5 / 8
5(真面目くん視点)
しおりを挟む試験結果が出る頃に登校すると、成績が廊下に貼り出されていた。貼り出されるのは学年で20位以内の人と、追試者だけ。1位は僕。自信はあった。試験が終わるまでは正気だったからね。
20位以内に桐崎くんの名前はなかった。
あれ? でも桐崎くんってαだよね? 調子が悪かったんだろうか?
普段はそんなところ見たりしないしないのに、追試者の名前に桐崎くんの名前を見つけてしまった。
え? 追試? αの桐崎くんが?
これは何があったのか聞かなければ!
そう思った僕の行動はとても早かった。
「桐崎くん!」
教室に入ると、桐崎くんを見つけて、腕を掴んで外に連れ出した。
校舎裏までの道のりを、桐崎くんは意外にも嫌がることなく付いてきてくれた。
「なんかあったか? まさか妊娠したとかか?」
そんな風に桐崎くんが心配そうに聞くのがおかしかった。やっぱり優しい人だ。
だから大人しく付いてきてくれたのか。たとえ妊娠したとしても、数日で妊娠が分かるなんてこと無いからね。
「妊娠してないよ。桐崎くんが避妊薬買ってきてくれたし。そうじゃなくて、追試なんで?」
「は?」
「なんで追試なの?」
「はー、お前さ、案外酷いやつだな」
「え? だって桐崎くんαでしょ? 追試なんて何があったの?」
桐崎くんは頭の後ろをガシガシ掻いて、目を逸らしてる。なんで?
僕は桐崎くんの回答をジッと待った。
「あれが俺の実力」
「え?」
「だから、あれが俺の実力だっつってんだろ? 俺はαだが劣等なの! 残念だったな。俺が優良物件じゃなくて」
劣等。知らなかった。αはみんな優秀なんだと思ってた。
桐崎くんが僕に「案外酷いやつだな」って言った意味が今更分かったけど、謝る間も無く桐崎くんはどこかに行ってしまった。
そして、僕はしばらく申し訳なさと、αにも色々あるんだってことに驚いて立ち尽くしていた。
キーンコーンカーンコーン
予鈴が鳴ってやっと我に返ると、僕はすぐに教室に戻った。
「堂島、お前が遅れてくるなんて珍しいな。体調が悪いのか? ちょっと顔が赤いぞ。大丈夫か?」
先生はそんな風に気遣ってくれた。
これは日頃から、僕が先生の言うことをよく聞いて、真面目に過ごしているから、遅刻やサボりなんてするわけないって思ってるからだ。
本当に嫌だと思った。
僕はそんないい子ちゃんじゃない。いい子の仮面を被ってるだけだ。全ては打算だよ。
それでも僕は、その仮面を外せない。
「はい。ちょっと熱っぽくて。もう大丈夫です。」
「そうか。無理すんなよ」
僕も、絵に描いたような真面目な生徒なんてやり続けたくない。
それでも僕がそれを続けているのは、僕がΩだからだ。Ωは、Ωに生まれたというだけでハンデがある。
だから、こうして真面目の仮面を被って、必死に存在価値をアピールする。
生徒にはどう思われてもいい。僕みたいな子供にとっては、何の力を持たない生徒より、身近な大人である先生や親に価値があると思われた方が生きやすいから。
必死でそんなことをしてきた。桐崎くんがαだって分かった時、αだから自由に発言して自由に行動して、そんなに大胆に生きられるんだって、どこか納得していたんだ。
それなのに、桐崎くんは追試になる程に頭が悪かった。
じゃあどうして? 「流石αだね」って言われるように陰で努力とかしたらいいのにって思った。
でも違うんだ。桐崎くんは自分のことを劣等だって言った。
Ωであることに必死に抗って、優等生なんて演じてる僕とは違って、桐崎くんはありのままの自分を受け入れてる。その上で、誰の言いなりにもならずに自分の意思で行動している。なんて格好いいんだ。
僕の体温がグンと上がった瞬間だった。好き。僕は桐崎くんが好きだ。
こんな気持ち初めてだった。こんな気持ちを教えてくれた桐崎くんに、どうしても何かお礼がしたいと思った。この前、助けてくれた恩もあるし。
91
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
起きたらオメガバースの世界になっていました
さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。
しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。
βな俺は王太子に愛されてΩとなる
ふき
BL
王太子ユリウスの“運命”として幼い時から共にいるルカ。
けれど彼は、Ωではなくβだった。
それを知るのは、ユリウスただ一人。
真実を知りながら二人は、穏やかで、誰にも触れられない日々を過ごす。
だが、王太子としての責務が二人の運命を軋ませていく。
偽りとも言える関係の中で、それでも手を離さなかったのは――
愛か、執着か。
※性描写あり
※独自オメガバース設定あり
※ビッチングあり
悪役のはずだった二人の十年間
海野璃音
BL
第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。
破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
オメガのブルーノは第一王子様に愛されたくない
あさざきゆずき
BL
悪事を働く侯爵家に生まれてしまった。両親からスパイ活動を行うよう命じられてしまい、逆らうこともできない。僕は第一王子に接近したものの、騙している罪悪感でいっぱいだった。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
記憶喪失ですが、夫に溺愛されています。
もちえなが
BL
目覚めると、そこは知らない天井だった。
そして、見知らぬ黒髪の男に強く抱き締められた。
「リーヴェ……あぁ、よかった……!
あなたがいなかったら、俺は……」
涙をこぼし、必死に縋ってくる彼――オルフェは、自分の“夫”だという。
だが主人公・リーヴェには、彼との記憶が一切なかった。
「記憶などどうでも良い。
貴方が健やかに生きてくれれば俺はそれだけで良い」
溺愛、過保護、甘やかし――
夫・オルフェに沢山の愛を注がれながら過ごす幸せな日々。
けれど、失われた記憶の先には、
オルフェの語ろうとしない“過去”が隠されていて――。
記憶喪失から始まる、
甘くて切ない再恋物語。
スパダリ黒髪眼鏡攻め × 金髪美少年受け。
学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました
こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる