花に嵐

怜悧(サトシ)

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31 side hasegawa

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杉村の話の通り、副会長は東高のやつらと懇意にしていることは確かだった。
今日、オレの教室にやってきた空手部のやつらといい、成春のとこで暴れていた親衛隊といい、副会長は本当にとんでもなく厄介な人物そうだ。

成春は果敢にも一緒に戦おうとはしてくれていたけど、指先まで震えていて、多分、あの日のことを思い出しかけていたのは明らかだった。
これ以上こんな顔をさせられないと、手刀で落とした体を抱えて近くの路地の隅へと降ろすとコートを脱ぎ、眼鏡を取って成春のコートのポケットへと入れた。

そして、路地から出ると目の前で様子を伺っていた男に近寄った。

「僕に用事ですか」

「俺たちの雇い主が、オマエをボロボロにすることをお望みなんでね」

間合いを詰めながら寄って来るのは、15人くらいか。
流石のオレもこの人数相手に自信なんてまるでない。
杉村から聞いた話から対策はしようと思っていたが、今日の今日とか手回し早すぎるだろ。
どんだけ用意周到なんだ。あの副会長さん。

「一高の1人相手に何人集めてきたんですか………」
「楠木君が、結構強いというんで、念のためかなァ」
オレの顎をとらえて、ぐっと突き出してくる腕をオレは捕らえて、一気に脚を入れ替え投げ飛ばす。

「ッ!!!」
「!!貴様ァ、優等生と思って、手を抜いて優しくしてみりゃあ」
襲い掛かってきた単純な男の体を払い、当身で転がし次にきた男の頭に腕をかけ、ドロップキックを鳩尾へと叩き込む。
「ええ。1年では首席をキープしている優等生ですので、優しく丁重に扱ってくださいね」
起き上がりそうになっていた男のわき腹に蹴りを入れて、ナイフを手にしてきたモヒカンの男の腕を捻り上げ、手にしていたナイフを奪い右肩に刺して返す。

背後から迫る気配に、軽くジャンプをして相手の背中に回し蹴りを決める。
たった3、4人倒しただけなのに、既にオレの息はあがってきている。
なにしろ、やつらも喧嘩が商売のようなもんだから、繰り出してくる攻撃をかわしながら反撃に転じるのは苦難である。

「ぶっころされてえのか。この!!真面目くんが!!」

あんまり悪口にも聞こえないが、罵倒しているつもりなのだろうか。
「マジメに生きてるので、僕は真面目で結構ですよ」
後ろから制服を引っ張る男の顎に頭突きを食らわせる。
同時に腹へと拳を繰り出した男の攻撃をかわすが、もうひとりの男が、オレの背後からわき腹へとナイフを突き刺す。
ぐちっと嫌な音が聞こえ、生ぬるい感触がオレの膚を伝っていく。
手で触れると真っ赤に染まっていく。

殺される?
……ぶち殺す……とか…………くそ。

カッと目の前が真っ赤になり、痛みにブチっと理性がふっ飛びオレは拳を振り上げ、ガツガツと目の前の男を振り上げた拳で叩き潰す。

「……痛ェんだけどぉおおおお!!!!」

なんかよくわからない棒をオレに向かって叩き込んできた男の棒を掴んで、めしゃっと棒を折り、男の顔に一発食らわせ、奪った棒で目の前の男を滅多うちにする。

こんなとこで、死んでたまるか。
ふざけんな。
だらだらと生ぬるい液体が流れてでていくのがわかる。

刺さったナイフは、ぬかねえほうがいいかな。
失血死はゴメンだ。

「いってえ……ふざけんな……マジいてえ」

腹を殴って昏倒させ、掴んだ男を振り回しながらオレはわめきちらし、4、5人かかりで体を止められるまで、目の前の敵を殴り続ける。
……やべえ…力はいんねえ……
視界が狭くなっていく。
暗くなってく……。

成春………。

こんなとこで……死にたく…ねえよ……。
体が熱い。
力が抜けていくのにナイフが刺さった場所はじくじくと熱をもってきている。

「どーする。コイツ。捨てて死なれて足がついたらマズイでしょ」
「さすがに一高だしなァ。俺らと違ってすぐ捜索願だされそうだ」
オレを抱えた男は、どこに向かっているのかわからないが、かなり荒い息をついている。
オレは、死ぬのかな。
ぼんやりとした脳みそでしか考えられない。
きっとこのまま行方不明になっても、警察になんて親が頼るわけがない。
体中もしびれて力が入らない。
捜索願も出ないとは思うけど、成春探してくれるかな。
「ったく、高くつく仕事になっちまったぜ。楠木くんから倍はもらわないと…………」
「とりあえず、バラすわけにはいかねえしな、なんとか手当てしねえとな」
いやいや、ナイフ抜くとか普通にしたら、普通に失血して死ねる自信あるから、あんまりいじらないで救急車呼んでほしいんだが。
朦朧としながら冷静に考えてしまう。両親譲りのオレの毛の生えている心臓を、誰かどうにかしてほしい。

「しっかし、一高にゃもったいねえ腕だよな。東高に欲しいぜ」

オレを担いでる男が、馴れ馴れしくオレの腕に触れる。
気色悪い。…………触るな。
と思うが、苦しくて痛くてたまんなくて声さえ出ない。

「すっげえアタマいいらしいじゃん。どうかんがえたって東高にはこねえだろ」
「とりあえず、アタマ叩いてバカにしてみるとか。」
ごつっと叩かれて、ぐわあんと全身が痺れる。
「そっか、ぶったたきまくればパンチドランカーになるかもな」
手当てしたいのか、殺したいのかどっちかにして欲しい。
だから、配線ずれたアタマ悪いやつはいやだ。アニキだけで充分腹いっぱいだ。
そんなことでアタマ叩かれまくるとか、ホントイヤ過ぎる。
反論もできねえくらい、オレはぐったりとして力もまったく入らない。

薄暗い建物へと担ぎ込まれ、擦れてやぶれかけたソファーの上に降ろされる。
あまり衛生的とはいえないのが、かなり頭にくる。

「すっげえ血でてっけどどうする」

多分内臓もやられてそうだし、一刻も早く病院に連れてってほしいのだが期待できねえだろう。
薄目をどうにかあけると、ここにいるのは4人で、ガタイのでかい金髪と俺を運んでいたスキンヘッドの男と、ピアスが唇と耳にいっぱいぶらさがっている男と、アホ丸出しなロン毛の男が俺を覗き込んでいた。

「死なせるわけにいかないし、止血しようぜ」
ロン毛の男がオレの心臓に掌をあてて生死を確かめている。
「包帯とかないぞ」
ぶつぶついいながら、そこらへんに散らかっているおもちゃなどをどけながら使えそうなものを金髪の男はあさっている。
「このシャツ脱がすか」
ロン毛はオレのワイシャツをめくりながら、ナイフがささった場所を眺めて呟く。
「寒いんじゃねえか」
ピアス男はガクガク震えているオレの腕をとって、金髪の顔を見返す。
「しょうがねえから俺のぬぐし」
金髪は学ランを脱いで、大きなシャツを脱いでピアス男にほおる。
「くさそう」
ロン毛の男は突っ込みをいれるが、どうでもいいけど早く手当てしてくんねえかな。
「ばっか、俺、常になんかイイにおいつけてっし」
「よけいくさそう」
「嗅いでみっか?」
「どーでもいいから早く止血しよーぜ。しんじゃうよォ。俺まだ殺人犯にはなりたくねえ」
スキンヘッドの男は、ロン毛の男がシャツを刻んで紐を作成するのを、せかすようにわめく。
「俺も、次は年少ねって言われてンだよ」
ロン毛はくさそうといったシャツで、オレの傷口の間を締め付けるように止血し、ぎゅうっと体を紐で縛っていく。
「止まった?」
「少し止まった。でも楠木君、こいつの何がお気にめさなかったんだろうねェ」
「なんか狙ってる子のオンナらしいぜ」
興味なさそうにピアスの男がオレを指差す。
非常に間違っているので訂正したいが、口を開く余裕はない。
こいつらのいい加減な止血で、回復するとも思えない。
「へえ、オンナになれるんかな。コレ」
「いい具合なら使いてえなァ」
金髪がノリノリでオレのベルトのバックルを外してくる。
……ぶっ殺すぞ……
つーか、こんなんでヤられたら、確実に死ねるんだけど。
本当にバカはイヤだ。
「試してみるか」
ズボンをひき下ろされても何の抵抗もできないのがもどかしい。
「顔綺麗だし、いけるかも」
「ナイフ刺さってるのに、俺らのナイフも刺しちゃうのか」
ピアスのやつが笑えないシモネタをいってくる。
つか、マジで死ぬって……。
死因が強姦とか、マジでない。
どうにか……動けねえかな……。
「……だってなあ……ほら、使える穴があれば入れたいだろ」

穴がいいなら、犬でも犯してろ。カス野郎。
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