№4

河鹿 虫圭

文字の大きさ
4 / 20

EMG4:アヤカシマガイ

しおりを挟む
『ワシの命を半分やる。だからお主の体を使わせろ。』

声とともに目が覚めると目の前に美しい白龍がこちらを見おろしていた。金色の瞳に吸い込まれそうになりながら、俺は首を横に振る。

「なぜだ…このままではお主死ぬぞ?」

「俺の身体は俺だけのモノだ。使うんじゃなくて共有にしろ。」

「それは無理じゃ。共有ではあの妖紛いのバケモノには勝てない。」

神がはっきりと言った。勝てないと…

バカか?

お前が諦めたらダメだろう?

俺は床を叩き神を黙らせる。

「お前一人じゃ勝てねぇよ。だから、俺と強力しろって言ってんだ!」

白龍神は黙り込み考える。そして、何か覚悟が決まった様にうなずき俺と目を合わせた。

「先ほども言ったが、共有は無理じゃ。だから、お主が戦え。ワシの力を分けてお主に預ける。お主はワシから、力と魂をもらう。これでどうだ。」

「俺はあんたに何をすればいい?」

白龍神は驚いたように口詰まる。そりゃそうだろ。なんで俺だけが一方的に施されなきゃならん。

「もう一度聞く。俺は、あんたに貸せばいい?」

白龍神はニコリと笑いながら光り始めた。

「かっかっかっ!面白のう~お主は体何もワシに返さんでいいし、何もしなくていい。ただ、ワシの力で人々を救ってくれ。」

俺は首を縦に振る。白龍神は俺の様子に感心した様にうなずき俺の体に入ってきた。体が光に包まれて暖かくなってくる。再び光に包まれて俺は現実へと戻ってきた。目の前には疲れ切った彼岸花男が肩で息をしており、俺を睨んでいた。

「まだ生きていたのか……さっきの神とやらは死んだようだね。」

「いや、生きてる。俺の中にあいつはいる。」
「ふん、人間如きが粋がるな。さっさと死ね。」

またあの黒い塊を作り出し、俺に向かって投げてきた。そういえば、白龍神に力の使い方を聞いていなかった。

『成りたいものや武器になるものを想像しろ。』

白龍神の声が頭の中に響いてくる。でも、想像しろって言っても何を想像していいか……

『お主の頭の中には何がある?』

白龍神の声にふと、昔よく見ていたヒーロー番組を思い出した。ベルトを腰に巻いて変身ポーズを取って姿を変えて怪人をキックで倒す仮面のヒーローだ。曖昧な形を思い出し想像する。すると、俺の腰辺りに熱が帯び始める。目を開けてみるとそこには番組に出てきたようなベルトが腰に巻かれていた。

「確か…変身ポーズは……こう!」

曖昧に体を動かしていると、彼岸花男は鼻で嗤い黒い塊を投げてきた。

我龍転身がりょうてんしん!」

黒い塊は光のカーテンに包まれて打ち消される。そしてカーテンの内側で俺の体には変化が訪れていた。身体が大きく太くなりまるでさっきの白龍のような姿になった。カーテンを振り払うと視界が開けて彼岸花男と目が合った。

「人間が理性を保ったまま怨者うらみびとになったと言うのか…ありえん!」

怨者うらみびと?違うな。俺は、この町を守るただの人間だ。」

黒い塊を投げつけてくるが俺はそれを拳で弾き飛ばしながら、彼岸花男と距離を詰める。そして、拳が届く間合いに着き俺は固めた拳を彼岸花男の顔面に叩きつけた。

「くらえ!」

彼岸花男の顔面が歪み下半身のツタが引っ込み元の状態へ戻り地面へと投げ出された。

「こんな、神と契約しただけの人間にぃぃ!」

彼岸花男はそういうと顔を抑えながら、無数の小さな黒い塊を発生させる。

「許さん。この借りは必ず返す!」

彼岸花男は塊を操作して俺を狙う。俺はそれを全部叩き落とし次の攻撃に備えて構えたが、彼岸花男はすでに消えてた。

『どうやら、逃げたようじゃ。』

「そうか……」

俺は変身を解き、その場でへたり込む。身体重い。初めて戦闘した時みたいに身体が重い。俺はそのままフラフラと立ち上がりトラックまで行こうと山道を歩き、神社の前まで来た。

「そうだ。あの人は……」

神社の前にはいなかったが心配だ。確認しに行こう。階段を上がりそのまま俺の視界はだんだんと暗くなっていった。階段の角が痛い。だが、もう歩けない……

「て…さい……起きて……さい……起きてください!」

女性の声で目が覚めた。勢いよく起き上がると昨日の女性がこちらを心配そうに見つめていた。

「良かった……起きた……」

「いやこっちのセリフだな……あの後、体に何か異変はありませんでしたか?」

「いえ、私は何も…それよりももう一人の方は……」

俺は、森でのことを話そうと思ったが、どうしたものか…

「あの……」

「いや、実は、森に入っていたのはいいが見失ったみたいで……」

「そうですか……白龍神様。あって話をしてみたかったのですが……」

「あの人が神と言うことは信じるんだ……」

「はい。我が神社が祀っている白龍神様は嘘を嫌い清廉潔白の人間を好むので……」

「へぇ~そうなんだ…」

『うるさい。こちらを見るな。』

「まぁ、とりあえず何事も無くて良かった……それじゃ俺はこれで…」

「あ、まだ疲れいるのでは……」

「大丈夫です。眠りしたら元気出たので……では……」

俺は神社を出て、朝日が昇り始めている山を降りトラックで自宅へ帰った。

自宅へ着き昼ご飯を食べようと冷蔵庫の残り物で野菜炒めを作り食べる。今日はもう動けないなと思いながら布団を敷き眠りに着こうとしたが、なんだか身体がだるい。熱もないし、病気ではなさそうだ。

『ワシの力のせいじゃな。』

「どういうことだよ。」

『ワシはあの神社の祈祷の力で腹を満たしておる。だが、昨日のあの彼岸花の妖紛いのせいでその力が薄れた。だから貴様は疲れも取れんし腹も満たされん。』

確かに、さっき食べたばかりなのに何か腹が満たされない。

「マジか……」

『手頃な方法としてはあの神社に住むか、後は、ワシのことを様づけで呼んでも敬ったことにして力も回復するだろう。』

「神社に住むのは無理だが、働くことはできる。それでもいいか?白龍様」

『……若干バカにした様に聞こえたがまぁいいだろう……そうじゃな。向こうで働いても良いだろう。一定時間おれば回復も進むだろうし……』

「よし来た。俺は、MDCA時代にいろんな資格も取ったんだ。なにか役に立つ資格の一つや二つあるだろ。」

俺はすぐに体を起こしてトラックに乗り込んだ。

『貴様、職につくのは良いが、あのアヤカシマガイはどうする』

「そら、倒すに決まってますよ。何か、予知能力とか、相手の気を探れるとかないんです?」

『それくらいならまぁ、できなくもない。』

「じゃ、大丈夫っすね。あの境内に入れる職は庭師とかか?」

俺ははそのまま近くの職業案内所まで走らせた。

そこから俺は現在の伯朧神社の庭師になった。

EMG4:アヤカシマガイ

次回 EMG5:氷のように冷たい君
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...