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「……おはようございます、アーニー。昨日の『聖アーニーの歓喜祭』の経済効果により、バルマ王国のGDPが過去最高の成長率を記録しました。我が帝国の諜報局長は、あまりの屈辱に、干し肉蔵に設置した時限爆弾のタイマーを、自分の心拍数と連動させたそうです」
セシルの報告は、もはや朝の光を遮るほどに暗く、絶望に満ちていた。
私は鏡の前で、昨日踊り明かしたせいで少しだけ筋肉痛になった足をさすりながら、力なく項垂れた。
「……セシル、もう嫌。もう嫌よ! あと六日。あと六日で私の干し肉が爆破されるどころか、局長まで心不全で死んじゃうじゃない! どうして私が騒げば騒ぐほど、この国の経済が活性化するのよ!」
「あなたの放つ負のエネルギーが、王子の『超絶ポジティブ・バフ・エンジン』によって、国家規模の『幸福の燃料』に変換されているからです。……アーニー、もう小細工は通用しません。こうなったら、究極の裏切り……『逃亡』です」
セシルが私の前に置いたのは、偽造された身分証と、一通の派手な封筒だった。
「いいですか。今夜、あなたは荷物をまとめて王宮を脱走しなさい。そしてその際、この『絶縁状』を王子の寝室に残すのです。内容は『この国は退屈すぎて欠伸が出るわ。私は隣国で刺激的な男を見つけて楽しく暮らします。探さないで、この愚図王子』という、最低最悪の置き手紙です」
「……国外逃亡。そして絶縁状。これなら流石に、どんなにおめでたい殿下でも、私が自分を捨てて逃げたことを理解するわよね?」
「ええ。物理的にいなくなれば、ポジティブ変換も不可能です。あなたはそのまま国境を越え、帝国の干し肉蔵で爆弾を解除しなさい。これがラストチャンスです」
私はゴクリと唾を飲み込み、その絶縁状を握りしめた。
干し肉のため。そして、このままでは本当に「聖女」として祀り上げられてしまう自分の将来のため。
ごめんなさい、殿下。私、貴方を捨てて、干し肉を選びますわ!
その日の深夜。私は目立たない旅行服に身を包み、わずかな私物(と、殿下からもらった大量のラブレターの束)を鞄に詰め、隠し通路から王宮を抜け出した。
「……よし。絶縁状は殿下の机に置いてきたわ。これで、明日の朝には私は『愛を裏切った逃亡令嬢』として指名手配されるはずよ」
私は馬車を走らせ、国境付近の宿場町へと急いだ。
胸の奥がチクリと痛むけれど、これは任務。私はスパイ。
……そう自分に言い聞かせながら、国境のゲートを目前にしたその時だった。
「……待って。夜道は危ないよ、アーニー」
背後から、月明かりを背負った、世界で一番聞き慣れた愛おしい声が響いた。
振り返ると、そこには愛馬を駆り、息を切らしたアルフレッド殿下が立っていた。
「……っ、殿下! ど、どうしてここに!」
(嘘でしょ!? まだ夜明け前よ? 絶縁状を読んで、怒り狂って追っ手を差し向けたんじゃないの!?)
