月光霧刀の魔幻導士~The Phantom Story’s~

河鹿 虫圭

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弐之巻:六華

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幻導力エナジーとは、今から40年前に地球に落下してきた隕石の影響で人間の体に備わった超常的な力のことである。アニメ、漫画のような魔法が使える魔力のようなものだが、わずか5年でその正体は明らかとなり今に至る。幻導力エナジーの正体はナノレベルで細かい人体に害のない電磁波である。そして、それを極めた者たちを極幻導士ファントムと言う。

『さぁ、今回のデモンストレーションの目玉!新入生で一番成績が良かった夜月 朧くんと本校トップレベルの幻導者マイスター鬼灯ほおずき 来人らいとだぁ!』

リングアナウンスとともにオレを乗せた足場はフィールドに上がり大きな音とともに固定される。周りを見ると在校生と入学生がいい感じに騒いで盛り上がっている。そして、周りを見渡して自分の対面に立っている三年生鬼灯ほおずき という人と目が合った。細め目の優男というイメージだが、持っている機導器ギアは大剣だった。オレは鬼灯ほおずき先輩のギアに目を奪われながらも互いに近づいてフィールドの真中へたどり着いた。

「大きな剣…」

「はは、珍しいかい?」

「ここまでの業物も久々に見ました。」

「久々…か…君のギアは見たところランクが低いようだけど…」

目線の先にはオレが愛用しているサブ機のギアがあった。凡庸型で一般家庭でも買えるくらいの値段のギアだ。在校生も入学生もみんなオレのギアを見て困惑している。

「えぇ、サブ機です。その外にもいろいろ…これがオレが強さを証明するためのものです。」

握りしめるギアを見つめる手に力が入る。緊張もあるかもしれないが、これはいきなりトップを倒して強さを証明するためのチャンスだと興奮もしている。

『それでは、両者間合いから離れて…!』

アナウンスに従いお互い距離をとる。

『それでは、制限時間5分、両者が一撃を与えどちらかが気絶した時点もしくは時間経過で試合は終了です。どちらかのギアが手元からなくなっても試合終了となります。それでは、試合…開始!』

「「|機導器(ギアスイッチ) |始動(オン)。」」


お互いに掛け声と同時にギアにスイッチを入れて、ギアを構える。そして、互いにギアの名前をつぶやく。

「ドラゴンスレイヤー SS」

名刀玄道めいとうげんどうE」

鬼灯先輩のギアは黒い刀身に幅の広い刃の大きな剣。対して俺のギアは刀型のギアは特に何もない。そんな退避を見てみんなは困惑したりする人もいたりオレを馬鹿にしたように笑うものもいた。戦いにそんなのは関係ないが、やはり馬鹿にされるのは内心傷つく。鬼灯先輩は微笑みながら剣を下におろす。

「はあ、これ重いんだよね……さて、君は今いくらでも攻撃できるよ。」

「罠ですね。オレはそんなブラフには騙されません。」

これはブラフだ。なぜならあんなに大きな剣をメインウェポンとして「重い」というのはありえないのだ。間合いに入ってきた瞬間にこの人は大剣を振りオレのギアを壊すことが目的だろう。ならば、オレはその誘いに乗るべきではない。お互いに止まったまま時間が過ぎる。そんなつまらない光景に周りからはブーイングが出てきている。

「仕方ない……」

俺は、懐からナイフ形のギアを起動し構えなおす。そして、足に力を込めて一気に跳躍して距離を詰める。鬼灯先輩はもちろん大剣を振り間合いに入ったオレを切りつけようとする。その大きな振りかぶりから逃れるためバックステップを踏んで少し距離を取り再びナイフを突き刺そうとするが、それを訳の分からない身のこなしで防ぐ。

「やっぱり、重いっていうのは噓だったようですね。」

「はは、ばれちゃった。」

鬼灯先輩はそのまま踏み込んできてオレに切りかかってくる。その大きな刃の速度は大きさとは比例せずよけるのに精一杯だ。大剣の大振りでフィールドへ亀裂が入り地面がうなるように揺れる。オレはその大きな地鳴りに体勢を崩してしまう。それを見逃さなかった鬼灯先輩は一気にオレに迫ってくる。

