魔装戦士

河鹿 虫圭

文字の大きさ
6 / 98

6:爆ぜる

しおりを挟む
廃校の校庭にて…打撃音と橙に光る閃光が灯る。その様子を見る影が三つ。一人は長い黒髪で青い瞳を持っている少女。もう一人は短い黒髪の赤い瞳のボーイッシュな少女。そして、その真ん中にいるのは虹色に見える紙を持つ少女。服の左腹部が破けて肌色が出ている。

「あれは……一体、何なんですか……」

「燃えてるねぇ…鎧。」

「私が見たときは白色だったが、属性の切り替えもできるのか……?」

三人はその閃光のぶつかり合いを見ているしかできなかった。それほど、目の前の二人の戦闘は燃えていた。一方は蜘蛛の魔族。自分の過去を終わらせようと目の前の鎧の戦士を過去の自分に見立てて得意の合気道と爆発の爆発系の魔術で殺しにかかる。そしてもう一方、形見の石で鎧の戦士に変身した魔力のない少年。蜘蛛の魔族により防戦一方だったが、形見の石の力により、炎の姿を手に入れ形勢逆転を図ろうとしていた。

「爆ぜろ!柘榴ザクロ!骨まで燃やせ!」

蜘蛛男は札を一枚投げ、鎧の戦士の目の前で爆発させる。爆発は直撃ではなく、目くらましのもので少年の視界は黒煙で遮られる。だが、少年はその黒煙に焦ることなく、蜘蛛男背中の突起での不意打ちを避ける。突起部を掴み蜘蛛男を無理やり引き寄せると、少年の拳は蜘蛛男の顔を歪ませる。そのまま拳を振り切ると、蜘蛛男の突起部は肉が裂ける音と共に蜘蛛男の背中から地切れてそこから血が噴き出る。

「ぐっ……!!」

少年はそのまま痛みに顔をゆがめる蜘蛛男へ追撃の拳を叩き入れようとそのまま拳を握りっぱなしにするが、蜘蛛男は懐から反射的に札を出し先ほどの詠唱をし再び爆破する。爆破の痛みと衝撃で少年は拳を引いてしまう。その隙を蜘蛛男はうまく利用してもう一度札を取り出し、少年の腹に張り付ける。詠唱は先ほどの物とは違い威力の高いものになった。

「爆ぜろ!!無花果イチジク!!血肉も蒸発させろ!!」

白く膨らむ札は一度収縮して橙に光ると赤く爆ぜる。鎧もさすがにこの爆発には耐えられないかと思ったが、鎧は黒く煤だらけになり爆発後の黒い煙が上に上がり終わる。だが、衝撃により少年は横へ大きく吹き飛ばされた。そのまま落ちると少年の体はボールが跳ねるようにバウンドする。バウンドした衝撃で少年は口から大量に吐き出してしまう。

「ごがっ……」

「くっ……どうだ!!」

蜘蛛男はそのまま動かなくなった少年に近づき息を確認しようとする。その瞬間、少年は起き上がり、蜘蛛男に拳を振る。また綺麗に入った拳は熱を帯び始める。

燃えろイグニス!!」

少年の言葉で熱を帯びた箇所が燃え上がる。左頬と、右わき腹は燃え上がりそのまま全身へ燃え広がっていく。蜘蛛男はその痛みと熱さにもだえながらも少年へ札を投げる。その札は今までの札とは違い、黒地に赤い文字の見るからに危険な札が貼られる。

「燃えろ!!向日葵ヒマワリ!!すべてを飲み込み焼き尽くせ!!」

音もなく破裂する札は廃校の真上に大きな火球を顕現させた。その火球は太陽の如く輝き、周辺を昼のように明るくする。見ていた三人はその規模に度肝を抜かれた。

「あんな規模の魔術一体どこで……」

「ボク、手伝ってこようか?」

「凪、私が合図をしたら、優吾あいつに影を伸ばしてくれ……」

「なぜ?」

「保険だ…」

その時、通信が入る。三人はその通信に出る。

『こちら星々ほしぼし。廃校の上で高魔力反応が確認できたけど大丈夫?見るからにやばそうなものも見えてるけど……』

「はい、だいぶやばいです。でも、一般人の晴山 優吾が蜘蛛男と戦闘中です。その影響だと思います。」

晴山 優吾という単語に班長 星々琉聖は首をかしげるが、すぐに話した石の力を行使しているのだと気づく。

『今頭ぐ止められるかい?』

「彩虹寺さんが腹部損傷をしましたが、謎の青年に治療を受けて今のところ貧血です。」

『無理そうだね…それじゃ、僕も向かうから三人ともそこを動かないでね』

三人は了解と一言いいながら、通信を切った。そして、三人は大きく輝く火球を見上げる。

「さて、どうしましょうか。」

「とりあえず、ボクはあやちゃんの指示を待つよ。」

「私もタイミングを見る。」

三人は火球の下を見つめた。そこには何か話している二人がいた。

「もう終わりだな。」

ボロボロの鎧に血を吐く少年は無言でその言葉を聞き流す。

「もう、終わりにしよう……。」

蜘蛛男はそんな少年を無視して、火球を降ろすような指の動作をする。その指と連動して火球はゆっくりと下がった。彩虹寺はその様子に今だと言わんばかりに隣の凪へ合図を送ろうとしたがそれを夢希が止めた。

「なぜ止める!!」

「彼、見てください。」

夢希が指さす方向には腕を大きく広げ、何かを叫んでいる晴山 優吾の姿が見えた。

「この量の魔力を待ってたんだ…………吸収アブゾーバー

「何を言って……!?」

晴山 優吾がそうつぶやくと胸の石は火球を吸い込み始める。火球はだんだんと小さくなりその小さな石へと渦巻いて行く。数分もしないうちにその火球は石へすべて吸い込まれ完全に吸収された。

「あの量の魔力を一瞬で……」

「お前、言ってたな…これで終わりだって……」

蜘蛛男はどこか嬉しそうに、だが、それでも悪役に徹した。

「来い!!お前のすべてを受け止めてやろう!!」

優吾は大きく腕を広げる蜘蛛男に対し、拳を構えて詠唱する。

──────拳、烈火の如く、炸裂しろ

燃え上がった拳はさらに収縮し赤く宝石のように小さく輝く。

くれない!!」

最後の一撃、その一撃は腕を広げ、こちらへ撃ち込めと言わんばかりの蜘蛛男の胸へと当てた。拳が胸へと当たると蜘蛛男の頭以外が吹き飛ぶ。瞬間の打撃は音を置き去りに、衝撃が蜘蛛男の後ろへ爆音をまくし立てながら吹き抜けた。

その音、衝撃は見ていた三人の鼓膜と網膜に焼きつき、今、この場の誰もあの鎧をまとった勇吾には勝てないと思うほどだった。優吾はそのまま魔力切れで魔装が解除されると、頭だけになった蜘蛛男へと近づく。

「ごめんな。」

優吾の口から出た謝罪に蜘蛛男……八尺 伊織は目を見開く……

「何を言ってるんだ。ここまで僕のわがままに付き合ってくれたんだ。安心して地獄に落ちることができるとも……」

伊織の頭はしゃべるにつれてだんだんと灰と化していく。

「君と、もう少し早くあっていれば、僕は間違えてを犯してはいなかったのかもね…」

優吾はだんだん消えていく伊織の頭へ手を伸ばす。だが、その手を触れると伊織の頭は余計に崩れていく。

「俺も、早くに出会っていたかったな。お前とは気が合うかもしれなかった……」

伊織は微笑み、声が出せない消えゆく意識の中、口を動かした。

「ありがとう」

その口の動きを読み取れたのかわからないが優吾はその場でただ微笑むだけだった。

そして、優吾は疲労が押し寄せた身体がそのまま地に伏せ、意識が遠のくのがわかった。

意識が遠のく中優吾が最後に目にしたのは、廃校の輪郭から白く暖かい光が差すのだけが見えた。

6:了
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

借金5億で異世界転移、よりによって金本位制の世界だった

夜明け一葉
ファンタジー
32歳の個人トレーダー・佐藤慧は、5年間の雪辱を賭けたトレードで5億円の借金を抱え、意識を失った。目覚めると、そこは剣と魔法が存在する見知らぬ世界だった。常識が通じない異世界で、金貨を見るだけで嘔吐する「金アレルギー」を抱えながら、若き冒険者リナと出会い、生き延びる術を探し始める。諦めることだけができなかった男が、新たな世界で再び立ち上がる異世界サバイバル譚。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...