殿下は馬から飛び降りると、私の元へ駆け寄り、その大きな手で私の肩を優しく掴んだ。
その瞳には、怒りなど微塵もなく、ただ深い感動と尊敬の光が宿っていた。
「……驚いたよ、アーニー。君は、そこまで……そこまで国民の『足元』を心配してくれていたんだね」
「……はぁ? 足元? 私は今、貴方を捨てて逃亡している最中ですわよ!?」
「いいんだ、隠さなくて。君が置いていったあの『絶縁状』……。あれは、暗号だったんだろう?」
殿下は懐から、私が書いた渾身の罵倒レターを取り出した。
「『この国は退屈すぎて欠伸が出る』……。これは、『平和に甘んじて、国境の警備が緩んでいることへの警告』だね。そして『隣国で刺激的な男を見つける』……。これは、『敵国の動向を自ら潜入して調査してくる』という、命懸けの決意の表れだ!」
「……違いますわ殿下! それ、額面通りに受け取ってくださいまし! 私、本当に殿下に飽きて、隣国のイケメンを探しに行こうとしているんですのよ!」
「ふふ、君はいつもそうやって自分を悪く見せようとする。でも、この『愚図王子』という言葉で気づいたよ。君は、僕が君を追いかけてくることを信じて、僕の『追跡能力』を試していたんだね!」
殿下は私の手を強く握りしめ、そのまま周囲に控えていた国境警備隊に向かって叫んだ。
「諸君! 見なさい! これが我が国の王妃となる者の姿だ! 彼女は、平和ボケした僕たちを戒めるため、あえて自ら『逃亡者』を演じ、国境の防衛ラインの脆弱さを身を以て証明してくれたんだ!」
「「「おおおぉぉ……!!」」」
国境警備隊の兵士たちが、一斉にその場に跪き、涙を流しながら武器を置いた。
「……なんという献身」「アーニー様、我らの油断を叱ってくださり感謝します!」「今日から国境の警備を百倍に強化します!」と、会場はかつてないほどの緊張感と感動に包まれてしまった。
「ち、違いますわ殿下! 私、本気で逃げようと……!」
「わかっているよ、アーニー。君は、僕という王子を、国境を自ら見回る『行動派の王』に育てようとしてくれたんだね。……君の愛のムチ、しっかりと受け取ったよ。さあ、一緒に王宮へ帰ろう。君が調査してくれた弱点を、今すぐ修正しなきゃいけないからね」
殿下は私を軽々と抱き上げ、自分の馬に乗せた。
私はもはや抵抗する気力もなく、殿下の広い背中に顔を押し当てて絶望した。
通信機から、セシルの死人のような声が響く。
『アーニー。おめでとうございます。あなたの「逃亡騒動」により、バルマ王国の国防が完璧になり、隣国からの密輸が完全に根絶されました。……というか、あなた、殿下に捕まった瞬間、少しだけホッとした顔をして抱きついてどうするんですか。……この、寂しがり屋スパイめ』
「……そんな……、私はただ、国を捨てたかっただけなのに……」
私は殿下の腕の中で、再び敗北の味を噛み締めた。
バルマ王国の国境ゲートは、その日から「愛の再確認スポット」として恋人たちの名所になり、私は「王国の平和を陰から支える、不眠不休の戦略令嬢」として、その名声はもはや神話の域に達しようとしていた。
そして翌日、王宮の会議室では、アーニーが指摘した(とされる)『国防上の脆弱なポイント』を巡る、二十四時間の戦略会議が幕を開けた。
セシルの報告は、もはや朝の光を遮るほどに暗く、絶望に満ちていた。
私は鏡の前で、昨日踊り明かしたせいで少しだけ筋肉痛になった足をさすりながら、力なく項垂れた。
「……セシル、もう嫌。もう嫌よ! あと六日。あと六日で私の干し肉が爆破されるどころか、局長まで心不全で死んじゃうじゃない! どうして私が騒げば騒ぐほど、この国の経済が活性化するのよ!」
「あなたの放つ負のエネルギーが、王子の『超絶ポジティブ・バフ・エンジン』によって、国家規模の『幸福の燃料』に変換されているからです。……アーニー、もう小細工は通用しません。こうなったら、究極の裏切り……『逃亡』です」
セシルが私の前に置いたのは、偽造された身分証と、一通の派手な封筒だった。
「いいですか。今夜、あなたは荷物をまとめて王宮を脱走しなさい。そしてその際、この『絶縁状』を王子の寝室に残すのです。内容は『この国は退屈すぎて欠伸が出るわ。私は隣国で刺激的な男を見つけて楽しく暮らします。探さないで、この愚図王子』という、最低最悪の置き手紙です」
「……国外逃亡。そして絶縁状。これなら流石に、どんなにおめでたい殿下でも、私が自分を捨てて逃げたことを理解するわよね?」
「ええ。物理的にいなくなれば、ポジティブ変換も不可能です。あなたはそのまま国境を越え、帝国の干し肉蔵で爆弾を解除しなさい。これがラストチャンスです」
私はゴクリと唾を飲み込み、その絶縁状を握りしめた。
干し肉のため。そして、このままでは本当に「聖女」として祀り上げられてしまう自分の将来のため。
ごめんなさい、殿下。私、貴方を捨てて、干し肉を選びますわ!
