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俺を強く見上げる目は、脅されているようなものではなく、むしろ隙があればこちらが食われてしまうような獰猛な鋭さを秘めている。
勘が告げているのは、こいつに関わったらいけないというなにが本能的な危機感。
「どういうことです?まあ、金品を請求されても困りますけど…………僕お金ないんで」
ひどく面倒そうな表情を浮かべているが、メガネの奥の瞳は普通の優等生には見えないどこか違和感とチグハグさがある。
俺には確信がもてる。
こいつのもっている優等生な外面はまったくの偽物だ。
多分アニキと話していた時に見せた表情とかが、素なのだろう。
優等生を演じているのはこの学校でだけの話だろうけど、息がつまらないのだろうか。
「つーか、髪の色ごときで毎朝しつこく検査されるのもしんどいんだよ。オマエが俺のツレになれば、検査する必要ねえだろ」
言った瞬間に、少し呆れた表情で見上げられてふうっと大きく溜息をつかれる。
「どういう理屈ですか、僕に貴方の格好を目こぼししろと言いたいのですか。僕は別に兄のことも隠すつもりもないですし。中学の時はみんな知ってましたし、噂なんかそのうち広まります。」
たかだか、高校の風紀委員だろう。
学校で暴れるわけでもないので、先生たちもとりたてて俺の格好を取り上げたりはしない。注意して暴れたりされた方がこまるのだろう。
大切なのは、進学率だ。
ここに来ている奴らもみんなそうだ。
なのに、なんで目くじらたててこいつは俺に構うんだろう。
ふと疑問がわく。
「オマエさあ、そんなにマジに風紀とさやってて楽しい?」
「任されたことは、キッチリやらないと気が済まない性格なので。でもまあ、うちの学校で校則破っているのは瀬嵐先輩しかいませんけど」
そりゃそうだろうけどね。
そんなことを言って毎日律儀に絡まれる身にもなれと言いたい。
「でも、高校3年間平穏に過ごしていきたくて、この高校選んだんじゃねえの。だったら俺のツレになっとけばいいんじゃねえ?」
一瞬目を瞠ると、ふうっと息を吐き出し肩を竦ませてみせ、頭ひとつ低い身長の後輩は俺の顔を馬鹿にした表情で見あげた。
「そんなの…………あなたに僕の周りをうろつかれたら一緒ですよ。兄のことは、不良たちには有名ですけど、この学校の生徒は知りません。それをいうと、あなたは逆でこの高校じゃ知らない人はいませんよ」
迷惑だと言外にはっきりきっぱりお断りされて、俺は何故かガックリする。
そんなに、がっかりするくらいツレが欲しかったのかな。
俺は。
「確かにな」
気持ちから声も沈んだまま、髪の毛をかきあげて掌で目元を覆う。
切り替えねえとな。
この高校で、俺とかかわりになりたい奴なんているわけがないのだ。
考えたらすぐにわかる話だ。
指先の隙間から見える長谷川の表情が、一瞬緩んだように思えた。
「納得してどうするんですか。僕を脅したいんじゃないの。あなたは」
呆れたような表情を浮かべたまま、俺を覗き込む目からは鋭さが消えている。
「そうなんだけど、どーしたらオマエを脅せるのかわっかんねえし。別に…………脅したいわけでもねーし」
俺自身、自分がどうしたいかなんて、全くもってわからない。
この高校にきてから、誰にも構われたことがなかった。
たまたま、風紀の仕事で注意してただけなのかもしれない。いや、それだけでしかない。
それなのに、うっとおしいと思いながら俺は確かに嬉しいと感じていたのかもしれない。
「一体何がしたいんです」
声が今まで聞いた中で1番優しく聞こえた。
「だから……自分でもわかんねェっての……そんなのは」
思わず声を荒げた俺に、長谷川は薄い口元を緩めて笑った。
