12 / 26
12
しおりを挟むマルジ宙港の三番ゲートに到着すると、最新設備を搭載している軍艦がずらっと並んでいる。
セルジュは辺境の軍にこんな設備があるのかと眼を白黒させながら、シェンが手招く艦へと登場した。
この艦が中でも一番設備がしっかりしているようで、中も綺麗に整えられている。
「すごいな……辺境って結構資金使えるのか」
思わずセルジュが周りを見回しながら感嘆の声をあげると意味ありげにシェンに肩を叩かれる。
「大きな声ではいえねえんだけど、おたくの旦那が遠野にオネダリして買ってもらったの」
「あー、そういうこと」
バックに経済界のプリンスがいるならば、相当オネダリできたんだろうなと思いながら、そこまでやっておいてよく七度もプロポーズを断ったなと面の皮の厚さに呆れてしまう。
出会う前のことをとやかく言う気もないが。
「で、カレシ、戦闘の経験あるの」
「こっちは潜入捜査が殆どなので。戦闘まで発展することはないんですが、模擬演習はこなしてます」
戦闘服もあまり汚れてはいないので、言わなくてもわかるかとは思ったが、彼らはここにくるまでのセルジュの動きをずっと見ていたようだ。
「これが、隊長の旦那か。もっといかついのを想像してたけど。大丈夫?あの人の夜の生活激しいから」
「おい。ちょっと、からかってやるなって」
「えー興味あるじゃない。俺ら結婚式に行ってないんだぜ」
わいのわいのと見るからに屈強そうな男たちが、自分たちの隊長だった男の番に興味があるのか、質問攻めにされる。
そんだけ、慕われていたんだよな。
遠慮ない男たちの様子を見ると、まだシェンの方が大人しいたちなのだと考えを改めさせられる。
「ったく、三秒で通信切りやがったんだぜ。あの人。相当切羽詰ってるんだろうが……てめえらも、急げよ」
漸く助け舟を出してくれたシェンへと近寄り、ずっと端末を弄っている様子を覗き込む。
「通信って」
三秒で切られたという割には端末は起動したままで、画面の中でぴかぴかと点滅しているのは位置情報だろう。
何かあった時の対応は、彼らは手馴れている。だから、統久は彼らに連絡をしたのだろう。
「あの人、体の中にナノマシン仕込んでるんだよ。知らなかった?」
「ああ……。知らないことばかりだ」
「で、オレの耳には受信機のナノマシンが埋まってる。一方的なのは昔からなんだけどな」
命令するだけでこっちの言うことは聞く気ねえっていう意思表示なんだよねとぼやくシェンの耳元を、少し羨ましそうにセルジュは眺めた。
一方的な通信は、自分の命令だけ伝えれば質問なしにでも考えて結果を出せると信じているからだと。
「まあ、オレは五年以上ずっと辺境であの隊長さんとドンパチ繰り返してたわけだし。アンタはセントラルにあの人が行ってからなんだし、そんなに経ってないだろ」
「ああ。いきなりバディにさせられた。そっから番になるまでは早かったんだけどな」
統久は一年ちょっと前に辺境からセントラルに異動になったばかりなのだ。その前に出会っているわけじゃないだろうと言われて、シェンは素直に頷いた。
「ああ、あの人いつもそんな感じだろ。人事権をオヤジさんからもらってるらしいし。オレん時もいきなりだったしな」
懐かしそうに語るシェンに、セルジュはそういう人だしなと同意した。
「……しかし半年ちかくも、ナノマシンを使えない状況にいたってわけだろ。急に使えるようになったとかおかしくないか」
そんな便利なものが使えるのならば、最初から使って連絡をしてくればいい。
今までできない状況にあったのが、半年たってから連絡できるようになるなんてことはあるのだろうか。
不審な点についてセルジュはシェンに問いかけた。
「罠かもな」
シェンはあっさりとセルジュの疑念に答えた。
「……それでもいくのか?」
「でもな、罠を仕掛けるならオレじゃあないだろ。辺境での元バディなんて、経歴あさらなきゃ中々思い当たらない。一番のターゲットは夫であるアンタだろ」
ナノマシンに通信履歴があれば、そこからはじき出す可能性もある。しかし、その場合は暗号まで通信に組み込めるわけがない。
「それに、オレに暗号通信を送るのは敵の仕業じゃない。だけど罠の可能性はゼロじゃない。考えにくいが隊長が脅されて誘き寄せたってこともある」
脅されて艦隊を誘き寄せるとしても、そんなの敵には何の得もない。戦争でも仕掛けるっていうなら、別の話だが。
ありえないだろと聞き返してから、シェンはじっとセルジュをはかるように問いかける。
「おまえさんの方に通信がきたとしたら、罠かもしれないと迷うのか」
考えることなど愚問だろうと言うような表情に、確かにと同意してシェンを見返した。
「迷わないよ」
「そういうことだ」
0
あなたにおすすめの小説
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる