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「ごきげんよう、泥棒猫さん」
その言葉と共に、またしてもガレリア公爵城の玄関ホールに、招かれざる客が現れた。
今度は暗殺者でも、元婚約者でもない。
燃えるような赤髪を縦ロールにし、見るからに高そうな真紅のドレスを身に纏った、超絶美少女だ。
彼女の背後には、これまた大量の侍女と護衛が控えている。
「……どなたでしょうか? 求人(鉱山労働者)の応募なら、裏口へ回ってください」
私が事務的に対応すると、少女は扇子で口元を隠し、高らかに笑った。
「オーッホッホッホ! 冗談がお上手ね、平民上がり! わたくしはイザベラ。南の商業大国・ルビーノ王国の第一王女にして、アレクシス様の『真の婚約者』になる予定の女よ!」
「……予定、ですか」
「ええ! わたくしの国はガレリアにとって最大の貿易相手。父上が言っていたわ。『アレクシス公爵と結婚すれば、関税がタダになる』って!」
「政略結婚の意図が露骨すぎませんか」
イザベラ王女は、ズカズカと城内に入り込んできた。
そして、私の横に立っていたアレクシス公爵を見つけるなり、猫撫で声を出した。
「ア~レクシス様ぁ~♡ お久しぶりですわん! イザベラが会いに来ましたのよん!」
彼女は公爵の腕に抱きつこうとした。
ヒュンッ。
アレクシス公爵は、残像が見えるほどの速度で回避した。
「……誰だ、貴様は」
「ひどぉい! 3年前の舞踏会で一度ご挨拶したじゃありませんかぁ!」
「記憶にない。俺の脳容量は、ソフィエのことだけで満杯だ」
公爵は私の後ろに隠れた。
「ソフィエ、なんだこの赤いのは。目に痛いぞ。追い払え」
「まあまあ、アレクシス様。一応、大口取引先(ルビーノ王国)の王女様ですから、無下に扱うと関税が上がりますよ」
私は冷静に計算した。
ルビーノ王国との貿易摩擦は避けたい。
それに、この王女……見たところ、かなり金回りが良さそうだ。
「イザベラ様とおっしゃいましたか」
私はニッコリと営業スマイルを浮かべた。
「アレクシス様と結婚したい、というのは本気でしょうか?」
「当然よ! 氷の公爵夫人という響き、最高にクールだもの! それに比べて貴女は何? 地味で、可愛げがなくて、色気もない。わたくしの方が100倍ふさわしいわ!」
イザベラ王女は胸を張った。
私は、ほう、と感心した。
「なるほど。自信がおありなのですね。それは素晴らしい」
私はパチンと指を鳴らした。
「マリー! 『あれ』を持ってきて!」
「はい、お嬢様!」
マリーが運んできたのは、厚さ10センチはある分厚いファイルだった。
表紙には『公爵夫人業務マニュアル(暫定版)』と書かれている。
ドサッ。
私はそれをイザベラ王女の前に置いた。
「……なによこれ」
「業務引き継ぎ書です」
「は?」
「貴女が公爵夫人になりたいと言うなら、私は喜んでこの座をお譲りします。どうぞ、今すぐサインしてください。あ、印鑑も忘れずに」
「そ……ソフィエ!?」
背後でアレクシス公爵が叫んだ。
「何を勝手なことを! 俺はお前以外の妻などいらん!」
「静かにしてください。これは商談です」
私は公爵を制し、イザベラ王女に向き直った。
「どうしました? アレクシス様の妻になりたいのでしょう? なら、これくらいの業務はこなせますよね?」
「ぎょ、業務……?」
イザベラ王女は恐る恐るファイルを開いた。
「『朝5時:起床、領内全域の天候確認と農業指導』……は?」
「『8時:50人の騎士団(筋肉バカ)からの人生相談受付』……えっ?」
