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本編
80話 儚い日常 その28
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「あっ、大丈夫だよ、君らはいつも通り・・・ってわけにはいかないか・・・」
いらんことを言ったなと申し訳なさそうに顔を上げるタロウ、ソフィアとユーリがギンとタロウを睨みつけ、他の面々は不安そうに眉をひそめている、
「・・・いかないですよ」
テラが小さく呟く、ですねと頷くエレインとオリビアとグルジア、
「そうよねー・・・」
ヌフーと鼻息を荒くするユーリである、
「お前さんはだって、呼び出されるぞ」
タロウがスッと視線を向け、
「でしょうね」
ソフィアがニヤリと微笑みユーリに顔を向けた、そうなんだと女性達の視線もユーリに向かう、
「分かってるわよ、クロノスからもそう言われてるしね」
フンと鼻息で返すユーリ、そうなんだーと呆気にとられるのはエルマとミシェレである、特にミシェレはユーリやソフィア、タロウらとクロノス達との関係をまるで理解していない、故にクロノスって王太子殿下の人だよね、確か・・・と、今一つ理解できておらず、しかし王妃であるマルルースや恩人であるフィロメナはあの人達からは学ぶべき事が多いけど、あの態度は真似ないようにとよくわからない忠告を受けている、何がどうしてそうなのか今もって理解していないが、どうやらそれだけ王妃との距離が近いらしく、フィロメナとも懇意にしているらしい、本当によくわからない人達だなーと改めて感じてしまうミシェレであった、
「そうなんですか?」
カトカとサビナが不安そうにユーリを見つめ、ゾーイもそうなるのかーと難しい面相で俯いた、こちらに世話になる前ロキュスからクロノス周りの関係者についてある程度聞いている、ユーリとソフィア、タロウはクロノスの盟友であり、冒険者時代の仲間で、その実力は確かなものであるらしい、しかし、消えた英雄とされる人物とは別であると明言されており、もしかしたらクロノスの英雄譚はまるっと創作なのかなと思った記憶のあるゾーイであった、
「まぁね、あっ、大丈夫よ、前線に立てって話しじゃないからさ、ほら、私ってば天才じゃん?そりゃほっとけないのよクロノス様としてはねー」
ニヤーと微笑むユーリ、ウワーっと目を細めるカトカとサビナ、それはそうなのかなと不思議そうに首を傾げるエルマ他、
「何言ってるのよ・・・」
目を細め白け顔のソフィア、
「だなー、ほら、そこはカトカさんかサビナさんがさ、ちゃんと言ってあげないと可哀そうだよ」
タロウも呆れたように微笑む、サッと振り返るカトカとサビナ、その目には何を言えと?との疑問がありありと浮かんでおり、タロウはもうと苦笑して、
「自惚れが過ぎるとか、天才ってなんですか?とか、そんな感じ?折角ユーリが場を和ませようと冗談を言ってくれたんだよ、ちゃんと笑いに変えてあげないと、ユーリが可哀そうでしょ」
「可哀そうってなによ」
ムキャっと叫ぶユーリ、それもそうだとハッと顔を見合わせるカトカとサビナ、もうと微笑む他一同、
「可哀そうだろ、俺の国じゃさ、ボケたのに突っ込まないのは礼儀知らずって馬鹿にされるんだぞ」
「なによそれ、それこそどういう意味よ」
「そのままだよ、エッ、もしかしてユーリ先生ってば、自分で自分の事天才・・・なんて思ってたの?本気で?」
「そっ、それは冗談よ・・・」
「だろー、だからちゃんと指摘してあげないとださ」
「・・・そりゃそう・・・まぁ、いいわ、とりあえず私の事は平気だから、ほっといて、まぁ・・・こっちに関わらなくなるかもだけど、それも数日よ、多分ね」
フンとそっぽを向くユーリ、やっとウフフと笑い声が起こる、
「あっ、でも、あれですか、学園の生徒達も手伝う感じですか?」
グルジアがそう言えばと話題を変えた、オリビアもウンウンと大きく頷いている、
