俺たちの××

怜悧(サトシ)

文字の大きさ
上 下
107 / 353
二学期編

お迎え男 →side T

しおりを挟む
勝手知ったる様子で、だんだんだんと階段を駆け上ってくる音がする。
この時間には親が居ないのも、全部分かってるのだろう。
勿論、普通に家宅不法侵入だが。
バンッと、迷いなく勢い良く扉が開く。

「トール、迎えにきた」

そこには息を切らせて、肩を上下させる康史の姿があった。
思いっきり首筋に手刀を叩きこんでオトしたのに、結構早く気がついたもんだなあと思いながら、俺はゆっくりと立ち上がる。

「…………帰りたくねぇ」

出てくる前も俺の発言に何か怒ってたし、あの続きをされるのもイヤだなと思って、思わず首を振って拒絶を口にする。

「……おい、もう駄々こねるなよ…………トール」

諭すように腕を掴まれて、ぐいっと手を握られる。

「ヤス、怒ってねえ?」

俺は、握られた手をおずおずと軽く握り返す。
離すことはしない。
「怒ってるよ」
言葉とは裏腹にちょっと表情を緩めて、ふっと吐息をついて俺を優しい顔で見返す。
怒っているようには見えない。
弱気になっても、俺の弱みはきっといつだって、コイツだけだ。

「じゃあ、帰らねえ。だって…………オマエさ、お仕置きとかするだろ」
ぼそっと呟くと、康史は俺の顔を上目遣いに覗き込んでくる。
この甘えるような仕草や表情に、昔からずっと俺は弱い。
「…………しなかったら、帰る?」
「オシオキはイヤだけど……な。…………滅茶苦茶にはされてえ」

耳元で囁くように告げた俺の腕をぐっと掴んで、康史はぐっと腰を抱いた。

「おい、ちょっとそこのバカップル、オレの部屋で堂々とイチャイチャすんなって。ヤッちゃんも、しっかり首輪つけといて、頻繁に戻ってこられたら、邪魔だから」

西覇は嫌そうな顔をして、しっしっと追い払うように手を振る。
「勉強の邪魔してゴメンネ。セイハ。じゃあ、コレもって帰るんで」
康史は俺をモノ扱いして、腕をずんずん引いて部屋を出る。

「すえながく、お幸せにー。もう帰ってくんなよ、アニキ」

上機嫌な西覇の声が聞こえたが、滅茶苦茶にとか言ってしまった手前何されんのかなと、不安を覚えつつ家を出る。

「電車できたから、…………オマエのタンデム乗せて」

そして、康史のバイクのタンデムシートに跨った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

総受けは仕様ですとも――ある村人Mの受難――

BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:852

[R18] 20歳の俺、男達のペットになる

BL / 連載中 24h.ポイント:248pt お気に入り:121

王子と令嬢の別れ話

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,377pt お気に入り:41

【完結】転生後も愛し愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:858

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:3,238

【完結】どうも。練習台の女です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:168

足音

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:12

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:13

処理中です...