月光霧刀の魔幻導士~The Phantom Story’s~

河鹿 虫圭

文字の大きさ
3 / 20

惨之巻:決闘

しおりを挟む
六華高等学校は、|機導器(ギア)の項目がある六校の中で最弱と言われている高校だ。そんな六華に来る生徒たちは「それでも、ここで|機導器(ギア)のことが学びたい。」「ここで学んで将来は警備部隊へ入る」という生徒たちが多い。実力が伴ってない生徒、学力が伴ってない生徒、いろいろな生徒がいる。そんな六華に入学した名家出身の夜月 朧は、入学生歓迎セレモニーのデモンストレーションに参加しトップレベルの生徒鬼灯 来人に敗北した。体育館から戻った朧が教室に入るとまだ名前も知らないクラスメイトたちに囲まれてもみくちゃにされた。

「ねぇ、夜月って名家だよね?なんでこんな最弱校に入学したの?」

「やっぱり、強い人ってどんなランクのギアを使っても強いんだね!どんなトレーニング
をしているんだい?」

「メインのギアって何を使ってるの?やっぱり刀のギアなの?」

皆、口々に質問をして行くが、朧ははにかみながらうつむき自分の席についてただただもみくちゃにされている。そんな騒がしい教室の扉が開くとクラスメイトたちは一瞬で静まり返った。視線を向けるとそこにはスーツに身を包み、髪の毛を雑にかきあげた真面目そうな男性が入ってくる。目つきが鋭く生徒たちはそんな男性の殺気?雰囲気?に気圧されて一斉に自分の席に戻った。男性は、教室内にいる生徒たちが全員席に座ったことを確認すると無言でうなずき合図した。

「起立!」

その強く低いうなり声のような声に生徒たちは背筋が伸びたまま一斉に揃って席を立つ。

「気を付け!」

その声でクラス内の誰もが今まで以上に背筋を伸ばして次の声を待つ。

「礼!」

まるで軍隊のような男性の礼に続けてクラス内の生徒は礼をして声を待つ。

「着席!」

掛け声とともに一斉に生徒たちは座り背筋を伸ばしたまま男性が口を開くのを待った。

「……よし。次回からは学級委員長がやるように。では、自己紹介させてもらう。」

男性はポケットから手袋を出して白チョークを手に持ち名前を書いていく。丁寧に、綺麗に、名前を書き終えると手袋を外してスーツに落ちたチョークの粉を払い声を出す。

「クラスの担任の茂木もてぎ ただしだ。元自衛官で今は体育の教科担当をしている。これから体育の実技と保健体育の授業は俺が担当させてもらう。宜しく頼む。」

固い挨拶にクラス内の雰囲気がどこか微妙な感じになる。茂木はクラスの雰囲気を見て不思議そうな顔をするが、そんな疑問を口には出さずに台本を読むように口を開いた。

「コホン……では、クラス内での自己紹介をしてくれ……」

生徒たちは茂木の合図で挨拶を始めた。入口から順番に自己紹介していく。そして、いよいよ朧の番になると皆が朧に注目した。朧は少し恥ずかしがりながらも胸を張って自己紹介を始める。

東堂寺とうどうじ中学校出身、夜月やづき おぼろです。この学校で、一番を目指し、この学校を一番にするために来ました。よろしく─────」

朧が挨拶を終えようとしたその時、教室に笑い声が響く。その声に皆は一斉に視線を向けると、朧が教室に入ってきた時から机の上に足を乗せて制服を着崩した金髪の生徒が大笑いしていた。朧はそんな金髪を少しにらみつけ気味に見つめる。

「なぜ、笑うんだい?」

「なぜ?そりゃw無理だからだ。ま、お前の実力なら六華では一番になれるかもなwでも、物好きだよな~ボンボンはボンボンらしく、一閃や双斬に行きゃいいのに……それとも何か?俺ら底辺を馬鹿にしに来たってか!」

金髪は朧とにらみ合い、周りの引いた視線に気づいて分が悪そうにしながら立ち上がり教室を出て行った。皆、茂木に視線を送る。

「大丈夫だ。彼は後で俺が連れてくる。ちなみに、彼の名前は九頭竜くずりゅう まこと……朧くんに続き二番目でこの学校に入学してきた生徒だ。」

その言葉に誰もがそれ以上先ほどの生徒九頭竜に関しては質問しなかった。朧は挨拶をしなおして改めて生徒同士での自己紹介を再開した。一時限目が終わるころには茂木も含め皆は和気あいあいとした雰囲気になっていた。そして、二時限目、三時限目と教科担任からのオリエンテーションを受けて昼休みに入った時、教室の扉が勢いよく開けられる。視線の先には自己紹介を放棄した九頭竜が朧をにらみつけて立っていた。にらみをきかせながら九頭竜は朧へ近づき顔を近づける。

「なんだ?」

「体育館に来い。決闘しろ。」

そういうと九頭竜はまた教室から出て行った。そんな朧にクラスメイト達は集まってくる。

「何言われたんだ?」

「先生に言う?」

朧は心配する皆をいさめて教室を出ようとした。

「朧君まさか、行くの?」

「やめたほうがいいよ~」

「いや、行くよ。だって彼は……」

朧は体育館へと向かった。フィールドに立っている九頭竜を見ると朧は手を振って合図をする。九頭竜はにらみながら眼をそらす。朧はフィールドに降りて九頭竜と向き合う。

「やぁ、来たよ。」

「けっ、気に入らねぇな。その態度。」

「そうかい。でも、これがオレだからさ……それで、決闘のルールはどうする?」

「んなもん、お互い倒れるまでだろ。」

「いや、それじゃ時間がない。そうだな……デモンストレーションのルールで5分追加で10分間ってのはどうだ?」

九頭竜はギアを起動して構える。

「いいな、それ、それで行こう。」

「よし、それじゃ…時間10分、どちらかが倒れる、ギアの全損、時間切れで試合は終了とする……では、行くぞ……」

朧は、刀ギアを起動して構える。

「俺には試合の時みたいにグレネードとか使わねぇのか?」

「君には使う必要がない。」

「イラつくぜ……!」

名刀玄道めいとうげんどうE」

「チッ!……銘刀 虎徹めいとう こてつA」

九頭竜は一歩を踏み出そうと足に力を込める。だが、前に進めない。進もうとすると体が拒否するように止まる。九頭竜は体の異変に気づき必死に前に出ようと足に力を入れる。

『何が起こっている……俺は、今攻撃をしようとしているはずだ……なのに……』

目の前にいるのは本当に爽やかで皆から一気に人気をかっさらっていったあの優男なのかと九頭竜は朧を見る。朧は刀を構えたまま切っ先をこちらに向けていた。

「どうしたんだ?来い。」

その声とともに九頭竜は震源地を背中に感じ、じわりじわりと違和感が全身を覆っていった。違和感を振り払うように首を振り九頭竜は足を踏み込み刀を朧へ振り下ろすが、朧は切っ先を向けたまま九頭竜の攻撃を躱して切っ先を九頭竜の目と鼻の先に向ける。九頭竜はそれを気にせずに攻め続ける。

『……なんだ、この違和感……いや、これは……』

九頭竜は刀を振るたびに違和感が全身に響き続けているのが分かっていた。だが、どうしても手を止められない。この手を止めると、確実に……そこまで考え、九頭竜は”ソレ”を切るように刀を振る。朧を切るのではなく、”ソレ”を切るように……

「なんだ、これ、気持ちわりぃ……」

「いい動きだね。君の努力と研磨がうかがえる。でも、何を焦っているんだ?らしくない。」

「う、うるせぇ!俺には俺のタイミングがあるんだよ!」

九頭竜はさらに早く刀を振る。だが、その攻撃は朧には当たらない。絶対に当たらない。

「なんだ……これ……気持ち悪りぃ……」

まだそこまで激しく動いていないはずだが、九頭竜の前身は50m走を何度も走ったように汗をかいている。やがて5分が経つ頃、九頭竜はやっと手を止めることができた。肩で息をしてそれでも朧に向き合う。

「その姿勢は嫌いじゃない。やはり君は強い……!」

朧は口角を上げて刀を構えなおす。九頭竜はその迫力に気圧されてまた先ほどのように見境なく攻撃を開始する。

「……こんな攻撃では、オレには届かない……何を焦っているんだ?」

「だまれ黙れ、黙れ……」

九頭竜は今の言葉で”ソレ”の核心に迫り、答えを導き出した。

導き出した答えは─────────────”死線”である。

朧は目の前にいるのにも関わらず、いつか後ろに回られてあっけなく刺されて負けるのではと想像する。いや、この場の試合の話ではなく、まさに戦場、死合の話である。いつ、朧がギアの性能関係なく殺しに来るか九頭竜は内心、否本能で怯えているのだ。

幾度目の切っ先を見たか、九頭竜の恐怖は最高潮に達している。それでも倒れず、泣きわめかない九頭竜に朧は関心と尊敬の念を感じる。この朧、いや、夜月家特有の殺気を感じると並みの人間は真っ先にまいったを選ぶのだ。

残り3分、九頭竜は精神を統一し再度刀を構えて朧と目を合わせる。

「次が最後の一撃といったところか?」

「あぁ、そうだ。こんなのは試合でもデモンストレーションでもない。こんなのはただの殺死合いだ。だから、次の一撃でお前を殺す。」

「そうか、なら、オレも本気でらないと……」

朧はその殺気を一気に開放し刀を横平行に構える。

夜月流やづきりゅう刀剣術とうけんじゅつ四刃しじん一刀倒絶いっとうとうぜつ……!」

「うぉぉぉぉらあああああ!」

九頭竜が精一杯の踏み込みをし、朧へ切りかかるが、一歩を踏み込むたびに”死”へのイメージが色濃く繊細に鮮明に創造的に見えてきた。それでも九頭竜は挑んだ戦いに背を向けるわけにもいかず本能が警鐘を鳴らす中、気合で朧へ切りかかった。

「見事!」

朧は九頭竜へ賞賛を送ると同時に九頭竜よりもランクの低いギアを壊さずに九頭竜のギアを一刀両断した。

惨之巻:決闘
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

花鳥見聞録

木野もくば
ファンタジー
花の妖精のルイは、メジロのモクの背中に乗って旅をしています。ルイは記憶喪失でした。自分が花の妖精だったことしか思い出せません。失くした記憶を探すため、さまざまな世界を冒険します。 記憶を取り戻して真実を知った時、ルイとモクの選ぶ道は?

処理中です...