斬り裂くのは運命と識れ【完結編】

怜悧(サトシ)

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 マルジ宙港の三番ゲートに到着すると、最新設備を搭載している軍艦がずらっと並んでいる。
 セルジュは辺境の軍にこんな設備があるのかと眼を白黒させながら、シェンが手招く艦へと登場した。
 この艦が中でも一番設備がしっかりしているようで、中も綺麗に整えられている。
「すごいな……辺境って結構資金使えるのか」
 思わずセルジュが周りを見回しながら感嘆の声をあげると意味ありげにシェンに肩を叩かれる。
「大きな声ではいえねえんだけど、おたくの旦那が遠野にオネダリして買ってもらったの」
「あー、そういうこと」
 バックに経済界のプリンスがいるならば、相当オネダリできたんだろうなと思いながら、そこまでやっておいてよく七度もプロポーズを断ったなと面の皮の厚さに呆れてしまう。
 出会う前のことをとやかく言う気もないが。
「で、カレシ、戦闘の経験あるの」
「こっちは潜入捜査が殆どなので。戦闘まで発展することはないんですが、模擬演習はこなしてます」
 戦闘服もあまり汚れてはいないので、言わなくてもわかるかとは思ったが、彼らはここにくるまでのセルジュの動きをずっと見ていたようだ。
「これが、隊長の旦那か。もっといかついのを想像してたけど。大丈夫?あの人の夜の生活激しいから」
「おい。ちょっと、からかってやるなって」
「えー興味あるじゃない。俺ら結婚式に行ってないんだぜ」
 わいのわいのと見るからに屈強そうな男たちが、自分たちの隊長だった男の番に興味があるのか、質問攻めにされる。
 そんだけ、慕われていたんだよな。
 遠慮ない男たちの様子を見ると、まだシェンの方が大人しいたちなのだと考えを改めさせられる。
「ったく、三秒で通信切りやがったんだぜ。あの人。相当切羽詰ってるんだろうが……てめえらも、急げよ」
 漸く助け舟を出してくれたシェンへと近寄り、ずっと端末を弄っている様子を覗き込む。
「通信って」
 三秒で切られたという割には端末は起動したままで、画面の中でぴかぴかと点滅しているのは位置情報だろう。
 何かあった時の対応は、彼らは手馴れている。だから、統久は彼らに連絡をしたのだろう。
「あの人、体の中にナノマシン仕込んでるんだよ。知らなかった?」
「ああ……。知らないことばかりだ」
「で、オレの耳には受信機のナノマシンが埋まってる。一方的なのは昔からなんだけどな」
 命令するだけでこっちの言うことは聞く気ねえっていう意思表示なんだよねとぼやくシェンの耳元を、少し羨ましそうにセルジュは眺めた。
 一方的な通信は、自分の命令だけ伝えれば質問なしにでも考えて結果を出せると信じているからだと。
「まあ、オレは五年以上ずっと辺境であの隊長さんとドンパチ繰り返してたわけだし。アンタはセントラルにあの人が行ってからなんだし、そんなに経ってないだろ」
「ああ。いきなりバディにさせられた。そっから番になるまでは早かったんだけどな」
 統久は一年ちょっと前に辺境からセントラルに異動になったばかりなのだ。その前に出会っているわけじゃないだろうと言われて、シェンは素直に頷いた。
「ああ、あの人いつもそんな感じだろ。人事権をオヤジさんからもらってるらしいし。オレん時もいきなりだったしな」
 懐かしそうに語るシェンに、セルジュはそういう人だしなと同意した。
「……しかし半年ちかくも、ナノマシンを使えない状況にいたってわけだろ。急に使えるようになったとかおかしくないか」
 そんな便利なものが使えるのならば、最初から使って連絡をしてくればいい。
 今までできない状況にあったのが、半年たってから連絡できるようになるなんてことはあるのだろうか。
 不審な点についてセルジュはシェンに問いかけた。
「罠かもな」
 シェンはあっさりとセルジュの疑念に答えた。
「……それでもいくのか?」
「でもな、罠を仕掛けるならオレじゃあないだろ。辺境での元バディなんて、経歴あさらなきゃ中々思い当たらない。一番のターゲットは夫であるアンタだろ」
 ナノマシンに通信履歴があれば、そこからはじき出す可能性もある。しかし、その場合は暗号まで通信に組み込めるわけがない。
「それに、オレに暗号通信を送るのは敵の仕業じゃない。だけど罠の可能性はゼロじゃない。考えにくいが隊長が脅されて誘き寄せたってこともある」
 脅されて艦隊を誘き寄せるとしても、そんなの敵には何の得もない。戦争でも仕掛けるっていうなら、別の話だが。
 ありえないだろと聞き返してから、シェンはじっとセルジュをはかるように問いかける。
「おまえさんの方に通信がきたとしたら、罠かもしれないと迷うのか」
 考えることなど愚問だろうと言うような表情に、確かにと同意してシェンを見返した。
「迷わないよ」
「そういうことだ」
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