【完結】王子様の身代わりになった僕は最恐と恐れられる皇帝を肉球で癒す

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1.身代わり生活の始まり

8.

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 エデラーさんが作った問題を必死に解いていく。だけど時間は無情に過ぎていった。これは学ぶための講義ではなく試験だ。理解するまでいつまでも待ってもらえるわけじゃない。

「できましたかな?」
「あ……あと少し、待ってもらえませんか?」
「ではあと少し待ちましょう」

 少し時間を延ばしたところで、全ての問題を解けるわけではない。だけど、できるだけ多くのことを理解したかった。

「もうそろそろ、よろしいかな?」
「はい……」

 何度も時間を引き延ばせるわけじゃない。僕はペンを置いて、エデラーさんに紙を渡した。やっぱり全部は解けなくて、少し悔しい気持ちが湧いてくる。でもこれが僕の実力だ。僕は皇帝の役に立てるんだろうか?
 急に不安が押し寄せてきた。

 エデラーさんが問題用紙を採点していくのを息を止めて眺めていた。結果によっては、僕の命もここまでかもしれない。
 僕は怖くて結果を聞けなかった。

 エデラーさんが問題用紙を持ったまま席を立って、皇帝のところまで歩いていった。その背中からは感情を読み解くことはできない。
 僕は拳を固く握りしめて、目を瞑った。

「さすが王子と言ったところか、なかなか優秀なようだな」
 皇帝の言葉に僕はビクッとしてしまった。僕は王子じゃない。
 そっか、王子様なら小さい頃からずっと教育を受けているから、あんな問題すぐに解けるんだ。きっと僕が苦戦した問題だって、朝飯前ってくらい簡単に解いちゃうんだろう。

 あれ?
 でも皇帝は僕のこと優秀って言った?
 聞き間違いじゃないよね?
 僕は皇帝のことは怖くて見られなくて、エデラーさんを見た。優しい顔でうんうんと頷いてくれている。それって合格ってこと?

「エデラーさん、その問題用紙をいただけませんか?」
「構いませんが、このようなものを欲するとは珍しいですな」
 顎髭を撫でながら、エデラーさんが首を傾げている。合格したのだとしても、他に解けない問題がたくさんあった。きっとこれから必要になると思う。だから僕は全部の問題を解けるようになりたい。

「おいアル! そんなものがなぜ欲しい?」
 皇帝が大きな声を出すから、僕はまたビクッと驚いてしまった。試験の問題を欲しいと言ってはいけなかったんだろうか?

「解けなかった問題を、解けるようになりたい……です」
 怒られるのが怖くて、最後の方は小さい声になってしまった。僕は自信がないと声が小さくなってしまうことがある。今回はそれに恐怖が重なって、いけないと分かっているのにちゃんと話すことができなかった。怒られるんだろうか?

「よし、いいだろう。エデラー教えてやれ。この部屋でだ」
 エデラーさんはなぜかニコニコしているし、これは許可されたってことでいいんだよね?
 怒られなくてよかった……

「陛下、ありがとうございます」
「ふんっ、感謝の言葉など何の役にも立たん。お前が役に立つと証明してみよ」
「はい」

 こうして僕はエデラーさんに計算や帝国のことを教えてもらえることになった。役に立てば殺されずに、国も守れるんだ。
 明日知れぬ命だと思っていた僕にとって、このことは一筋の光に見えた。

「エデラーさん、アルとお呼びください」
「畏まりました」
 アルバンなんて王子様の名前で呼ばれたら、まだ僕は挙動不審になってしまうかもしれない。危険なことはできるだけ避けたい。

「グレオン様は今日はとても機嫌がいい。アル様がおられるからかな?」
 エデラーさんにこっそりそんなことを言われたけど、皇帝はあれで機嫌がいいの?
 てっきり機嫌が悪いのかと思ってた。昨夜はいきなり犯されたし、僕は皇帝のベットで勝手に眠ってしまったし……
 あれで機嫌がいいってことは、機嫌が悪い時はなぶり殺しにされたりするんだろうか?
 想像すると背中がゾクっとした。

 皇帝の機嫌を損ねないよう、しっかり役に立とう。どうやったら機嫌が良くなるのか、逆に機嫌が悪くなるきっかけも知りたい。

「エデラー、聞こえているぞ。お前は俺の耳のよさを忘れたか?」
 エデラーさんに聞いてみようと思ったけど無理そうだ。皇帝の耳がいいなんて知らなかった。だからさっき声が小さくなってしまったのに怒られなかったんだ。
 皇帝の機嫌が良くなったり悪くなったりするきっかけなんて迂闊に聞いたりしなくてよかった……

 
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