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深き記憶の
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第6話
ひどい夢を見た。爆音と悲鳴が世界を包み、硝煙と焼けた建物から上る黒煙に肺は燻され、血と死肉の焼ける匂いが思考を阻害させる。
痛覚が二の次に来るような地獄は、多くの人々、仲間、思い出を焼き払いながら拡がった。
身体の至る所から血が溢れ、肉は抉れ、四肢は満足な状態ではない。
あの黒い影は--
「んっ.......んぁ、んんっ......」
「......やっと起きたか......バカ」
「ん......姉、ちゃん..?」
「まだ動くな。傷が広がるから......って......もう敵は倒した。落ち着け」
目を覚ました紅眼の妹を一瞥し、モニターに目をやる。様々な数値がリアルタイムで表示される中、ひとつのグラフに注目する。コア出力......『低下状態』だというのにこいつはまだ目が煌めいたままだった。
「あ、あぁ......あの後どうなったんだ......?」
「リーが回収に来てくれた。そこからすぐに撤退、アビスネストの勢力圏内に逃げ込み掃討した」
「あいつが......」
「後でしっかりお礼を言っておきな」
「そう......だな。積荷は無事だったか?」
「通常の輸送車が3割やられた。けど、目的の大型トラックは両方とも無事だ。村長が褒めていたよ」
「それなら良かった......あ、私の装甲履帯はどうなった?」
「どうなったもこうなったも無いわよ! 装備はバラバラにするわ身体はボロボロになるわ......極めつけは履帯を大破させるなんて何考えてるの?!」
まるでタイミングを見計らったかのように空間を隔てていたカーテンをバッ! と取り払い呆れながらも怒気を交えながら出てきたのは翠眼をした低身長の長女、ゼフィランサスだった。
「あはは..私のせいで悪かったね......」
「まったくよ..あんな所で死んでもらっちゃ困るわ!」
「まぁまぁ、姉さんも落ち着いて......こうして無事だったからいいじゃないですか」
その後ろから顔を出した少女は碧眼と後ろで結われた三つ編みを揺らしながら長女の背中を宥めるように摩っている末っ子のフリージアだった。
「あ、リー......なんか世話になっちまったみてぇだな......その、なんというか......」
ここでいつものように上手いこと冗談だったりを言えないのは私の悪い癖なのは自負している。
「大丈夫ですよ、姉さん。でも、私の装備も姉さんを護るのに必死で結構やられちゃいましたけどね......」
そう言われると薄れた記憶が少しずつ戻って来たように感じる。確か目の前に割って入り盾で護ってくれたような......しかしその後は熾烈な攻防を繰り返したらしく、リーの武装も損傷が激しいとのこと。
「つまり、装備の点検 補充が終わるまで次の作戦が始まっても二人共留守番よ」
「ちなみに次の作戦は三日後だ。対して君たち2人の留守番期間は......先が見えないそうだ」
「まぁ仕方ありませんね......万全ではない状態で外に出たって戦力はプラスどころかマイナスですから......」
「因みにアマリには戦術教練..つまるところの座学の補修がついてるからしっかりやるように」
「えええーー! 私だけかよ! 姉ちゃん達ずるいぞ!」
続けてリーが「あんな無茶な行動は蛮勇と同じですもんね......」と苦笑を浮かべながらポリポリと頬を掻く。
「ちぇーっ......そういえば次の作戦はなんなんだ?」
「旧い軍事施設跡地と思われる建造物の調査と情報の持ち帰りだそうだ。何しろ技術資料が大量にあるとか」
「今回の戦闘で扱いが悪かったにしろその脆弱性が露呈したからね......改修を含めて整備されるらしいわ」
「技術的な面で難航が予想されるらしい。そこを補うべく旧時代の建物を虱潰しで該当の情報があるか調査して欲しいと」
「それ村長が言ったのか?」
「いや、技術長のエウロパだ」
「武器オタクのあいつか......」
「開発長のカリストも装備の大幅強化をしたいと言っていた」
「ま、そういうことだから貴女達は大人しくしてなさい」
そう言うとゼフィーが背を向けストックが椅子から立ち上がり、その後を追いながら病室から出ていった。
2人がいなくなると途端に しんっとした空気が病室を包み込む。しばしの沈黙の後、先に口を開いたのリーだった。