「そだねー・・・でも、あくまで後方任務だね、負傷兵のお世話になるのかな?」
「ですよね、今日もほら、一階の教室は全部病室って言うんですか?机とか全部片付けました」
「ありゃま、仕事速いね」
「あっ、タロウさんがどうのって噂になってましたけど・・・」
オリビアがゆっくりと首を傾げる、
「噂って・・・えっ、俺が?」
「はい、ほらもう、学園でもタロウさんは有名人ですよ、二回も講義をやったじゃないですか」
グルジアが楽しそうに微笑む、
「エッ・・・」
愕然と目を見開くタロウ、
「それにほら、毎回偉い人達が同席してたりしますし、だってこんな頻繁に王家の方々を見かけるなんてまず無いですよ、こっちに住まわれているのかなって噂になってますし、学園長とか事務長とかとも直接話してるし、あっ、ウシとブタがどうのっていうのもありますし」
「・・・あー・・・そりゃそうなるか・・・」
やれやれと口元を歪ませるタロウ、そりゃそうなるだろうなとニヤーと微笑むユーリとソフィア、少々調子に乗ってやり過ぎていたようだと反省するしかないタロウである、今朝もその点で反省もしたのであるが、すっかり忘れていたりする、まぁ、やってしまったものは仕方が無い、一応これでも大事な一線は守っているつもりであったりする、その一線だけはソフィアは勿論、ユーリにもクロノスにも話していない、タロウが知る限り知っているのはレインだけである、
「あっ、そうだ、でね、エレインさんね」
と話題を変えるタロウ、
「はい、なんですか?」
キョトンと問い返すエレイン、
「あの、寝間着ね、ほら、姫様に作るって言ったやつ」
「あっ、はい、何かあります?」
スッと背筋を伸ばすエレイン、ネマキとパトリシアの名前を出されれば眠気も醒めるというもので、実際少々眠いなーと眠気に抗いつつ打合せをしている最中であったりした、
「うん、ミナのあれを見て思い出したんだけど、ほら、出産祝いとかって贈らないの?」
「出産祝い?」
ン?と首を傾げるエレイン、ソフィアとユーリ、エルマにテラ、無論他の女性達も首を傾げる、
「エッ・・・なんか変な事言った?」
タロウも首を傾げてしまう、
「えっと・・・出産した時のお祝い?」
ソフィアが再確認する、
「そっ、その通りなんだけど、エッ、贈らないもの?」
これは拙い事を言ったかなとタロウは焦りだす、
「・・・聞いた事・・・無いですよ・・・」
オリビアがエレインに確認し、コクリと頷くエレイン、その隣りのグルジアもテラもんーと眉を顰め、エルマとミシェレも何だそりゃとばかりに顔を見合わせている、
「ありゃ・・・これもか・・・」
これはやっぱり拙かったなと口元を引き締めるタロウ、王国の文化には慣れ親しんだつもりであるが、こういう基本的な事で大きくズレる事がある、ソフィアとユーリに出会った頃に何度かそのズレが発覚し、何よそれと真顔で問い返された事があった、例えば誕生日である、タロウがミナの誕生日のお祝いをしないとなーと呟いたところ、なんでそんなものを祝うのかと心底不思議そうに問い返され、よくよく聞けば王国では誕生日を祝う習慣が無いらしい、事情を聞くに乳幼児の死亡率が高く、家門迎えの年齢に達するまでは子供は死ぬものと割り切っているらしいのである、恐らくそう考えなければやってられないのであろう、となるとある意味で家門迎えの祭事が誕生日を祝う祭事となり、大人として家門に迎えられるその日こそ、その子供の正式な社会内での誕生日となっているのであろう、さらにタロウが考えるに、それだけ乳幼児が死ぬとなると確かに出産の祝い等という儀礼が無いのもなんとなく理解できる、出産そのものはめでたい事と認識されているらしいが、その出産時の対応が何とも血生臭いのも問題かもしれない、無論、出産そのものは大変に血生臭い、それは経験も無いし、立ち会う事は可能であろうがその経験を得る事は無いタロウでさえ想像できるが、この時代の大きな問題、いや、医療も介護も保険も発達していない社会での産婆の役割、その産婆の持つ役割が重要となっている、新生児の障害の見極めである、五体満足で欠損が無く、そのまま生かしてもよいものかどうかを見極め、難しいようであればその場でヒネル、このヒネルというのが何を捻るのかは明言したくはないが、そういう事であり、障害を持って生まれた新生児はその場で始末されるもので、母親には死産と伝えられるのが通例のようである、これはソフィアから聞いた話であり、そのような場にタロウは立ち会ったことは無いが、なるほど、それも致し方ないのであろう、障害を持って生まれるとなればその子の世話で確実に大人一人分以上の労働力が失われるという事であり、その子が無事に成人したとしてもまともな労働力になる見込みもない、基本的に王国民の生活はカツカツであり、余裕は無い、生きている限り働き、働けなくなったら死ぬのが王国民の死生観であり、生涯に渡って他人の世話を必須とする者は生まれた段階で選別する必要があるのである、無論後天的な障害も多い、戦場で隻腕、隻脚になる者は多いし、病によって全盲になる事もあろう、イフナースの例やエルマの例を上げる必要も無く、様々な困難に遭遇するものであるが、この場合はそれでも何とか生きられるもので、その人物の生業にもよるし、人望にもよるが、少々苦労すれど生活は営める、また、場合によっては軍団から見舞金も支給され数年であれば無理せず暮らす事も可能らしい、なんとも世知辛い事であるが、これがこの国、いや、この世界の今の時代の常識となる、しかし、その産婆でも見抜けない障害がある、俗に言う知恵遅れという部類のそれで、この場合、その程度にもよるが単純な労働に従事し生活する事が可能な事例もあれば、ある程度余裕のある家であれば部屋から出さない場合もあるらしい、俗に言う座敷牢的なあれだなとタロウは理解した、なるほど、医療だの福祉だのが未発達の社会となればそうするしかないし、それが社会的にも正解なのであろう、健康に生まれたというその一事だけでも感謝しなければと思ったタロウであったりした、
「時々変な事言うわよねー」
ジローっとユーリがタロウを見つめ、
「時々かしら?」
ソフィアが不愉快そうに呟く、
「いつもね」
「そうね」
なんとも辛辣な物言いである、しかし他の女性達もこれには同意のようである、基本的にタロウの言う事は変である、しかしその内容が役に立つ事ばかりである為重宝し、一目置かれているだけなのだ、
「・・・悪かったよ・・・でもさ・・・俺の国だと割と普通だぞ、出産祝い」
「そうなの?」
「そうだよ・・・まぁ、色々事情はあるのは理解してるけど、だったらほら、少し時間を置いてからでもさ・・・それこそ、ほら、ミナの寝間着みたいなさ、乳児用の服?作ってあげればいいんじゃないかって思っただけでさ・・・」
ムスーと炬燵に顎を乗せるタロウ、何もそこまで責められる事では無いと思う、なにせ出産祝いである、出産を祝って何が悪いと心底思う、
「すいません、それって・・・」
エレインがスッと前のめりになる、
「簡単だよ、こっちではどういうのかな?おくるみとかって言わない?乳児用の下着・・・っていうか服っていうか、布?大きめのやつ?あと、ちゃんと服っぽいさ、手足の短いやつ・・・」
「はい、ありますね、あります」
嬉々として返すエレイン、
「でしょ、それこそタオル生地がいいと思うし、あっ、そっか、あれか、マリエッテちゃんみたいな感じか、あんな服?」
「はい、そっか・・・確かに、はい、タオル生地だと良さそうですね」
パーっと明るい顔となるエレイン、マリエッテの名前を出されれば興奮しないわけがない、あっ大丈夫かなと横目で警戒するオリビア、
「だね、ミナもねー、小さいときはお気に入りのおくるみでないと寝付かなくてなー・・・下手に洗えなくて難儀したもんだけど・・・今でも小さいけどさ・・・いや、充分でかくなったな、甘やかすのはよそう」
「あー・・・そうだったわねー・・・」
「うん、覚えてるわー」
懐かしそうに微笑むソフィアとユーリ、ヘーそうなんだーとつられて微笑む女性達、
「あっ、あのおくるみまだ持ってるの?」
ソフィアがスッとタロウを見つめる、
「ん?あるよー」
「あの生地も凄いわよねー、ちょっと見せなさい」
ニヤリと微笑むユーリ、
「えっ、だってもうボロボロだぞ」
「いいから、あんなに綺麗な染物見た事無いわよ」
「だからボロボロだって」
「いいから見せなさい」
ギロリとタロウを睨みつけるソフィアとユーリ、エーと小さく悲鳴を上げるタロウ、しかしまぁ確かにそれもそうか、言い出したのは俺だしなと渋々と懐を弄るタロウ、今度は何だと腰を上げる大人達、タロウはアッこれだと呟いてヌソリと取り出すと、
「わっ・・・想像以上にボロボロだな・・・」
小さな布切れをテーブルに広げた、ワッと集まる女性達、途端、
「ホントだ・・・綺麗な色ー」
「ねー、この緑って良く染めましたねー」
「ここの薄い赤も綺麗ですよー、こんな色見た事ない」
ニコリーネが悲鳴のような声を上げる、
「これ、これって革ですか?」
「あー・・・うん、そんなもんだと思う」
「タオル生地ですよね」
「でもすんごい繊細な感じ・・・」
「うん、上等な生地ですよね、これ」
口々に感想が飛び出す、ソフィアとユーリも覗き込んで懐かしいわねーと微笑んだ、
「まぁ・・・ならどうせだからこれを参考にして作ってみ、姫様のお子様にもだし、マリエッテちゃんにもさ」
ニヤリとエレインを見上げるタロウ、
「はい、はい、そうします・・・でも、こんな綺麗な色の生地は難しいですよ」
興奮しつつも冷静なエレインである、確かになーと頷く女性達、すると、
「あの、これって何ですか?模様みたいな・・・感じですけど・・・」
カトカがその一辺を指し示す、
「ん?あぁ、それね、ミナって読むんだ、故郷の文字だね」
エッとタロウを見つめる女性達、そうだったわねーと目を細めるソフィアとユーリ、
「ミナって読むんだけど、美しい・・・葉っぱ?・・・だとちょっと可愛くないな、菜・・・難しいな、ようは、あれだ、野菜とか収穫物の意味でね、健康に育って欲しいとかそういう意味あいかな?」
「この一文字でナなんですか?」
「そだねー」
「じゃ、前のこれがミ?」
「うん、こっちは簡単で、美しいって意味合い、だから、美しく健康に育って欲しいって意味で美菜?」
ヘーヘーヘーと感心の声が響き渡り、これにはソフィアもユーリも驚いた、そんな事は一言も教えてもらっていなかったからである、
「えっ、一文字でそこまで意味を込めるんですか?」
「そだね、俺の故郷だとそれが当たり前かな・・・」
「カッコイイー」
「ですねー」
「すごいな、なんだろ、なんかの模様かと思った」
「ですよね、ですよね」
「エッ、じゃタロウさんも意味があるんですか?名前に」
カトカがクワッとタロウを見つめる、
「まぁ・・・あるにはあるんだけど・・・それはほら、取り合えずこっちが先、でね、このおくるみなんだけど」
とその小さな乳児用の服を開き始めるタロウ、前の世界から齎された数少ない品であり、ミナにとってはほぼ唯一の真の家族との繋がりである、しかしもう、大して価値は無いものと思う、少しばかり問題はあれどミナは既にこちら側の住人で、戻る術もなさそうで、タロウとしてもすっかりこちらに骨を埋める覚悟は出来ていたりする、しかし、もう少しあがくべきかなと、そのおくるみの独特の感触、ナイロン生地の滑らかな柔らかさとビニール特有の冷たさ、久しぶりに見た漢字の違和感、不意に込み上げた郷愁に少しばかり戸惑うタロウであった。
いらんことを言ったなと申し訳なさそうに顔を上げるタロウ、ソフィアとユーリがギンとタロウを睨みつけ、他の面々は不安そうに眉をひそめている、
「・・・いかないですよ」
テラが小さく呟く、ですねと頷くエレインとオリビアとグルジア、
「そうよねー・・・」
ヌフーと鼻息を荒くするユーリである、
