【完結】愛され属性のランディー

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65.マルクの家

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「マルクは森に住んでいるのか?」
「まさか。」
「じゃあどこに住んでいるんだ?」
「この森を抜けた先の国に家があります。」
「領都の森の小屋みたいなものか?」
「もっといい家です。行きますか?」
「行く。見てみたい。」
「分かりました。」

マルクは私の手を取って歩いていく。森の中でも全く迷う素振りがないのはさすがだな。
そして森をどんどん進んでいくと、魔物が何度か出た。皇都側より多いらしい。
そしてそれを紐で縛って引き摺って歩いていく。

「そういえば、家は買ったのか?自分で建てたのか?」
「半分は俺が出しました。」
「半分?まさかまた誰かを騙したのか?」
「残り半分は村のみんなが出し合ってくれました。」
「は?どういう状況だ?こんな悪い奴に金を出すとかおかしいだろ。脅したか?」
「行けば分かります。」
「そうか。」

今度は他国で何をやらかしたのか、行くのが恐ろしい。何もしていない私まで非難されて石でも投げられるんじゃないか?

森を抜けると、森から少し離れた場所に小さな村が見えた。

「あの村の端に家があります。」
「そうか。」

マルクを受け入れてくれる村か。余程何かに困っているとかか?

木でできた柵に囲まれたその村の入り口まで行くと、門番の青年が駆け寄ってきた。
「マルキーさん!おかえりなさい!」
「あぁ。」
「そちらの綺麗な方は?森の精霊様ですか?」
「いや、私は人間だ。マルクの知り合いの。ランディーという。」

知り合いという説明でよかっただろうか?

「知り合いなんて何か他人みたいですね。ランディー様は俺の愛する人です。」
「おおー!この人がマルキーさんの!さすがです。」

何がさすがなのか知らないが、マルクが変な説明をしたせいで私はマルクの恋人か何かと勘違いされた気がする。ここに連れてきたのもマルクの計画のうちの一つということか。
それにしてもマルキーというのはなんだ?

村の中に入ると、子供が寄ってきた。
「マルキー、また剣おしえてー」
「ぼくもー」
「分かった。また今度な。」

マルクのような危ない男を子供に近づけてはダメだろう。

「マルク、一応聞いておくが、彼らに教えているのは剣だけなんだよな?性的なことは教えたりやらせたりしてないだろうな?」
「当たり前です。ランディー様だけですよ。嫉妬ですか?可愛いですね。」
「違う。何も知らない子供達まで食い物にしていないかを確認しただけだ。」

子供達に手を出していないことが本当なのかは分からないが、私だけと言ったのは嘘ではない気がして、少しホッとした。

家に着くまでにも、住民に何度か声をかけられた。この村ではマルクはそれなりに慕われているらしい。

「思ったより大きな家だな。」
「そうなんです。いつか愛する人を連れてくるかもしれないと言ったら、大きめに作ってくれました。」

そんな話もしていたのか。しかもそれは私のことなんだよな?完全に周りを固められた。

「なぜこの村ではマルクが慕われているんだ?それにマルキーとは?」
「捕まって腱を切られて、でも国に帰るのは嫌で、逃げて彷徨っていたら森を抜けていて、療養のために少し置いてもらったんです。
ランディー様にとうとう振られて、足も動かなくてもうダメだと思って。マルキーはハンター名です。」
「なるほど。」
「それでお礼に魔物を狩って、村人と一緒に柵も建てた。そうしたらここにずっといてほしいと家を建ててくれることになった。」
「そういうことか。ここの村の人たちは悪いマルクを知らないんだな。」
「まぁ、そうですね。」

魔物を狩って、柵を建てたか。確かにそれは慕われるだろうな。マルクは腕は確かだからな。
さっき森で狩った魔物も村人たちに渡していたし。
きっとマルクとしては捌いたりするのが面倒だから渡したんだろうが、彼らにしてみれば貴重な肉を分け与えてくれたと思うんだろう。

村での暮らしか。
私はずっと街で暮らしてきたから、のんびりと村でしばらく過ごすのもいいかもしれないと思った。


「ランディー様、抱いていいですか?」
「は?ダメだろ。」
「じゃあキスだけ。」

「んん、、やめ、、ぁ、、、ぁ、、」

マルクのキスは強引だな。私の返事も聞かずに勝手にキスなんかして。でも、その強引なところが、私の心を擽ってギュッと掴んでくる。
力が抜けてフルフルと震えながらマルクの服を掴むと、マルクはしっかり私の腰を引き寄せて抱きしめた。

「ランディー様、気持ちいいですか?」
「・・・そうだな。」

私はしばらくこの村で暮らすことにした。やってみたかったキャベツの収穫も手伝わせてもらって、子供達と剣の練習をしたり、マルクと森に狩りに行ったり。
ディエゴのことは考えないようにした。考えても仕方ないことだ。もうどうにもならないのだから。
夜になると時々悲しくなって泣いていたけど、その時はマルクがずっと抱きしめていてくれた。どさくさに紛れて、服の中に手を入れて腹や背中を撫でたのは、仕方ないから許す。

「マルク、お前はいつから私のことが好きなんだ?」
「学友と演劇だったかを見に行くのに付いて行った辺りです。」
「は?私が11歳ぐらいだろ?そんなに前からか。」
「俺は一途なんです。」
「もし私がマルクのことを好きになったらどうするんだ?」
「好きになってくれたのですか?」
「例え話だ。」

「どうもしません。毎日ランディー様を愛して、毎日ランディー様を守って、ランディー様がしたいことを応援して、ランディー様を抱いて一緒に寝る。それだけです。」
「そうか。」

変わらないんだな。マルクが相手なら、そこには変わらない生活があるんだな。

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