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クラウディオの父
しおりを挟む「クラウディオ。」
「何ですか?父さん。」
「うっ、」
クラウディオに凍り付くような目線を向けられた父は狼狽え、一瞬言葉に詰まった。
「あ、いや、学園を優秀な成績で卒業したんだから就職口などどこでもあっただろう。仕事が決まっていないようだが、これからどうするつもりだ?」
「私は4男ですし、捨て置いてくれていいですよ。勝手にどこぞで野垂れ死ぬだけです。」
「いや、そういうわけには・・・。心配なんだよ。何が気に入らないんだ?前はもっと明るく優しい子だったろ?」
「はぁ、私も大人になったということです。子供のように無邪気に愛想を振り撒いているだけでは生きていけませんから。」
「そ、そうか・・・。」
「私は家を出ます。私がいることで家の中の空気が悪くなっていることくらい気づいていますし。」
「いや、そんなことはないぞ。」
「無理しなくていい。私は1人でも生きていけますから。」
「そうか・・・、すまない。」
クラウディオの父もまた、ニコニコと穏やかなクラウディオがこんな風に変わってしまったことに心当たりはあった。
婚約など、させなければよかった。
そうすればきっと、クラウディオは今でも穏やかな笑みを浮かべ末っ子として天真爛漫に過ごしていただろうに。
本当に2人は仲が良かった。記憶操作と報告は受けていたが、人格にまで影響を及ぼすものだとは知らなかった。
こんなことになるくらいなら、クラウディオは死んだことにして秘密裏に国外へ逃してやるとか、国と国との間に関わらない方法で2人を添い遂げさせてやることなどもできたのではないか。
事がここまで進んでしまっては、もうどうしようもないが・・・。
きっとジョルジーノの人格にも影響が出ているだろう。
あちらの侯爵家とは10年以上の付き合いで、親戚になるということで仲良くやってきた。王太子や姫のことは残念だったが、どちらにも非はあったし、王家ほど憤慨しているわけでもないだろう。一度相談してみてもいいかもしれない。
私は国に見つからないよう、3男がよく連んでいるという冒険者にこっそり手紙を届けるよう依頼した。間に何組かの冒険者を挟むことで工作をし、準備は念入りに行なった。
私が認めたのは、息子の人格の変化と、一緒にならせてやりたいと思っているという内容で、相手の出方次第で、更に内容を詰めていくつもりでいた。
そして侯爵から返答が来たのは1週間後のことだった。
内容は、やはりジョルジーノの人格も変わってしまったということと、あちらもできれば2人を一緒にしてやりたいし、元の息子に戻って欲しいと書かれていたが、あまりに乱暴者になってしまったため、家族でも手に負えないと諦めているようなことも綴られていた。
そして、近々家を出ていくようで、こちらの家族では止めることができないと。
なるほど。うちのクラウディオも家を出ると言っていたな。
今から最速で手紙を出しても、ジョルジーノが出立した後に手紙が届くことになるかもしれない。無念だ。
私もクラウディオの出立を止められないのだから、お互い様だな。
私は、今後もそちらの侯爵家とは敵対するつもりがないこと、もし奇跡が起きて2人の記憶が戻るような事があれば、亡命させてでも2人を一緒にするつもりだと書いて手紙を出した。
その後、3日もするとクラウディオは少量の身の回りの物を鞄に詰めて家を出ていった。家の者は誰もクラウディオが家を出ていったことに気付かないかった。
最後にクラウディオの姿を確認したものから話を聞くと、ちょっと街まで、というような荷物で家を出ていくのを見たそうだ。
行き先も告げず、一体どこへ行ってしまったのか。
しかし、王城で開かれる新年の夜会には顔を出した。
愛嬌がありいつも人の輪の中でニコニコ微笑んでいたクラウディオの変化に、皆も驚いている様子だった。しかしクラウディオは笑顔を失っても容姿は美しい。令嬢や令息にダンスを申し込まれている様子が見受けられた。
もしかしたら新たな出会いがあり、その者と愛を育むことがあるかもしれないと思い見守っていたが、クラウディオは誰からの誘いにも応じなかった。
記憶を封じられてもやはりクラウディオの中にはジョルジーノへの気持ちがあるのかもしれないな。
クラウディオはずっと誰かを探しているような素振りをみせていたが、夜会も後半に差し掛かると、私や家族に挨拶もせず、いつの間にか会場から消えていた。
貴族どもの挨拶など無視して、せめてどこで何をしているのかは聞いておけば良かった。
後悔とは先に立たないものである。それ以降はどの夜会に参加してもクラウディオの姿を見ることはなかった。
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