master

怜悧(サトシ)

文字の大きさ
5 / 27

5

しおりを挟む
その後、彼はなんとか逃げ切り盗賊の頭に青年と奪った装飾品を手渡してアジトに戻った。

どうやら俺が、天蓋で殺した男が王だったということを聞いたが、困ったことになった。
王殺しか……。 
この国での大罪であり、捕まれば極刑である。

王の死の情報はは大陸を駆け巡り、国中の軍人たちが“王殺し”を探しているらしく、街の雰囲気ものものしくなっている。

まあ、こんな乱れた国の政治をおこなっている男だから、殺されて当然だ。
俺は大罪を負ったといっても、後悔もなかった。 
王の亡き後、王弟が時期王候補となっているらしい。 
即位式は一年の喪が必要である。一年後の即位式までに、俺達の再度政府を潰すための作戦を練らなくてはならない。 
それなのに、盗賊頭のケイルや、その他の幹部たちは俺の持ってきた淫売に夢中になっているらしく、毎晩狂乱の宴を楽しんでるらしい。 
中枢にいる奴らだけしかその実態はわからないらしいが、頭たちのバラックから毎晩あられもない男の声が響いてきているのは確かのようだ。 

そんな時期じゃ…………ねえだろ。というのが、俺の気持ちだ。
下っ端の意見など通る筈もなかったが。 
ただ、俺は頭のケイルを尊敬していたし憧れてもいた。
そんな安っぽいことに夢中になって、本来の目的を忘れるような男だとは思いたくなかったのだ。 

『………おか…してくれ……』 

あの夜懇願した青年の切羽詰ったような顔が、彼の頭の中で思い浮かぶ。 

綺麗で妖艶な男だった。 
あれで女なら、俺も喜んで据え膳を食っただろうが。 

「ルイツ、かしらが呼んでるぜ」 
ごろごろと不貞腐れて、自分の布団の中でねっころがっていた彼を、一緒に入団して一番仲がいいハイムが肩を叩いて揺する。 
赤毛に無精髭を生やしたハイムのがっちりとした男前の顔を眺めて、彼は幾分気だるそうにむくりと体を起こした。

「かしら、あの男に夢中なんじゃねーの?」 
「しらねーよ。必死な顔してたからさァ、正直どうなのかと思ったけど」 
ハイムは、首を傾げて幹部たちのバラックを見やり、心配そうな表情を浮かべてルイツを見返す。
情に厚い信用できる仲間だと、ルイツはハイムのことを思っているだけに、気持ちは正直に告げる。

「アニキたち、楽しんでるって感じじゃねえンだよな。アイツ、何者だ」 
ハイムは小さい声で呟きルイツの顔を見返して、答えをさぐろうとする。 
「知るかよ」 
枕元に置いてあった剣を掴んで、ルイツは渋々と立ち上がりハイムの横を抜けて、自分のバラックを出る。 

正直、あの男がどうなろうと俺の知ったことじゃねえ。 
淫売など、触れたくもない。 

少し遠慮がちに幹部たちのバラックへ入れば、あの男の淫らなあえぎ声が隠すこともなく聞こえてくる。 
……俺も仲間に入れてやろうってか。 
戦利品の味見でもさせてやろうってか。 

何考えてンだよ。かしら。そんな、ちっせえ奴じゃあなかっただろ? 

「ルイツ、悪いな…」 
すぐにルイツの気配に気づいたケイルは、半裸の格好で、脇に剣だけぶらさげてゆっくりと近づいてくる。 
蒼白な表情で、何故か焦りが見え隠れしている。 
とても行為に没頭しているような余裕のある顔ではなかった。 

「お願いだ。彼を助けてやってくれ。俺たちじゃ……彼を救えなかった」 

周りを囲む幹部たちは、一様に同じような悲壮を漂わせた表情でルイツを見つめた。 

……助ける? 
どういう……ことだ? 

頭の口から紡がれる奇妙な言葉の意味がわからず、俺は立ち尽くし、バラックの奥で幹部の男に組み敷かれた美しい男を眺めた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...