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アリスティードによる、悪夢のような尋問を終えたクララは、青ざめた顔で、ほうほうの体で自室へと逃げ帰った。
バタン!と乱暴に扉を閉めるなり、彼女は部屋にいた一人の侍女に、ヒステリックに叫んだ。
「アンナ!あなたね!騎士団に、何か余計なことを話したんじゃないでしょうね!」
アンナと呼ばれた侍女は、主人の剣幕に、びくりと肩を震わせる。
彼女こそ、舞踏会の夜、マーブルに不自然に接近していた、クララの侍女だった。
「い、いえ……!わたくし、何も……!」
「本当でしょうね!?もし、裏切ったりしたら……!あなたや、あなたの田舎にいる貧乏な家族がどうなるか、分かっているんでしょうね!」
「は、はい……!もちろんです、クララ様……!」
床にひれ伏し、ガタガタと震えるアンナを見下ろしクララは満足そうに鼻を鳴らした。
恐怖で縛り付けている限り、この女が自分を裏切るはずがない。
そう、クララは信じて疑わなかった。
だが、その日の午後。
クララの侍女アンナは、王立騎士団からの正式な出頭命令を受け詰所へと連行されることになる。
「……さて、アンナ嬢」
クララが尋問されたのと同じ、冷たい雰囲気の部屋。
目の前に座るアリスティードの威圧感に、アンナは生きた心地がしなかった。
「単刀直入に聞こう。舞踏会の夜、君はマーブル・デュクロワ嬢のハンドバッグにネックレスを入れた。……そうだな?」
「ち、違います!わたくし、何もしておりません!」
アンナは、クララに命じられた通り必死で首を横に振る。
だが、アリスティードの隣に座る副官のカインが諭すように優しく語りかけた。
「アンナ。君も、分かっているはずだ。このままでは、君が全ての罪を被ることになるんだよ。クララ様は、きっと、『侍女が勝手にやったことだ』と言うだろう。……君は、それでいいのかい?」
「そ、それは……」
「君のご家族は、確か、西の領地で農業を営んでいると聞いている。君が、王家を巻き込む大罪を犯したとなれば、ご家族も、ただでは済まないかもしれない」
カインの言葉は優しく、だが的確にアンナの心の最も弱い部分を抉っていく。
「わ、わたくしは……!わたくしは、クララ様のご命令に逆らえなかっただけで……!」
思わず、本音が漏れる。
それを見たアリスティードが、冷たく最後の追い打ちをかけた。
「偽証罪は、重罪だ。だが、今ここで、真実を話すというのなら、司法取引も考えよう。……君自身の未来と、君の家族の未来。どちらが大切かよく考えることだ」
脅しと、慈悲。
硬軟織り交ぜた尋問に、アンナの心はついにぽっきりと折れた。
「……う……うわあああああん!」
彼女は、子供のようにわっと泣き崩れた。
そして、堰を切ったようにその全てを告白し始めたのだ。
「ぜ、全部……!全部、クララ様がお考えになったことなんです……!」
アンナの証言は、衝撃的なものだった。
全ては、舞踏会でマーブルがアリスティードと共に、幸せそうにしているのを見たクララの嫉妬から始まったこと。
『あんな女が、幸せになるなんて許せない。もう一度、徹底的に、再起不能なくらいに叩き潰してやる』
そう言って、クララが悪魔のような顔で笑っていたこと。
母親の形見、という話が同情を引くための真っ赤な嘘であること。
そして、舞踏会の当日。
クララは、アンナにネックレスを渡し、こう命じたのだという。
『何でもいいから、理由をつけて、マーブルに近づきなさい。そして、誰にも気づかれずに、これを、あの女のバッグに忍び込ませるのよ』と。
「わ、わたくし、怖くて、断れませんでした……!逆らったら、何をされるか分からないって……!ううっ、ごめんなさい……!ごめんなさい……!」
床に突っ伏し、泣きじゃくるアンナ。
その痛々しい姿が、クララの異常なまでの残忍さを物語っていた。
カインは、その全てを一言一句違わぬように羊皮紙に記録していく。
やがて、泣き疲れたアンナは震える手でその供述書に自分のサインを書き記した。
決定的な、証拠。
犯人の、片割れからの完全な自白。
アンナが退出した後、アリスティードはその供述書を静かに手に取った。
「……これで、王手だな」
アリスティードが、低い声で呟く。
隣で、カインが深く頷いた。
「はい。もはや、いかなる言い訳も通用しますまい」
クララ・シュミットが仕掛けた卑劣な罠。
その全てのカラクリが暴かれ、彼女の首に法という名の刃が突きつけられるまで。
