ向かう、その御婦人方は学園の講師達であった、それも生活科の講師達である、タロウも何度か見かけたなと覚えていた面々で、流石メイドを教育しているとなれば厳格な身形とキッチリとした髪型、背筋もビシっと伸びている、やっぱり違うんだなーとタロウも感心する程であった、そしてサビナと講師達が教室に入ればミーンらがビシッとばかりに背筋を伸ばして頭を下げて迎えている、なんだなんだと振り返る料理人達、どうやらミーン達の恩師になるのであろうか、御夫人達はニコニコと嬉しそうに三人と軽く会話を交わして勧められるままに腰を下ろした、そしてミーン達も改めて後方の席に着いたようで、さてこんなもんかなとタロウは教室内を見渡し、
「はい、では・・・今日は皆さん急にね、こんな事になってしまって」
と口を開いた瞬間にフェナがひょいと階段から顔を出す、あっとタロウは気付いて、
「まずは試食ですね、まだ実際に口にしていない方もいらっしゃいますから、先に、ついでにお茶もかな?」
やれやれ始めるまでが大変だと苦笑してしまうのであった。
その頃寮である、
「ソフィアー、いるー」
ユーリがふらりと食堂に下りて来た、
「どうかした?」
ヒョイと顔を上げるソフィア、ソフィアも定型業務である掃除を終え食堂に戻って来た所で、さてこの散らかされた食堂をどうしてやろうかと腰に手を当て悩んでいた所である、
「ちょっとねー、知恵貸しなさい」
めんどくさそうに頭をボリボリとかくユーリ、
「知恵?」
「そうよー、折角だからあんたにも一枚噛ませてあげるわ」
「なによそれ?」
「いいから、って、なんだこりゃ?」
ユーリの視線が炬燵に向かい、ピタリと足を止めてしまう、今日からすっかり日常への回帰となる、となれば朝から子供達が集まっており、それはそれで構わないのであるが問題は管理者であり教師となるべき人物が居らず、今日はニコリーネがソウザイ店が忙しそうだからと子供達の相手を買って出ていた、そして今その子供達とニコリーネは内庭でキャーキャーと叫び声を上げている、お絵描きに飽きた頃合いでミナがカマクラがあったと叫び、掃除中であったソフィアの了解を得て遊びに出てしまったのである、無論ニコリーネも一緒でレインも一緒である、その後ソフィアが食堂に下りてみればこの有様であった、大量の黒板と白墨、襤褸布が乱雑に放り出されており、ソフィアとしてはこれは叱るべきだなと少しばかり立腹していた所である、
「そのままよ、まったくどうしてやろうかしら」
ムスッと答えるソフィア、あーそういう事かーと内庭から響く子供達の歓声に苦笑するユーリである、
「まぁ・・・子供らしいっちゃらしいわねー」
やれやれとユーリは炬燵は諦めてテーブルに向かう、
「そうだけどね、まぁ、そういうもんか」
ソフィアも笑顔を見せた、ユーリの言う通り子供らしいと言えば子供らしい、そういうもんだとここは後からしっかり叱る事として、
「で、なにさ?」
「ん、これ昨日少し話したでしょ」
ユーリがシャーレを幾つかテーブルに並べる、
「・・・あー・・・なんだっけ、魔法石にインクを混ぜたとか?」
「それよ、正確には魔法石の粉末ね」
「どうでもいいわよ、で、なに?」
「どう思う?」
ニヤリとソフィアを見上げるユーリ、そういう事かとソフィアもユーリの隣りに腰を下ろす、
「どう思うって言われてもなー」
シャーレの一つを手にして覗き込むソフィア、昨晩の夕食後研究所の面々にタロウとソフィアが捕まり少しばかり話し込んでいる、そりゃまた便利になるわねーとソフィアは素っ気なく、タロウはタロウで好きにすればいいよと笑顔で突き放していた、こいつらはとユーリは二人を睨みつけ、カトカとサビナも想像通りの反応だなーと苦笑していたりする、
「あんたから見たらどうよ、私としては使えると思っているんだけどさ」
「それはだって・・・タロウさんも言ってたじゃない、生かすも殺すもこれから次第でしょ」
「そうだけどね、あんただって嫌いじゃないでしょ」
「そりゃまぁ、そうだけど・・・」
チラリとユーリを睨んでシャーレに視線を戻すソフィア、
「まぁ、何ができるかとか、どう使えるかってのは今後の研究次第なのはそうなんだけど、ほら、無色の魔法石の活用を思いついたあんたなら何かあるかと思ってね」
「・・・活用って言われてもな・・・あれはだってやったらできたってだけよ」
「それでもよ、普通思わないでしょ、魔力を吸収させたり水を溜めたりなんて」
「そうかしら?」
「普通はね」
