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38.家族会議
しおりを挟む「ただいま戻りました。」
「おかえりなさいませ。」
「父上や兄上はいるか?」
「えぇ、お部屋にいらっしゃいますよ。」
「父上やたちに話がある。」
「呼んでまいります。」
父上と兄上がサロンに到着すると、紅茶が各自の前に置かれた。
「ランディー、今日はどこへ行っていたんだ?最近領都の街中を見学しているんだろ?」
父上も兄上も、私が街に行くのを止めたりしないし、楽しそうでよかったとか、領民から私の話を聞くこともあるとかで、ニコニコしながらそう訪ねてきた。
「今日は農地に行ってみたんです。これからキャベツの種を蒔くとかで、優しそうな男性が教えてくれました。また時期を見て見学に行こうと思っています。」
「そうか。それはよかったな。」
「それで、果樹園の方へも足を飛ばしてみようと歩いていたら、腕を掴まれて茂みに引き込まれた。」
「「は!?」」
「領民か?何かされたのか?今ここにいるのだから無事なことは分かっているが。一体誰がそんなことを・・・。私に恨みがある者だろうか。」
「領民ではないし父上の関係者でもありません。リオです。」
「「リオ?」」
「なぜあいつがそんなところにいるんだ?」
「話をしたいと・・・。屋敷は出入り禁止になっているから、私のことを付けていたのかもしれない。それで、側にいれば僕のことを好きになるとか、入れ知恵だとか、僕のことを好きなはずとか言い出して・・・。」
「あの男はそんな危ない奴だったのか。」
「それで・・・」
思い出したら急に怖くなった。キスをされたことも背中に手を入れて撫でられたことも。
私の異変に気づいた兄上が、私を抱きしめて背中を撫でてくれる。兄上に背中を撫でられるのは安心するのにな。
「キスしたい、抱きたいと言って抱きつかれて、上衣の裾から手を入れて背中を撫でられた。顎を掴んで、嫌だと言ったのに無理やりキスされた。」
「怖かったな。もう大丈夫だ。私が付いてる。」
兄上はポロッと溢れてしまった涙をそっと拭いて、ギュッと抱きしめてくれた。
「ランディー、言いたくないだろうが、思い出したくないだろうが、その先は・・・」
「それだけです。マルクが駆けつけてリオを殴り倒して私を連れて逃げてくれた。リオは置き去りにしたから、その後どうなったかは分からない。」
「マルクか・・・。」
「マルクはずっと側にいてくれて、父上や兄上に報告するようにって。」
「そうか。」
「父上、母上を呼びましょう。ランディーを1人にはできない。母上に付いていてもらって、私と父上でリオのことをどうするか話し合いたい。」
「そうだな。そうしよう。」
私は母上に引き渡されて、兄上が母上に私に何があったのかを簡単に説明した。
「ランディー、怖かったですね。母とお部屋でゆっくりお話ししましょう。楽しい話を。学園のお話も聞きたいわ。」
「分かりました。」
-----
>>>父と兄
「10歳の当時、ランディーが婚約破棄と帝国への留学を決めたのは、正しい判断でしたね。ランディーには先見の明があるのかもしれません。」
「あの時にランディーの説得を試みて婚約したままこの国に引き留めておいたらと思うとゾッとする。」
「屋敷への出入り禁止は門番の目もあるから簡単に破られることはないが、接近禁止にしたところでそれを守るとは思えない。」
「そうですね。領都への出入りも禁止したところで森などから入られてしまえば、そこまで監視はできない。」
「あちらの家にはまず抗議文を送る。今回は明確な被害が出ている。ちょっと強く肩を掴んだとかそんな程度の話ではない。マルクが助けに入らなければランディーは連れ去られて・・・」
「私としてはこのことは陛下にも伝えたいと思っています。陛下が動かなかったとしても、陛下が知っているという事実さえあれば、あの家もさすがにリオを自由にはしないでしょう。」
「うむ。そうなんだが、そうなるとランディーが王家に目をつけられて奪われるのではないかと心配だ。」
「それは・・・」
「ランディーは運よくというかタイミングよくというか、王家の夜会には参加したことがないから王家にその姿を知られていない。
お前もランディーのお披露目会の日に周りの貴族たちの反応を見ただろう?」
「今回は最小限の被害でしたが、それ以上のことが起きてからでは遅いんですよ。それに何は王都の夜会にも出席することになります。どちらにしてもランディーをずっと隠しておくことなど無理なんです。」
「う。・・・そうだな。分かった。お前の案を採用しよう。」
「ありがとうございます。」
「リオのことは接近禁止と領都の立ち入り禁止をとりあえず抗議文には入れておくが、問題はもう一つある。」
「マルクですか・・・。」
「あいつは一体なにを考えているんだ?というかいつから領都にいたんだ?まさかランディーのことを付け回しているのか?」
「それは分かりませんが、学園に送り届けたことといい、今回の件といい、ランディーを守ろうとしているということは分かります。」
「何度かランディーを助けていることを考えると、感謝したい気持ちもあるんだが、金をくすねて遊び回ったり、まだそれは反省して金を返すというなら許してやらなくもないが、ランディーを手込めにしたことはやはり許すことはできない。」
「そうですね。それと私はずっと不思議なんですが、ランディーはなぜマルクを今でも慕っているんでしょう?恨んだり嫌ったり恐れたりしてもおかしくはないと思うのですが。」
「それは私も分からん。私も気になっていた。」
「もしかして、手込めにしたというのは何かの誤解なのでは?」
「ランディーの様子を見るとそうなのかもしれないと思える。」
「マルク本人は捕まりませんし、捕まえて聞いたところで本当のことを話すか分からない。かといってランディーに聞いていいのかも・・・。例えば平身低頭謝ったのだから許してやったということなら、古傷を掘り返すことになるでしょうし。」
「ランディーにとって脅威となる存在でないなら、今は放置でいいか。」
「そうですね。ランディーを守ってくれるならそれでいいでしょう。」
「ランディーはどうするかな。屋敷に閉じ込めたくはないが、今回のようなことがあってランディーが傷付くのは見たくない。」
「閉じ込めるのは私も反対です。護衛をつけるのは嫌がりますかね?」
「提案だけはしてみるか。」
「そうしましょう。」
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