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ひととおり通信を終えると、シェンはコロニーへの入口を探す。仮にも囚人を収容する施設である。
中への突破口は無に等しい。
迷ってる時間はないって考えた方がいいな。
生体反応はまだあるが、無事である保証はない。
援軍を呼ぶには呼んだが、上には秘密裏にしてあるため、個人的に仲の良い奴らだけである。
非番だとか文句ばかり言われたが、まあ、埋め合わせは約束したし、来てはくれるだろう。
裏でやっていることを知らない警備隊たちが相手である。同じ仲間だし、傷つけたくはないからな。
強行突破はなるだけ避けたい。
【身元不明機、乗組員確認せよ】
無線通信が入り、型通りの身元確認が入る。
「こちら要人警護中、エネルギーチャージにコロニーに寄港したい。FIF83962 シェン·リァウォーカー」
IDをリーダーに載せて通信先へとデータ転送をすると、着陸用通行路のシャッター装置が開く。
要人警護と言ったが、遠野でも無理に乗せてくればよかったかと改めて思う。
想定していて良かった確認である。
【第73部隊、リァウォーカー警視。寄港許可します】
コロニーへと着陸すると、エネルギータンクへと機体を寄せる。
基本的には非接触でのチャージは可能であるが、タンクに近い方が時間短縮できる。
シェンは機体を降りると、警備員に敬礼をしてから、収容所の様子を探る。
難攻不落ってイメージだな。脱獄犯を出さないような厳重な警備だ。
警備隊のメンツの顔つきも、かなり精鋭を集めているように思える。
「悪いが、用も足したいのだが。トイレはどこだ?」
「警備隊用ので良ければ、突き当たり右にある。どこから来たんだい」
「ケンタウルスの惑星群のBbから来たんだ。外の際だから、ホントに何もなくてね」
「辺境とは。アンタ警視だろ?」
「上と折り合い悪くてね」
ファイティングポーズを見せるシェンに、相手は笑ってほどほどになと手を振る。
辺境でも太陽系外ともなると、左遷と言っていい地域で、警視ランクの者は殆どいない。
まあ、中隊長はその上なんだろうけどな。
トイレに向かうと、中に入って用を足している警備員に軽く挨拶をして、頭を下げた瞬間、シェンは男の身体を払うようにして床に叩きつけて昏倒させる。
「追い剥ぎみたいな真似は好きじゃないんだけどね。」
制服の上着とズボンを脱がせると、ささっと着替えて男の胸元からIDを奪う。
「ごめんね。あとで、埋め合わせはするからさ」
お詫びのつもりか、その胸元に飴を突っ込むと、ずるずると男を個室に押し込み、何食わぬ顔でトイレを出ると入り口へと向かって歩き出した。
IDを翳して中に入ると、普通の収容所とは大差なく厳重過ぎる警備ではない。
ナノマシンの端末で位置確認をすると、収容されている場所も、通常の房のようで奪還するのもむずかしくはなさそうだ。
何食わぬ顔をしながら向かって歩いてくる警備兵に軽く頭をさげて、位置を探りながら歩く。
カチカチと光の点滅が示す場所が爆弾の位置のようだ。爆破する順番を間違えたら大惨事である。
他の房にいる囚人は全員助け出さなくてはいけない。
そのための援軍は呼んだが、中に入るのは至難の技だろう。
まあ、ヤツらのことだからテキトー言ってガンガン攻め込んでくるだろうが。
辺境の男たちは、基本的に短気である。
待ってろなんて、指示きかないしな。いう気もない。
奥からいくか。
爆弾が設置されている一番奥にターゲットを当てると嵌めていた指輪のボタンを押す。
ぐわんという激しい音が響くと同時に、シェンは駆け出して房の横にある非常用のボタンを指でぶちあけて、ぐいと押す。
【館内放送、館内放送、執務室で爆発、火事発生。館内の者は外に退避せよ】
ウィーンウィーンと激しい警告音が響く。
向かうのは制御室だな。
電気が通っていれば、火事を食い止めるのも容易だ。
混乱しまくってもらわないと、仕事がしづらい。
執務室の脇の廊下の爆弾を再び爆破させてから、シェンは地下に駆け下りる。
「おい、非常ボタンが押されたぞ。早く外に出ろ」
外に向かおうとする兵士に呼び止められ、シェンは横に首を振る。
「自分、予備電源を入れるように、監査から言われました」
すらっと嘘をでまかせで平然と告げると、男はそうかと呟いて天井を見上げる。
「爆発の原因は不明らしいからな。コンソールルームは危険だ。気をつけていけ」
敬礼をして階段を駆け上がっていく背中を見送り、シェンは制御室へと入ると、予備電源に切り替えてから主電源の基盤を銃で撃ち抜く。
予備電源はもって10分だろう。
10分で中隊長を確保して、囚人を外に出して全部爆破させる。
危険な賭けは元よりだ。
ギャンブルは好きじゃないんだけどなあ。
シェンは外に出るとエレベーターに乗り込み、3階の生体反応がある部屋へと向かう。
爆破の音は聞こえているはずなのに、生体反応に動きはまるでない。
生きてはいるが、動けないか。
または、記憶が消されて逃げることも思いつかないか。
部屋の房は非常ボタンで開いていて、中に入るとふわりとフェロモンの濃い香りがしてシェンは自分の鼻を抑えた。
「だ、れ」
問いかける声は、統久の声で。
だけど、その声はまったく聞いたことがないような不安でいっぱいで心細く震えていた。
