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「ここが総監のお宅、ですか」
広大な庭がある邸宅を見上げて、目を白黒させる桑嶋を伴って、統久は十年ぶりに実家の門の前まできていた。
流石に番ができたことは父親へ報告しないわけにもいかず、話をした途端に家に連れて来いということになったのである。
彼が門に手を翳すとまだ統久のDNAは登録されているようで観音開きが勝手に開く。
「まあ、無駄にでけえだけだ」
統久は、あの時に施設へと搬送されてから、実家へは1度も戻ったことはなかった。
正直、歩弓に会ってしまうのが怖くて避けていたというのが正解である。
「やっぱり、反対されんだろうな……」
ボソリとつぶやく桑嶋は、何かを勘違いしているようで緊張でガチガチになっている。
ドラマなのででよくある「娘はやらん」的な展開を想像しているのだろう。
「まさか、反対するわけねえだろ。ノシつけてくれたいくらいのモンだぞ。俺は」
家を出た当時と庭の雰囲気とかは変わらないのに、懐かしい気持ちになる。手入れもきっと同じ庭師がやってんだろうな。判定でてから寮に入っていたので、実質十三歳からは殆ど実家では暮らしていない。
それでも統久は相変わらずの様子に安心した表情を浮かべ、玄関のドアの前でインターフォンを押す。
「ただいま、帰りました。……統久です」
声にすぐに扉が開き、昔と変わらない執事の懐かしい顔が現れて、玄関へと導かれる。
「お久しいです。お帰りなさい、統久様。旦那様がお待ちでございますよ」
統久はちらと桑嶋を見遣ると、ムービーとかでしか見たことがない、次々に現れる上流階級じみた風情に痛々しいくらい緊張で顔が強ばっている。
「ああ、五島、久しぶりだな。元気そうで何よりだよ」
「統久様こそ、お噂は聞いてはおりましたが、立派になられましたね。こちらには寄ってくださらないので五島は寂しかったですよ」
相変わらずの執事の口調に、統久は思わず笑みを浮かべながら無沙汰を詫び、父親が待つ居間へと向かう。
「入るよ、親父」
執事が部屋の扉を開くとゆっくりと中へと入り、ソファーで寛ぐ父親と母親に統久は頭を軽く下げる。
「よくきたな。たまには顔を出せ、統久。母さんが寂しがっていたぞ」
父親は文句を言いながらも、息子の後ろに立つ桑嶋を気になるように何度も見返す。
「お見合いとかで顔を合わせていたし、わざわざ家に戻らなくてもいいのじゃないかな」
「わたしは手料理を食べさせたりしたかったわ」
統久の言葉に母親は、ちょっと唇を尖らせてみせる。やはり母親というものは、長男が一番可愛いものなのだろう。
「で、親父に紹介するよ。えっと、こいつ、桑嶋セルジュが俺の伴侶になった」
統久は背中を軽く押して、まだ緊張でぎこちなくカチコチしている桑嶋をざっくりと紹介する。
「セルジューク・桑嶋です。この度は、本当に急なことになりまして。身分違いだとは思っているのですが、努力して出世するんで。息子さんを、幸せにします」
「……桑嶋君」
父親はソファーから立ち上がり、桑嶋の両肩に手を置いて頭を下げると、いきなりカーペットの上に土下座した。
「コイツは、私たちがホントに甘やかして育ててしまって、手に負えない所もあると思う。君には苦労をかけてしまうかもしれないが……くれぐれも頼みます」
警視総監ともあろう男が、床に頭を押し付けて桑嶋に懇願しているのを、統久は驚きに目を剥き息をのんだ。
「……顔をあげてください。オレは、彼が努力家で素晴らしい人だと思って、惚れました。それはこんなに素晴らしい両親に育てられたからだと思います」
桑嶋は、親父の腕を引いて体を引き上げて、強い口調でそう言った。
「順番が逆になってしまいましたが、統久さんを……オレにください」
桑嶋の言葉に、統久は目頭が熱くなって涙が零れるのを堪えるためか、ゆっくりと天井を仰いだ。
「統久を、どうかよろしくお願いします」
母親が桑嶋の身体を抱き寄せたのに、統久は堪えきれないように顔を覆った。
広大な庭がある邸宅を見上げて、目を白黒させる桑嶋を伴って、統久は十年ぶりに実家の門の前まできていた。
流石に番ができたことは父親へ報告しないわけにもいかず、話をした途端に家に連れて来いということになったのである。
彼が門に手を翳すとまだ統久のDNAは登録されているようで観音開きが勝手に開く。
「まあ、無駄にでけえだけだ」
統久は、あの時に施設へと搬送されてから、実家へは1度も戻ったことはなかった。
正直、歩弓に会ってしまうのが怖くて避けていたというのが正解である。
「やっぱり、反対されんだろうな……」
ボソリとつぶやく桑嶋は、何かを勘違いしているようで緊張でガチガチになっている。
ドラマなのででよくある「娘はやらん」的な展開を想像しているのだろう。
「まさか、反対するわけねえだろ。ノシつけてくれたいくらいのモンだぞ。俺は」
家を出た当時と庭の雰囲気とかは変わらないのに、懐かしい気持ちになる。手入れもきっと同じ庭師がやってんだろうな。判定でてから寮に入っていたので、実質十三歳からは殆ど実家では暮らしていない。
それでも統久は相変わらずの様子に安心した表情を浮かべ、玄関のドアの前でインターフォンを押す。
「ただいま、帰りました。……統久です」
声にすぐに扉が開き、昔と変わらない執事の懐かしい顔が現れて、玄関へと導かれる。
「お久しいです。お帰りなさい、統久様。旦那様がお待ちでございますよ」
統久はちらと桑嶋を見遣ると、ムービーとかでしか見たことがない、次々に現れる上流階級じみた風情に痛々しいくらい緊張で顔が強ばっている。
「ああ、五島、久しぶりだな。元気そうで何よりだよ」
「統久様こそ、お噂は聞いてはおりましたが、立派になられましたね。こちらには寄ってくださらないので五島は寂しかったですよ」
相変わらずの執事の口調に、統久は思わず笑みを浮かべながら無沙汰を詫び、父親が待つ居間へと向かう。
「入るよ、親父」
執事が部屋の扉を開くとゆっくりと中へと入り、ソファーで寛ぐ父親と母親に統久は頭を軽く下げる。
「よくきたな。たまには顔を出せ、統久。母さんが寂しがっていたぞ」
父親は文句を言いながらも、息子の後ろに立つ桑嶋を気になるように何度も見返す。
「お見合いとかで顔を合わせていたし、わざわざ家に戻らなくてもいいのじゃないかな」
「わたしは手料理を食べさせたりしたかったわ」
統久の言葉に母親は、ちょっと唇を尖らせてみせる。やはり母親というものは、長男が一番可愛いものなのだろう。
「で、親父に紹介するよ。えっと、こいつ、桑嶋セルジュが俺の伴侶になった」
統久は背中を軽く押して、まだ緊張でぎこちなくカチコチしている桑嶋をざっくりと紹介する。
「セルジューク・桑嶋です。この度は、本当に急なことになりまして。身分違いだとは思っているのですが、努力して出世するんで。息子さんを、幸せにします」
「……桑嶋君」
父親はソファーから立ち上がり、桑嶋の両肩に手を置いて頭を下げると、いきなりカーペットの上に土下座した。
「コイツは、私たちがホントに甘やかして育ててしまって、手に負えない所もあると思う。君には苦労をかけてしまうかもしれないが……くれぐれも頼みます」
警視総監ともあろう男が、床に頭を押し付けて桑嶋に懇願しているのを、統久は驚きに目を剥き息をのんだ。
「……顔をあげてください。オレは、彼が努力家で素晴らしい人だと思って、惚れました。それはこんなに素晴らしい両親に育てられたからだと思います」
桑嶋は、親父の腕を引いて体を引き上げて、強い口調でそう言った。
「順番が逆になってしまいましたが、統久さんを……オレにください」
桑嶋の言葉に、統久は目頭が熱くなって涙が零れるのを堪えるためか、ゆっくりと天井を仰いだ。
「統久を、どうかよろしくお願いします」
母親が桑嶋の身体を抱き寄せたのに、統久は堪えきれないように顔を覆った。
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