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もう護衛いらなくない?
しおりを挟む僕たちは河原を後にした。
先頭がマリスさまでその後に僕が続き最後尾をゴブスケが歩く。
振り返ると深い闇のような眼窩に見詰められる。
怖いので出来るだけ振り返らないようにした。
でも当てもなく歩いている訳じゃない。
目的は幹の径が一㍍以上の巨木の探索だ。
どうせ浴槽を造るならヒノキにしようと僕が提案した。
土の浴槽よりヒノキのほうが香りがよさそうだから。
そして径が一㍍もあれば一人用の浴槽なら作れるだろう。
二人が並んで入るのは無理かもしれない。
長さによっては向かい合いなら一緒に入れるのかな……。
って、僕は何を……。
ダメだダメだ。変な妄想に取りつかれた頭をこつんと叩く。
完全に毒されてきたようだ、気を引き締めなくっちゃ!
しかし深い森だけど、幹が一㍍を超すような巨木はなかなか見つからない。
そうだ!
太い幹なら高さも他の木よりも高いはずだ。
高い木を探すなら、上空から見れば一目でわかりそうだ。
「ねぇ、上空から高い木を探してよ」
マリスさまはキッと僕を睨む。
「また下着を覗く気!?」
「ち、ちがうよ。今度はちゃんと目を塞いでるから」
「そんなこと信じられるもんですか!」
「絶対に見ない! 約束する」
「ふん 女の子の下着を覗く変態の言葉なんて信じないわ!」
「の、覗いたんじゃないよ、見えちゃっただけだよ」
「あんた、まだ覚えてるじゃない!」
「えっ!?」
「忘れろって言ったでしょ!」
再びビシビシと叩かれた。
たかが白い布切れ一枚見られたくらいで、そんなに怒らなくてもいいじゃないか……。
まぁ布切れ一枚見えただけで歓喜する僕も僕だけど……。
結局、上空から探す作戦は無し。
歩いて探すことになった。
さらに数時間森を彷徨う。
いい加減足が棒のようになって痛い。
それなのにマリスさまは平然と、時には飛ぶように歩いている。
そんな時はスカートの裾がふわりと広がり白い太ももがあらわになる。
目に毒だからやめてほしいんだけど、言えば絶対にエッチだと罵られそうだ。
あー目が行っちゃうけど見ちゃいけない、そんな葛藤に悩まされた。
それはともかく、足が痛いので休憩したい。
「ねぇもう足が痛いよ、ちょっと休憩させて」
仕方ないわねと休憩を取ることにした。
僕は木の根に腰を下ろしふくらはぎ辺りを擦っていた。
ズボンの裾を捲りあげてみると、少し赤く腫れている気がする。
それを見たマリスさまが、
「パンパンに張れてるじゃない。どうしてもっと早く言わないの」
そう言って僕の足に手を添える。
そして「【治癒】」と優しい口調で呟いてくれた。
すると僕の足から痛みがすぅーと抜けていった。
すごく軽くなった感じで痛みも疲労も完全に消えている。
さらにマリスさまは、僕の足になにか記号か文様でも書く様に細い指を素早く走らせた。
「耐久性向上の魔法を刻んだわ。マナだけ大量にあるから枯渇する心配もないしね」
一瞬光って見えていた文様は消えているし、なにかが変わったという印象はない。
「試しに、そうねぇ……連続スクワットでもやってみなさい」
僕は言われるとおりスクワット運動をやってみた。
十回、二十回、三十回。
足は全然疲れなかった。
だけど、はぁ、はぁ……く、苦しい。
「あれ、苦しそうね?」
「足は疲れないけど、心臓がちょっと苦しい」
「そっかぁ、足の耐久力だけ上げても意味ないわね」
マリスさまは垂れ髪をいじくり少し思案している。
「そうだ! あんたならもっと沢山刻んでも平気だわ」
何を言っているのだろう。
「さっきの魔法はいったん消すわ、ちょっと背中を向けなさい」
マリスさまはは僕の背中に、同じように指を走らせた。
背中一杯に大きな円を幾つか描いて、その中に素早く文字か記号みたいなものを描いている。
背中がこそばゆくて自然と身体が揺れる。
「動かないでッ!」
「はいッ!」
僕は必至で我慢した…………。
「はい、出来たわよ」
なにが出来たのだろうか?
「【魔法耐性】【物理耐性】【冷熱耐性】【毒耐性】【痛覚耐性】【筋力上昇】【俊敏上昇】【回復力上昇】そして【耐久力上昇】。とりあえず思いついた常駐型魔法を背中に刻んだわ。試しに力いっぱいジャンプしてみなさい」
僕は言われるがままにその場で、思いっ切りジャンプした。
ビューーーーン! バキッ! バキッ! バキッ! ヒューーードサッ!
勢いがありすぎて上空の木の枝を何本か打ち折り落下した。
「痛ったぁーーーーー」
「嘘言わない! たいして痛くないはずよ」
「えっ?……あれ、ほんとだ。ほとんど痛くない?」
「もちろん完全な無痛になったわけじゃないけど、あの程度の衝撃じゃ痛みなんてほとんど感じないはず。だけど神経はちゃんと通ってるから普通に触れてもちゃんとわかる。まぁ問題があるとすれば、筋力上昇による力の配分ね。慣れないと今みたいに思った以上に力が発揮されちゃう。まぁじっくり慣れていきなさい」
ちなみに常駐型魔法とは常時発動し続ける魔法のことらしい。
常駐型魔法の良い所は常に魔法の効果があること。だたし常時魔力を消費し続けるのでよほどの魔力量がないとすぐに魔力枯渇になってしまうとか。
魔力枯渇は下手したら死んじゃうらしいからちょっと怖い……。
僕はそのあと、いろいろと試してみた。
森の中をヒョウかムササビのように飛び跳ね駆け抜けた。
時々樹木にぶつかりながら……。
上を確認してジャンプすれば軽々と辺りの木を超えて遠くまで見渡せた。
径が三十㌢くらいの木を殴ればベキッとへし折れた。
ゴブスケと模擬戦闘を試してみれば一発で粉砕した。
もう護衛いらなくない?
僕は異能の力を手に入れた。
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