中への突破口は無に等しい。
迷ってる時間はないって考えた方がいいな。
生体反応はまだあるが、無事である保証はない。
援軍を呼ぶには呼んだが、上には秘密裏にしてあるため、個人的に仲の良い奴らだけである。
非番だとか文句ばかり言われたが、まあ、埋め合わせは約束したし、来てはくれるだろう。
裏でやっていることを知らない警備隊たちが相手である。同じ仲間だし、傷つけたくはないからな。
強行突破はなるだけ避けたい。
【身元不明機、乗組員確認せよ】
無線通信が入り、型通りの身元確認が入る。
「こちら要人警護中、エネルギーチャージにコロニーに寄港したい。FIF83962 シェン·リァウォーカー」
IDをリーダーに載せて通信先へとデータ転送をすると、着陸用通行路のシャッター装置が開く。
要人警護と言ったが、遠野でも無理に乗せてくればよかったかと改めて思う。
想定していて良かった確認である。
【第73部隊、リァウォーカー警視。寄港許可します】
コロニーへと着陸すると、エネルギータンクへと機体を寄せる。
基本的には非接触でのチャージは可能であるが、タンクに近い方が時間短縮できる。
シェンは機体を降りると、警備員に敬礼をしてから、収容所の様子を探る。
難攻不落ってイメージだな。脱獄犯を出さないような厳重な警備だ。
警備隊のメンツの顔つきも、かなり精鋭を集めているように思える。
「悪いが、用も足したいのだが。トイレはどこだ?」
「警備隊用ので良ければ、突き当たり右にある。どこから来たんだい」
「ケンタウルスの惑星群のBbから来たんだ。外の際だから、ホントに何もなくてね」
「辺境とは。アンタ警視だろ?」
「上と折り合い悪くてね」
ファイティングポーズを見せるシェンに、相手は笑ってほどほどになと手を振る。
辺境でも太陽系外ともなると、左遷と言っていい地域で、警視ランクの者は殆どいない。
まあ、中隊長はその上なんだろうけどな。
トイレに向かうと、中に入って用を足している警備員に軽く挨拶をして、頭を下げた瞬間、シェンは男の身体を払うようにして床に叩きつけて昏倒させる。
「追い剥ぎみたいな真似は好きじゃないんだけどね。」
制服の上着とズボンを脱がせると、ささっと着替えて男の胸元からIDを奪う。
「ごめんね。あとで、埋め合わせはするからさ」
お詫びのつもりか、その胸元に飴を突っ込むと、ずるずると男を個室に押し込み、何食わぬ顔でトイレを出ると入り口へと向かって歩き出した。
IDを翳して中に入ると、普通の収容所とは大差なく厳重過ぎる警備ではない。
ナノマシンの端末で位置確認をすると、収容されている場所も、通常の房のようで奪還するのもむずかしくはなさそうだ。
何食わぬ顔をしながら向かって歩いてくる警備兵に軽く頭をさげて、位置を探りながら歩く。
カチカチと光の点滅が示す場所が爆弾の位置のようだ。爆破する順番を間違えたら大惨事である。
他の房にいる囚人は全員助け出さなくてはいけない。
そのための援軍は呼んだが、中に入るのは至難の技だろう。
まあ、ヤツらのことだからテキトー言ってガンガン攻め込んでくるだろうが。
辺境の男たちは、基本的に短気である。
待ってろなんて、指示きかないしな。いう気もない。
奥からいくか。
爆弾が設置されている一番奥にターゲットを当てると嵌めていた指輪のボタンを押す。
ぐわんという激しい音が響くと同時に、シェンは駆け出して房の横にある非常用のボタンを指でぶちあけて、ぐいと押す。
【館内放送、館内放送、執務室で爆発、火事発生。館内の者は外に退避せよ】
ウィーンウィーンと激しい警告音が響く。
向かうのは制御室だな。
電気が通っていれば、火事を食い止めるのも容易だ。
混乱しまくってもらわないと、仕事がしづらい。
執務室の脇の廊下の爆弾を再び爆破させてから、シェンは地下に駆け下りる。
「おい、非常ボタンが押されたぞ。早く外に出ろ」
外に向かおうとする兵士に呼び止められ、シェンは横に首を振る。
「自分、予備電源を入れるように、監査から言われました」
すらっと嘘をでまかせで平然と告げると、男はそうかと呟いて天井を見上げる。
「爆発の原因は不明らしいからな。コンソールルームは危険だ。気をつけていけ」
敬礼をして階段を駆け上がっていく背中を見送り、シェンは制御室へと入ると、予備電源に切り替えてから主電源の基盤を銃で撃ち抜く。
予備電源はもって10分だろう。
10分で中隊長を確保して、囚人を外に出して全部爆破させる。
危険な賭けは元よりだ。
ギャンブルは好きじゃないんだけどなあ。
シェンは外に出るとエレベーターに乗り込み、3階の生体反応がある部屋へと向かう。
爆破の音は聞こえているはずなのに、生体反応に動きはまるでない。
生きてはいるが、動けないか。
または、記憶が消されて逃げることも思いつかないか。
部屋の房は非常ボタンで開いていて、中に入るとふわりとフェロモンの濃い香りがしてシェンは自分の鼻を抑えた。
「だ、れ」
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だけど、その声はまったく聞いたことがないような不安でいっぱいで心細く震えていた。
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