「『10時:城のリフォーム工事の進捗管理、及び元・暗殺者たちへの給与計算』……暗殺者!?」
「『13時:旦那様(魔王)の機嫌取り、及び魔力暴走時の物理的鎮圧(ハリセン可)』……!?」
ページをめくるたびに、イザベラ王女の顔色が悪くなっていく。
「な、なによこれ……! 公爵夫人って、お茶会をして、ドレスを選んで、優雅に微笑んでいるだけじゃないの!?」
「ガレリアでは違います。ここは実力主義の現場です」
私は畳み掛けた。
「さらに、オプションとして『迷子のヒロイン(大食い)』の飼育と、『元婚約者(ストーカー)』の撃退任務もついてきます。どうです? やりがいのある職場でしょう?」
「む、無理よ! こんなの奴隷契約じゃない!」
イザベラ王女がファイルを投げ捨てた。
「わたくしは、愛されたいの! チヤホヤされたいの! こんなドカチン仕事、お断りよ!」
「あら、残念。関税ゼロの夢が……」
「いらないわよそんな男! 顔がいいだけの苦労案件じゃない!」
イザベラ王女は叫ぶと、くるりと踵を返した。
「帰るわ! こんな泥臭い国、二度と来るもんですか! パパに言って、関税3倍にしてやるんだから!」
「あ、それは困りますね」
私が困った顔(演技)をすると、アレクシス公爵がスッと前に出た。
「……関税を上げるだと?」
ゴゴゴゴゴ……。
公爵の周囲に、無数の氷の剣が出現する。
「ソフィエを困らせる奴は、国ごと氷漬けにして、永遠の冬をプレゼントしてやろうか?」
「ひ、ひぃぃぃぃ!!」
「冗談です(たぶん)。さあ、イザベラ様、お帰りはあちらです。お土産に当領特産の『魔石』を差し上げますから、関税は据え置きでお願いしますね?」
私はイザベラ王女のポケットに無理やり石をねじ込み、背中を押した。
「さようならー! お元気でー!」
「覚えてらっしゃいぃぃぃ!」
イザベラ王女とその一行は、嵐のように去っていった。
玄関ホールに静寂が戻る。
「……ふぅ。商談決裂ですね」
私が肩をすくめると、アレクシス公爵が私の肩をガシッと掴んだ。
「……ソフィエ」
「はい?」
「お前……本気だったのか?」
彼の目が、揺れている。
怒りではない。不安だ。
「あいつに……俺を譲るつもりだったのか?」
「条件が合えば、ですが」
私は正直に答えた。
「彼女は王女ですし、実家は太い。貴方の妻になれば、ガレリアの経済は安泰です。私は『顧問』として裏方に回れば……」
「ふざけるな!」
公爵が叫んだ。
その声の大きさに、私は驚いて目を丸くした。
「俺は、金のために結婚するんじゃない! 家柄も、能力も関係ない! 俺は……お前だから、隣にいてほしいんだ!」
彼は私を強く抱きしめた。
痛いほどに。
「業務マニュアル? そんなもの破り捨てろ! お前が何もしなくても、ただ昼寝をしているだけでも、俺はお前がいい!」
「……アレクシス様」
「二度と……俺を誰かに譲るなんて言うな。俺は物じゃない。お前の男だ」
彼の心臓の音が、ドクドクと伝わってくる。
その熱さに、私は自分が少し「合理的すぎた」ことを反省した。
私は、彼の背中に手を回した。
「……申し訳ありません。計算ミスでした」
「……計算ミス?」
「はい。貴方の『私への執着心』を、低く見積もりすぎていました」
「……執着心ではない。愛だ」
「はいはい、愛ですね」
私は彼の胸に顔を埋めながら、小さく笑った。
(……変ね)
他の女性に譲ろうとした時。
私の胸の奥が、ほんの少しだけ「チクリ」としたこと。
それは計算に入れていなかった。
もしかして、私も彼に執着し始めているのだろうか?
「……次は、もっと高く見積もっておきます」
「ああ。無限大にしておけ」
こうして、ライバル(?)騒動は、私と公爵の絆をより強固なもの(というより、公爵の独占欲をレベルアップさせたもの)にして幕を閉じた。
だが。
この時の私はまだ気づいていなかった。
私の胸の「チクリ」という痛みが、やがて制御不能な「嫉妬」という感情に育っていくことを。
そして、次なる事件が、そのトリガーを引くことになる。
その言葉と共に、またしてもガレリア公爵城の玄関ホールに、招かれざる客が現れた。
今度は暗殺者でも、元婚約者でもない。
燃えるような赤髪を縦ロールにし、見るからに高そうな真紅のドレスを身に纏った、超絶美少女だ。
彼女の背後には、これまた大量の侍女と護衛が控えている。
「……どなたでしょうか? 求人(鉱山労働者)の応募なら、裏口へ回ってください」
私が事務的に対応すると、少女は扇子で口元を隠し、高らかに笑った。
「オーッホッホッホ! 冗談がお上手ね、平民上がり! わたくしはイザベラ。南の商業大国・ルビーノ王国の第一王女にして、アレクシス様の『真の婚約者』になる予定の女よ!」
「……予定、ですか」
「ええ! わたくしの国はガレリアにとって最大の貿易相手。父上が言っていたわ。『アレクシス公爵と結婚すれば、関税がタダになる』って!」
「政略結婚の意図が露骨すぎませんか」
イザベラ王女は、ズカズカと城内に入り込んできた。
そして、私の横に立っていたアレクシス公爵を見つけるなり、猫撫で声を出した。
「ア~レクシス様ぁ~♡ お久しぶりですわん! イザベラが会いに来ましたのよん!」
彼女は公爵の腕に抱きつこうとした。
ヒュンッ。
アレクシス公爵は、残像が見えるほどの速度で回避した。
「……誰だ、貴様は」
「ひどぉい! 3年前の舞踏会で一度ご挨拶したじゃありませんかぁ!」
「記憶にない。俺の脳容量は、ソフィエのことだけで満杯だ」
公爵は私の後ろに隠れた。
「ソフィエ、なんだこの赤いのは。目に痛いぞ。追い払え」
「まあまあ、アレクシス様。一応、大口取引先(ルビーノ王国)の王女様ですから、無下に扱うと関税が上がりますよ」
私は冷静に計算した。
ルビーノ王国との貿易摩擦は避けたい。
それに、この王女……見たところ、かなり金回りが良さそうだ。
「イザベラ様とおっしゃいましたか」
私はニッコリと営業スマイルを浮かべた。
「アレクシス様と結婚したい、というのは本気でしょうか?」
「当然よ! 氷の公爵夫人という響き、最高にクールだもの! それに比べて貴女は何? 地味で、可愛げがなくて、色気もない。わたくしの方が100倍ふさわしいわ!」
イザベラ王女は胸を張った。
私は、ほう、と感心した。
「なるほど。自信がおありなのですね。それは素晴らしい」
私はパチンと指を鳴らした。
「マリー! 『あれ』を持ってきて!」
「はい、お嬢様!」
マリーが運んできたのは、厚さ10センチはある分厚いファイルだった。
表紙には『公爵夫人業務マニュアル(暫定版)』と書かれている。
ドサッ。
私はそれをイザベラ王女の前に置いた。
「……なによこれ」
「業務引き継ぎ書です」
「は?」
「貴女が公爵夫人になりたいと言うなら、私は喜んでこの座をお譲りします。どうぞ、今すぐサインしてください。あ、印鑑も忘れずに」
「そ……ソフィエ!?」
背後でアレクシス公爵が叫んだ。
「何を勝手なことを! 俺はお前以外の妻などいらん!」
「静かにしてください。これは商談です」
私は公爵を制し、イザベラ王女に向き直った。
「どうしました? アレクシス様の妻になりたいのでしょう? なら、これくらいの業務はこなせますよね?」
「ぎょ、業務……?」
イザベラ王女は恐る恐るファイルを開いた。
「『朝5時:起床、領内全域の天候確認と農業指導』……は?」
「『8時:50人の騎士団(筋肉バカ)からの人生相談受付』……えっ?」
「『10時:城のリフォーム工事の進捗管理、及び元・暗殺者たちへの給与計算』……暗殺者!?」