ムスーっと鼻息を吐き出すユーリ、この無色の魔法石に関しては何気にソフィアが上手い事使いこなしている、二日に一度は三階の樽に仕掛けられた魔法石を回収し、井戸のそれと交換しており、さらには赤色の魔法石で毎日のように調理をしているのだ、正直興味が無い訳が無いと幼馴染であるユーリは感じており、またそのように確信している、こうしてすっとぼけているのはめんどくさいからであり、少し気が向けば回りを振り回し始めるのはタロウとよく似た性分で、よくよくこいつらは似た者夫婦だと呆れていたりする、
「ふつーねー・・・」
気の無い溜息をつくソフィア、しかしその目はシャーレに注がれたまま何やら考えている様子で、
「これとこれって何が違うの?」
と別のシャーレにも手を伸ばす、
「分量ね、正確には量って無いけど、インクの量を増やしたり減らしたり、で、これは魔力を垂らしたやつね」
「水は?」
「まだ試してないわ、インクがちゃんと固まらないと溶けちゃうから」
「そっか、でも、あのインクって・・・水に溶けたかしら?」
「少しはね」
「そうだっけ?」
「そうよ、忘れたの?」
「・・・んー・・・覚えてない」
「なに?もう耄碌した?」
「かもねー、ほら、細かい事は気にしない主義だからー」
「言ってなさいよ、で、どう?」
「・・・そうねー・・・」
数個のシャーレを見比べるソフィア、沈黙でもってその続きを待つユーリ、そして、
「このインクを変えた方がいいんじゃない?」
ソフィアがゆっくりと首を傾げる、
「どういう意味?」
「ほら、タロウさんも言ってたでしょ、混ざらないものはどうしたって混ざらないって」
「そうだけど」
「だから・・・いや、違うわね、逆よ逆」
「どう逆なのよ」
「・・・どう逆なのかしら?」
思わず呟くソフィア、ハアッ?と頬を引きつらせるユーリ、
「逆じゃないわね・・・昨日ね、あんたも食べたでしょ、パンにチーズ乗せたやつ」
「急に何よ・・・まぁ、食べたし・・・美味しかったけど・・・」
「よねー、でね、タロウさんはね、あれに野菜とか肉とか乗っけても美味いぞって言っててね、今日あたりやろうと思ってたんだけど、鉄の箱もっていかれちゃってねー」
「なによそれ?」
「でね、今朝も食べたでしょフリカケ?」
「食べたけど・・・」
「美味しいわよねー、あれも」
「そりゃ美味しかったけどさ・・・エッ・・・」
ユーリが目を丸くしてソフィアを見つめる、ソフィアはニヤーとユーリを見つめ、
「わかった?・・・このインクをね、もっとこうなんていうかドロドロにして、で、半分乾燥させてそこに魔法石をふりかけるってのはどう?薄い膜みたいにならないかなって・・・それであれば・・・多分だけど、インクに溶かすっていう感じでも、インクで固めるっていう感じでもないし、何かに使えないかなって思うんだけど」
どうかしら?と続けるソフィアであった。
「タロウ様、御無沙汰しております」
笑顔でタロウに近寄る男が一人、
「あっ、お久しぶりです、そっか、そうなりますよねー」
ニコリと微笑むタロウ、その男は伯爵家の料理長であった、何度か顔を合わせ指導もしているその人で、
「またとんでもない物を紹介して頂いたようで」
ニコニコと微笑む料理長、
「そのようですねー、すっかりお祭り騒ぎですよ」
タロウは口元を引き締め苦笑いである、で、どういう事かと詳しく聞き出そうとする料理長、ティルとミーンも料理長と面識がある為短い挨拶を交わす、他の料理人達はエレインとテラの案内で店内に並んだパンやら発酵中のそれを確認しており、タロウは、
「まぁ、詳しくはしっかりと座学を行いますので・・・あっ、でもこれで全員揃ったのかな?」
とヒョイと首を伸ばす、リンドが壁際に控え全体を見渡していたようで、タロウの視線に気づきゆっくりと頷いた、
「そっか、じゃ、エレインさん、やってしまおうか」
タロウが声をかけるとそうですねとエレインが受け、テラがこちらへと階段へ誘う、しかし、
「あっ、フェナさん、どうしたの?」
料理人の一人が大声を上げたようで、エッと全員の視線が声の主に向かう、
「あら、義兄さん、久しぶりー」
フェナの甲高い明るい声が響いた、義兄さん?と目を細める奥様達、どうやら今日は話のネタが量産される日であるらしい、ティルとティルの父も恰好の餌食であるが、フェナの兄となるとこれもまた垂涎のネタである、
「いや、久しぶりって、えっ、ここで働いてるの?」
「そうよー、色々あってねー、働きやすいのよ」
