俺たちの××

怜悧(サトシ)

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夏休み編

それはただの独善的な愛に過ぎなくて →side Y

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ぐったりとベッドへ身体を沈めて気を失っている親友だった男を俺は見下ろした。 
潤いのない銀に光るパサパサの髪に手を伸ばしてひと房掬う。

オレは幼馴染みの親友を騙して、拘束して長年の思いを遂げた。 

クーラーのかかっていない部屋は蒸し暑く、汗とオレの体液で汚された筋肉質な体は酷く淫らに見えて魅惑的だった。 
綺麗に拭いてやるつもりだけど、ずっとその姿を眺めていたかった。

「……トール………」 

すっかり意識を飛ばしている相手に、オレは無駄とは思いつつも呼びかける。 
吊り上ったきつめな瞳は、睨まれた相手を威圧して常に勝者の立場に君臨しつづけていた。 
物心ついたときには、常に一緒にいた。 
長谷川東流の名前を聞いただけで、震え上がる同級生は多い。
その親友として唯一の片腕として一緒に居れる優越感と、初恋からの恋情。
気がついたら醜いくらいの欲情へと変わっていった。 

幼い頃に交わした約束。 

『ヤス、大人になったら一日中一緒にいような』 

オレにあったのはただそれだけだったのに、汚い欲望ばかりが溢れて止まらない。

実際、欲望を向けるのが彼じゃなくてはいけない理由なんて何もない。
オレの見てくれがいいからか、言い寄ってくる女も数えられないくらいいる。
好きにならなくても、女を抱けば彼への気持ちが変わるかもしれないなんて考えたが、抱いても抱いても気持ちは変わらない。
女と結婚することが自然なことだと、思い込もうと足掻いたのに、オレが欲情するのは、いつだって東流だけだった。 

他に何も代わりにはならなかった。

「……ゴメン。オレは……トールを離したく無いんだ」 

だから離れられないように心が駄目なら、体だけでも支配してオレのモノにしてしまいたかった。 
高校三年。一緒につかず離れずいられるのもあと少しだ。
すぐに就職すると言っている東流と、進学しようと思っているオレには接点がなくなる。

そう遠くない将来、彼がオレから離れていくと思ったら抑えが効かずに計画を実行していた。 
浅黒く焼けた筋肉質で傷だらけの体にオレは手を這わせていく。 
この気持ちはガキの独占欲を超えていると気づいたのはいつだっただろう。 

醜いくらい、独善的な気持ちだ。

ずっと、後ろから黙って指を銜えて見ているだけだなんて、オレには耐えられなかった。 

額に浮かぶ汗に唇を寄せて、舌先で掬うように舐めとる。 

オレだけを見て。 
オレを求めて。 
お願いだ。オレを欲しがって。 

「トール……」 

愛してる。 
何より純度の高い愛を捧げるから。 
だから……。 

今だけでいいからオレだけのモノに為ってくれ。
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