「仕方ないですね。そんなにお友達が欲しいなら、脅しじゃなくてなってあげますよ。」
勘が告げているのは、こいつに関わったらいけないというなにが本能的な危機感。
「どういうことです?まあ、金品を請求されても困りますけど…………僕お金ないんで」
ひどく面倒そうな表情を浮かべているが、メガネの奥の瞳は普通の優等生には見えないどこか違和感とチグハグさがある。
俺には確信がもてる。
こいつのもっている優等生な外面はまったくの偽物だ。
多分アニキと話していた時に見せた表情とかが、素なのだろう。
優等生を演じているのはこの学校でだけの話だろうけど、息がつまらないのだろうか。
「つーか、髪の色ごときで毎朝しつこく検査されるのもしんどいんだよ。オマエが俺のツレになれば、検査する必要ねえだろ」
言った瞬間に、少し呆れた表情で見上げられてふうっと大きく溜息をつかれる。
「どういう理屈ですか、僕に貴方の格好を目こぼししろと言いたいのですか。僕は別に兄のことも隠すつもりもないですし。中学の時はみんな知ってましたし、噂なんかそのうち広まります。」
たかだか、高校の風紀委員だろう。
学校で暴れるわけでもないので、先生たちもとりたてて俺の格好を取り上げたりはしない。注意して暴れたりされた方がこまるのだろう。
大切なのは、進学率だ。
ここに来ている奴らもみんなそうだ。
なのに、なんで目くじらたててこいつは俺に構うんだろう。
ふと疑問がわく。
「オマエさあ、そんなにマジに風紀とさやってて楽しい?」
「任されたことは、キッチリやらないと気が済まない性格なので。でもまあ、うちの学校で校則破っているのは瀬嵐先輩しかいませんけど」
そりゃそうだろうけどね。
そんなことを言って毎日律儀に絡まれる身にもなれと言いたい。
「でも、高校3年間平穏に過ごしていきたくて、この高校選んだんじゃねえの。だったら俺のツレになっとけばいいんじゃねえ?」
一瞬目を瞠ると、ふうっと息を吐き出し肩を竦ませてみせ、頭ひとつ低い身長の後輩は俺の顔を馬鹿にした表情で見あげた。
「そんなの…………あなたに僕の周りをうろつかれたら一緒ですよ。兄のことは、不良たちには有名ですけど、この学校の生徒は知りません。それをいうと、あなたは逆でこの高校じゃ知らない人はいませんよ」
迷惑だと言外にはっきりきっぱりお断りされて、俺は何故かガックリする。
そんなに、がっかりするくらいツレが欲しかったのかな。
俺は。
「確かにな」
気持ちから声も沈んだまま、髪の毛をかきあげて掌で目元を覆う。
切り替えねえとな。
この高校で、俺とかかわりになりたい奴なんているわけがないのだ。
考えたらすぐにわかる話だ。
指先の隙間から見える長谷川の表情が、一瞬緩んだように思えた。
「納得してどうするんですか。僕を脅したいんじゃないの。あなたは」
呆れたような表情を浮かべたまま、俺を覗き込む目からは鋭さが消えている。
「そうなんだけど、どーしたらオマエを脅せるのかわっかんねえし。別に…………脅したいわけでもねーし」
俺自身、自分がどうしたいかなんて、全くもってわからない。
この高校にきてから、誰にも構われたことがなかった。
たまたま、風紀の仕事で注意してただけなのかもしれない。いや、それだけでしかない。
それなのに、うっとおしいと思いながら俺は確かに嬉しいと感じていたのかもしれない。
「一体何がしたいんです」
声が今まで聞いた中で1番優しく聞こえた。
「だから……自分でもわかんねェっての……そんなのは」
思わず声を荒げた俺に、長谷川は薄い口元を緩めて笑った。
「仕方ないですね。そんなにお友達が欲しいなら、脅しじゃなくてなってあげますよ。」
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