悪役令嬢は、婚約破棄を祝杯で迎える !

パリパリかぷちーの

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結婚式は、私の計画通り、午後一時半に予定通り閉幕した。

全工程二時間半。
参加者からのクレームはゼロ。
満足度は99%(残り1%は、甘党の公爵がケーキの件で少し不満だったため)。

「……完璧です」

私は結婚式の進行表に最後のチェックマークを付け、そっとペンを置いた。
場所は、公爵邸の最上階にあるテラス。
午後の柔らかな日差しが、私のウェディングドレスを照らしている。

「何を計算しているんだ、メモリア」

隣で、アレクシス公爵が微笑んだ。

「プロジェクトの完了報告です。全てのタスク、クリアしました。……これで、私の『独身時代』は、完全な成功で終わりました」

「成功、か」

公爵は私の肩を抱き寄せた。

「俺にとっては、ここからが本当の成功だ。……お前という名の『永遠のプロジェクト』の開始だ」

「閣下、ロマンチックな表現でも、結局は『プロジェクト』なんですね」

「他に何がある。共に目標(幸せ)に向かって邁進し、リスクを管理し、互いの長所を最大限に活かす。……これ以上の契約はないだろう?」

公爵は私の額にキスをした。

「さて。最後のタスクだ」

「何でしょうか」

「乾杯だ」

公爵が指を鳴らすと、執事が二つのグラスを持ってきた。
一つには琥珀色のヴィンテージ・ワイン。
そしてもう一つには、たっぷりの泡が乗ったホットココア。

「私にはワイン、閣下には……ホットココアですか」

「当たり前だ。俺は運転(統治)がある。酔うわけにはいかん。……お前は、今日くらいは酔え」

「ご配慮感謝します」

私はグラスを受け取った。

公爵は私のグラスに、自身のマグカップをそっと重ねる。

「メモリア」

彼の声は、これまでにないほど優しかった。

「お前は、ずっと『可愛げがない』『冷たい』『悪役令嬢だ』と言われてきた。だが、お前がその『可愛げのなさ』を貫いたからこそ、俺は救われた」

「……」

「お前の理性と強さが、この国を救い、俺の人生に秩序と情熱をもたらしてくれた。……もう、過去に縛られる必要はない」

公爵は私を真っ直ぐに見た。

「お前は、悪役令嬢でもなければ、誰かの道具でもない。……俺の、たった一人の愛しい妻だ」

「アレクシス様……」

「乾杯しよう。……『効率の良さと、それを超えるほどの愛』に」

「はい」

私はグラスを高々と掲げた。

「全ての非効率的な過去と、それを乗り越えた自分自身に」

カチン。

ワイングラスとマグカップが、テラスの夕日の中で、美しい音を立てて触れ合った。

最高に甘いホットココアと、最高に芳醇なワイン。
それが、私たちの新しい人生の始まりの味だった。

「さて、次は新婚旅行だ。スケジュールは五泊六日、私の領地にある別荘でのんびりと……」

公爵がスケジュール帳を取り出す。

「おや、閣下。……私、新婚旅行中にやりたいことを、もう一つ、追加で計画したのですが」

「なんだ? 観光か? それとも新しい領地経営のプランか?」

私は公爵に寄り添い、耳元でそっと囁いた。

「……五泊六日、どこにも出かけず、お部屋で『非効率』なことをし尽くす、というプランです」

公爵は一瞬、思考が停止したように固まった。
そして、その顔が真っ赤に染まる。

「そ、それは……! か、閣下の……糖分が……」

「大丈夫ですよ。そのための『予備補給』は、私が全身でさせていただきますので」

私がニヤリと笑うと、公爵は私の手を強く握りしめた。

「……承知した。秘書官殿。その『非効率な残業』は、最優先の業務として、全身全霊をもって遂行させていただこう」

夕日が沈む。
抱きしめ合う二人。

悪役令嬢と呼ばれた女は、婚約破棄から始まり、数々の理不尽を論破し、最も冷酷な公爵の心を射止めた。

彼女の幸せな人生は、今、始まったばかりだ。
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