【完結】愛され属性のランディー

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69.権力者

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「マルク、聞くのが少し怖いんだが、私をギルドに置いてどこへ何をしにいっていたんだ?」
「ミノタウロスという牛の魔物の亜種を狩って領主に届けて少し話をしただけだ。前に欲しいと言っていたからな。」
「なるほど。怖い話じゃなくてよかったよ。」

領主と言えば兄上は元気だろうか?私の婚約を喜んでくれていたのにこんなことになって申し訳ないな。しかも、恐らく兄上がかなり恨んでいるであろうマルクと一緒にいるなど、言ったら悲しませてしまうだろうか?

この件が落ち着いたら一度帰りたいな。
もう今なら自由に帰ることができるんだから。

1週間ほど経ったある日、領主邸から迎えの馬車が来た。

面倒だが行くしかない。私が行かなければマルクが何をしでかすか分からないから、私はストッパーの役目としても行く必要がある。


「どうぞあちらの席にお掛けください。」
「ランディー様、何も口をつけてはいけませんよ。」
「分かった。マルクもな。」
「分かりました。」

私とマルクは奥の席に座るよう言われ、すぐに領主である子爵と、先日の女とその父親の街長らしき人が入ってきた。

私は立ちあがろうとしたのだが、領主にそれを手で制された。

私とマルクの前に領主が座る。
それ以外は立ったままだ。

「マルキー様、ランディー様、わざわざお越しいただきありがとうございます。この度は私が定めた街長風情がとんだ失礼を働いたとか。申し訳ございません。」

「あの、我々の席は?」
ここで言葉を発したのは、とても静かに各方から怒りを向けられている街長だった。
この男、馬鹿なのか?それともわざとか?

「は?お前らは座りたきゃ床にでも座れ。我らと同席などできる身分ではない。」
領主は静かな怒りを隠すことなく街長の男へ向けた。

「ランディー様、一度だけお目にかかったことがありますが、覚えておいででしょうか?帝国の皇子の婚約披露パーティーで。」
「はい。少ししかお話しできませんでしたが、貴殿のことは覚えております。」
「ディエゴ様とは婚約を解消されてしまったとか。」
「えぇ、お互いの将来のために、そのような選択になりましたが、今でも友人としてお付き合いをさせていただいております。」
「そうでしたか。」

「お前の無能な娘が手を出そうとしたのは、こちらにおられるマルキー様の大切な方であり、帝国の皇子の友人だ。私はお前らを庇う気はない。お前の娘にはシラーノ男爵の後妻に入ってもらう。安心しろ気が強い女を屈服させるのが好きらしいからな。」
「そんな・・・」
「私が何も知らないと思っているのか?街を散々荒らして民を苦しめていたことは知っている。今回のことが決定打となったが、いずれこの選択は行われていた。早いか遅いかの差だ。」
「嫌よ、パパ、どうにかしてよ。」
「ちなみに街長、今までご苦労であったな。横領の金額分は新しい街長の補佐として、鎖に繋がれた状態で20年無給で働いてもらう。以上だ。帰っていいぞ。」

そう領主が告げると、2人は引きずられて退室していった。

「マルキー様、これでどうか怒りを収めてはいただけませんか?」
「ランディー様がいいなら俺はいい。」
「私は攫われそうにはなったがマルキーが助けてくれたから被害はないし、特に言うことはありません。貴殿の判断にお任せします。」

他人事という感じだったな。それよりせっかく領都に来たのだから、この前マルクが言っていたソースとチーズがかかったパンを食べたい。

「せっかく領都まで来たんだからこの前食べられなかったパンを食べて帰ろう。」
「分かりました。」

「では失礼致します。」

こうして私たちは領主邸を後にした。

「マルク、これが名物のパンか。美味しいな。」
「えぇ。」
「マルク、私は一度実家に帰ろうと思う。きっとみんなを心配させてしまっているし、マルクはどうする?」
「俺はいつでもランディー様と共にあります。」

マルクにとって祖国は居心地のいい国ではないだろう。別に私1人で帰ってもいいと思っていたが、マルクは当然のように私についてくると言った。
嬉しくないわけではない。しかし、それでいいのか?という気持ちもある

「マルクにとってはこの国が一番暮らしやすいんじゃないか?誰も悪行を知らないんだし。むしろ尊敬されている。」
「そんなことは些細なことです。俺はいつでも愛するランディー様の側にいたい。それだけです。」
「そうか。情熱的だな。」
「嫌ですか?」
「そんなことない。嬉しいよ。」
「ランディー様、今すぐ抱いていいですか?」
「ダメだ。家まで待て。」

私を想うマルクの気持ちは重い。しかし、それ以上にこの何があっても変わらない想いが嬉しいと感動しそうになったが、マルクは結局マルクだった。

全く。やはりマルクは私の体が好きらしい。私の気持ちや考えなど体の付属品程度にしか思っていなのではないかと思うこともあるが、それでも私の気持ちを優先してくれる時もあるから分からなくなる。
分かっていることは、マルクは私の体が何よりも好きだということだ。

 
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