俺たちの××

怜悧(サトシ)

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冬休み編

初日の出 →side T

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埠頭の最先端近くまでぶらぶらと歩き、係留ビットに腰をおろして日の上る方向へと目を向ける。

今年最初にあがる朝日。

別に普段と何が違うというわけではないのに、皆は、ありがたがって見る。
それが不思議といえば不思議なのだが、それでも年の始めというのはそういう特別なものという感覚を、人はつけたいのかもしれない。

「まだ寒いね」

康史は俺の背後から歩み寄ると、腕を回してぴったりとくっついてくる。
それだけで、あったかく感じるのは物理的な問題だけではない。結構、ココロとか関係してくるんだよな。

「まあな。冬だし仕方ねえよ」

はぁーっと吐き出す息が真っ白で、水平線が少しほんのりピンクっぽい色にじわじわと染まってくる。
大体、康史と誠士とで毎年初詣にいっているが、近くの神社に行って露店眺めているうちに、いつの間にか喧嘩に巻き込まれて、ちょっと運動してから家に帰るのが常だったが、今年は特別のようだ。

「トールの心臓バクバク聞こえる……」

耳元で少し濡れた舌に触れられながら囁かれると、下半身が反応しそうになって俺は唾を飲み込む。
康史とくっついてるだけでソノ気になってきてしまうとか、本当に俺の体はこらえ性がない。
「そりゃ…………俺だって、久しぶりだから………な」

「……俺もだけどね。………あ、太陽…でてきた」

ちょっとづつ白み始める空の色と、水平線から少しオレンジ色が頭を出すのを眺めていると、康史の頭が俺の頭に押し付けられるのを感じ、舌先で唇を叩いて中へと入ってくる。
背中が痺れるような刺激に、鼻息が漏れて革パンがキツキツになってくるのを感じる。
舌を吸い込まれて、甘く歯先で刺激されるのに体を震わせながら、俺はオレンジになっていく空を眺め、バランスを崩さないように康史の腕をぐっと掴んだ。

「ふ……トール……可愛い……もうとろんとしてる。……今年最初のキスだよ…」

唇を外して、もう堪えきれなくなって欲情している俺の顔を眺めて頬を撫でる。
ここが外じゃなかったら、このまま突っ込んで欲しいと懇願してしまいそうだった。
ゆらゆらと水平線から出てくる太陽の光のように、俺の頭の中もゆらゆらとしていた。

「トール……、今からひめはじめもいいよね」
誘うように俺の腕をとって引く康史の言葉に、すでに俺は逆らえるはずもない。
こないだから、本当にこらえ性がまったくなくて困る。

「バ、カ…………外は凍死すンぞ…」

なんとかやっと出した声はかすれてて、言葉とは裏腹に期待してるのが自分でもわかった。
凍死はともかく、熱量はハンパ無くて、ここでヤッても熱で溶けるくらいじゃねえかって思った。
「ここで裸になるのは、新春寒中水泳のふんどしオニーサンくらいっしょ。トール、バイクは俺運転するよ」
漸く立ち上がった俺のジャケットのポケットから、バイクのキーをごそごそと引っこ抜いて指にかける。

「…………ヤス……って、、どこいくんだよ」

「その様子じゃ、家までもたないでしょ?ラブホは年中無休だからさ、愛に休日はないだろ」

確かに家まで持ちそうにはなかったが、直接的に言われるのも、かなり照れるものがある。

革パンはあいかわらずキツキツで歩きにくいのに、早足で腕を引く康史の後ろを歩きながら返す言葉もなく、止めたバイクまで歩み寄ると、俺は黙ってタンデムに跨った。

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