斬り裂くのは運命と識れ【完結編】

怜悧(サトシ)

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「気づかれたのか」
 こちらで位置情報を探っていることがバレたのか、あるいはGPS機能がついていることがバレたのか。
 どちらにしても、この施設から探すのが困難になったということだ。
 セルジュは周りを見回して、監視カメラの位置を把握すると死角になる位置に駆け込む。シェンは彼の背後から建物への入り口を地図で確かめる。
「通信遮断できるところに運ばれたってことだろう。まあ、でも悲観しなくてもいい。途絶える直前の位置は把握している。裏口がすぐそこだ。このまま進むぞ」
 裏口があるという建物の側面を指差して、シェンはセルジュを手招いた。
「衛星を拠点にはしているが、組織としてはそこまで大きくはなさそうだけど……こんなところに本当にいるのか」
 慎重な彼が捕まるくらいだ。もっと組織的に大きいところが罠をしかけたのだと思ったが、こじんまりとした建物の雰囲気で、大それた犯罪組織の根城には見えなかった。
「犯罪組織ってのは見た目じゃねえのよ。地下に潜伏していたり、表からは目立たないものなのさ」
 裏口の扉を見つけると、シェンは端末を繋げてなにやらぽちぽちと打ち込んでいる。
 前に潜入捜査を統久とおこなった時も似たようなことをしていたなと思い当たる。
 多分、中に入るためのパスコードを探っているのだろう。
 前になんでそんなことができるのか統久に聞いたら、一時期諜報部隊に居たと言っていた。命がいくつあっても足りないと言われる隠密行動のプロフェッショナル軍団である。
 大抵は捨て駒にされるので、ベータの中でも優秀な人材が所属している。
「シェン、アンタも諜報部隊に居たことがあるのか」
「あー、ちょっとな。捨て駒にされた上に左遷されて辺境にきたけどな」
 よほど嫌な記憶だったのか、シェンは思い出したくもないというように吐き捨てる。
 そりゃ重宝されるだろう。
ずば抜けた操縦技術と隠密活動もできるエキスパートだ。
 それに比べてオレは、アルファとしてキャリア組に組み込まれて実戦ではまだ何の役にも立てそうににない。
 自信を喪失しそうになるが、シェンは表情からセルジュの気持ちを悟ったのかぽんっと肩を叩く。
「適材適所だろ。セントラルの仕事じゃ、アンタが一番頼りになりそうだって思ったから、あの人はバディにしたんだろうし。まあ、実戦しねえんじゃ、そっちの仕事はあの人には役不足ってもんだろうけどな」
「ああ。余裕すぎてつまらなそうだったかもしれない。まあ、あの人も種馬探しとかチャラいこと言ってたし」
 圧倒的にデスクワークが多い仕事で、たまの潜入捜査も停泊している船に潜り込んで申告と合致しているかの検査くらいだ。
 局の中で一番運動神経には長けているとは思うが、辺境警備隊のメンバーの体つきをみていると自信がなくなる。
「引きとめなかったのか」
「……俺の婚期を遅らせる気かと、どやされた」
「アンタが結婚してやれば良かったんじゃないか」
 プロポーズまでされたという言葉が気になっていないわけはなかった。
 考えないようにはしていたが、統久にとってこの何でもできる部下の方が好みなのだろうかなど考えてしまう。
 出会って二ヶ月でスピード番になって、それから三ヶ月で結婚式をあげたが、その後半年も行方不明になっているのだ。不安にならないわけがない。
「オレはベータだからな。……クスリも効かねえ身体じゃ、アイツが可哀相だろ……。オトコとして無力感に囚われるのは、オレも願い下げだ」
 どうしても好きな相手なら、それで相手も好きだと言ってくれるのであれば、自分だったら躊躇することはないと思う。
可哀相だとは分かっていても、多分自分の欲は抑えられない。
 セルジュは自分に置き換えて考えて、どうにもこの男の優しすぎる思考回路についていけないと思う。
「優しいな、アンタは」
「うるせえ。ほら、扉開いたぞ。オマエが旦那なんだからしっかりしろよ。ぐだぐだ言ってっとぶん殴るぞ」 
  セルジュはシェンの不器用さの中に、本当に相手を思い遣る気持ちが見えて、敵わないと思う。
 それでも……。
 彼を救わせて欲しいと願ったし、その気持ちの強さと覚悟は負けないと思う。

 だから、この状況から彼を救い出すのも、自分でありたい。
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