「お前さんはだって、呼び出されるぞ」
タロウがスッと視線を向け、
「でしょうね」
ソフィアがニヤリと微笑みユーリに顔を向けた、そうなんだと女性達の視線もユーリに向かう、
「分かってるわよ、クロノスからもそう言われてるしね」
フンと鼻息で返すユーリ、そうなんだーと呆気にとられるのはエルマとミシェレである、特にミシェレはユーリやソフィア、タロウらとクロノス達との関係をまるで理解していない、故にクロノスって王太子殿下の人だよね、確か・・・と、今一つ理解できておらず、しかし王妃であるマルルースや恩人であるフィロメナはあの人達からは学ぶべき事が多いけど、あの態度は真似ないようにとよくわからない忠告を受けている、何がどうしてそうなのか今もって理解していないが、どうやらそれだけ王妃との距離が近いらしく、フィロメナとも懇意にしているらしい、本当によくわからない人達だなーと改めて感じてしまうミシェレであった、
「そうなんですか?」
カトカとサビナが不安そうにユーリを見つめ、ゾーイもそうなるのかーと難しい面相で俯いた、こちらに世話になる前ロキュスからクロノス周りの関係者についてある程度聞いている、ユーリとソフィア、タロウはクロノスの盟友であり、冒険者時代の仲間で、その実力は確かなものであるらしい、しかし、消えた英雄とされる人物とは別であると明言されており、もしかしたらクロノスの英雄譚はまるっと創作なのかなと思った記憶のあるゾーイであった、
「まぁね、あっ、大丈夫よ、前線に立てって話しじゃないからさ、ほら、私ってば天才じゃん?そりゃほっとけないのよクロノス様としてはねー」
ニヤーと微笑むユーリ、ウワーっと目を細めるカトカとサビナ、それはそうなのかなと不思議そうに首を傾げるエルマ他、
「何言ってるのよ・・・」
目を細め白け顔のソフィア、
「だなー、ほら、そこはカトカさんかサビナさんがさ、ちゃんと言ってあげないと可哀そうだよ」
タロウも呆れたように微笑む、サッと振り返るカトカとサビナ、その目には何を言えと?との疑問がありありと浮かんでおり、タロウはもうと苦笑して、
「自惚れが過ぎるとか、天才ってなんですか?とか、そんな感じ?折角ユーリが場を和ませようと冗談を言ってくれたんだよ、ちゃんと笑いに変えてあげないと、ユーリが可哀そうでしょ」
「可哀そうってなによ」
ムキャっと叫ぶユーリ、それもそうだとハッと顔を見合わせるカトカとサビナ、もうと微笑む他一同、
「可哀そうだろ、俺の国じゃさ、ボケたのに突っ込まないのは礼儀知らずって馬鹿にされるんだぞ」
「なによそれ、それこそどういう意味よ」
「そのままだよ、エッ、もしかしてユーリ先生ってば、自分で自分の事天才・・・なんて思ってたの?本気で?」
「そっ、それは冗談よ・・・」
「だろー、だからちゃんと指摘してあげないとださ」
「・・・そりゃそう・・・まぁ、いいわ、とりあえず私の事は平気だから、ほっといて、まぁ・・・こっちに関わらなくなるかもだけど、それも数日よ、多分ね」
フンとそっぽを向くユーリ、やっとウフフと笑い声が起こる、
「あっ、でも、あれですか、学園の生徒達も手伝う感じですか?」
グルジアがそう言えばと話題を変えた、オリビアもウンウンと大きく頷いている、
「そだねー・・・でも、あくまで後方任務だね、負傷兵のお世話になるのかな?」
「ですよね、今日もほら、一階の教室は全部病室って言うんですか?机とか全部片付けました」
「ありゃま、仕事速いね」
「あっ、タロウさんがどうのって噂になってましたけど・・・」
オリビアがゆっくりと首を傾げる、
「噂って・・・えっ、俺が?」
「はい、ほらもう、学園でもタロウさんは有名人ですよ、二回も講義をやったじゃないですか」
グルジアが楽しそうに微笑む、
「エッ・・・」
愕然と目を見開くタロウ、
