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厨房には、気まずい沈黙が流れていた。
いや、ルーナとアンナ、エマは、玉ねぎを刻む音、鍋を準備する音を立て、いつも通りに作業をしている。
沈黙しているのは、厨房の隅で皿を握りしめたまま固まっている、アレクシス・ラインフォルトただ一人だった。
(うまい…)
スコーンの最後のひとかけらを飲み込んだ後も、その衝撃的な美味しさの余韻が、アレクシスの舌と脳を支配していた。
バターの芳醇な香り、小麦の確かな甘み、そしてジャムの酸味。
全てが完璧に調和していた。
(これが…あの悪女の作ったものだと…?)
アレクシスは、混乱していた。
彼が知る「悪」とは、もっと粗野で、不快なもののはずだった。
しかし、今彼が味わったものは、人を心の底から幸福にする、温かい味だった。
「あら、副団長様。お口に合いましたようで、何よりですわ」
ルーナが、振り返りもせずに、楽しそうな声で言った。
ハーブ園での皮肉とは違う、純粋な満足感が声に滲んでいる。
「…っ!」
アレクシスは、はっと我に返った。
(危ない。味で油断させ、懐柔しようという魂胆か!)
彼は、即座に思考を「任務モード」に切り替えた。
「検分しただけだ。毒は…入っていないようだな」
「あら、残念ですわ。もし毒なら、副団長様を実験台にして、即効性か遅効性か、データを取ろうと思っておりましたのに」
ルーナが、恐ろしいことを平然と口にする。
「なっ…!」
アレクシスが腰の剣に手をかけかけると、ルーナは「あら、冗談ですわよ」と肩をすくめた。
「そんな怖い顔をなさらないで。わたくし、毒薬作りより、お菓子作りの方がよほど得意ですの」
(…食えない女だ)
アレクシスは、空になった皿とカップを、乱暴に流し台に置いた。
添えられていたハーブティーも、スコーンの甘さを程よく流す、爽やかな香りで、不本意ながら全て飲み干してしまっていた。
「俺は外を見回ってくる。貴様らも、不審な行動はするな」
彼は、これ以上この「甘い匂い」が充満する空間にいるのは危険だと判断し、足早に厨房を立ち去った。
「ふふっ。行ってしまわれましたわね」
「お嬢様、あまりおからかいになると、本気で斬りかかられてしまいますわよ」
アンナが、苦笑しながらたしなめる。
「大丈夫よ、アンナ。あの方、根は真面目なだけ。わたくしのような『悪女』への対処法を知らないだけですわ」
ルーナは、楽しそうにスープの鍋をかき混ぜ始めた。
その夜。
アレクシスは、万が一の事態(ルーナの逃亡や、外部からの接触)に備え、自室には戻らず、一階の廊下で仮眠を取ることにした。
特に、厨房と玄関に通じる廊下の、椅子の上だ。
硬い木製の椅子に背を預け、目を閉じる。
(…なぜだ)
疲労はピークのはずなのに、なかなか寝付けない。
目を閉じると、あのスコーンの味が蘇ってくる。
(悪女の罠だ。そうに決まっている)
そう自分に言い聞かせれば聞かせるほど、別の記憶が蘇る。
土まみれになりながら、楽しそうにハーブを摘んでいたルーナの横顔。
厨房で、生き生きとした表情で生地をこねていた姿。
(…どれが、あの女の本当の姿だ?)
エリオット王子に断罪された時の、あのふてぶてしくも完璧な淑女の仮面。
そして、今見せている、料理と昼寝を愛する無邪気な(?)姿。
(全てが芝居だとしたら、とんでもない女だ)
アレクシスは、深い疑念と共に、浅い眠りへと落ちていった。
翌朝。
アレクシスを現実に引き戻したのは、またしても、あの厨房から漂ってくる「香り」だった。
今度は、スコーンの時のような甘い香りではない。
もっと、根本的で、抗いがたい…焼きたてのパンが持つ、香ばしく、優しい香りだった。
「…っ」
昨夜からまともな食事を摂っていない胃袋が、その香りを敏感に察知し、再びぐうぅと鳴りそうになる。
アレクシスは、慌てて腹を押さえ、音を立てずに立ち上がった。
(まただ…! また、あの女、何か作っている!)
警戒レベルを最大に引き上げ、アレクシスは音を殺して厨房へ向かう。
扉の隙間から中を覗くと、そこには、朝日の中で湯気を立てる朝食が準備されていた。
焼きたての、表面がパリッと黄金色になった丸パン。
昨日ルーナが仕込んでいた、野菜たっぷりの温かいスープ。
そして、新鮮な卵を使った、とろとろのスクランブルエッグ。
完璧な朝食だった。
「あら、副団長様。おはようございます」
ルーナは、アレクシスの気配に気づいていたのか、振り返りもせずに言った。
彼女は、自分の分のパンに、たっぷりとバターを塗っているところだった。
「ずいぶんとお早いお目覚めですこと。それとも、まさか、そこで一晩中見張っておいででしたの?」
「…任務だ」
「まあ、ご苦労様ですわ。そんなに空腹では、『監視』のお仕事もままならないでしょう」
ルーナは、昨日と同じように、一人分の朝食を盆に乗せると、アンナに目配せした。
「さあ、アンナ。お客様(・・・)に、朝食の『検分』をお願いしてちょうだい」
「かしこまりました」
アンナが、にこやかに盆を差し出してくる。
「…」
アレクシスは、葛藤した。
昨日のスコーンは、空腹に負けた不覚だ。
だが、今朝は…。
しかし、鼻腔をくすぐる焼きたてのパンの香りが、彼の理性を麻痺させる。
(こ、これも任務だ。毎朝、毒を盛らないか確認するのも、監視役の務めだ)
「…ああ。置いておけ」
アレクシスは、昨日よりは幾分か素直に(しかし、態度はあくまでも尊大に)盆を受け取った。
そして、昨日と同じ厨房の隅で、まずはパンを一口ちぎって口に入れた。
「……!」
(うまい…)
外はパリッと、中は驚くほどふんわりと柔らかい。
噛みしめるほどに、小麦の甘みが広がる。
スープも、ハーブ園で摘んだ野菜の旨味が溶け出し、疲れた体に染み渡るようだった。
アレクシスは、無我夢中で食べた。
昨日、あれほど「悪女の罠だ」と警戒していたことなど、どこかに吹き飛んでしまったかのように。
そして、この日から、「氷の騎士」アレクシス・ラインフォルトの、奇妙な日常が始まった。
彼は「監視」という名目で、一日中ルーナにつきまとった。
ルーナがハーブ園で土いじりをすれば、その傍らで仁王立ちで「監視」する。
ルーナが湖畔で釣りを始めれば(彼女はそれも趣味だった)、その後ろで「監視」する。
ルーナが天蓋付きベッドで昼寝を始めれば、部屋の前の廊下で「監視」する。
そして、ルーナが厨房に立つ時間になると、必ず、アレクシスも厨房の入り口(いつしか彼の定位置となっていた)に現れるのだった。
「あら、副団長様。今日もご熱心ですこと」
「…任務だ」
そのやり取りは、もはや様式美となっていた。
ルーナは、毎日、飽きもせず何かを作った。
ある日は、王都から持ってきたカカオ豆を使った、濃厚なチョコレートケーキ。
またある日は、別荘の管理人が育てていたリンゴを使った、熱々のアップルパイ。
そしてまたある日は、シンプルなバタークッキー。
そのたびに、アンナが「検分」用の皿をアレクシスの元へ運ぶ。
「…(無言で受け取り、食べる)」
「…(ひたすら、食べる)」
アレクシスは、もはや「毒見だ」という言い訳すら口にしなくなっていた。
ただひたすら、「監視」の一環として、ルーナの作るものを食べ続けた。
そんな日々が、一週間ほど続いたある日の午後。
ルーナは、新作のクッキーを焼いていた。
「副団長様。どうぞ、『検分』を」
アンナが差し出した皿の上には、見た目は何の変哲もない、素朴な丸いクッキーが乗っていた。
アレクシスは、それを無言で受け取り、口に放り込む。
サクサク、ホロリ。
バターの香りと共に、ナッツのような、より深いコクが口の中に広がった。
「…このクッキーは」
アレクシスは、思わず呟いていた。
いつものバタークッキーより、明らかに風味が豊かだ。
ルーナは、オーブンの前で作業していた手を止め、満足そうに振り返った。
「新作ですわ。アーモンドプードル(アーモンドの粉)を、いつもより少し多めにしてみましたの」
そして、悪戯っぽく笑った。
「お気に召しました?」
「…っ!」
アレクシスは、言葉に詰まった。
「うまい」と、素直に言いそうになるのを、寸前で飲み込んだ。
この悪女は、自分がこの時間を楽しみにしていることに、気づいている…!