あと、残された時間は僅かだった。
バタン!と乱暴に扉を閉めるなり、彼女は部屋にいた一人の侍女に、ヒステリックに叫んだ。
「アンナ!あなたね!騎士団に、何か余計なことを話したんじゃないでしょうね!」
アンナと呼ばれた侍女は、主人の剣幕に、びくりと肩を震わせる。
彼女こそ、舞踏会の夜、マーブルに不自然に接近していた、クララの侍女だった。
「い、いえ……!わたくし、何も……!」
「本当でしょうね!?もし、裏切ったりしたら……!あなたや、あなたの田舎にいる貧乏な家族がどうなるか、分かっているんでしょうね!」
「は、はい……!もちろんです、クララ様……!」
床にひれ伏し、ガタガタと震えるアンナを見下ろしクララは満足そうに鼻を鳴らした。
恐怖で縛り付けている限り、この女が自分を裏切るはずがない。
そう、クララは信じて疑わなかった。
だが、その日の午後。
クララの侍女アンナは、王立騎士団からの正式な出頭命令を受け詰所へと連行されることになる。
「……さて、アンナ嬢」
クララが尋問されたのと同じ、冷たい雰囲気の部屋。
目の前に座るアリスティードの威圧感に、アンナは生きた心地がしなかった。
「単刀直入に聞こう。舞踏会の夜、君はマーブル・デュクロワ嬢のハンドバッグにネックレスを入れた。……そうだな?」
「ち、違います!わたくし、何もしておりません!」
アンナは、クララに命じられた通り必死で首を横に振る。
だが、アリスティードの隣に座る副官のカインが諭すように優しく語りかけた。
「アンナ。君も、分かっているはずだ。このままでは、君が全ての罪を被ることになるんだよ。クララ様は、きっと、『侍女が勝手にやったことだ』と言うだろう。……君は、それでいいのかい?」
「そ、それは……」
「君のご家族は、確か、西の領地で農業を営んでいると聞いている。君が、王家を巻き込む大罪を犯したとなれば、ご家族も、ただでは済まないかもしれない」
カインの言葉は優しく、だが的確にアンナの心の最も弱い部分を抉っていく。
「わ、わたくしは……!わたくしは、クララ様のご命令に逆らえなかっただけで……!」
思わず、本音が漏れる。
それを見たアリスティードが、冷たく最後の追い打ちをかけた。
「偽証罪は、重罪だ。だが、今ここで、真実を話すというのなら、司法取引も考えよう。……君自身の未来と、君の家族の未来。どちらが大切かよく考えることだ」
脅しと、慈悲。
硬軟織り交ぜた尋問に、アンナの心はついにぽっきりと折れた。
「……う……うわあああああん!」
彼女は、子供のようにわっと泣き崩れた。
そして、堰を切ったようにその全てを告白し始めたのだ。
「ぜ、全部……!全部、クララ様がお考えになったことなんです……!」
アンナの証言は、衝撃的なものだった。
全ては、舞踏会でマーブルがアリスティードと共に、幸せそうにしているのを見たクララの嫉妬から始まったこと。
『あんな女が、幸せになるなんて許せない。もう一度、徹底的に、再起不能なくらいに叩き潰してやる』
そう言って、クララが悪魔のような顔で笑っていたこと。
母親の形見、という話が同情を引くための真っ赤な嘘であること。
そして、舞踏会の当日。
クララは、アンナにネックレスを渡し、こう命じたのだという。
『何でもいいから、理由をつけて、マーブルに近づきなさい。そして、誰にも気づかれずに、これを、あの女のバッグに忍び込ませるのよ』と。
「わ、わたくし、怖くて、断れませんでした……!逆らったら、何をされるか分からないって……!ううっ、ごめんなさい……!ごめんなさい……!」
床に突っ伏し、泣きじゃくるアンナ。
その痛々しい姿が、クララの異常なまでの残忍さを物語っていた。
カインは、その全てを一言一句違わぬように羊皮紙に記録していく。
やがて、泣き疲れたアンナは震える手でその供述書に自分のサインを書き記した。
決定的な、証拠。
犯人の、片割れからの完全な自白。
アンナが退出した後、アリスティードはその供述書を静かに手に取った。
「……これで、王手だな」
アリスティードが、低い声で呟く。
隣で、カインが深く頷いた。
「はい。もはや、いかなる言い訳も通用しますまい」
クララ・シュミットが仕掛けた卑劣な罠。
その全てのカラクリが暴かれ、彼女の首に法という名の刃が突きつけられるまで。
あと、残された時間は僅かだった。
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