「まず……い!!」

オレはとっさに懐から取り出したスモークグレネード型のギアをフィールドにたたきつけて刃が到達する前に目くらましする。

「はは、面白い戦術だね……でも……甘いよ。」

鬼灯先輩は大剣を振り回しながらスモークを払う。そして、背中を見せている鬼灯先輩へナイフを突き立てようとしたオレに鬼灯先輩はすぐに殺気を察知して大剣を振りナイフを防ぐ。

「まだ……まだ!!」

そうだ、オレにはまだ手はある。懐からスタングレネードを出して足元に投げる。瞬間、あたり一帯をまばゆい光が包み見ていたみんなは目を抑えていた。鬼灯先輩も目を抑えて大剣を振り回しておりオレを隙だと考えて今度こそナイフを突き立てる。が、鬼灯先輩は大剣でそれを防ぎ慣れてきた目でにこりと微笑む。

「はは、面白いね。でも、もう手はないよね?」

先輩は大剣を振り、持っているナイフのギアを木っ端みじんに吹き飛ばした。

「これで……いや、まだ一個残ってたね……時間も時間だし刀と大剣で一騎打ちと行こうか?」

鬼灯先輩のにこりとした表情にオレは距離を取り名刀玄道めいとうげんどうEを再び起動して抜刀の構えをする。

「抜刀術かい?それが、君の本気……いや、野暮な探りはやめておこう。時間残り僅か……やろうか!」

「わかりました……本気の抜刀しますよ。夜月流やづきりゅう抜刀術ばっとうじゅつ……一刃いちじん一閃いっせん!」

下半身すべてに力を入れて全身全霊の抜刀を繰り出す。刀を鞘から抜く瞬間の閃光を誰もが見てそして、刀を抜き終わったころには会場全体が静まり返っていた。切りあった鬼灯先輩は大剣を振りまわしてフィールドに突き刺す。

「はは、見事……だけど、やっぱり君のそのギア君に合ってないよ。」

言葉とともにオレのギアの切っ先に亀裂が入り折れた。フィールドに落ちると音とともに会場全体が今まで以上に沸き上がった。

『そこまで!!試合の結果は……勝者鬼灯 来人!!というわけで入学生歓迎セレモニーを終了します!会場にお越しの生徒たちは教室に戻ってくださ~い!』

アナウンスとともに生徒たちは一斉に席を立ちアリーナ型体育館を後にした。オレも、使用したギアを回収して戻ろうと歩みを進める。戦績は申し分なかった。あとはやっぱりギアのランクか……いや、ランクなのか?オレの実力がまだまだなのでは……?そんなことを考えていると鬼灯先輩が声をかけてきた。その手には煙が上がり、傷が横一線に入った大剣を持っていた。

「いや~ギリギリだったよ。君、ギアのランクを上げればcランクのギアでも僕に勝てるよ。」

「ありがとうございます。でも、Eランクで勝たないと意味がないので……」

なぜ、ここまでEランクにここまでこだわるのか。と聞かれれば一番になるためだといいたいが、実際のところそうではない。オレが最低ランクと呼ばれるギアで一番を目指す理由は弟が理由だ。今年中学生になる弟満月みつきは生まれつきエナジーを生成する量が少なくそれが理由で周りからからかわれたりいじめられたりと散々な目に合って暗い性格になってしまった。そんな弟に自信を持たせるためエナジーをあまり必要としない最低ランクのギアと夜月家のあらゆる武術を組み合わせればどんなに強い相手にも勝てる。それを証明するためにオレはこの学園、ひいては六校の中でも一番になる。

「何か訳アリのようだね。ま、頑張り給えよ。僕は期待している。」

肩を軽くたたき鬼灯先輩は静まり返った体育館から出て行った。

「やってやるさ。ここで一番になって、六校の中でも一番になって……弟のために強さを証明する!」

弐之巻:六華
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