その日の深夜。私は目立たない旅行服に身を包み、わずかな私物(と、殿下からもらった大量のラブレターの束)を鞄に詰め、隠し通路から王宮を抜け出した。
「……よし。絶縁状は殿下の机に置いてきたわ。これで、明日の朝には私は『愛を裏切った逃亡令嬢』として指名手配されるはずよ」
私は馬車を走らせ、国境付近の宿場町へと急いだ。
胸の奥がチクリと痛むけれど、これは任務。私はスパイ。
……そう自分に言い聞かせながら、国境のゲートを目前にしたその時だった。
「……待って。夜道は危ないよ、アーニー」
背後から、月明かりを背負った、世界で一番聞き慣れた愛おしい声が響いた。
振り返ると、そこには愛馬を駆り、息を切らしたアルフレッド殿下が立っていた。
「……っ、殿下! ど、どうしてここに!」
(嘘でしょ!? まだ夜明け前よ? 絶縁状を読んで、怒り狂って追っ手を差し向けたんじゃないの!?)
殿下は馬から飛び降りると、私の元へ駆け寄り、その大きな手で私の肩を優しく掴んだ。
その瞳には、怒りなど微塵もなく、ただ深い感動と尊敬の光が宿っていた。
「……驚いたよ、アーニー。君は、そこまで……そこまで国民の『足元』を心配してくれていたんだね」
「……はぁ? 足元? 私は今、貴方を捨てて逃亡している最中ですわよ!?」
「いいんだ、隠さなくて。君が置いていったあの『絶縁状』……。あれは、暗号だったんだろう?」
殿下は懐から、私が書いた渾身の罵倒レターを取り出した。
「『この国は退屈すぎて欠伸が出る』……。これは、『平和に甘んじて、国境の警備が緩んでいることへの警告』だね。そして『隣国で刺激的な男を見つける』……。これは、『敵国の動向を自ら潜入して調査してくる』という、命懸けの決意の表れだ!」
「……違いますわ殿下! それ、額面通りに受け取ってくださいまし! 私、本当に殿下に飽きて、隣国のイケメンを探しに行こうとしているんですのよ!」
「ふふ、君はいつもそうやって自分を悪く見せようとする。でも、この『愚図王子』という言葉で気づいたよ。君は、僕が君を追いかけてくることを信じて、僕の『追跡能力』を試していたんだね!」
殿下は私の手を強く握りしめ、そのまま周囲に控えていた国境警備隊に向かって叫んだ。
「諸君! 見なさい! これが我が国の王妃となる者の姿だ! 彼女は、平和ボケした僕たちを戒めるため、あえて自ら『逃亡者』を演じ、国境の防衛ラインの脆弱さを身を以て証明してくれたんだ!」
「「「おおおぉぉ……!!」」」
国境警備隊の兵士たちが、一斉にその場に跪き、涙を流しながら武器を置いた。
「……なんという献身」「アーニー様、我らの油断を叱ってくださり感謝します!」「今日から国境の警備を百倍に強化します!」と、会場はかつてないほどの緊張感と感動に包まれてしまった。
「ち、違いますわ殿下! 私、本気で逃げようと……!」
「わかっているよ、アーニー。君は、僕という王子を、国境を自ら見回る『行動派の王』に育てようとしてくれたんだね。……君の愛のムチ、しっかりと受け取ったよ。さあ、一緒に王宮へ帰ろう。君が調査してくれた弱点を、今すぐ修正しなきゃいけないからね」
殿下は私を軽々と抱き上げ、自分の馬に乗せた。
私はもはや抵抗する気力もなく、殿下の広い背中に顔を押し当てて絶望した。
通信機から、セシルの死人のような声が響く。
『アーニー。おめでとうございます。あなたの「逃亡騒動」により、バルマ王国の国防が完璧になり、隣国からの密輸が完全に根絶されました。……というか、あなた、殿下に捕まった瞬間、少しだけホッとした顔をして抱きついてどうするんですか。……この、寂しがり屋スパイめ』
「……そんな……、私はただ、国を捨てたかっただけなのに……」
私は殿下の腕の中で、再び敗北の味を噛み締めた。
バルマ王国の国境ゲートは、その日から「愛の再確認スポット」として恋人たちの名所になり、私は「王国の平和を陰から支える、不眠不休の戦略令嬢」として、その名声はもはや神話の域に達しようとしていた。
そして翌日、王宮の会議室では、アーニーが指摘した(とされる)『国防上の脆弱なポイント』を巡る、二十四時間の戦略会議が幕を開けた。
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