「姉さん体は大丈夫なのですか......? 沢山血が出てましたけど......」
「ん、あのくらいどうってことねぇよ。ほら、いつも通りだろ?」
と言って肩から腕にかけて巻かれた包帯を外し傷があったと思しき場所を見せる。そこには戦闘時の痛々しい傷とは打って変わり、元通りの年相応な瑞々しい肌に治っていた。
「あ本当だ......傷も治すのが早いんですね」
「当ったり前よぉ! なんてったって姉妹の中で1番優秀だからな!」
「優秀なのは埋め込まれてるコアでしょ......?」
こいつのツッコミはいつも痛いところを突いてきてバカにされてる気分になる。
実際姉妹の中で1番出力の高いコアを持つのは私であり、速度や機能性などが頭一つ抜けている。
そうして足りない部分を互いに補っているから今の私達は存在できている。
「そういえば......姉さんの制服の中に綺麗な石が入ってたけど、どこで見つけたんですか?」
端は焦げたり所々に穴が空いたりと見るも無残な制服の中から取り出した水晶のような石を見つめながら聞く。
「あぁ、ぶっ壊したウルフを漁ってたら見つけたんだ。実際私もこれが何なのかって聞かれたら知らんとしかいえねぇな」
「ふーん......まあ残骸を漁るなんて姉さんらしいね。みんな不気味がって近付かないのに」
指でつまみ照明に翳すと、表面が反射しキラキラと輝いて見えた。
その珍しさから目が離せなく、どこか妖艶な雰囲気さえ感じる。
見つめていると指でつまんでいた所から
じゅわぁぁぁ......と延焼するように炎が舐め、空気中へ霧散していく。
そして小さくなった水晶は最後まで輝きを残しながら完全に消滅してしまった。
「これって......こういうものなの......?」
「だから私も知らねぇって......初めて見つけたんだよ」
「......相談した方がいいかな? 仮にもグロウの中から見つかったものなんだし......」
「そんぐらい平気だろ。またなんかあったら私がとってくりゃあいい話だ」
などと消えたものに関心が尽きたらしく興味も無さそうにヒラヒラと遇うように手を仰ぐ。
最終的には「いつ飯なんだよ」と夕飯30分前に駄々をこね始めたので好物の干し肉(戦闘時の携帯食)を適当に与え、大人しくなったところで今日の所は姉たちのいる部屋に戻った。
ひどい夢を見た。爆音と悲鳴が世界を包み、硝煙と焼けた建物から上る黒煙に肺は燻され、血と死肉の焼ける匂いが思考を阻害させる。
痛覚が二の次に来るような地獄は、多くの人々、仲間、思い出を焼き払いながら拡がった。
身体の至る所から血が溢れ、肉は抉れ、四肢は満足な状態ではない。
あの黒い影は--
「んっ.......んぁ、んんっ......」
「......やっと起きたか......バカ」
「ん......姉、ちゃん..?」
「まだ動くな。傷が広がるから......って......もう敵は倒した。落ち着け」
目を覚ました紅眼の妹を一瞥し、モニターに目をやる。様々な数値がリアルタイムで表示される中、ひとつのグラフに注目する。コア出力......『低下状態』だというのにこいつはまだ目が煌めいたままだった。
「あ、あぁ......あの後どうなったんだ......?」
「リーが回収に来てくれた。そこからすぐに撤退、アビスネストの勢力圏内に逃げ込み掃討した」
「あいつが......」
「後でしっかりお礼を言っておきな」
「そう......だな。積荷は無事だったか?」
「通常の輸送車が3割やられた。けど、目的の大型トラックは両方とも無事だ。村長が褒めていたよ」
「それなら良かった......あ、私の装甲履帯はどうなった?」
「どうなったもこうなったも無いわよ! 装備はバラバラにするわ身体はボロボロになるわ......極めつけは履帯を大破させるなんて何考えてるの?!」
まるでタイミングを見計らったかのように空間を隔てていたカーテンをバッ! と取り払い呆れながらも怒気を交えながら出てきたのは翠眼をした低身長の長女、ゼフィランサスだった。
「あはは..私のせいで悪かったね......」
「まったくよ..あんな所で死んでもらっちゃ困るわ!」
「まぁまぁ、姉さんも落ち着いて......こうして無事だったからいいじゃないですか」
その後ろから顔を出した少女は碧眼と後ろで結われた三つ編みを揺らしながら長女の背中を宥めるように摩っている末っ子のフリージアだった。
「あ、リー......なんか世話になっちまったみてぇだな......その、なんというか......」
ここでいつものように上手いこと冗談だったりを言えないのは私の悪い癖なのは自負している。
「大丈夫ですよ、姉さん。でも、私の装備も姉さんを護るのに必死で結構やられちゃいましたけどね......」
そう言われると薄れた記憶が少しずつ戻って来たように感じる。確か目の前に割って入り盾で護ってくれたような......しかしその後は熾烈な攻防を繰り返したらしく、リーの武装も損傷が激しいとのこと。
「つまり、装備の点検 補充が終わるまで次の作戦が始まっても二人共留守番よ」
「ちなみに次の作戦は三日後だ。対して君たち2人の留守番期間は......先が見えないそうだ」
「まぁ仕方ありませんね......万全ではない状態で外に出たって戦力はプラスどころかマイナスですから......」
「因みにアマリには戦術教練..つまるところの座学の補修がついてるからしっかりやるように」
「えええーー! 私だけかよ! 姉ちゃん達ずるいぞ!」
続けてリーが「あんな無茶な行動は蛮勇と同じですもんね......」と苦笑を浮かべながらポリポリと頬を掻く。
「ちぇーっ......そういえば次の作戦はなんなんだ?」
「旧い軍事施設跡地と思われる建造物の調査と情報の持ち帰りだそうだ。何しろ技術資料が大量にあるとか」
「今回の戦闘で扱いが悪かったにしろその脆弱性が露呈したからね......改修を含めて整備されるらしいわ」
「技術的な面で難航が予想されるらしい。そこを補うべく旧時代の建物を虱潰しで該当の情報があるか調査して欲しいと」
「それ村長が言ったのか?」
「いや、技術長のエウロパだ」
「武器オタクのあいつか......」
「開発長のカリストも装備の大幅強化をしたいと言っていた」
「ま、そういうことだから貴女達は大人しくしてなさい」
そう言うとゼフィーが背を向けストックが椅子から立ち上がり、その後を追いながら病室から出ていった。
2人がいなくなると途端に しんっとした空気が病室を包み込む。しばしの沈黙の後、先に口を開いたのリーだった。
「姉さん体は大丈夫なのですか......? 沢山血が出てましたけど......」
「ん、あのくらいどうってことねぇよ。ほら、いつも通りだろ?」
と言って肩から腕にかけて巻かれた包帯を外し傷があったと思しき場所を見せる。そこには戦闘時の痛々しい傷とは打って変わり、元通りの年相応な瑞々しい肌に治っていた。
「あ本当だ......傷も治すのが早いんですね」
「当ったり前よぉ! なんてったって姉妹の中で1番優秀だからな!」
「優秀なのは埋め込まれてるコアでしょ......?」
こいつのツッコミはいつも痛いところを突いてきてバカにされてる気分になる。
実際姉妹の中で1番出力の高いコアを持つのは私であり、速度や機能性などが頭一つ抜けている。
そうして足りない部分を互いに補っているから今の私達は存在できている。
「そういえば......姉さんの制服の中に綺麗な石が入ってたけど、どこで見つけたんですか?」
端は焦げたり所々に穴が空いたりと見るも無残な制服の中から取り出した水晶のような石を見つめながら聞く。
「あぁ、ぶっ壊したウルフを漁ってたら見つけたんだ。実際私もこれが何なのかって聞かれたら知らんとしかいえねぇな」
「ふーん......まあ残骸を漁るなんて姉さんらしいね。みんな不気味がって近付かないのに」
指でつまみ照明に翳すと、表面が反射しキラキラと輝いて見えた。
その珍しさから目が離せなく、どこか妖艶な雰囲気さえ感じる。
見つめていると指でつまんでいた所から
じゅわぁぁぁ......と延焼するように炎が舐め、空気中へ霧散していく。
そして小さくなった水晶は最後まで輝きを残しながら完全に消滅してしまった。
「これって......こういうものなの......?」
「だから私も知らねぇって......初めて見つけたんだよ」
「......相談した方がいいかな? 仮にもグロウの中から見つかったものなんだし......」
「そんぐらい平気だろ。またなんかあったら私がとってくりゃあいい話だ」
などと消えたものに関心が尽きたらしく興味も無さそうにヒラヒラと遇うように手を仰ぐ。
最終的には「いつ飯なんだよ」と夕飯30分前に駄々をこね始めたので好物の干し肉(戦闘時の携帯食)を適当に与え、大人しくなったところで今日の所は姉たちのいる部屋に戻った。
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