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おじさん呼び出される
しおりを挟む「シモン、お前何かやらかしたか?」
「え? 何もしていないはずですが……」
やらかした? そう言われても何も思い当たることは無かった。
「これ。すぐに王城へ出向け」
「は? 王城ですか?」
会長が見せてくれた高そうな紙には王家の紋章が描かれており、私が名指しで王城に来るよう書かれていた。
なぜ?
「理由は分からん。私も長年シモンを見ているし、真面目なシモンが何かをやらかすとは思ってはいないが、とにかく仕事はいいから王城へ急げ」
「分かりました」
私は作業途中の文書を会長に渡すと、届いた手紙を携え王城へ走って向かった。
ラウロなら転移で一瞬だろうが、私は魔力がないからな。馬車を捕まえるより走った方が早いと思い、必死に走って王城の門に向かった。
遠くから見ることはあるが、門の前まで来たのは初めてだった。
鎧兜の騎士が立っていたので、その人に手紙を見せると、少し門のところで待たされた。
迎えの人が来て、私はその人に付いていくことになった。
緊張するな。呼び出された理由が分からないし。
廊下は顔が映るくらいピカピカに磨かれていて、私が一生かけて稼ぐ額より高いと思われる壺や絵画が飾ってあって、決して触れてはいけないと思った。
会長には何もしていないと言ったが、呼び出されるとしたらラウロのことなのではないかと思った。
彼は宮廷魔術師のトップ。ということはこの国で1番魔術に長けた者なんだろう。そんな国の重要人物を唆したと言われるんだろうか?
それとも、宮廷魔術師の書類を部外者の私が見たり書いたりしたことが問題となったんだろうか?
私はどうなってしまうんだろう?
やはり魔力のない私のような者がラウロの側にいることなど望んだから、バチが当たったのかもしれない。
私を迎えに来た人物が扉の前で止まった。
コンコン
「シモン殿をお連れしました」
『入れ』
中から低く落ち着いた声が聞こえて、私は覚悟を決めて部屋の中に入った。
中にいたのは国王陛下、だよな?
私はすぐに膝をついて床に額ががつくほどに頭を下げた。
こんな格好で来て良かったんだろうか?
「よいよい。頭を上げてくれ」
「はい」
私が恐る恐る頭を上げると、陛下は私の姿を頭の先から足の先までじっくりと品定めするように眺めた。
「シモンといったか?」
「はい」
「そなたがあのラウロを上手く扱うことができるという、なるほど」
「…………」
上手く扱う?
やはり私のことは快く思っていないんだろう。
そりゃあそうだよな。私は魔力もないし、秀でたものも無いただのおじさんだからな。
そんなことを考えながら居心地の悪い思いでいると、ドアの外がザワザワとして、ドアが蹴破られる勢いで開いた。
そして私の背中が温かい何かに包まれた。
「シモン、大丈夫? 何もされてない?」
「え? はい」
「陛下どういうつもり? シモンは絶対に渡さないからな」
ラウロか。なんだか毛を逆立てた猫のようだな。などと思いながらボーッと見ていた。
「別に何もする気はない。最近ラウロからまともな文書が上がってくるからナリオを呼び出して聞いたんだ。結婚間近の恋人がいてかなり有能な人物で文書はその者が書いていると」
「だから何?」
「ラウロが扱うような内容を理解している人物なんだから気になるだろう」
理解などしていないんだが……
校正の仕事をしているから多少は分かるが、私はラウロの言葉を話し言葉から文書用の言葉に直して書いているだけだし。
「シモン殿、それほど魔術に長けているのであれば宮廷魔術師にしてもいいと思うのだが。どうだ?」
「それは無理です。私は魔術に長けているどころか、魔力を持たないのです。申し訳ございません」
「魔力を持たない? 少ないではなく全く?」
「はい。全くです。魔道具も起動できません」
「ふむ、では先日発表された論文はシモン殿のことであったか。なるほど。では迷う必要はない。其方を宮廷魔術師とする」
「はい?」
陛下は魔力がないと言った私の話を聞いていたんだろうか?
「シモンよかったね」
「…………」
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