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Mission1 バベルの崩壊

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チェリーは拳を固めて、隙をうかがおうとするが
相手はかなりの腕の持ち主たちだらけで全く動き出せない。

「そこまでにしとかないかなァ?バルソー·ハディさん」
人を小馬鹿にしたような、良く通るテナーの声がフロアに響いた。
それと同時に、圧力を持った風に似たモノがフロアをすり抜け、男たちをなぎ倒していく。

「何者だっ!貴様」

ふらふらと身を起こしながら、ハディが正体不明の人影に向かって問いかける。

「エド様と呼んでくれても良くってよ」
扉に肩をもたれかけて、黒髪の男はにやりと笑い余裕の表情でハディを見下ろしていた。
チェリーは半泣きになりながら、エドのそばに駆け寄っていく。
「エド様ぁ!!うわーん、こわかったよう」
エドは、彼女のピンクの頭をぽむぽむと叩いて、良く頑張ったねとねぎらうと、肩をくるくると回してハディを見下ろす。
あまりの登場の仕方と、片手一本で起こした妙な技に圧倒されて、バディは声を震わせた。
「何が目的だ」
「目的はたくさんあるけどね.....」
ひょいっと指先を動かして、カートの頭を踏んずけたままのハディを風圧で払い飛ばす。
「その前に、俺様の可愛いペットちゃんの頭から、汚い脚をどけてくれる?そいつで遊んでいいのは、俺様だけだからね」
ハディは倒れたまま、逃げ出そうと尻で後退りをするが、エドは近寄りその腕をぐいとひねりあげる。
「まだ、お話は終わってないからね。ちゃんと聞いてね」
エドは胸元から1枚の紙切れを取り出してハディに突きつけた。
「星間特捜警察からの指名手配書。うまく隠れたつもりで安心してたところなのにごめんね。ブラックマーケットなら、スペースポリスは入り込めないからね。よく考えたけど、俺たちみたいなハンターはそこが狙い目で活躍できるわけだからね」
「貴様ら!ハンターか」
その言葉にハディは顔を青ざめさせて、咄嗟に懐から光線銃を取り出して倒れたままのカートに向けた。
「おっと、だからソイツで遊んでいいのは、俺様だけだと言っている」
今度は容赦なく一閃の圧力の風がハディを吹き飛ばして壁にぐしゃりっと音を響かせて叩きつけられる。
ぐふっと血反吐を吐いてエドを見上げたハディの顔が恐怖で引き攣った。

「ば、けもの」
そのまま意識を失ったハディを見下ろすと、はああと溜息をついて首を横に振る。
「この容姿端麗な俺様に向かってバケモノとは、かなり美意識が足りない男だな」
エドは眉をしかめながら、優雅な足取りで倒れたままのカートを抱き起こして荷物のように背負う。
「他愛のない奴らにヤられてんじゃないよ。ひどい格好だし」
「.......エド、俺のミス、だ」
「そうだね、それ以外のなんでもないよね」
ばっさりと切り捨て、弱々しくガラガラの声で謝罪するカートに鼻先で笑うと、そのまま獲物のハディの腕を掴んで引きずり出した。
チェリーはカートだけが悪い訳では無いと思い思わず口をはさんだ。
「エド様、私がもとはといえば……」
「チェリー。君は悪くないでしょ。君が俺様の作戦を
崩すわけないのは、分かっているからね。さてと、こ
の荷物をひきづってピヨコ号に帰ろうか」
エドはチェリーの言葉を遮って、話題を完結させると、西向きの窓のほうへと歩いていく。
「え、エド様、でも……。どこから」
正規の入口からは帰れるはずはないし、強行突破する術もない。
「ここからだよ」
エドが窓のカーテン開くと、見慣れたイエローゴールドに輝く悪趣味な機体の一部が現れた。
メカニックの独断と偏見だけで作られた小型宇宙船ピヨコ号は、ゆっくりと窓にせり寄ってきて、搭乗口をピッタリに寄せてくる。
「この階は簡易大気圏外だからね、窓を開けると圧力でぶっとんじゃうよね。レーザーカットして搭乗口にくっつけるけど、そんなに長いこともたないからね」
相変わらず恐ろしいことを言ってのけるエドを、畏怖を込めて見返すが、チェリーすぐにキラキラと憧れの眼差しに変えて見返す。
素早く乗り移る試練ってことね。
頑張らなくっちゃ。

チェリーは息を吸い込んで、迎えに現れたパイロットのリョクが窓をカットし終わる一瞬に備えて体勢を整えた。


壮絶な破裂音。
飛び散るグラスの破片が一瞬で塵と
化す。
美しく宇宙航海上に聳えていたネオバベルの最上階は、原因不明の事故により吹き飛んだ。

死者十二名。
その事故の大きさの割に、被害が少なかったのは、
その直前に危険を察知した少年の誘導のお陰だと言う。

若干十八歳のその少年の手際は素晴らしく、将来を
渴望されているだけあると、世間では誉めそやされた。

七傑家の筆頭であるレイフスの次期当主、シューラ·レイフスは、その頭角を現したと。

かくて、真実は闇に葬られたのであった。

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