「『13時:旦那様(魔王)の機嫌取り、及び魔力暴走時の物理的鎮圧(ハリセン可)』……!?」
ページをめくるたびに、イザベラ王女の顔色が悪くなっていく。
「な、なによこれ……! 公爵夫人って、お茶会をして、ドレスを選んで、優雅に微笑んでいるだけじゃないの!?」
「ガレリアでは違います。ここは実力主義の現場です」
私は畳み掛けた。
「さらに、オプションとして『迷子のヒロイン(大食い)』の飼育と、『元婚約者(ストーカー)』の撃退任務もついてきます。どうです? やりがいのある職場でしょう?」
「む、無理よ! こんなの奴隷契約じゃない!」
イザベラ王女がファイルを投げ捨てた。
「わたくしは、愛されたいの! チヤホヤされたいの! こんなドカチン仕事、お断りよ!」
「あら、残念。関税ゼロの夢が……」
「いらないわよそんな男! 顔がいいだけの苦労案件じゃない!」
イザベラ王女は叫ぶと、くるりと踵を返した。
「帰るわ! こんな泥臭い国、二度と来るもんですか! パパに言って、関税3倍にしてやるんだから!」
「あ、それは困りますね」
私が困った顔(演技)をすると、アレクシス公爵がスッと前に出た。
「……関税を上げるだと?」
ゴゴゴゴゴ……。
公爵の周囲に、無数の氷の剣が出現する。
「ソフィエを困らせる奴は、国ごと氷漬けにして、永遠の冬をプレゼントしてやろうか?」
「ひ、ひぃぃぃぃ!!」
「冗談です(たぶん)。さあ、イザベラ様、お帰りはあちらです。お土産に当領特産の『魔石』を差し上げますから、関税は据え置きでお願いしますね?」
私はイザベラ王女のポケットに無理やり石をねじ込み、背中を押した。
「さようならー! お元気でー!」
「覚えてらっしゃいぃぃぃ!」
イザベラ王女とその一行は、嵐のように去っていった。
玄関ホールに静寂が戻る。
「……ふぅ。商談決裂ですね」
私が肩をすくめると、アレクシス公爵が私の肩をガシッと掴んだ。
「……ソフィエ」
「はい?」
「お前……本気だったのか?」
彼の目が、揺れている。
怒りではない。不安だ。
「あいつに……俺を譲るつもりだったのか?」
「条件が合えば、ですが」
私は正直に答えた。
「彼女は王女ですし、実家は太い。貴方の妻になれば、ガレリアの経済は安泰です。私は『顧問』として裏方に回れば……」
「ふざけるな!」
公爵が叫んだ。
その声の大きさに、私は驚いて目を丸くした。
「俺は、金のために結婚するんじゃない! 家柄も、能力も関係ない! 俺は……お前だから、隣にいてほしいんだ!」
彼は私を強く抱きしめた。
痛いほどに。
「業務マニュアル? そんなもの破り捨てろ! お前が何もしなくても、ただ昼寝をしているだけでも、俺はお前がいい!」
「……アレクシス様」
「二度と……俺を誰かに譲るなんて言うな。俺は物じゃない。お前の男だ」
彼の心臓の音が、ドクドクと伝わってくる。
その熱さに、私は自分が少し「合理的すぎた」ことを反省した。
私は、彼の背中に手を回した。
「……申し訳ありません。計算ミスでした」
「……計算ミス?」
「はい。貴方の『私への執着心』を、低く見積もりすぎていました」
「……執着心ではない。愛だ」
「はいはい、愛ですね」
私は彼の胸に顔を埋めながら、小さく笑った。
(……変ね)
他の女性に譲ろうとした時。
私の胸の奥が、ほんの少しだけ「チクリ」としたこと。
それは計算に入れていなかった。
もしかして、私も彼に執着し始めているのだろうか?
「……次は、もっと高く見積もっておきます」
「ああ。無限大にしておけ」
こうして、ライバル(?)騒動は、私と公爵の絆をより強固なもの(というより、公爵の独占欲をレベルアップさせたもの)にして幕を閉じた。
だが。
この時の私はまだ気づいていなかった。
私の胸の「チクリ」という痛みが、やがて制御不能な「嫉妬」という感情に育っていくことを。
そして、次なる事件が、そのトリガーを引くことになる。
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