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2話女神との邂逅

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眩い光がその場を支配する。
目を開ける事すら出来ない程の光に俺は包まれてたが、徐々に光を失う。

一瞬の静寂が訪れたが、それを破る様に前方から女性らしき声が聞こえてくる。

「初めまして。私は女神ディーバ。神界に存在する8柱の神の1人に数えられる存在よ。よろしくね」

「……よ……」

「うん?何て言ったの?」

「よろしくじゃねぇぇぇんだよぉぉぉッ!!!」

「きゃぁぁっ!!?な、何なのよあんた!?急に叫びながら迫って来ないでよ!!びっくりするじゃない!!変態!!」

「うるせぇぇぇ!!!ここは何処なんだよ!?女神!?ふざけて意味わからない事言って誤魔化してるんじゃねぇぇ!!」

女神と名乗る目の前の存在にお構いなしに、勢いよく詰め寄る。
その形相は鬼や悪魔と思われても不思議ではないだろう。

「はぁぁ!?ふざけてなんかないわよ!!いいから美しい美貌を持つ私の顔から離れなさいよ!!汚れるわ!!」

「ふざけてないならさっさと説明しやがれ!!さもなくば汚してやるぞ!!!」

「ぎぁぁぁっ!!!わ、わかったから!!わかったから私から離れなさいよ!!」

女神ディーバと名乗る目の前の存在との距離は1㎝未満。
ちょっとの油断で唇と唇が接触するのは必死なだけに、女神ディーバは全力で引き離そうとしている。

「なら今すぐ説明しろ!!曖昧な事を言って誤魔化そうとしたら欲しくはないがその唇を貰い受けるからな」

「欲しくないなら奪わないでよ!?全く。これだから変態は嫌なのよ。で、説明だったわよね?曖昧だ、誤魔化したって言われて本当に奪われたら嫌だから単刀直入に言うわよ。つまらない世界に変革を起こしたいからあんたを適当に事故に遭わせたの。そしてそのつまらない世界…そうね、あんたに分かりやすい様に例えるなら異世界とでも言えばその少ない頭でも理解出来るわよね?その異世界にあんたを転生させる為にここに連れて来たの」

「………は?ちょっと待て。つまらない世界に変革を起こしたい?いや、待て。適当に事故に遭わせたって言ったよな?ふざけんな!!あんたの都合で事故に遭わせられてたまるか!!楽しみにしていた菊一文字に触れる機会を返せよ!!俺の菊一文字を返せぇぇぇッ!!」

「五月蝿いわねー。あんたの菊一文字じゃないでしょ。それにあんたにとっても別に悪くない世界よ」

鬱陶しい叫び声に耳を塞ぎながら、女神ディーバは1つ提案をする。

「…どういう意味だよ?」

「あんたは刀剣が好き。それは間違いないわよね?だけど、あんたがいた世界では昔とは違い、今は刀剣を所持する事は出来ない。でも、今からあんたが行く異世界ではその刀剣を許可なく所持出来る世界なの。それに、私はあんたに何も持たせずに異世界に送るなんて言わないわ。ある能力を私から授けてあげる」

「…刀剣を所持出来るだと?それにある能力ってのは何だ?」

「ある能力…。それは全知全能。分かりやすく言えば、あんたが刀剣を作りたいと思えば、魔力を消費してその思い描いた刀剣を作製する事が出来る能力よ。もちろん刀剣以外にも作製する事も可能よ。どう?悪くない条件でしょ?」

悪魔的な微笑みを浮かべながら女神ディーバは新見晶に条件を提示する。

確かに悪くはない。
悪くはないが、菊一文字に触れる機会を失う事になってしまっている点だけは納得がいかない。

だが、思い描いた刀剣を作製出来る。
いや、正確にはそれ以外にも作製可能。
そんなとんでも能力を貰え、刀剣を許可なく所持出来る異世界に行ける事は確かに魅力的であるのは間違いない。

ごくりと唾を飲み込む。
自分の中で1つの決意がついた。

行こう。
確かに不安はある。
どんな未来が待っているかなんて、実際に行ってみなければわからない。
だけど、それだけの価値が異世界にはあると確信している。
だから俺は決意と共に言葉にする。

「…わかった。異世界に行くよ。あんたの思い通りになったんだろうって事は癪だけど、まぁ俺にも悪くない異世界みたいだし。だから早速その全知全能の能力をくれ」

「…言い方はムカつくけど、女神である私だから許してあげる。はい、これであんたに全知全能の能力を与えたわ。使い方は向こうで試しなさい。じゃぁ、行ってらっしゃい」

女神が手を翳すと、新見晶の周りに眩い金色の光が姿を表し、体全体を包み込む。
その金色の光は新見晶に引き込まれる様に吸収され、消失した。

すると今度は足元に魔法陣が展開され、虹色の光を放つ。
虹色の光は更に明るさを増し、新見晶の姿は女神の元から姿を消した。
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