11 / 26
11
しおりを挟む誰もいない新居に帰ると、セルジュは何か情報がないか端末を使って確認をする。
同僚には希望を捨てなければきっと帰ってくると、根拠のない言葉で励まされてはいた。
しかし、この半年の間まったくといっていいほど情報や痕跡が見つからなかった。
彼が出かける前に少し焦っていた様子だったということと、端末のメールを確認していたと聞いて中を開いてみてみたが、焦って出かけるような情報はまったくなかった。
大体オメガの彼が、バディを伴わないで捜査に出ること自体が異常行動と言える。
いつ何時ヒートが起こるかわからないのと、クスリが効かない彼が単独で行動することはない。
番になって、他のアルファを誘発するフェロモンがでなくなったことで油断をしていたのだろうか。それでもヒートがくれば、運動能力は格段に落ちてしまうし、その場から動けなくなることもある。
そんなこと十分分かっていて、慎重にことを進めるタイプだって知っているからこそ、違和感しか感じない。
捜査に誰か同行したのか尋ねたが、誰に聞いても彼が一人で出かけたと言っていた。
虱潰しに場所を変えて調査網を広げたが、まったくあてはなく情報も途絶えていた。
焦りだけが募り、番が死亡した時に手の甲に現れるという紫斑が自分には現れないことだけが希望だった。
トゥルルルルル
呼び出し音が鳴り発信源を見るが、覚えのない地域からのもので不審に思いながらも、彼に関しての情報が手に入る可能性もあると思い手に取った。
『……よぉ、旦那さんかい』
「セルジュークです……どなたですか」
人を食ったような声音だが少し焦りを帯びた口調に、どこか聞き覚えがありセルジュはすぐに返事をした。
『結婚式で会った、シェンだ。覚えてるか?あの人行方不明なんだろ。彼から救助希望の連絡があった。これから助けにいこうと思うんだが、アンタを連れて行かないわけにもいかないだろうって』
忘れはしなかった。
彼がプロポーズまでしたと明かした相手である。
ほんの少しの対抗心はあったが、そんなことよりも、ずっと消息がしれなかった相手の情報に思わず受話器に食いついた。
「……本当ですか!あの人、今どこにいるんですか」
『ああ……。辺境寄りのヒューロ衛星だ。それにしても、なんでオレのとこにと連絡がくるんだとか怒らないんだな』
「それが彼の判断した最善なんでしょう」
普通新婚の旦那であれば、大事な人からの連絡は自分にくると信じて疑わないものだろう。
それを別の男から聞くなど、特に執着心とプライドの高いアルファでは屈辱に違いないはずなのに、彼はそのことよりも、統久が生きていることに希望と安堵の声を出したのだ。
『オレらには傍受しにくい暗号があるんでな。それでだと思うぞ』
別に先に連絡がこなくとも理由があるのだから心配するなという意図が含まれる言葉を、シェンは穏やかな口調で告げた。
思わずセルジュも身体の力を抜いて、彼への対抗心のような思いを消した。
信頼とか愛情とかは関係ない。
統久の行動は、自分の苦境を打開するための最善の方策をとった行動でしかないのである。
その行動には、自分に対しての絶大な信頼があるのだと、セルジュークは疑わなかった。
「わざわざ教えてくれるなんて、アンタはいいやつなんだな。あの人がアンタを一番頼りにしてるからとか言わないんだ」
『……まあな頼りにはされてるんじゃねえの。五年間相棒やってたわけだしな。そんだけだよ』
アンタがこの先何十年もあの人と一緒に過ごすわけだから、すぐ追い抜かされるってやつだと嘯くシェンに、思わず頬が緩む。
この人も、あの人も似たもの同士ってやつだな。
セルジュは軽く息をついて時間を確認する。
「どこに、何時に向かえばいい」
どちらにしろ、悠長に語っている時間はない。
『流石に話が早い。マルジ宙港の三番ゲートで三時間後に落ち合おう。オレらのやり方は荒っぽいからな。ちゃんとついてこいよ』
戦闘服を着てくるようにと言われて、随分着ていなかった戦闘服を引っ張り出すとすぐに着替える。
一刻の猶予もないのだ。
上司の歩弓が今週は休暇をとっていることを思い出し、統久の父親に状況を伝える内容と休暇を願い出るメールを送信した。
0
あなたにおすすめの小説
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる