14 / 44
騎士学校篇
14.
しおりを挟む「リアン、どこに行ってたんだ?」
「街に買い物に行っていました」
さっきみんなで噂をしたからだろうか? 僕の部屋の前で殿下が待っていた。いつから待っていたんだろう?
「休みだと聞いたからお茶にでも誘おうと思ったのに、いないから待ってたんだ」
「お待たせして申し訳ございません」
「夕飯一緒に食べようぜ」
「いえ、僕は寮の食堂でみんなと食べます」
王族と食事なんて怖すぎる。食事マナーは実家で習ったけど、僕は気楽に食堂でみんなとお話ししながら食事をしたい。
「リアンは相変わらずつれないな」
「じゃあまた明日来る」
そう言うと殿下は手を振りながら帰っていった。明日は何しに来るんだろう?
一応明日も休みだけど、僕は明日はぬいぐるみを作るつもりだった。せっかく材料も買いに行ったんだし、できれば断りたい。
部屋にいなければいいのかも。そうだ、そうしよう。
僕は夕飯の後でぬいぐるみを作ることにして、明日は治癒魔法の勉強もしたかったし図書室に行くことを決めた。
殿下に明日来ると言われて図書室に逃げた日、夕方になって部屋に戻ると、部屋の前に殿下がいた。もういないと思ってたのに……。
「俺から逃げたな?」
「僕は学生だから、勉強の方が大事です」
これで許してくれないかな?
「ふぅ、仕方ないな。どこへ行っていた?」
「図書室で魔法の勉強をしていました」
嘘じゃないからね。司書さんに聞いてみれば嘘じゃないって分かるはずだ。
恐る恐る顔色を窺ってみると、何か考えているみたいだった。
「分かった。次は俺も誘え。俺も一緒に勉強する。リアンと一緒に勉強したい」
「え?」
「なんだ? 学生しか勉強してはいけないなどという決まりはない」
「はい」
確かにそうだけど……。
逃がさないぞってことですか?
それからも僕は、図書室に逃げたり、訓練場に逃げて自主訓練をしていたと言い訳をしたり、殿下のものになるってのが怖くて逃げた。
「逃げるな。一度二人きりで話をしよう」
手を掴まれると、僕の力では解けそうになかった。逃げ続けてきたけど、今までは咎められなかったから大丈夫だと思っていた。だがダメだったようだ。震えながら殿下についていくと、団長室に通され鍵がかけられた。
「そんなに怯えるな。怯える姿も可愛いが、怖がらせたいわけじゃない。
だが、強引だったことは認める」
「よ、夜の、相手を所望、なんですよね……?」
部屋に鍵までかけられて、覚悟を決めるしかなかった。震える手で制服のボタンを一つずつ外していく。
「いいのか?」
僕は何も答えず、服を脱いでいった。
「は、初めて、なんです……」
「そうか」
殿下は震える僕を抱きしめてキスをした。怖くて涙が溢れた。
「んっ……」
前世ではモテなかったし、ちゃんとしたキスはこれが初めてだ。初めてなのに、舌まで入れてきて、どうしたらいいのか分からず戸惑った。逃げようとしたけど、首の後ろに手を回されて掴まれてたから逃げられなかった。
怖くて、小刻みに震えていたと思う。でもなんか変な感じ。なんか分からないけどふわふわして力が抜けていく。
「すまん、泣かせるつもりはなかった」
泣いていることに気づいた殿下はキスをやめて床に落ちた服を着せてくれた。
「可哀想にこんなに縮こまって……」
「…………」
誰のせいだ、とは言えなかった。
「今日は何もしないから、もう泣くな」
怖がらせた張本人のくせに、抱きしめてずっと背中をさすっていてくれた。
それで僕が落ち着くと寮の部屋まで送ってくれた。
殿下は一体僕に何を求めてるんだろう?
しようと思えばできたのに、しなかった。でもキスはした。淫らなキスだ。
*
>>>殿下と秘書
「やっぱり俺って怖い?」
「その大きな体で王族が迫ってきたら怖いですね。好きだと言ったのですか?」
「言ってない」
「じゃあ夜の相手だけさせられると思ったんでしょうね。可哀想に」
「分かるだろ。俺、結構アピールしてるだろ?」
「言葉にしなければ伝わりませんよ」
「好きなんて言えるかよ」
「そうですか。彼に想いが伝わるといいですね」
やる気がなさそうに答えた秘書官。彼にとっては、殿下の恋が実ろうが儚く散ろうが、どうでもいいことだった。
945
あなたにおすすめの小説
ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。
【8話完結】いじめられっ子だった僕が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
異世界転生したと思ったら、悪役令嬢(男)だった
カイリ
BL
16年間公爵令息として何不自由ない生活を送ってきたヴィンセント。
ある日突然、前世の記憶がよみがえってきて、ここがゲームの世界であると知る。
俺、いつ死んだの?!
死んだことにも驚きが隠せないが、何より自分が転生してしまったのは悪役令嬢だった。
男なのに悪役令嬢ってどういうこと?
乙女げーのキャラクターが男女逆転してしまった世界の話です。
ゆっくり更新していく予定です。
設定等甘いかもしれませんがご容赦ください。
記憶喪失ですが、夫に溺愛されています。
もちえなが
BL
目覚めると、そこは知らない天井だった。
そして、見知らぬ黒髪の男に強く抱き締められた。
「リーヴェ……あぁ、よかった……!
あなたがいなかったら、俺は……」
涙をこぼし、必死に縋ってくる彼――オルフェは、自分の“夫”だという。
だが主人公・リーヴェには、彼との記憶が一切なかった。
「記憶などどうでも良い。
貴方が健やかに生きてくれれば俺はそれだけで良い」
溺愛、過保護、甘やかし――
夫・オルフェに沢山の愛を注がれながら過ごす幸せな日々。
けれど、失われた記憶の先には、
オルフェの語ろうとしない“過去”が隠されていて――。
記憶喪失から始まる、
甘くて切ない再恋物語。
スパダリ黒髪眼鏡攻め × 金髪美少年受け。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる