花に嵐

怜悧(サトシ)

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19 side Hasegawa

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思ったよりも簡単に先輩はオレを受け入れてくれる決心をしてくれた。
正直、もっと考え込むのかと思ったが、思っていた以上に短気だったのと、オレのことを好きなんだなと改めて思う。

甘く包むように唇を口に含んで食み、舌先でなぞるように辿ると鼻先に熱い息がかかる。
少し息苦しそうに開いた唇の隙間に舌を潜り込ませてリップ音をたてて歯茎を舐める。
背中に回した腕の中に収まった先輩の筋肉質な体が僅かに震える。
勝気そうな目許が細められ、差し込んだ舌先がもっていかれるくらい強く吸われる。

背筋にくるような刺激に流されまいと、オレは拳を握り込んだ。

さらっと流れる金色の髪が眩しくて、回していた腕を這いあげてそっとうなじから上に指を絡めて撫であげる。
緩慢になる舌先の動きにもう片方の掌でしっかりとした胸筋を撫でる。
咥内が熱い唾液で溢れ、唇の端から飲み込めない唾液を零す。
股間にダイレクトにくるような表情に、堪らず唇を外し、耳の下あたりに唇を押し当てキツく吸い上げ所有の証を遺す。

「…………なあ……最後までヤんのか…………」
唾を飲み込む音と、なにか恐れを孕んだ掠れた先輩の声が響く。
掌から伝わる早い鼓動としっとりと濡れた膚に、オレは欲情しきっていて先輩の太腿に自分の堅く猛った欲を押し付けた。
先輩はギュッと瞼を固くつむって、なにかを堪えるかのように、オレの腕を強く握った。
「……どうしました…………」
様子がおかしい。
胸を叩く鼓動の速さが尋常じゃない。
ハッハッっと聞こえる呼吸は、感じているからではない。
明らかにこれは、過呼吸を起こしている。
「先輩… …だいじょうぶ…………ですよ」
背中を宥めるように撫でるが、焦点が合わないように開いた目の中に映るのは、強すぎる恐怖だ。
「…………ゴメ…ン…わすれてえのに……ゴメン」
ブルブルとまるでおののいたように震える身体に、オレはそれ以上に何もできるわけがない。
オレに助けを乞うように、指の痕が残るほど腕を強く握る。

「……カッコ…わり……」
曇った眼からぱたぱたと涙が胸元へと滴り落ちていく。
堪らなくなってオレは、先輩のカラダをギュッと抱き寄せる。
「きっと、忘れられますよ。だいじょうぶですよ」
「…………優しいよな、ホント。…………西覇…って呼んでイイか」
オレの胸元にカラダを預けて、恥ずかしそうにオレの名前を呼ぶ先輩が心から愛しいと思う。
「 勿論。僕も成春さんって呼びますね」
「さん、は要らねえ」
そっと金色の髪を撫でて、つむじに唇を押し当てる。
満たされた気持ちになり、まだ震えている背中をゆっくりと撫でる。

突然ガチャっと部屋の扉が開きオレは思わずギクっとして振り返る。
オレ達がまっぱで抱き合っているのにも、別に驚いた様子もなく、遠慮もなく入ってきたのは、アニキのもうひとりの親友の野口誠士さんだった。

誠士さんは、コンビニのビニール袋をどさっとテーブルの上に置いて、部屋の端にある冷蔵庫を開けて勝手にコーラを飲み始める。

あまりのことに、驚きを通り越して呆然としている先輩に毛布をくるむように掛けて、
「誠士さん、一体全体何しにきたんです?」
「あー、慣れてるから。イチャイチャしてて、イイよ、好きにヤッてて。でも、セイハの焦った顔とか初めてかも。うん、いいもの見れた」
空手の国体選手なだけあって、爽やかなスポーツマンに見えるが、やっぱりアニキの友達だけに、少しおかしい気がする。
「アニキとオレは違いますから!好きにできません!」
「あー、東流がさ、朝飯セイハにもってけって言うから、俺はオツカイしにきたの」
面白がるように言う様子に、深く溜め息をつく。
まあ、これくらい図太いとかじゃなきゃ、あのアニキの親友なんてできるわけがないのは確かだ。
「それにしても兄弟揃って、男とデキちゃうなんて、長谷川家は大丈夫?」
ざらざらとコンビニ買い占めてきたんかという量の食い物を並べて、少しだけ呆れたように言う様子にオレは苦笑を浮かべる。
「アニキは今更でしょう。てか、量多くないですか」
「そうか?東流と康史はこの倍は食うぜ。あいつらの胃袋はブラックホールだ。あー、ビックリさせちまってごめんね。俺は野口誠士、セイハのアニキのダチだ」
興味をもったように、毛布の中の先輩の方に歩み寄り、誠士さんは優秀すぎるコミュ能力を発揮する。
「あ………俺は瀬嵐成春です。…メシありがとうッす。…………腹減ってました」
先輩はさすがに顔を恥ずかしそうに紅潮させて、素直に礼を言う。
「セイハ、コレ可愛いね。ねえねえ、オニギリあげてみていい?」
小動物に餌をあげるノリで、誠士さんは、オニギリを剥いて先輩に差し出し、ニコッと笑う。
つか、この人危ない。
先輩は警戒もなくオニギリを受け取ってぱくっと口にする。
「誠士さんっ!」
「からかうと面白いな。大丈夫、とらねえから。俺には、ミカちゃんという可愛い彼女がいるしね」
もう一つオニギリを剥いて俺に差し出す。
アニキと変わらない身長と格闘技で鍛えられた身体は、それだけで威圧感がある。
オレはむくれたようにオニギリを口にする。
味はシーチキンだ。
「ずっと気になってたんだけど、ココってオマエの家じゃないのか」
「僕の家にはエアコンないですよ。ここは、アニキの彼氏の部屋です」
もぐもぐとメシを食べる様子を眺めながら答える。
「へえ……オマエのアニキって、北高のハセガワだよな。彼氏……って」
驚いたような表情を浮かべる先輩の顔についたご飯粒をオレは摘まんで口に含む。
「だから、あんまり気を使わなくても大丈夫」
「康史の部屋は、俺も自由に使ってるし。基本あいつら部屋でセックスしかしてねえし。色々オモチャとかいっぱいココに入ってるぜ」
誠士さんは勝手知ったる様子でベッドヘッドの小物入れを開いて、どっさりと入っている大人のおもちゃを見せびらかす。
てか、アニキこんなの使われてるのか。
引きそうになるのを辛うじて留める。
「あいつらサルだからな。さて、俺は帰るけど、康史が車で送るから待っとけって、伝言。予備校が15時までらしいからさ」
「ヤッちゃん進学するんだ」
アニキは就職するといってたから、ヤっちゃんも就職するものだと思っていた。
「康史はセイハみたいに勉強は得意じゃないだろうけど頭はイイからね。俺と康史は、東流に合わせて高校選んだわけだから」
「本当に仲良いよね、三人とも」
「東流が、天然だからね。俺らが一緒にいねえと心配だし。じゃあ、食い切れなかったら冷蔵庫入れといてね。またね、セイハ」

人好きのする笑顔を振りまいて誠士さんは部屋を出て行った。




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