「…別に」
アレクシスは、顔を背け、ぼそりと呟いた。
「悪くない」
それが、堅物の騎士にできる、最大限の賛辞だった。
「ふふ、そうですか。それは良かったわ」
ルーナは、嬉しそうに鼻歌を歌いながら、作業に戻った。
アレクシスは、残りのクッキーをゆっくりと味わいながら、己の中に芽生えた、ある感情に気づいてしまっていた。
(俺は…この女の作る菓子を…『楽しみに』している…?)
悪女の罠だ。
そうに決まっている。
そう頭では分かっているのに、胃袋は、そして心は、明日のお菓子はなんだろう、と期待している自分がいる。
(ありえん…! この俺が…!)
「氷の騎士」アレクシス・ラインフォルトは、自覚のないまま、ルーナ・フォン・アッシュフィールドという「悪役令嬢(の作るお菓子)」に、完全に胃袋を掴まれ、陥落させられていたのだった。
いや、ルーナとアンナ、エマは、玉ねぎを刻む音、鍋を準備する音を立て、いつも通りに作業をしている。
沈黙しているのは、厨房の隅で皿を握りしめたまま固まっている、アレクシス・ラインフォルトただ一人だった。
(うまい…)
スコーンの最後のひとかけらを飲み込んだ後も、その衝撃的な美味しさの余韻が、アレクシスの舌と脳を支配していた。
バターの芳醇な香り、小麦の確かな甘み、そしてジャムの酸味。
全てが完璧に調和していた。
(これが…あの悪女の作ったものだと…?)
アレクシスは、混乱していた。
彼が知る「悪」とは、もっと粗野で、不快なもののはずだった。
しかし、今彼が味わったものは、人を心の底から幸福にする、温かい味だった。
「あら、副団長様。お口に合いましたようで、何よりですわ」
ルーナが、振り返りもせずに、楽しそうな声で言った。
ハーブ園での皮肉とは違う、純粋な満足感が声に滲んでいる。
「…っ!」
アレクシスは、はっと我に返った。
(危ない。味で油断させ、懐柔しようという魂胆か!)
彼は、即座に思考を「任務モード」に切り替えた。
「検分しただけだ。毒は…入っていないようだな」
「あら、残念ですわ。もし毒なら、副団長様を実験台にして、即効性か遅効性か、データを取ろうと思っておりましたのに」
ルーナが、恐ろしいことを平然と口にする。
「なっ…!」
アレクシスが腰の剣に手をかけかけると、ルーナは「あら、冗談ですわよ」と肩をすくめた。
「そんな怖い顔をなさらないで。わたくし、毒薬作りより、お菓子作りの方がよほど得意ですの」
(…食えない女だ)
アレクシスは、空になった皿とカップを、乱暴に流し台に置いた。
添えられていたハーブティーも、スコーンの甘さを程よく流す、爽やかな香りで、不本意ながら全て飲み干してしまっていた。
「俺は外を見回ってくる。貴様らも、不審な行動はするな」
彼は、これ以上この「甘い匂い」が充満する空間にいるのは危険だと判断し、足早に厨房を立ち去った。
「ふふっ。行ってしまわれましたわね」
「お嬢様、あまりおからかいになると、本気で斬りかかられてしまいますわよ」
アンナが、苦笑しながらたしなめる。
「大丈夫よ、アンナ。あの方、根は真面目なだけ。わたくしのような『悪女』への対処法を知らないだけですわ」
ルーナは、楽しそうにスープの鍋をかき混ぜ始めた。
その夜。
アレクシスは、万が一の事態(ルーナの逃亡や、外部からの接触)に備え、自室には戻らず、一階の廊下で仮眠を取ることにした。
特に、厨房と玄関に通じる廊下の、椅子の上だ。
硬い木製の椅子に背を預け、目を閉じる。
(…なぜだ)
疲労はピークのはずなのに、なかなか寝付けない。
目を閉じると、あのスコーンの味が蘇ってくる。
(悪女の罠だ。そうに決まっている)
そう自分に言い聞かせれば聞かせるほど、別の記憶が蘇る。
土まみれになりながら、楽しそうにハーブを摘んでいたルーナの横顔。
厨房で、生き生きとした表情で生地をこねていた姿。
(…どれが、あの女の本当の姿だ?)
エリオット王子に断罪された時の、あのふてぶてしくも完璧な淑女の仮面。
そして、今見せている、料理と昼寝を愛する無邪気な(?)姿。
(全てが芝居だとしたら、とんでもない女だ)
アレクシスは、深い疑念と共に、浅い眠りへと落ちていった。
翌朝。
アレクシスを現実に引き戻したのは、またしても、あの厨房から漂ってくる「香り」だった。
今度は、スコーンの時のような甘い香りではない。
もっと、根本的で、抗いがたい…焼きたてのパンが持つ、香ばしく、優しい香りだった。
「…っ」
昨夜からまともな食事を摂っていない胃袋が、その香りを敏感に察知し、再びぐうぅと鳴りそうになる。
アレクシスは、慌てて腹を押さえ、音を立てずに立ち上がった。
(まただ…! また、あの女、何か作っている!)
警戒レベルを最大に引き上げ、アレクシスは音を殺して厨房へ向かう。
扉の隙間から中を覗くと、そこには、朝日の中で湯気を立てる朝食が準備されていた。
焼きたての、表面がパリッと黄金色になった丸パン。
昨日ルーナが仕込んでいた、野菜たっぷりの温かいスープ。
そして、新鮮な卵を使った、とろとろのスクランブルエッグ。
完璧な朝食だった。
「あら、副団長様。おはようございます」
ルーナは、アレクシスの気配に気づいていたのか、振り返りもせずに言った。
彼女は、自分の分のパンに、たっぷりとバターを塗っているところだった。
「ずいぶんとお早いお目覚めですこと。それとも、まさか、そこで一晩中見張っておいででしたの?」
「…任務だ」
「まあ、ご苦労様ですわ。そんなに空腹では、『監視』のお仕事もままならないでしょう」
ルーナは、昨日と同じように、一人分の朝食を盆に乗せると、アンナに目配せした。
「さあ、アンナ。お客様(・・・)に、朝食の『検分』をお願いしてちょうだい」
「かしこまりました」
アンナが、にこやかに盆を差し出してくる。
「…」
アレクシスは、葛藤した。
昨日のスコーンは、空腹に負けた不覚だ。
だが、今朝は…。
しかし、鼻腔をくすぐる焼きたてのパンの香りが、彼の理性を麻痺させる。
(こ、これも任務だ。毎朝、毒を盛らないか確認するのも、監視役の務めだ)
「…ああ。置いておけ」
アレクシスは、昨日よりは幾分か素直に(しかし、態度はあくまでも尊大に)盆を受け取った。
そして、昨日と同じ厨房の隅で、まずはパンを一口ちぎって口に入れた。
「……!」
(うまい…)
外はパリッと、中は驚くほどふんわりと柔らかい。
噛みしめるほどに、小麦の甘みが広がる。
スープも、ハーブ園で摘んだ野菜の旨味が溶け出し、疲れた体に染み渡るようだった。
アレクシスは、無我夢中で食べた。
昨日、あれほど「悪女の罠だ」と警戒していたことなど、どこかに吹き飛んでしまったかのように。
そして、この日から、「氷の騎士」アレクシス・ラインフォルトの、奇妙な日常が始まった。
彼は「監視」という名目で、一日中ルーナにつきまとった。
ルーナがハーブ園で土いじりをすれば、その傍らで仁王立ちで「監視」する。
ルーナが湖畔で釣りを始めれば(彼女はそれも趣味だった)、その後ろで「監視」する。
ルーナが天蓋付きベッドで昼寝を始めれば、部屋の前の廊下で「監視」する。
そして、ルーナが厨房に立つ時間になると、必ず、アレクシスも厨房の入り口(いつしか彼の定位置となっていた)に現れるのだった。
「あら、副団長様。今日もご熱心ですこと」
「…任務だ」
そのやり取りは、もはや様式美となっていた。
ルーナは、毎日、飽きもせず何かを作った。
ある日は、王都から持ってきたカカオ豆を使った、濃厚なチョコレートケーキ。
またある日は、別荘の管理人が育てていたリンゴを使った、熱々のアップルパイ。
そしてまたある日は、シンプルなバタークッキー。
そのたびに、アンナが「検分」用の皿をアレクシスの元へ運ぶ。
「…(無言で受け取り、食べる)」
「…(ひたすら、食べる)」
アレクシスは、もはや「毒見だ」という言い訳すら口にしなくなっていた。
ただひたすら、「監視」の一環として、ルーナの作るものを食べ続けた。
そんな日々が、一週間ほど続いたある日の午後。
ルーナは、新作のクッキーを焼いていた。
「副団長様。どうぞ、『検分』を」
アンナが差し出した皿の上には、見た目は何の変哲もない、素朴な丸いクッキーが乗っていた。
アレクシスは、それを無言で受け取り、口に放り込む。
サクサク、ホロリ。
バターの香りと共に、ナッツのような、より深いコクが口の中に広がった。
「…このクッキーは」
アレクシスは、思わず呟いていた。
いつものバタークッキーより、明らかに風味が豊かだ。
ルーナは、オーブンの前で作業していた手を止め、満足そうに振り返った。
「新作ですわ。アーモンドプードル(アーモンドの粉)を、いつもより少し多めにしてみましたの」
そして、悪戯っぽく笑った。
「お気に召しました?」
「…っ!」
アレクシスは、言葉に詰まった。
「うまい」と、素直に言いそうになるのを、寸前で飲み込んだ。
この悪女は、自分がこの時間を楽しみにしていることに、気づいている…!
「…別に」
アレクシスは、顔を背け、ぼそりと呟いた。
「悪くない」
それが、堅物の騎士にできる、最大限の賛辞だった。
「ふふ、そうですか。それは良かったわ」
ルーナは、嬉しそうに鼻歌を歌いながら、作業に戻った。
アレクシスは、残りのクッキーをゆっくりと味わいながら、己の中に芽生えた、ある感情に気づいてしまっていた。
(俺は…この女の作る菓子を…『楽しみに』している…?)
悪女の罠だ。
そうに決まっている。
そう頭では分かっているのに、胃袋は、そして心は、明日のお菓子はなんだろう、と期待している自分がいる。
(ありえん…! この俺が…!)
「氷の騎士」アレクシス・ラインフォルトは、自覚のないまま、ルーナ・フォン・アッシュフィールドという「悪役令嬢(の作るお菓子)」に、完全に胃袋を掴まれ、陥落させられていたのだった。
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