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怜悧(サトシ)

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「どういうことだ?」 

掠れた声を、ルイツは吐き出して、周りの連中を眺めて目を見開く。
必死な幹部連中の顔を見て、この青年が彼らにとって普通の淫売ではないことは、ルイツにも判断がついた。 

ただ、一様に何かを隠したがっていた。 
今までに見たこともない表情を浮かべたケイルが、下っ端風情のルイツに頭を垂れて縋るような瞳で見つめる。 

背筋から戦慄のような震えが脳天まで突き抜けるような感覚を覚えつつ、ルイツは頭であるケイルを問いかけるように見返した。 
何……だ。この男は……。何だというのだ。 

「呪いが掛かっているんだ。主人の体液を与えられなければ欲望に狂うように。主人は王だった、王が殺されれば殺したものが主人となる」 

静かに口を開いた、首領の顔は必死なほどルイツに救いを求めていた。 

だとしても……何故? 何故、この男がかしらに関係するのだ。

「俺が、こいつの主人だっていうんですかい?待ってくださいよ、いくらアンタの頼みでも、俺、男なんか抱きたくねえですよ。大体、そんなことかしらが俺に頼むのはおかしくねえですか。大体、こいつはアンタの何なんですか?たかが、男娼のために、アンタが俺に頭をさげるなんて……」

言葉を聞いた循環、ケイルの顔が歪む。
苦痛を伴ってルイツを憎悪に近い瞳で見つめる。 

「どうしてもか?ルイツ……俺がこうして頭をさげても断るというのか」 
静かだが意思のこもった響きと気迫に、ルイツは身を強張らせる。 
多分、あれだけ美しい男であれば、誰しも抵抗も無く抱くことはできるだろう。 

けれど、頼まれたからだけで、俺は男を抱く趣味などはない。 

「だから、何故アンタが……」 
彼の問いかけを無視するように、ケイルは首を左右に振って口を開く。 
「じゃあ……お前に死んでもらうしか………ないな」 
ケイルが、一瞬の猶予も無く俺に剣を抜いて突き出したのを、慌ててすんでのところでかわしルイツは目を見開く。 

あまりの剣の鋭さに避けきれず、肩から血が滴り落ちて床を汚す。 

ルイツには、ケイルがここまでする男の正体が分からなかった。 

「……おっかしいぜ。かしら、俺よりその淫売を選ぶのか」 
声をついて出た言葉が、泣き声を孕んだようにゆがみ、彼は信じられないようにかぶりを振る。 

尊敬していた………。信頼もしていた。 

ぽたぽた肩を伝っていく血の雫が零れ落ちていく。 

くそ…… 。
また、捨てられた。 
俺は、この盗賊団から捨てられたのだ。 

脇にさしていた剣を抜いて、彼はぐっと強く握った。 

どうあがいても……死にたくなかった。 

ケイルは目を伏せて覚悟を決めたように、ルイツにおどりかかってきた。 
剣筋は美しく、ルイツも何度もかわしたが反撃する隙がなかった。 
ジリジリと少しづつバラックの奥までルイツ追い詰められていく。

大陸一の剣士ガイザック・スネイクの弟子だったケイルの剣技だ、俺は勝てる見込みなど…………まるっきりない。

何でだよ…… !!!
あんたを尊敬してたんだぜ。ケイル。 

俺は、いつか、あんたやガイザックみたいになりてえって思ってた。 
ケイル……なんで、あんな淫売のために、俺を捨てるんだ。 

涙で視界が曇る。 

バラックの奥で情事に耽っていた男の体につまずいて、剣を落とし、俺は尻餅をつき背後へと尻でずりさがる。 

壁際へとルイツを追い込んで振りかぶられる、ケイルの剣先の光。 

俺は……ここで死ぬのか… 
こんな……死に方は嫌だ!!!!
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