「えっ、だって、子供が小さいうちはどうのこうのって言ってなかったか?ブロースもフロールも小さいだろ、まだ」
「そうねー、それがねー・・・」
と明るく続けるフェナ、しかし皆の視線が集まっている事に気付き、アッと口元に手を当て、
「・・・ほら、仕事で来たんでしょ、詳しい話はその内ね」
と眉を顰める、アッと振り返るフェナの義兄、奥様達の爛々と輝く視線と不思議そうな若者の視線、興味無さそうに手持ち無沙汰で立ち尽くす男達、これは不味いと頬を引きつらせ、
「そっ、そだね、うん、じゃ・・・その内」
アセアセと振り返る、
「そうね、義姉さんと一緒に来なさいよ、子供達も暫く会ってないわね」
「だな、うん、顔出すよ」
とその場を一歩離れるも微動だにしない観衆である、あちゃーと顔を顰めるフェナの義兄、
「あっ、じゃ、フェナさん、まだ試食してない人の分、さっきみたいに切り分けてもらえる?」
タロウがその妙な沈黙を破る、ハイと上擦った甲高い声を上げるフェナ、テラもアッと思い出し、
「さっ、こちらへ」
と階段に足をかける、やっとぞろぞろと動き出す男達、バツが悪そうにそれに従うフェナの義兄である、
「じゃ、マンネルさんも上でいいね、フェナさん、どんどん焼いてもらって、それと・・・まぁ、座学はね、すぐに終わると思うから、で、半端な生地も調理を続けてもらって、ほら、皆さんもゆっくり食べたいでしょ?」
タロウがやっと動き出した従業員に声をかける、
「いいんですか?」
奥様の一人が目を丸くする、
「勿論だよ、ただ・・・そだねー、午後には偉い人達も来るからね、俺の一存ではどうもできないけど・・・うん、まぁその時はその時かな、取り合えず大量に焼いてしまって、余るくらい、で、余ったら持って帰っていいって事にしようか」
ヤッターと素直に歓声を上げる奥様達、フェナも嬉しそうに微笑む、
「じゃ、宜しく、他には・・・まぁ、そんなもんかな」
タロウは取り合えずこんなもんかと手を拭いながら階段へ向かう、その後を静かに追うリンド、どうやら今日は監督役らしい、マンネルにカトカら講義に出席する者達も階段を上がり、王家の料理人たちも手を洗って下ろしていた荷物を肩に掛け気合を入れ直し階段へ向かう、一階に残ったのは奥様達のみになる、となれば早速、
「なに?さっきの人オニイサン?」
「どういう関係の人?」
「実の兄ってやつ?」
早速と餌食になるフェナ、あーこうなるかーとフェナはジロリと同僚を睨みつけ、
「義兄ってやつよ、死んだ旦那の兄さん」
「あら、そうなの?」
「でも料理人さんでしょ?」
「そうよねー、で、なに?どういうの?」
「結構いい男よね」
「それ言ったら、ティルさんのお父さんでしょ」
「それよそれー」
大好物をぶら下げられて興奮を隠しきれない奥様達、あーめんどくさい事になったと思いつつ、まぁこういう事もあるよねと呆れた笑みを浮かべるフェナであった、そして一行が三階の教室に入り、なるほどこれは良い部屋だと男達が腰を下ろし黒板を準備していると、
「失礼します」
サビナがバタバタと階段を駆け上がってきた、しかしその声は届かない、ほぼほぼ完璧に遮音された部屋である、サビナはアッと呻いてテラに駆け寄り何やら話し込んでおり、タロウは黒板を前にしてショーケースからビーカーを取り出していたところで、
「すいませんタロウさん」
サビナとテラがそっとタロウに近寄る、
「どした?」
タロウが振り返る、あのですねとサビナが続けようとしたところで、タロウの視界に入ったのが階段からこちらを覗く姿勢の良い中年の女性達で、どっかで見たなとタロウは思い、アッとすぐに気付いた、
「・・・そういう事?」
ニコリとサビナを見下ろすタロウ、タロウの視線に気づいてサビナも振り返る、すぐにタロウを向くと、
「そういう事です・・・」
申し訳なさそうに微笑む、
「うん、理解した、構わないよ、エレインさんとテラさんが良ければだけど」
とテラを窺うタロウ、テラは構いませんよと笑顔で頷き、エレインもなにかあったのかと振り返るもタロウ同様階段の人物に気付いたらしい、まぁと微笑みつつそうなるかと理解したようで、
「ありがとうございます、席は・・・」
「まだありますね、後ろの方になっちゃいますが、従業員と替わりましょう」
テラが教室の後方に向かう、
「ん、じゃ、先生方が落ち着いたら講義を始めてしまうから」
