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おじさん書類仕事を手伝う
しおりを挟むそしてラウロは5時少し前に私の職場に現れた。
「シモン終わった?」
「終わりますが、ラウロはもう仕事が終わったのですか?」
「うん。余裕余裕。サッと終わらせてきた」
ピピピピピピピピ
「あーもーうるさいな。通信機なんか置いてくればよかった。
はい。何? あー、適当にやっといて。俺忙しいから。じゃあね」
ラウロはそう返事をすると通信機を消した。
「ラウロ、大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。シモンは気にしなくていいよ~」
「そうですか」
「帰ろ?」
「はい」
そう言うと、手を繋がれて、私の視界が一瞬真っ白になると、次の瞬間にはラウロの部屋にいた。
凄い。これが転移なんだ。
「シモン、好きだよ。結婚しよ?」
「あの、やはり私は……ん、」
「何でかな? 考え直して? ね?」
また私はラウロに声を奪われた。
「シモン、とりあえずご飯食べよう」
「……」
ダイニングに向かうと、テーブルの上には料理が並んでいた。
椅子に座り、無言で食事をした。喋ることができないんだから仕方ない。
ドンドンドン
食事をしているとドアを叩く音がした。
誰かが訪ねてきたようだ。
ラウロは無視しているようだが、ラウロに用事なんだろう。私は席を立って玄関のドアを開けた。
「え? 誰ですか?」
私は話せないので、喉を指さして手でばつ印を作った。
訪ねてきた人物は宮廷魔術師の制服を着たラウロより少し年上に見える男だった。
「喋れないってことですか?」
私はコクコクと頷いた。
「私は宮廷魔術師のナリオと申します。ラウロさんはいますか?」
私はダイニングを指差した。
「お邪魔しても?」
きっと家にまで訪ねてくるということは、緊急の用事なんだろうと思い、コクコクと頷いて奥へ通した。
「シモン、何で入れるの?」
「ラウロさん、お願いですから書類仕事をして下さい。それとあの方は誰なんですか? お父上ではないですよね?」
「家にまでこなくてもいいじゃん。シモンは俺の未来の夫。愛を育んでるところなんだから邪魔しないでよ。馬に蹴られて死ぬよ?」
「とりあえずこの3枚の書類を処理してくれたら今日は帰りますからお願いします」
ラウロは仕事を抜け出してきたのか……
嫌だ嫌だとゴネているラウロの肩をツンツンと突き、喉を指さしてお願いと頭を下げた。
「仕方ないな。断らないなら解除してあげる。約束できる?」
私がコクコクと頷くと、ラウロは魔術を解除してくれた。
「ふぅ。私はシモンと申します。ラウロは仕事の途中で抜けてきたんですね。知らなかったとは言えご迷惑をお掛けして申し訳ございません。すぐに仕事をさせますので少々お待ちください」
「おぉー助かります。シモン殿、ありがとうございます」
「ラウロ、書類仕事の何が嫌なのですか? 私も手伝いますから一緒にやりましょう」
「……分かった」
「読むのが嫌なのですか? 書くのが嫌なのですか?」
「どっちも。俺は魔術は得意だけど書類は嫌なんだよ。もうホント無理なの~」
「私が読んであげますから聞いて下さい」
書類に書かれた内容を読み上げて、長すぎて意味が分からないと言うから、要約して説明してあげると、ようやく理解してくれて、代わりに書いてと言うから、ラウルの話し言葉を書類用の文章に直しながら書き、サインはさすがに私がするわけにはいかないからラウロにしてもらった。
「シモン殿、本当にありがとうございました!」
ナリオという人物は、深々と頭を下げて帰っていった。
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