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お前気は確かか?
しおりを挟む「ねぇ知ってる?」
ダンジョンでの狩り中、唐突に聞かれた。
「え、なに? なんのこと?」
僕は剣を振り回しながら、なんとか受け答えをする。
「日本に隕石が落ちてくるらしいよ」
それ今する話? 大群のモンスターに囲まれてちょっと危険な状態なんだけど。
状況を考えて言葉を選んで欲しいよ。
でも確かに興味を引かれる話でもある。
「それほんと? どこら辺に落ちるか、わかってるの?」
「なんでも○○県××郡◇◇町とか言ってたかな」
「えっ! それ僕が住んでる町だよ! いつ落ちてくるの?」
「たしか今日の夜だよ」
「って、まさに今じゃん!」
「うぁあぁぁぁぁぁーーー」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁーーー」
僕たちペアはモンスターの大群に飲み込まれてあっけなく死んだ。
もちろんオンラインゲームの中での話。
ペナルティを支払って蘇生地点で甦る。
「ちょっとログアウトするよ。その話気になるし」
「うん、了解、じゃあまた後でね」
彼女はコミュ障の僕にとって唯一の友達だ。
ちょっと空気を読まないとこはあるけど、親切で優しかったりする。
と言ってもゲームの中での話。
実際には会ったこともないし本名も顔も年齢すら知らない。
それはともかく、僕はテレビとSNSから隕石情報を探した。
……あった!
SNSでも話題になっている。ニュースでも生中継で報道されるらしい。
その落下予想地点は日本の○○県××郡◇◇町大字神落。僕の家があるこの田舎町だ。
そして落下予想時刻は今日の午後九時前後である。
時計を見れば八時三十五分。落下予想時刻まであと二十五分しかない。
僕は小銭入れをポケットに入れるとそのまま部屋を飛び出し階段を駆け下りた。
「ちょっと出掛けてくるよ」
僕の言葉に両親は目を剝いて驚いた。
「どうしたの希月!」
「希月、お前気は確かか?」
その言われ方はちょっとショックだ。まぁ仕方がないことかも知れない。
実際のところ僕は中学一年の夏から約二年間、外出したことがなかった。
登校拒否で学校にも行かず、ずっと家に引き篭もっていた。
その僕が自分から外に出ようというのだから、まぁ驚かれても無理はない。
「すぐ戻るから」
そんな両親を軽く無視して僕は家の扉を開ける。
もしかしたら、間近で隕石(流れ星)が見れるかもしれない。
もしかしたら、隕石の落下(衝突)が見れるかもしれない。
もしかしたら、隕石の欠片でも拾えるかもしれない。
もしかしたら、地球外生物に遭遇するかも……さすがにそれはないかな。
もちろん隕石は落下する前に燃え尽きると予想されている。
でも万が一があるではないか。
僕はそんな期待を胸に家を飛び出した。
といっても村全体が落下予想地点の範囲だから結構広い。
いったいどこに行けばいいのやら。
そして驚いたことは、あちこちで人の姿を見かけたことだ。
普段は人も少ない静かな片田舎なんだけど大勢の人が集まっているみたいだ。
村人の人口より多いんじゃないだろうか……。
たぶん隕石の落下を見るために県外からやってきたのかもしれない。
僕はジリジリと後退りした。何を隠そう僕はコミュ障、人との接触が苦手だ。
仕方がないので人が少ない場所を探すことにした。
どこに行こうか……時間があまりないので走る。
そしてやってきたのが村外れの小さな丘の上。
高台になっているので村全体が見渡せる。まさに絶好の観覧スポットだけど、僕以外には村人が数人いるだけ。この辺は原住民の特権だ。
村の中心とはだいぶ離れるけど、正確な落下地点はわからないみたいだし、案外こっちのほうに落ちてくるかもしれない。
まぁ落下予想地点がどれほど正確なのか不明だけどね。
そして時間を確認すれば、あと一〇分ほど。
僕は慌てて西の空を見上げた。
隕石は西の空から落ちてくるらしい。
空にはたくさんの星が輝いている。
田舎なので満点の星や流れ星なんて珍しくない。
だけどさすがに隕石の落下を目にしたことはないからね。
期待に胸が膨らむ。
と、西の空の一点が小さく光った。
一直線の筋状の光がまっすぐこっちに向かってくる。
真横や斜め、上下に走る流れ星は何度も目にしたことはある。
だけど真っ直ぐ向かってくる流れ星ははじめてだ。
そんなことを考えられたのも一瞬で、隕石は完全にこっちに向かってきている。
真っ直ぐ飛んでくる隕石はその大きさを急速に増していった。
米粒の様な小さな光だった流れ星が次第に大きくなる。
その大きさは小石大になりダチョウの卵くらいになった。
それがすごい勢いで目の前に迫ってくる!
最終的には両手に抱えられないほどの大きさになっていた。
「うわぁぁぁあ!」
直後、それは僕に直撃した。
僕は避ける暇もなく尻もちをついてしまった。
――痛ッ!
……あれ?
隕石が地球に直撃したらクレーターとかできるんじゃないの?
ていうか僕は無事なの? それに直撃した頭より、尻もちをついたお尻の方が痛いって……。いや、それより……身体から力が抜けていく。
長距離走を終えたあと、全身から力が抜けて立っていられないような、そんな感じに近い。
じっさい座っているのも辛く、身体がゆらりと傾いた。
と、目の前の空間に裂け目というか一メートルくらいの亀裂が生じている。
亀裂の中は真っ暗な深い闇で、その入り口は小さな雷光がピシピシと迸っている。
その亀裂に大きな卵みたいな隕石がスゥーっと吸い込まれた。
僕はあっけにとられてそれを見ていたんだけど、その空間に出来た亀裂から細い腕が伸びてきて、僕の手首をガシッと捕まえた。
――えッ?
次の瞬間、僕はその亀裂に引き込まれてしまった。
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