ニコリと微笑むタロウ、サビナが再びありがとうございますと頭を下げて階段へ向かう、その御婦人方は学園の講師達であった、それも生活科の講師達である、タロウも何度か見かけたなと覚えていた面々で、流石メイドを教育しているとなれば厳格な身形とキッチリとした髪型、背筋もビシっと伸びている、やっぱり違うんだなーとタロウも感心する程であった、そしてサビナと講師達が教室に入ればミーンらがビシッとばかりに背筋を伸ばして頭を下げて迎えている、なんだなんだと振り返る料理人達、どうやらミーン達の恩師になるのであろうか、御夫人達はニコニコと嬉しそうに三人と軽く会話を交わして勧められるままに腰を下ろした、そしてミーン達も改めて後方の席に着いたようで、さてこんなもんかなとタロウは教室内を見渡し、
「はい、では・・・今日は皆さん急にね、こんな事になってしまって」
と口を開いた瞬間にフェナがひょいと階段から顔を出す、あっとタロウは気付いて、
「まずは試食ですね、まだ実際に口にしていない方もいらっしゃいますから、先に、ついでにお茶もかな?」
やれやれ始めるまでが大変だと苦笑してしまうのであった。
その頃寮である、
「ソフィアー、いるー」
ユーリがふらりと食堂に下りて来た、
「どうかした?」
ヒョイと顔を上げるソフィア、ソフィアも定型業務である掃除を終え食堂に戻って来た所で、さてこの散らかされた食堂をどうしてやろうかと腰に手を当て悩んでいた所である、
「ちょっとねー、知恵貸しなさい」
めんどくさそうに頭をボリボリとかくユーリ、
「知恵?」
「そうよー、折角だからあんたにも一枚噛ませてあげるわ」
「なによそれ?」
「いいから、って、なんだこりゃ?」
ユーリの視線が炬燵に向かい、ピタリと足を止めてしまう、今日からすっかり日常への回帰となる、となれば朝から子供達が集まっており、それはそれで構わないのであるが問題は管理者であり教師となるべき人物が居らず、今日はニコリーネがソウザイ店が忙しそうだからと子供達の相手を買って出ていた、そして今その子供達とニコリーネは内庭でキャーキャーと叫び声を上げている、お絵描きに飽きた頃合いでミナがカマクラがあったと叫び、掃除中であったソフィアの了解を得て遊びに出てしまったのである、無論ニコリーネも一緒でレインも一緒である、その後ソフィアが食堂に下りてみればこの有様であった、大量の黒板と白墨、襤褸布が乱雑に放り出されており、ソフィアとしてはこれは叱るべきだなと少しばかり立腹していた所である、
「そのままよ、まったくどうしてやろうかしら」
ムスッと答えるソフィア、あーそういう事かーと内庭から響く子供達の歓声に苦笑するユーリである、
「まぁ・・・子供らしいっちゃらしいわねー」
やれやれとユーリは炬燵は諦めてテーブルに向かう、
「そうだけどね、まぁ、そういうもんか」
ソフィアも笑顔を見せた、ユーリの言う通り子供らしいと言えば子供らしい、そういうもんだとここは後からしっかり叱る事として、
「で、なにさ?」
「ん、これ昨日少し話したでしょ」
ユーリがシャーレを幾つかテーブルに並べる、
「・・・あー・・・なんだっけ、魔法石にインクを混ぜたとか?」
「それよ、正確には魔法石の粉末ね」
「どうでもいいわよ、で、なに?」
「どう思う?」
ニヤリとソフィアを見上げるユーリ、そういう事かとソフィアもユーリの隣りに腰を下ろす、
「どう思うって言われてもなー」
シャーレの一つを手にして覗き込むソフィア、昨晩の夕食後研究所の面々にタロウとソフィアが捕まり少しばかり話し込んでいる、そりゃまた便利になるわねーとソフィアは素っ気なく、タロウはタロウで好きにすればいいよと笑顔で突き放していた、こいつらはとユーリは二人を睨みつけ、カトカとサビナも想像通りの反応だなーと苦笑していたりする、
「あんたから見たらどうよ、私としては使えると思っているんだけどさ」
「それはだって・・・タロウさんも言ってたじゃない、生かすも殺すもこれから次第でしょ」
「そうだけどね、あんただって嫌いじゃないでしょ」
「そりゃまぁ、そうだけど・・・」
チラリとユーリを睨んでシャーレに視線を戻すソフィア、
「まぁ、何ができるかとか、どう使えるかってのは今後の研究次第なのはそうなんだけど、ほら、無色の魔法石の活用を思いついたあんたなら何かあるかと思ってね」
「・・・活用って言われてもな・・・あれはだってやったらできたってだけよ」
「それでもよ、普通思わないでしょ、魔力を吸収させたり水を溜めたりなんて」
「そうかしら?」
「普通はね」
ムスーっと鼻息を吐き出すユーリ、この無色の魔法石に関しては何気にソフィアが上手い事使いこなしている、二日に一度は三階の樽に仕掛けられた魔法石を回収し、井戸のそれと交換しており、さらには赤色の魔法石で毎日のように調理をしているのだ、正直興味が無い訳が無いと幼馴染であるユーリは感じており、またそのように確信している、こうしてすっとぼけているのはめんどくさいからであり、少し気が向けば回りを振り回し始めるのはタロウとよく似た性分で、よくよくこいつらは似た者夫婦だと呆れていたりする、
「ふつーねー・・・」
気の無い溜息をつくソフィア、しかしその目はシャーレに注がれたまま何やら考えている様子で、
「これとこれって何が違うの?」
と別のシャーレにも手を伸ばす、
「分量ね、正確には量って無いけど、インクの量を増やしたり減らしたり、で、これは魔力を垂らしたやつね」
「水は?」
「まだ試してないわ、インクがちゃんと固まらないと溶けちゃうから」
「そっか、でも、あのインクって・・・水に溶けたかしら?」
「少しはね」
「そうだっけ?」
「そうよ、忘れたの?」
「・・・んー・・・覚えてない」
「なに?もう耄碌した?」
「かもねー、ほら、細かい事は気にしない主義だからー」
「言ってなさいよ、で、どう?」
「・・・そうねー・・・」
数個のシャーレを見比べるソフィア、沈黙でもってその続きを待つユーリ、そして、
「このインクを変えた方がいいんじゃない?」
ソフィアがゆっくりと首を傾げる、
「どういう意味?」
「ほら、タロウさんも言ってたでしょ、混ざらないものはどうしたって混ざらないって」
「そうだけど」
「だから・・・いや、違うわね、逆よ逆」
「どう逆なのよ」
「・・・どう逆なのかしら?」
思わず呟くソフィア、ハアッ?と頬を引きつらせるユーリ、
「逆じゃないわね・・・昨日ね、あんたも食べたでしょ、パンにチーズ乗せたやつ」
「急に何よ・・・まぁ、食べたし・・・美味しかったけど・・・」
「よねー、でね、タロウさんはね、あれに野菜とか肉とか乗っけても美味いぞって言っててね、今日あたりやろうと思ってたんだけど、鉄の箱もっていかれちゃってねー」
「なによそれ?」
「でね、今朝も食べたでしょフリカケ?」
「食べたけど・・・」
「美味しいわよねー、あれも」
「そりゃ美味しかったけどさ・・・エッ・・・」
ユーリが目を丸くしてソフィアを見つめる、ソフィアはニヤーとユーリを見つめ、
「わかった?・・・このインクをね、もっとこうなんていうかドロドロにして、で、半分乾燥させてそこに魔法石をふりかけるってのはどう?薄い膜みたいにならないかなって・・・それであれば・・・多分だけど、インクに溶かすっていう感じでも、インクで固めるっていう感じでもないし、何かに使えないかなって思うんだけど」
どうかしら?と続けるソフィアであった。
0
あなたにおすすめの小説
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?
ばふぉりん
ファンタジー
中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!
「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」
「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」
これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。
<前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです>
注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。
(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』
とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~
-第二部(11章~20章)追加しました-
【あらすじ】
「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」
王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる