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「ニアン・ローズベルク! 貴様との婚約を、今この時をもって破棄する!!」
王立学園の卒業パーティ。
きらびやかなシャンデリアの下、カイル殿下の怒声が会場を震わせた。
音楽が止まる。
踊っていた生徒たちが動きを止め、どよめきが広がる。
誰もが息を呑んで、会場の中央に立つ二人を見つめていた。
婚約破棄。
それは貴族社会における最大の醜聞であり、糾弾される令嬢にとっては地獄の宣告に等しい。
しかし。
「…………」
糾弾された当人、公爵令嬢ニアン・ローズベルクは無言だった。
豪奢なプラチナブロンドの髪を揺らし、長い睫毛を伏せ、ただ一点を見つめている。
カイル殿下は、その沈黙を「絶望」と受け取ったらしい。
勝利を確信したように口元を歪め、さらに声を張り上げた。
「ふん、言葉もないか。それもそうだろう。これまで貴様がリナに行ってきた数々の悪行……もはや弁解の余地などないのだからな!」
殿下の隣には、男爵令嬢のリナが涙目で寄り添っている。
彼女は震える声で、か細く呟いた。
「カイル様……ニアン様をあまり責めないであげてください。私さえ我慢すれば……」
「優しいリナ。君は黙っていて。この女の化けの皮を剥がさなければ、国の未来に関わるんだ」
殿下はリナの肩を抱き寄せ、再びニアンを睨みつける。
「おいニアン! 聞いているのか!? 貴様のその高慢な態度、そして身の程知らずな嫉妬深さには反吐が出る! 今すぐここで土下座をして謝罪するならば、慈悲として修道院送りで済ませてやろうと言っているんだ!」
会場中の視線が、ニアンの唇に集まる。
彼女はゆっくりと顔を上げた。
その瞳は、かつてないほど真剣な光を宿している。
そして、重々しく口を開いた。
「……暗いわ」
「は?」
カイル殿下が間の抜けた声を出す。
「暗いと言ったのよ。そこの照明係! あなた、職務怠慢でクビにされたいの?」
ニアンは扇子をバチリと閉じ、ホールの端にいる照明スタッフを指差した。
「えっ、あ、わ、私ですか!?」
「そうよあなた! 今の私の立ち位置と照明の角度、計算したことある? これじゃあ私の輝くようなプラチナブロンドに影が落ちて、美しさが二割減……いいえ、五割減になってしまっているじゃないの!」
会場が、別の意味で凍りつく。
ニアンは殿下を完全に無視し、照明係への説教を続けた。
「いいこと? 私の肌は最高級のシルクよりも滑らかで、月の光よりも白いの。それを照らす光がこんな中途半端なオレンジ色じゃ、素材の良さが死んでしまうわ! もっと白熱の魔法灯を持ってきなさい。角度は斜め四十五度上から! 今すぐよ!」
「は、はいぃッ!」
照明係が慌てて走っていく。
ニアンは満足げに頷くと、ようやく視線を正面に戻した。
そこには、口をあんぐりと開けたカイル殿下とリナがいた。
「あら、カイル殿下。まだいらしたの?」
「ま、まだいらしたの、ではない! 貴様、今の状況が分かっているのか!?」
「ええ、分かっているわ。照明のセッティングが最悪。それが今の状況よ。王家の主催するパーティにしては、美意識が欠落していてよ? 予算不足かしら」
「違う! 婚約破棄だ! 俺は貴様との婚約を破棄すると言ったんだ!」
殿下の顔が怒りで真っ赤に染まる。
しかし、ニアンは涼しい顔で小首を傾げた。
「婚約破棄? ……ああ、そういえばそんな雑音も聞こえていたわね」
「ざ、雑音だと!?」
「だってそうでしょう? 私の美しさを讃える詩(うた)以外の言葉は、すべて雑音だもの」
ニアンは優雅にため息をついた。
その仕草一つとっても、計算され尽くした美しさがある。
彼女は自分の頬に手を当て、うっとりと目を細めた。
「でも、殿下がそこまで興奮するのも無理はないわ。今日の私は、朝のスキンケアだけで三時間を費やした『完全無欠バージョン』だもの。私のあまりの美しさに脳がショートして、意味不明なことを叫びたくなってしまったのね。可哀想に」
「ちがうわーーッ!!」
カイル殿下が地団駄を踏む。
その様子を見て、リナがおずおずと口を挟んだ。
「あの……ニアン様? カイル様は、ニアン様が私にしたイジメについて怒っていらっしゃるんです」
「イジメ?」
ニアンはきょとんとして、リナを見た。
そして、心底不思議そうに問い返す。
「私が? あなたを? ……ごめんなさい、あなた誰?」
「ッ!?」
リナがショックでよろめく。
「ひ、酷いです! 同じクラスで、何度も会話したじゃないですか! 先週だって、階段で私を突き飛ばして……!」
「リナ! 大丈夫か!」
殿下がリナを支え、ニアンを睨みつける。
「白々しいぞニアン! 目撃者もいるんだ! 先週の火曜日、学園の階段でリナを突き飛ばしただろう!」
ニアンは少し考え込むように天井を見上げ……そして、ぽんと手を打った。
「ああ、あの時の地味な方でしたか」
「地味って言うな!」
「だって、私の視界の端に映るか映らないかギリギリの存在感でしたもの。記憶に残らないのも無理はありませんわ」
ニアンは悪びれもせず言い放つ。
「それに、突き飛ばしたなんて人聞きが悪いですわね。私はただ、階段を降りていただけよ。そうしたら貴女が、私のドレスの裾を踏みそうになった。だから私は、美しいターンを決めて回避したの。貴女が勝手にバランスを崩して転がっていっただけでしょう?」
「そ、そんな……! あの時ニアン様は、『目障りよ』って仰いました!」
「ええ、言ったわね」
ニアンはあっさりと認めた。
「だって、私の歩く動線上に石ころがあったら危ないでしょう? 私の足は国宝級なのよ? 傷がついたらどう責任を取ってくれるのかしら。目障りな障害物を避けるのは、生物としての防衛本能よ」
「き、貴様……ッ! どこまで腐った性根をしているんだ!」
殿下の怒りは頂点に達していた。
しかしニアンにとって、その怒号も心地よいBGM程度にしか聞こえていないようだ。
彼女は懐から何かを取り出そうとして、眉をひそめた。
「……あら? ないわ」
「話を聞け!」
「鏡がないわ。大変、一大事よ」
ニアンは周囲を見渡した。
「誰か! 誰か鏡を持っていない!? 今すぐ自分の顔を確認しないと、不安で息が止まりそう!」
「俺の話を聞けと言っているんだ!!」
「うるさいわね殿下。少し黙っていてくださる? 今、私は自分の美しさを再確認するという神聖な儀式を行おうとしているのよ」
ニアンは近くにいた令嬢の手から、強引に手鏡を借り受けた。
「あ、あの、ニアン様……」
「ありがとう。貴女、なかなか良いセンスの手鏡を持っているわね。私の顔を映す許可を与えてあげる」
ニアンは手鏡を覗き込み、うっとりとほうけた。
「…………はぁ」
吐息のような声が漏れる。
「なんてこと……。今日も完璧だわ。この瞳の輝き、肌の艶、計算され尽くした口角の角度……。鏡の中の私が美しすぎて、直視すると失神しそう」
彼女は本気で言っていた。
ナルシストという言葉では生ぬるい。
彼女は、自分教の狂信的な信者だった。
カイル殿下は、あまりの会話の通じなさに、怒りを通り越して呆然としていた。
しかし、すぐに気を取り直し、最後の切り札を切ることにした。
「……もういい。貴様には更生の余地もないようだ。ニアン・ローズベルク! 貴様を国外追放とする!」
会場が静まり返る。
国外追放。
それは貴族としての死を意味する。
リナが暗い笑みを浮かべたのを、ニアンは見逃さなかった。
しかし、ニアンの反応は予想の斜め上を行くものだった。
「国外……追放?」
「そうだ! この国から出て行け! 二度とその顔を見せるな!」
ニアンは手鏡を返し、ゆっくりと瞬きをした。
そして。
「ふふっ……」
艶やかな笑い声を漏らした。
「あははははは! 素晴らしいわ! カイル殿下、あなたにしては気の利いたプレゼントね!」
「な、なに……?」
殿下が後ずさる。
ニアンは両手を広げ、恍惚とした表情で叫んだ。
「ついに! ついにこの狭苦しい国から解放されるのね! ずっと悩んでいたのよ。私の美しさは、一国に留めておくにはあまりにも強大すぎるって!」
「は?」
「世界が私を呼んでいるわ……! 隣国、そのまた隣の国、海の向こうの国々までもが、ニアン・ローズベルクという奇跡を目撃したがっているのよ! 国外追放? いいえ、これは『世界巡回ツアー』の始まりよ!」
ニアンはドレスを翻し、カイル殿下に背を向けた。
「感謝するわ、元婚約者さん。おかげで私は、世界へ羽ばたく翼を得たわ。さようなら、私の美しさを理解できない哀れな人々。これからは遠くから噂を聞いて、せいぜい後悔なさい!」
「おい、待て! まだ話は終わって……」
「執事! 馬車の準備を! 一番大きな馬車を持ってきてちょうだい! 私のドレスと靴と、それから屋敷中の鏡をすべて積み込むのよ! 急いで!」
ニアンは颯爽と歩き出した。
その背中は、追放される惨めな令嬢のそれではない。
まるで凱旋パレードに向かう女王のようだった。
「あ、あいつ……本気か?」
カイル殿下とリナがポカンと立ち尽くす中、ニアンは一度も振り返ることなく、パーティ会場の扉を蹴破る勢いで開け放った。
「待っていなさい世界! 今、最高の美がそちらへ行くわよーーッ!」
こうして。
前代未聞のナルシスト悪役令嬢による、愉快な追放劇が幕を開けたのである。
王立学園の卒業パーティ。
きらびやかなシャンデリアの下、カイル殿下の怒声が会場を震わせた。
音楽が止まる。
踊っていた生徒たちが動きを止め、どよめきが広がる。
誰もが息を呑んで、会場の中央に立つ二人を見つめていた。
婚約破棄。
それは貴族社会における最大の醜聞であり、糾弾される令嬢にとっては地獄の宣告に等しい。
しかし。
「…………」
糾弾された当人、公爵令嬢ニアン・ローズベルクは無言だった。
豪奢なプラチナブロンドの髪を揺らし、長い睫毛を伏せ、ただ一点を見つめている。
カイル殿下は、その沈黙を「絶望」と受け取ったらしい。
勝利を確信したように口元を歪め、さらに声を張り上げた。
「ふん、言葉もないか。それもそうだろう。これまで貴様がリナに行ってきた数々の悪行……もはや弁解の余地などないのだからな!」
殿下の隣には、男爵令嬢のリナが涙目で寄り添っている。
彼女は震える声で、か細く呟いた。
「カイル様……ニアン様をあまり責めないであげてください。私さえ我慢すれば……」
「優しいリナ。君は黙っていて。この女の化けの皮を剥がさなければ、国の未来に関わるんだ」
殿下はリナの肩を抱き寄せ、再びニアンを睨みつける。
「おいニアン! 聞いているのか!? 貴様のその高慢な態度、そして身の程知らずな嫉妬深さには反吐が出る! 今すぐここで土下座をして謝罪するならば、慈悲として修道院送りで済ませてやろうと言っているんだ!」
会場中の視線が、ニアンの唇に集まる。
彼女はゆっくりと顔を上げた。
その瞳は、かつてないほど真剣な光を宿している。
そして、重々しく口を開いた。
「……暗いわ」
「は?」
カイル殿下が間の抜けた声を出す。
「暗いと言ったのよ。そこの照明係! あなた、職務怠慢でクビにされたいの?」
ニアンは扇子をバチリと閉じ、ホールの端にいる照明スタッフを指差した。
「えっ、あ、わ、私ですか!?」
「そうよあなた! 今の私の立ち位置と照明の角度、計算したことある? これじゃあ私の輝くようなプラチナブロンドに影が落ちて、美しさが二割減……いいえ、五割減になってしまっているじゃないの!」
会場が、別の意味で凍りつく。
ニアンは殿下を完全に無視し、照明係への説教を続けた。
「いいこと? 私の肌は最高級のシルクよりも滑らかで、月の光よりも白いの。それを照らす光がこんな中途半端なオレンジ色じゃ、素材の良さが死んでしまうわ! もっと白熱の魔法灯を持ってきなさい。角度は斜め四十五度上から! 今すぐよ!」
「は、はいぃッ!」
照明係が慌てて走っていく。
ニアンは満足げに頷くと、ようやく視線を正面に戻した。
そこには、口をあんぐりと開けたカイル殿下とリナがいた。
「あら、カイル殿下。まだいらしたの?」
「ま、まだいらしたの、ではない! 貴様、今の状況が分かっているのか!?」
「ええ、分かっているわ。照明のセッティングが最悪。それが今の状況よ。王家の主催するパーティにしては、美意識が欠落していてよ? 予算不足かしら」
「違う! 婚約破棄だ! 俺は貴様との婚約を破棄すると言ったんだ!」
殿下の顔が怒りで真っ赤に染まる。
しかし、ニアンは涼しい顔で小首を傾げた。
「婚約破棄? ……ああ、そういえばそんな雑音も聞こえていたわね」
「ざ、雑音だと!?」
「だってそうでしょう? 私の美しさを讃える詩(うた)以外の言葉は、すべて雑音だもの」
ニアンは優雅にため息をついた。
その仕草一つとっても、計算され尽くした美しさがある。
彼女は自分の頬に手を当て、うっとりと目を細めた。
「でも、殿下がそこまで興奮するのも無理はないわ。今日の私は、朝のスキンケアだけで三時間を費やした『完全無欠バージョン』だもの。私のあまりの美しさに脳がショートして、意味不明なことを叫びたくなってしまったのね。可哀想に」
「ちがうわーーッ!!」
カイル殿下が地団駄を踏む。
その様子を見て、リナがおずおずと口を挟んだ。
「あの……ニアン様? カイル様は、ニアン様が私にしたイジメについて怒っていらっしゃるんです」
「イジメ?」
ニアンはきょとんとして、リナを見た。
そして、心底不思議そうに問い返す。
「私が? あなたを? ……ごめんなさい、あなた誰?」
「ッ!?」
リナがショックでよろめく。
「ひ、酷いです! 同じクラスで、何度も会話したじゃないですか! 先週だって、階段で私を突き飛ばして……!」
「リナ! 大丈夫か!」
殿下がリナを支え、ニアンを睨みつける。
「白々しいぞニアン! 目撃者もいるんだ! 先週の火曜日、学園の階段でリナを突き飛ばしただろう!」
ニアンは少し考え込むように天井を見上げ……そして、ぽんと手を打った。
「ああ、あの時の地味な方でしたか」
「地味って言うな!」
「だって、私の視界の端に映るか映らないかギリギリの存在感でしたもの。記憶に残らないのも無理はありませんわ」
ニアンは悪びれもせず言い放つ。
「それに、突き飛ばしたなんて人聞きが悪いですわね。私はただ、階段を降りていただけよ。そうしたら貴女が、私のドレスの裾を踏みそうになった。だから私は、美しいターンを決めて回避したの。貴女が勝手にバランスを崩して転がっていっただけでしょう?」
「そ、そんな……! あの時ニアン様は、『目障りよ』って仰いました!」
「ええ、言ったわね」
ニアンはあっさりと認めた。
「だって、私の歩く動線上に石ころがあったら危ないでしょう? 私の足は国宝級なのよ? 傷がついたらどう責任を取ってくれるのかしら。目障りな障害物を避けるのは、生物としての防衛本能よ」
「き、貴様……ッ! どこまで腐った性根をしているんだ!」
殿下の怒りは頂点に達していた。
しかしニアンにとって、その怒号も心地よいBGM程度にしか聞こえていないようだ。
彼女は懐から何かを取り出そうとして、眉をひそめた。
「……あら? ないわ」
「話を聞け!」
「鏡がないわ。大変、一大事よ」
ニアンは周囲を見渡した。
「誰か! 誰か鏡を持っていない!? 今すぐ自分の顔を確認しないと、不安で息が止まりそう!」
「俺の話を聞けと言っているんだ!!」
「うるさいわね殿下。少し黙っていてくださる? 今、私は自分の美しさを再確認するという神聖な儀式を行おうとしているのよ」
ニアンは近くにいた令嬢の手から、強引に手鏡を借り受けた。
「あ、あの、ニアン様……」
「ありがとう。貴女、なかなか良いセンスの手鏡を持っているわね。私の顔を映す許可を与えてあげる」
ニアンは手鏡を覗き込み、うっとりとほうけた。
「…………はぁ」
吐息のような声が漏れる。
「なんてこと……。今日も完璧だわ。この瞳の輝き、肌の艶、計算され尽くした口角の角度……。鏡の中の私が美しすぎて、直視すると失神しそう」
彼女は本気で言っていた。
ナルシストという言葉では生ぬるい。
彼女は、自分教の狂信的な信者だった。
カイル殿下は、あまりの会話の通じなさに、怒りを通り越して呆然としていた。
しかし、すぐに気を取り直し、最後の切り札を切ることにした。
「……もういい。貴様には更生の余地もないようだ。ニアン・ローズベルク! 貴様を国外追放とする!」
会場が静まり返る。
国外追放。
それは貴族としての死を意味する。
リナが暗い笑みを浮かべたのを、ニアンは見逃さなかった。
しかし、ニアンの反応は予想の斜め上を行くものだった。
「国外……追放?」
「そうだ! この国から出て行け! 二度とその顔を見せるな!」
ニアンは手鏡を返し、ゆっくりと瞬きをした。
そして。
「ふふっ……」
艶やかな笑い声を漏らした。
「あははははは! 素晴らしいわ! カイル殿下、あなたにしては気の利いたプレゼントね!」
「な、なに……?」
殿下が後ずさる。
ニアンは両手を広げ、恍惚とした表情で叫んだ。
「ついに! ついにこの狭苦しい国から解放されるのね! ずっと悩んでいたのよ。私の美しさは、一国に留めておくにはあまりにも強大すぎるって!」
「は?」
「世界が私を呼んでいるわ……! 隣国、そのまた隣の国、海の向こうの国々までもが、ニアン・ローズベルクという奇跡を目撃したがっているのよ! 国外追放? いいえ、これは『世界巡回ツアー』の始まりよ!」
ニアンはドレスを翻し、カイル殿下に背を向けた。
「感謝するわ、元婚約者さん。おかげで私は、世界へ羽ばたく翼を得たわ。さようなら、私の美しさを理解できない哀れな人々。これからは遠くから噂を聞いて、せいぜい後悔なさい!」
「おい、待て! まだ話は終わって……」
「執事! 馬車の準備を! 一番大きな馬車を持ってきてちょうだい! 私のドレスと靴と、それから屋敷中の鏡をすべて積み込むのよ! 急いで!」
ニアンは颯爽と歩き出した。
その背中は、追放される惨めな令嬢のそれではない。
まるで凱旋パレードに向かう女王のようだった。
「あ、あいつ……本気か?」
カイル殿下とリナがポカンと立ち尽くす中、ニアンは一度も振り返ることなく、パーティ会場の扉を蹴破る勢いで開け放った。
「待っていなさい世界! 今、最高の美がそちらへ行くわよーーッ!」
こうして。
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