サバイバルクラス

怪奇 ひろし

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第二話 霧の中

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体育館では、アナウンスを聞いて生徒達が集まっていた。「もうこれで全員か!?」と体育館袖で、先生の声がした。健斗は、思ったより学校に生徒が残っていたことにホッとした。自分のクラスもほとんどが残っていた。健斗が周りから少し聞いた話だと、部活動が始まる前あたりから、外には霧がかかっていたらしい。下校中の生徒が霧の中で何かに襲われたなどの噂が広まり、帰れずにいた生徒がほとんどだった。健斗は、体育館の舞台に校長先生がいて、何か話し始めようとしてるのが見えた。校長先生は今年になって新しく入れ替わった男の人だ。「えー皆さん。もう知っているとは思いますが、学校の外には濃い霧がかかっていて、何も見えません!下校するには大変危険な状態です!」校長先生の話を聞いて、周りの生徒達がざわつくのが聞こえる。さっきの健斗と同じで霧のことを知らなかった生徒もいるだろう。校長先生は続けた。「なので、本日は学校に泊まっていただきます!」生徒達のざわつきが大きくなった。「皆さん!静かに!」と校長先生が口を強くして言うと生徒達はざわつくのを少し抑えた。「では、今日はここの体育館で寝てもらいます」そう校長先生が言い終えると、一人が手をあげた。すると一斉に、周りの生徒達がその手をあげた方を見た。健斗と龍介もだ。校長先生が「はい、そこ」というと手をあげた生徒は立ち上がった。女子生徒だった。「私、えっと霧の中のことが知りたいです。」女子生徒が言うと、周りの生徒達もそれに賛同してきた。「確かに、知りたい!」「俺もっ!」「私も聞きたい!」生徒達は校長先生に直接言う感じではなく、聞こえるようにして言った。校長先生は、しばらく黙っていたが、ようやく口を開いた。「その事に関しては、私もよく分かっていません!分かり次第、皆さんにまた連絡します!」そう言うと、舞台脇の階段から降りて行った。

しばらく、健斗と龍介はその場に座りっぱなしだった。健斗は心配だった。携帯が繋がらない以上、家族に連絡する手段はない。「そういえば、校長先生は携帯が繋がらないことに触れてなかったな。」ボソッと健斗が言ったのを龍介が聞き取り、「校長先生だけじゃない。他の担任の先生達も混乱してるんだろう。」と言った。確かにそうだ。健斗はそう思うことにした。今頃、妹も学校で同じく待機しているのだろか。健斗がそう思っていると、周りがざわつき始めた。見てみると生徒達数人が、誰かを囲っていた。囲まれた一人の男子生徒が何か喋っている。囲ってる人に、遠藤さんがいたのを見た健斗は、龍介を誘い近づいてみることにした。

一人の男子生徒が話しているのを、健斗と龍介は聞いた。「いいか?あの霧の中には化け物が潜んでいる。俺はこの目で見たんだ!」健斗はそれを聞いて、さっき体育館に来る前に、助けを求めてきた男が言っていた でっかい蜘蛛の化け物のことを思いだした。「それって、、おっ大きい蜘蛛の化け物ってヤツ?」龍介が言った。その場が一瞬ざわつく。「いや、俺が見たのは違うな、、。」男子生徒は言った。そして続けて「俺が見たのは、四つ足で顔に目とか鼻は無くて、口から牙を出しているんだ!」それを聞いて、怖さのあまり震えてる生徒もいた。健斗は、何も考えられなくなった。きっと龍介もだろう。他の生徒達だってそうに違いない。あの霧の向こうがどうなっているか、大きい蜘蛛の化け物や牙をはやした、わけの分からない化け物まで、一体全体世界はどうなってしまったんだ!?健斗が思い悩んでいると、後ろから、先生達の声がした。振り向くと、そこには健斗のクラスの担任と他のクラスの担任、合わせて三人が体育館の入り口付近で、外に行くための準備をしていた。健斗が近寄ると、担任の中村先生が反応した。「おう成宮!先生達はこれから外に行ってくるからな。その間クラスを頼んだぞ!」「はい、分かりました」健斗はそう返したが、内心クラスをまとめる自信など無かった。でも、これで先生達が、真実を見つけて帰って来てくれたらと思うと、少し前向きな気持ちになれたのだ。先生達は、体育館の扉を開けて外へと駆けて行った。

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みんなの感想(1件)

Jessie164
2023.04.10 Jessie164

高校生の飾らない気持ちが小気味良い文体で綴られており、心温まる。ホラーの展開はこれからかな。
続きを楽しみにしています。

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