日常の怪

1 心霊スポットの怪

その日、俺の彼女は1日体調がおかしかった。気が抜けたような感じだった。夜になり、俺はソファに座ってる彼女に声をかけた。すると、彼女はこんなことを言った。「お迎えがくるの」「お迎え？」「そう、こないだ心霊スポットに肝試しに行った時にその場所にいた霊が、私たちをあの世に引きずり込もうとしてるの」そう言うと、彼女はソファから立ち上がり、立っている俺の横を通り過ぎる。「は？」俺は、思わず笑ってしまった。さては俺をからかおうとしているなとその時は思った。しかし、数分後俺は、嫌な気配を感じた。彼女の後ろからだ。俺は、見てしまった。　そこには、彼女の後ろに立つ髪の長い女がいた。髪の毛が前に垂れていて顔は隠れて見えない。髪の長い女は、体が少しだけ透けていて、後ろの壁が透けて見えた。それは明らかに人間ではなかった。その瞬間、彼女の頭が吹っ飛び、首から、大量の血が溢れ出した。彼女から出た血は、俺の顔に飛び散った。俺は悲鳴をあげ、床に倒れ込んだ。目の前には彼女の顔が無い体が床に、倒れているのが見え、その先には髪の長い女が立っている。髪の長い女は、俺に近づいてくる。俺は、震える足をなんとか立たせて玄関へと走り出した。しかし、思うように早く走れない。後ろを確認しつつリビングを抜けて、廊下に出た。まだ髪の長い女は俺に、追いついていない。玄関まで付き、扉を開ける。外の風がこっちに向かって吹いてきて、顔に大量の黒い糸が触れてきた。いや、よく見ると糸ではなく黒い髪の毛だ。玄関の外に、髪の長い女が立っていた。髪の毛が長く前に垂れていて、顔は見えない。俺は怖くて体が固まり、その場から動けなくなった。女のちょうど顔の位置にある髪が膨らみ、中から両手が髪の毛を掻き分け出てきた。普通なら、顔がある位置でそこから手が出てくることはありえないのだ。掻き分けられた、髪の毛の奥は暗かった。そこからぬっと顔が出てきた。彼女の顔だ。もうこの世の者ではないぐらい真っ白な肌に、生気が感じられない目をした彼女の顔はこう言った。「あなたも一緒よ」俺は、何かわからない力に手を引っ張られ、玄関の外へ引きずり出された。玄関の扉が閉まり、家の中は誰もいなくなった。
　　　　　　　　　　　　　　　　　終