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ルイツは目の前でスープを啜りながら話す男を、目を丸く見開いて見返した。
話している内容に、信じられないとばかりに手にしていたスプーンを取り落としそうになった。
「せめて呪術で体変えるならよ、こー、胸にでっけえのばいんばいんっと欲しかったンだよなァ。男の体のままってのがよォ」
目の前の男は、男とは言えど綺麗な顔立ちで黙っていれば彫刻のように美しい男である。
話している内容と、目の前の男の姿にあまりにもギャップがありすぎる。
「アンタは……女の体だったら、それに耐えられるのか?」
スプーンを持ち直しながら、相手の顔を見ないようにして自分もスープを掬ってずずずっと飲み始める。
こいつの中身はただのオッサンだ。気にしねえようにしよう。
「んー、耐えられるかどうかっていうんじゃなくてよ、いや……こー、でっけえ胸があったほうがオレも愉しいし」
「ちょ、それだけか!!」
ルイツは思わずぶっと飲んでいたスープを噴出し、目の前の美丈夫をマジマジと見つめる。
いつでも状況を楽しもうとする性格なのは分かっているつもりだったが、この人は根本的に脳みその配線がずれまくっている。
だからこそ、普通の人間が絶望するような状況でも生きていられるのであろう。
目を見張るルイツを面白そうに眺め、自分の胸元を撫でてふっと笑うと、
「それによ、女の体ならオマエも抵抗なく抱けるだろ………」
少し片眉をあげて言葉を紡いでから、自分の失言に気づいたのかガイザックは綺麗な髪をぐしゃっとかき混ぜて口元を手で覆った。
主人と性交渉せずに、自我を保つことは精神的にしんどいのだろう。
ルイツはガイザックの本音に気づき、拳をちいさく握りこんだ。
「あー、今のは、なしだ」
ある意味責めているともとられない言葉に、彼は何故か後悔したような表情を浮かべる。
「…………辛いのか?」
無意識に言葉に出るほどには、参っているのかもしれない。
盗賊団を抜けて、そろそろ二ヶ月になる。馬代が稼ぎきれていないため、近隣の町を徒歩で移動している。
血や唾液は与えたが、まだ性交渉はしていない。
「……前の主人とヤったのが、半年前だ。こんなに空けたことはねえから……」
辛くないとは、ガイザックは否定はしなかった。
「体液もらってりゃ意識は保つから、気にするな。そんなにやわい精神力じゃねえよ」
同情はいらないとばかりに、ルイツの視線を振り払いパンをスープに浸してもくもくと食べ始める。
「アンタ、無理なら無理って……」
「……うるせえ……。オマエも中途半端に優しい言葉かけんな」
言い募ろうとしたルイツの言葉を、いつになく語気荒く止め暫く迷うように視線を揺らし
「悪い。…………八つ当たりだ」
ガイザックはため息のように大きく息を吐き出して、軽く顔を覆う。
「それでもオレがもし狂ったら、どっかに売り飛ばしてくれ。その前に、オマエにオレの剣技すべて叩き込んでやるから」
「ソレ……本気で言ってンのか?」
何故か突き放されたような気持ちで、ルイツは心が痛む。 それと同時に憤りが湧き上がる。
お前の助けなど要らないと拒否されたような、隙間風が通り抜けるような気持ちだ。
ルイツは眉を寄せて、ぐっと握り締めた拳をがつっと机に叩き込んだ。
話している内容に、信じられないとばかりに手にしていたスプーンを取り落としそうになった。
「せめて呪術で体変えるならよ、こー、胸にでっけえのばいんばいんっと欲しかったンだよなァ。男の体のままってのがよォ」
目の前の男は、男とは言えど綺麗な顔立ちで黙っていれば彫刻のように美しい男である。
話している内容と、目の前の男の姿にあまりにもギャップがありすぎる。
「アンタは……女の体だったら、それに耐えられるのか?」
スプーンを持ち直しながら、相手の顔を見ないようにして自分もスープを掬ってずずずっと飲み始める。
こいつの中身はただのオッサンだ。気にしねえようにしよう。
「んー、耐えられるかどうかっていうんじゃなくてよ、いや……こー、でっけえ胸があったほうがオレも愉しいし」
「ちょ、それだけか!!」
ルイツは思わずぶっと飲んでいたスープを噴出し、目の前の美丈夫をマジマジと見つめる。
いつでも状況を楽しもうとする性格なのは分かっているつもりだったが、この人は根本的に脳みその配線がずれまくっている。
だからこそ、普通の人間が絶望するような状況でも生きていられるのであろう。
目を見張るルイツを面白そうに眺め、自分の胸元を撫でてふっと笑うと、
「それによ、女の体ならオマエも抵抗なく抱けるだろ………」
少し片眉をあげて言葉を紡いでから、自分の失言に気づいたのかガイザックは綺麗な髪をぐしゃっとかき混ぜて口元を手で覆った。
主人と性交渉せずに、自我を保つことは精神的にしんどいのだろう。
ルイツはガイザックの本音に気づき、拳をちいさく握りこんだ。
「あー、今のは、なしだ」
ある意味責めているともとられない言葉に、彼は何故か後悔したような表情を浮かべる。
「…………辛いのか?」
無意識に言葉に出るほどには、参っているのかもしれない。
盗賊団を抜けて、そろそろ二ヶ月になる。馬代が稼ぎきれていないため、近隣の町を徒歩で移動している。
血や唾液は与えたが、まだ性交渉はしていない。
「……前の主人とヤったのが、半年前だ。こんなに空けたことはねえから……」
辛くないとは、ガイザックは否定はしなかった。
「体液もらってりゃ意識は保つから、気にするな。そんなにやわい精神力じゃねえよ」
同情はいらないとばかりに、ルイツの視線を振り払いパンをスープに浸してもくもくと食べ始める。
「アンタ、無理なら無理って……」
「……うるせえ……。オマエも中途半端に優しい言葉かけんな」
言い募ろうとしたルイツの言葉を、いつになく語気荒く止め暫く迷うように視線を揺らし
「悪い。…………八つ当たりだ」
ガイザックはため息のように大きく息を吐き出して、軽く顔を覆う。
「それでもオレがもし狂ったら、どっかに売り飛ばしてくれ。その前に、オマエにオレの剣技すべて叩き込んでやるから」
「ソレ……本気で言ってンのか?」
何故か突き放されたような気持ちで、ルイツは心が痛む。 それと同時に憤りが湧き上がる。
お前の助けなど要らないと拒否されたような、隙間風が通り抜けるような気持ちだ。
ルイツは眉を寄せて、ぐっと握り締めた拳をがつっと机に叩き込んだ。
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