【短編】劣等αの俺が真面目くんに付き纏われているのはなぜだ? 〜オメガバース〜

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5(真面目くん視点)

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 試験結果が出る頃に登校すると、成績が廊下に貼り出されていた。貼り出されるのは学年で20位以内の人と、追試者だけ。1位は僕。自信はあった。試験が終わるまでは正気だったからね。
 20位以内に桐崎くんの名前はなかった。
 あれ? でも桐崎くんってαだよね? 調子が悪かったんだろうか?

 普段はそんなところ見たりしないしないのに、追試者の名前に桐崎くんの名前を見つけてしまった。
 え? 追試? αの桐崎くんが?
 これは何があったのか聞かなければ!
 そう思った僕の行動はとても早かった。

「桐崎くん!」

 教室に入ると、桐崎くんを見つけて、腕を掴んで外に連れ出した。
 校舎裏までの道のりを、桐崎くんは意外にも嫌がることなく付いてきてくれた。

「なんかあったか? まさか妊娠したとかか?」
 そんな風に桐崎くんが心配そうに聞くのがおかしかった。やっぱり優しい人だ。
 だから大人しく付いてきてくれたのか。たとえ妊娠したとしても、数日で妊娠が分かるなんてこと無いからね。

「妊娠してないよ。桐崎くんが避妊薬買ってきてくれたし。そうじゃなくて、追試なんで?」
「は?」
「なんで追試なの?」
「はー、お前さ、案外酷いやつだな」
「え? だって桐崎くんαでしょ? 追試なんて何があったの?」

 桐崎くんは頭の後ろをガシガシ掻いて、目を逸らしてる。なんで?
 僕は桐崎くんの回答をジッと待った。

「あれが俺の実力」
「え?」
「だから、あれが俺の実力だっつってんだろ? 俺はαだが劣等なの! 残念だったな。俺が優良物件じゃなくて」

 劣等。知らなかった。αはみんな優秀なんだと思ってた。
 桐崎くんが僕に「案外酷いやつだな」って言った意味が今更分かったけど、謝る間も無く桐崎くんはどこかに行ってしまった。
 そして、僕はしばらく申し訳なさと、αにも色々あるんだってことに驚いて立ち尽くしていた。

 キーンコーンカーンコーン

 予鈴が鳴ってやっと我に返ると、僕はすぐに教室に戻った。

「堂島、お前が遅れてくるなんて珍しいな。体調が悪いのか? ちょっと顔が赤いぞ。大丈夫か?」

 先生はそんな風に気遣ってくれた。
 これは日頃から、僕が先生の言うことをよく聞いて、真面目に過ごしているから、遅刻やサボりなんてするわけないって思ってるからだ。
 本当に嫌だと思った。
 僕はそんないい子ちゃんじゃない。いい子の仮面を被ってるだけだ。全ては打算だよ。
 それでも僕は、その仮面を外せない。

「はい。ちょっと熱っぽくて。もう大丈夫です。」
「そうか。無理すんなよ」

 僕も、絵に描いたような真面目な生徒なんてやり続けたくない。
 それでも僕がそれを続けているのは、僕がΩだからだ。Ωは、Ωに生まれたというだけでハンデがある。
 だから、こうして真面目の仮面を被って、必死に存在価値をアピールする。
 生徒にはどう思われてもいい。僕みたいな子供にとっては、何の力を持たない生徒より、身近な大人である先生や親に価値があると思われた方が生きやすいから。

 必死でそんなことをしてきた。桐崎くんがαだって分かった時、αだから自由に発言して自由に行動して、そんなに大胆に生きられるんだって、どこか納得していたんだ。
 それなのに、桐崎くんは追試になる程に頭が悪かった。
 じゃあどうして? 「流石αだね」って言われるように陰で努力とかしたらいいのにって思った。

 でも違うんだ。桐崎くんは自分のことを劣等だって言った。
 Ωであることに必死に抗って、優等生なんて演じてる僕とは違って、桐崎くんはありのままの自分を受け入れてる。その上で、誰の言いなりにもならずに自分の意思で行動している。なんて格好いいんだ。
 僕の体温がグンと上がった瞬間だった。好き。僕は桐崎くんが好きだ。

 こんな気持ち初めてだった。こんな気持ちを教えてくれた桐崎くんに、どうしても何かお礼がしたいと思った。この前、助けてくれた恩もあるし。

 
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