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2.猫の王子(グレオン視点)
20.※
しおりを挟む天蓋をかき分けてベッドに入ると、彼を組み敷いた。怖がるか? 嫌がるか?
左右違う彼の瞳が俺を戸惑いながら見つめている。
「抵抗するか?」
「いえ、しません」
綺麗な瞳が揺れている。抵抗はしないが、怖いんだろう。
「僕を……食べますか?」
「ああ、美味しくいただいてやる」
なんだ、こいつは経験がない上に無知だと思っていたが分かっていたのか。それなら話は早い。楽しませてもらおう。
「んっ……」
目を閉じた彼に口付けると、思った以上に柔らかい唇だった。少し震えているのは緊張か、それとも怖いのか。
「舌を出せ」
「ベー」
「ふっ、可愛らしい舌だな」
薄くて赤い舌を指先で擽ってやると、体を捩った。悪くない反応だ。小さな手でシーツを握り締めているのも健気で可愛いと思った。
娼婦や男娼のようにわざとらしく喘いだりはしない。これが普通の反応か。悪くない。
胸の先は小さく薄いピンクだ。だが指で弾いても摘んでみても吸っても反応はいまいちだった。こんなものか。
「あまり反応がないな。初めてだから仕方ないか」
反応がないのはつまらないが、緊張に身を硬くしている状態では快楽どころではないという可能性もある。それならこいつの反応を楽しむより、俺の快楽を優先しよう。
うつ伏せにし、尻だけ持ち上げてオイルを塗りこむ。裂けたりするのは可哀想だから、裂けることがないように、しっかりと解していく。風呂である程度解したからもういいだろう。
グチュグチュとわざと音を立ててかき混ぜてやるが、やはり彼は身を硬くしたままだ。
「はうっ……」
これは感じている声ではないよな……
彼の中は温かくて、俺に絡みついてきた。これはヤバイな。調子に乗ってガツガツと後ろから貪り、気づいたら彼からは呻き声しか聞こえてこなかった。
「可愛い顔を見せてみろ」
一旦引き抜いて仰向けにすると、彼は号泣していた。初めてなのに体も小さいのに、激しく攻め過ぎたか?
「なんだ、ベショベショに泣いてんのか? 可哀想になってきたな……」
「痛いのも怖いのも、もういいから、早く食べて……」
食べる……まさか、俺はこいつをムシャムシャと食うとでも思っているのか?
食い殺されるのが怖くて泣いていたのか? 呆れた。しかしその思考は予想外だ。
「は? お前、なんか勘違いしてないか? 俺はいくら相手が美味しそうでも人肉なんか食わん。お前の覚悟に応えて最後までちゃんと抱いてやるから安心しろ」
目を見開いて固まる猫の王子、俺にとっては獣人を食うと思われたことの方が驚きだ。
足を割り開き、己を彼の中に潜り込ませていく。やはり彼の中は温かくて俺に絡みついてくる。入れているだけで昇りつめそうになる。今日はそれでいいか。
これ以上泣かせるのは違うと思った。欲望を注ぎ込むと、ゆっくりと撤退した。
「お前は俺に従順でいろ」
「はい」
終わっても彼は動かなかった。動けないのか……
やはり無理をさせたようだ。仕方なく俺は風呂までタオルを取りに行き、彼の体と涙で濡れた顔を拭いてやる。
手のひらに触れると、プニッと柔らかい感触があった。なんだこれ、手のひらがこんなに柔らかいのか?
ん?
……なんだったか? すぐには思い出せないが、何かで読んだことがある。手のひらと指の柔らかさに癒されると書かれていた。
──そうだ、あれは昔の皇帝の手記だったか?
俺は最恐となるために歴代の皇帝の手記をよく読んでいた。
戦争のことや周辺国のこと、川や海の災害への対応など、政治に関することを参考にしようと読んでいた。その中でエルヴァニアから来た王子を皇妃とした皇帝の話だったと思う。その代の皇帝は王子を溺愛していた。弱いものをなぜと思って、理由が知りたくて何度も繰り返し読んだんだ。
手記では王子を溺愛している記載が多いが、国の伝記ではその代の皇帝は泣く子も黙ると言われる恐ろしい皇帝で有名だった。だから余計気になった。
その皇帝が書いていた気がする。
「なるほどな」
これは触れているだけで癒される気持ちが分かる。近いうちにあの手記をもう一度読んでみよう。この手は確かに癒しにはなるが、それだけで皇妃として寵愛するとは思えない。何かあるはずだ。
彼のプニッとした柔らかい手のひらに触れていると、彼は小さく丸まって眠ってしまった。
知らない国に連れてこられて夜の相手までさせられたんだ、疲れたんだろう。
娼婦や男娼であれば終わったらすぐに追い出すところだが、こいつはここにいても嫌な感じがしない。
そっと銀色の髪に触れてみると、信じられないくらいにふわふわで柔らかかった。手のひらだけでなく髪も柔らかいのか。
耳の先がピクピクと動いて、面白いと眺めていると、頭を俺の胸に擦り付けてきた。
可愛いものだ。仕方ないな、特別に抱きしめて寝てやる。
今日はよく眠れるというキャンドルも必要なさそうだ。
俺は天蓋付近の魔導灯に魔力を飛ばして消すと、温かい彼の体を胸に抱えて目を閉じた。
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