「それにほら、毎回偉い人達が同席してたりしますし、だってこんな頻繁に王家の方々を見かけるなんてまず無いですよ、こっちに住まわれているのかなって噂になってますし、学園長とか事務長とかとも直接話してるし、あっ、ウシとブタがどうのっていうのもありますし」
「・・・あー・・・そりゃそうなるか・・・」
やれやれと口元を歪ませるタロウ、そりゃそうなるだろうなとニヤーと微笑むユーリとソフィア、少々調子に乗ってやり過ぎていたようだと反省するしかないタロウである、今朝もその点で反省もしたのであるが、すっかり忘れていたりする、まぁ、やってしまったものは仕方が無い、一応これでも大事な一線は守っているつもりであったりする、その一線だけはソフィアは勿論、ユーリにもクロノスにも話していない、タロウが知る限り知っているのはレインだけである、
「あっ、そうだ、でね、エレインさんね」
と話題を変えるタロウ、
「はい、なんですか?」
キョトンと問い返すエレイン、
「あの、寝間着ね、ほら、姫様に作るって言ったやつ」
「あっ、はい、何かあります?」
スッと背筋を伸ばすエレイン、ネマキとパトリシアの名前を出されれば眠気も醒めるというもので、実際少々眠いなーと眠気に抗いつつ打合せをしている最中であったりした、
「うん、ミナのあれを見て思い出したんだけど、ほら、出産祝いとかって贈らないの?」
「出産祝い?」
ン?と首を傾げるエレイン、ソフィアとユーリ、エルマにテラ、無論他の女性達も首を傾げる、
「エッ・・・なんか変な事言った?」
タロウも首を傾げてしまう、
「えっと・・・出産した時のお祝い?」
ソフィアが再確認する、
「そっ、その通りなんだけど、エッ、贈らないもの?」
これは拙い事を言ったかなとタロウは焦りだす、
「・・・聞いた事・・・無いですよ・・・」
オリビアがエレインに確認し、コクリと頷くエレイン、その隣りのグルジアもテラもんーと眉を顰め、エルマとミシェレも何だそりゃとばかりに顔を見合わせている、
「ありゃ・・・これもか・・・」
これはやっぱり拙かったなと口元を引き締めるタロウ、王国の文化には慣れ親しんだつもりであるが、こういう基本的な事で大きくズレる事がある、ソフィアとユーリに出会った頃に何度かそのズレが発覚し、何よそれと真顔で問い返された事があった、例えば誕生日である、タロウがミナの誕生日のお祝いをしないとなーと呟いたところ、なんでそんなものを祝うのかと心底不思議そうに問い返され、よくよく聞けば王国では誕生日を祝う習慣が無いらしい、事情を聞くに乳幼児の死亡率が高く、家門迎えの年齢に達するまでは子供は死ぬものと割り切っているらしいのである、恐らくそう考えなければやってられないのであろう、となるとある意味で家門迎えの祭事が誕生日を祝う祭事となり、大人として家門に迎えられるその日こそ、その子供の正式な社会内での誕生日となっているのであろう、さらにタロウが考えるに、それだけ乳幼児が死ぬとなると確かに出産の祝い等という儀礼が無いのもなんとなく理解できる、出産そのものはめでたい事と認識されているらしいが、その出産時の対応が何とも血生臭いのも問題かもしれない、無論、出産そのものは大変に血生臭い、それは経験も無いし、立ち会う事は可能であろうがその経験を得る事は無いタロウでさえ想像できるが、この時代の大きな問題、いや、医療も介護も保険も発達していない社会での産婆の役割、その産婆の持つ役割が重要となっている、新生児の障害の見極めである、五体満足で欠損が無く、そのまま生かしてもよいものかどうかを見極め、難しいようであればその場でヒネル、このヒネルというのが何を捻るのかは明言したくはないが、そういう事であり、障害を持って生まれた新生児はその場で始末されるもので、母親には死産と伝えられるのが通例のようである、これはソフィアから聞いた話であり、そのような場にタロウは立ち会ったことは無いが、なるほど、それも致し方ないのであろう、障害を持って生まれるとなればその子の世話で確実に大人一人分以上の労働力が失われるという事であり、その子が無事に成人したとしてもまともな労働力になる見込みもない、基本的に王国民の生活はカツカツであり、余裕は無い、生きている限り働き、働けなくなったら死ぬのが王国民の死生観であり、生涯に渡って他人の世話を必須とする者は生まれた段階で選別する必要があるのである、無論後天的な障害も多い、戦場で隻腕、隻脚になる者は多いし、病によって全盲になる事もあろう、イフナースの例やエルマの例を上げる必要も無く、様々な困難に遭遇するものであるが、この場合はそれでも何とか生きられるもので、その人物の生業にもよるし、人望にもよるが、少々苦労すれど生活は営める、また、場合によっては軍団から見舞金も支給され数年であれば無理せず暮らす事も可能らしい、なんとも世知辛い事であるが、これがこの国、いや、この世界の今の時代の常識となる、しかし、その産婆でも見抜けない障害がある、俗に言う知恵遅れという部類のそれで、この場合、その程度にもよるが単純な労働に従事し生活する事が可能な事例もあれば、ある程度余裕のある家であれば部屋から出さない場合もあるらしい、俗に言う座敷牢的なあれだなとタロウは理解した、なるほど、医療だの福祉だのが未発達の社会となればそうするしかないし、それが社会的にも正解なのであろう、健康に生まれたというその一事だけでも感謝しなければと思ったタロウであったりした、
「時々変な事言うわよねー」
ジローっとユーリがタロウを見つめ、
「時々かしら?」
ソフィアが不愉快そうに呟く、
「いつもね」
「そうね」
なんとも辛辣な物言いである、しかし他の女性達もこれには同意のようである、基本的にタロウの言う事は変である、しかしその内容が役に立つ事ばかりである為重宝し、一目置かれているだけなのだ、
「・・・悪かったよ・・・でもさ・・・俺の国だと割と普通だぞ、出産祝い」
「そうなの?」
「そうだよ・・・まぁ、色々事情はあるのは理解してるけど、だったらほら、少し時間を置いてからでもさ・・・それこそ、ほら、ミナの寝間着みたいなさ、乳児用の服?作ってあげればいいんじゃないかって思っただけでさ・・・」
ムスーと炬燵に顎を乗せるタロウ、何もそこまで責められる事では無いと思う、なにせ出産祝いである、出産を祝って何が悪いと心底思う、
「すいません、それって・・・」
エレインがスッと前のめりになる、
「簡単だよ、こっちではどういうのかな?おくるみとかって言わない?乳児用の下着・・・っていうか服っていうか、布?大きめのやつ?あと、ちゃんと服っぽいさ、手足の短いやつ・・・」
「はい、ありますね、あります」
嬉々として返すエレイン、
「でしょ、それこそタオル生地がいいと思うし、あっ、そっか、あれか、マリエッテちゃんみたいな感じか、あんな服?」
「はい、そっか・・・確かに、はい、タオル生地だと良さそうですね」
パーっと明るい顔となるエレイン、マリエッテの名前を出されれば興奮しないわけがない、あっ大丈夫かなと横目で警戒するオリビア、
「だね、ミナもねー、小さいときはお気に入りのおくるみでないと寝付かなくてなー・・・下手に洗えなくて難儀したもんだけど・・・今でも小さいけどさ・・・いや、充分でかくなったな、甘やかすのはよそう」
「あー・・・そうだったわねー・・・」
「うん、覚えてるわー」
懐かしそうに微笑むソフィアとユーリ、ヘーそうなんだーとつられて微笑む女性達、
「あっ、あのおくるみまだ持ってるの?」
ソフィアがスッとタロウを見つめる、
「ん?あるよー」
「あの生地も凄いわよねー、ちょっと見せなさい」
ニヤリと微笑むユーリ、
「えっ、だってもうボロボロだぞ」
「いいから、あんなに綺麗な染物見た事無いわよ」
「だからボロボロだって」
「いいから見せなさい」
ギロリとタロウを睨みつけるソフィアとユーリ、エーと小さく悲鳴を上げるタロウ、しかしまぁ確かにそれもそうか、言い出したのは俺だしなと渋々と懐を弄るタロウ、今度は何だと腰を上げる大人達、タロウはアッこれだと呟いてヌソリと取り出すと、
「わっ・・・想像以上にボロボロだな・・・」
小さな布切れをテーブルに広げた、ワッと集まる女性達、途端、
「ホントだ・・・綺麗な色ー」
「ねー、この緑って良く染めましたねー」
「ここの薄い赤も綺麗ですよー、こんな色見た事ない」
ニコリーネが悲鳴のような声を上げる、
「これ、これって革ですか?」
「あー・・・うん、そんなもんだと思う」
「タオル生地ですよね」
「でもすんごい繊細な感じ・・・」
「うん、上等な生地ですよね、これ」
口々に感想が飛び出す、ソフィアとユーリも覗き込んで懐かしいわねーと微笑んだ、
「まぁ・・・ならどうせだからこれを参考にして作ってみ、姫様のお子様にもだし、マリエッテちゃんにもさ」
ニヤリとエレインを見上げるタロウ、
「はい、はい、そうします・・・でも、こんな綺麗な色の生地は難しいですよ」
興奮しつつも冷静なエレインである、確かになーと頷く女性達、すると、
「あの、これって何ですか?模様みたいな・・・感じですけど・・・」
カトカがその一辺を指し示す、
「ん?あぁ、それね、ミナって読むんだ、故郷の文字だね」
エッとタロウを見つめる女性達、そうだったわねーと目を細めるソフィアとユーリ、
「ミナって読むんだけど、美しい・・・葉っぱ?・・・だとちょっと可愛くないな、菜・・・難しいな、ようは、あれだ、野菜とか収穫物の意味でね、健康に育って欲しいとかそういう意味あいかな?」
「この一文字でナなんですか?」
「そだねー」
「じゃ、前のこれがミ?」
「うん、こっちは簡単で、美しいって意味合い、だから、美しく健康に育って欲しいって意味で美菜?」
ヘーヘーヘーと感心の声が響き渡り、これにはソフィアもユーリも驚いた、そんな事は一言も教えてもらっていなかったからである、
「えっ、一文字でそこまで意味を込めるんですか?」
「そだね、俺の故郷だとそれが当たり前かな・・・」
「カッコイイー」
「ですねー」
「すごいな、なんだろ、なんかの模様かと思った」
「ですよね、ですよね」
「エッ、じゃタロウさんも意味があるんですか?名前に」
カトカがクワッとタロウを見つめる、
「まぁ・・・あるにはあるんだけど・・・それはほら、取り合えずこっちが先、でね、このおくるみなんだけど」
とその小さな乳児用の服を開き始めるタロウ、前の世界から齎された数少ない品であり、ミナにとってはほぼ唯一の真の家族との繋がりである、しかしもう、大して価値は無いものと思う、少しばかり問題はあれどミナは既にこちら側の住人で、戻る術もなさそうで、タロウとしてもすっかりこちらに骨を埋める覚悟は出来ていたりする、しかし、もう少しあがくべきかなと、そのおくるみの独特の感触、ナイロン生地の滑らかな柔らかさとビニール特有の冷たさ、久しぶりに見た漢字の違和感、不意に込み上げた郷愁に少しばかり戸惑うタロウであった。
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そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
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【あらすじ】
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王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
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※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
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